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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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232話 茶番

茶番。見え透いた物事の意味です。演劇関係の用語だろうなとは思ってましたが、茶番狂言の略語なんですねえ。知らなかった。ちょっぴり賢くなったかも。


「あなた!」

「ん?」

 内郭を辞し、我が家の馬車に乗り替えるとローザが切り出した。


「国王陛下に直に拝謁でき、感謝を受けた時は、舞い上がるような心地ではありました」

「あっ、ああ。それは良かったな」

 なんだか押しが強いな。


「しかし……」

 ん?

「それはそれとして、先程の陛下とのやり取りが全く分かりませんでした。分かるように説明して戴いても?」

 目が笑ってない。

 放置したから、少し怒っているようだ。

「ああ。済まなかった」


「陛下と示し合わせていた、わけではないのですよね?」


「ああ、いわゆる事後共犯ってやつだ。どこから説明するか……ああ、まずエーゲリア伯爵夫人のご実家は、アガート王国の王室だ」


「はい。話の流れで分かりました。アガート王国というと、我がミストリアの北東にある国ですわね?!」


「ああ。王都(スパイラス)からだと、3千5百ダーデン(3千km強)位だな。アガート王国は友好国ではあるが、そうなったのはここ百年ぐらいでな。あからさまに政略結婚だ」

「ご夫婦仲はよろしいようでしたが」


「それはさておき。彼の国で超獣が出現したのは、特別職への情報提供で知っていた。それだけだ」

「やはり、陛下があなたへ説明したと仰られたのは、やっぱり嘘なんですね?」

 ふーむと可愛い鼻から太い息を吐く。


「ああ、嘘と言えば、俺が言った法的根拠がないというのも嘘だ」

「はい?」


 大きな眼を一旦(つぶ)って、見開いて俺を睨む。


「国内法にはないが、彼の国とは安全支援条約を結んでいる。紛争になるか、その恐れでもない場合、軍は出せないが、俺については問題なく派遣できる。軍人ではないからな」


「ちょっと待って下さい。と、いうことは、陛下もそれを知っていて?! えっ? あなたは、陛下に華を持たせる為に一芝居打った……それで役者?」


 肯く。


「まあぁぁ。伯爵夫人に告発のお手紙を書こうかしら!」

 全く男共は! という顔だ。


「それは、困るな」

「ところで、あなたのお身体が心配です。本当に大丈夫なのですか?」


「ふむ。その話は昨日しただろう。一晩寝たらいつもより調子が良いぐらいだ。それとも、ローザの目には任務を果たせそうに見えないか?」

「もう。そういう言い方は卑怯です。大体任務が果たせれば良いというものではありません」

「すまん」

 抱き締めて宥める、これも卑怯か。


     †


 公館に戻ってきて打ち合わせを始める。


「そういうわけで、アガート王国へ赴くことになった」


 ダノンは眼を伏せ、バルサムは腕を組んで唸った。


「モーガン殿から、知らせを受けて何事かと思っておりましたが、そういうことですか」

 やはりモーガンに手抜かりはないな。


「それで、明後日出発として幹部以外の団員は何人集まる?」

 今は非番が始まって間もない。王都に残っている者は少ないだろう。


「ふむ。明後日ですと20人程度ですかね」

「20人も王都に居るのか?」

 バルサムに訊き返す。


「ええ。主に団員を早く戦力化しませんと。今は御館様を支援するどころか、負担にさえなっていますからな」

「とはいえ、少し扱きすぎではないのか。特に魔術師を」

 ダノンの言に少し揶揄が入っているな。


「あれぐらいで、音を上げる者はおりません。それに最近入ったアクランは、なかなかの大器ですから鍛えないと」

「むう。確かにあの者のゴーレム魔術は……済みません。幹部も、揃っております。ああ、ペレアスは近隣に出ていますが、昼には帰って参ります」


 途中で俺の視線に気が付いたようだ。


「では、昼過ぎに」

「はい。早速幹部会議を召集致します」


     †


 昼過ぎ。

 親父さん宛の書状を書いて、食事したあと幹部会議が開かれた。

 一通り、ダノンが説明し終わったところで、アリーが挙手した。


「救護班長、どうぞ」

「はい。話をまとめると、王様のお妾さんのために、ウチが出動するってことですか?」

 秒にも満たないが、ザワッとなった。


「他国のために、出張るってのは釈然としません」

 言い終わると、大きく肯いた。

 コイツ……。


「救護班長。確かに他国の為だが、押っ付け委員会から綸旨が届く。アガートとは安全支援条約を結んでいるから、しっかりと法的根拠がある」


「でも、ウチは非番だよねぇ」

 隣のペレアスに、言いつけるようにしゃべる。

 アリー、その辺にしておけ、彼は思いっ切り迷惑そうだぞ。


「軍の派遣は、制約がある。隣国に他国の軍が来たとなれば、第三国からすれば穏やかではないからな。その点、我々は軍人ではない。スワレス領軍からの派遣の者もいるが、停職しているから問題はない」


 バルサムが説明するが、アリーは納得していない……という(てい)だ。彼女は、この辺りの事情を分かっていて、わざと訊いているのだ。

 バルサムとの睨み合いは続く。


「我々は、何のために超獣と戦う?」

 小声だったが、皆こちらを向いた。

「御館様……」


「何のためだ? アリシア班長」

「人間を救うため……」

「ミストリア人か?」


「うぅっ……」

「アガート人が倒れていたら、助けるよな?」

「……助ける……わかった」


「そういうことだ。小さいことを言わないように」

「はい」

 嬉しそうに肯く。


「うぅぅん。では、他に?」


「よろしいですか?