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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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240話 ラルフ叱られた上に……

大人になってから叱られると地味に辛いですよね(仕事のダメ出しとかそういうのは別にして)。

だから、ちゃんと叱ってくれる人は、貴重なんですよね。


「あなた、ご無事ですか?」

「ああ、見ての通りだ。問題ない」


 超獣の部分爆発による爆風やら飛来物を魔導障壁で防いだとか、余計なことは言わない。

 それが奏功したらしく、ローザは長く溜息を吐いて肩が落ちた。

 すまんなと呟いて、頭を撫でてやる。


「で。ゴメス殿、如何か?」

 宙に浮かんでいる魔結晶をじっと見つめている男に声を掛けると、やっとこちらを向いた。

 

「はっ! 素晴らしいお働きと見事な魔結晶。誠に感服致しました……」


 眉根を寄せる。


「……ああ、いえ。アガート王国軍務省監察官ゴメスの名において、本日ただ今、ミストリア王国ラルフェウス卿が、超獣ザ-ダルを討伐されたことを認定します。誠にありがとうございました」


 役目を思い出したようだ。

 軽く肯いて、魔結晶を収納すると、ああと残念そうに呻いた。


「あっ、あのう……」

 絞り出したような声の主は、守備隊司令官だ。


「さっ、先程は大変失礼なことを申しました。何卒お許し下さい」

 ああ、宿に籠もっていろと言われたんだな。


 ドバールは、平伏するのを通り越して這い蹲った。

 すると周りにいる兵士達も跪いた。やはり、この男。口は悪いが、人望が有るようだ。


「司令官、立たれよ。成り行きで斃してしまった。許されよ」

「とんでもない。とっ、砦の者を代表し、御礼申し上げます」


 思いっ切り顔が強張っている。視線の先は、俺の頭上だ。


 ああ、そうか。

 俺の身体全体が眸と光っている。見えないが頭頂にも光冠が輝いているはずだ。


「これはな、体内の余剰な魔力を放射しているのだ。しばらく光っているが、その内に消える。気にするな」

「はっ、はい。驚きました」

「そうですね。余りに神々しくて天使様かと思いました」

 お前は、魔結晶に見とれていただろう、ゴメス。


 いよいよ日が陰ってきた。もうすぐ日没だ。


「えーと。それはともかく、この後はどう計らいましょうか」

「ああ。ゴメス殿。オドアルド伯や、貴国王都への第一報は、そちらでよしなに頼む」

「はっ! 承りました。子細を(したた)めるゆえ、早馬を飛ばしてくれ。大尉」

 ドバールが肯く。


 モーガンに目配せをすると、横に居た執事がささっと武者走りを辞して行った

「さて、宿舎に引き上げる」


 城壁を降りて宿へ行くと、玄関に団員が一列横隊で勢揃いしていた。


「お戻りなさいませ」

 バルサムの合図で一斉に胸に手を当て敬礼された。

 軽く答礼して、中に入る。団員も入室し並んだ。


 10ヤーデン角程のホール段上に、椅子が設えてある。そこまで移動すると斜め後ろにローザとモーガンが並んだ。モーガンが着座を促したが、手で制する。


「ああ……皆、済まん」

 立ったまま、胸に手を当て謝る。


「今日の時点では、超獣を斃すところまでは想定はしていなかった。偵察のつもりで出たのだが、観察しているところで戦闘となり運良く討伐できた。今後は独断専行することのないよう、心掛ける」


「心掛けるって……ねえ、って、あれ?」


 アリーが冗談交じりで返したが、誰も追随しなかった。


 ううんと咳払いをして、副長(バルサム)が引き取る。

「御館様に気を遣って戴き恐縮です。元より騎士団の役割は、御館様の支援ですので、我らのことなどを気に掛けず、ご存分に為さって戴ければ」


「うーーむ、どうだろう? ゼノビアなど不満だろう?」

「とっと、と、とんでもない。超獣とは命を掛けて挑むもの。我ら団員が戦うことに否やはありませんが、被害が出ず終息することができたのは喜ばしく存じます……」


 混乱していたが持ち直した。横で、戦士系団員も肯いている。


「ただ、強いて言えば御館様のご活躍を、この目で見れなかったことが残念ですが……あっ!」

 隣にいるルーモルトが溜息を吐く。


「だが、出動とは超獣との戦いだけではない。まだまだ、この国の王都へも赴かねばならぬ。よろしく頼むぞ」

「はっ!」

 モーガンが顔を近付ける。


「ああ、流石はモーガンだな。皆訊いてくれ。討伐成功を予測して、宴の料理や酒を用意してきたようだ。手分けして準備してくれ」


「「「はっ!」」」


 バルサムが近寄ってきた。

「別室で、魔導通信が団長殿に繋がっております」

「分かった」


 客室であろう簡素な部屋の木机の上一面に、通信魔導具が設置してある。これを使えば1000ダーデン(900km)を超える通信が可能だが、流石にデカい。改良を加えているが、1人で持ち運べる程に小型化はできなかった。魔収納魔導具がなければ、騎士団がここまで運べなかっただろう。


 気が進まないが仕方ない。

「ダノン。聞こえるか?」


「……はい。良く聞こえます。先に、超獣を討伐されたこと、連絡がありました。真におめでとうございます」

「あっ、ああ」

 我ながら歯切れの悪い返事だ。


「なんでも、御館様おひとりで戦わせた由。けしからんですな。帰還したら、バルサムをきっちり叱っておきます」


「ああいや。バルサムを叱っては駄目だ。悪いのは俺だ。俺が独断専行して、超獣を斃したのだ」

「そうかも知れませんが、そこを補佐するのが、副長の職責。副長の落ち度は私の落ち度にござりますれば、申し訳ございません」


 ううう、流石ダノン。俺の弱点を知り抜いている。


「済まん許してくれ、俺が悪いのだ」

「ふーむ。なにやら、釈然としませんな。御館様がそのような」

「ああ。我ながら超獣を目の当たりにして、収まりが付かなくてな。唯々(ただただ)戦闘の危うさが頭から抜けて……こう言うと甚だ危うく思うだろうが。事、魔術に付いては滑らかに発動できて、威力も段違いに上がるのだ」


「ほう、左様ですか……概ね分かりましたが、御館に戻り次第、詳しくお聞かせ下さい。実は、他にいくつか、ご報告がございます」


「うむ。聞こう」

「まず。大使随行の外務省役人についてですが。既にアガート王都(ブラム)に到着したとのことです。しかしながら、ここ(オリヴィエイト)を通過しておりません」

「本当か?」

「はい。都市間転送を使っておりませんので、間違いございません」


 ふむ。

 どういうことだ。王都(スパイラス)からグルモア辺境伯領都オリヴィエイトまで飛び、陸路アガート王国へ入るのが最短経路……。

 もちろん他の経路もなくは無い。一旦第三国に入って、陸路アガードに入る道もあるが、2日以上余分に掛かるはずだ。


「わかった」

「何やらきな臭いと思われますので、調査を命じております」

 諜報班か。

「ふむ。こちらでも気にしておく」


「はっ。それともうひとつ。こちらはご存じのことかも知れませんが、本日官報が出ました」

 ああ、今日は15日か。それにしても、珍しく勿体付けた言い方だな。


「官報?」

「はい。ファフニール候爵家に関する猶子縁組受理の告知です」


 まあ、ユリーシャ様は知らぬ仲でもない。数度会っただけだが、巷では俺の後ろ盾ということになっている。


「ほう……猶子に成られた方は、どなたか? もしかして俺の知り合いか?」

「ふーむ。やはりそうでしたか……私も存じ上げなかったので、あるいはと思っていたのですが」


 んん?


「猶子に成られたのは。アリー殿です。我が騎士団の救護班長であり御館様の義妹である、アリシア殿です」


「何?」

 アリーだと!

用語補足

猶子ゆうし

猶子にはいくつかの意味があるが、この物語で言っている猶子は他人を戸籍上の子とすること。似たような制度では養子があるが、猶子は相続権を付与しない名誉だけの制度。日本でも江戸時代以前は存在した。最も有名な例は、羽柴秀吉が近衛前久の猶子となったこと。これにより名目上藤原氏(五摂家)の一族となることで、関白を任官することができた。(その後、豊臣氏を下賜される)


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お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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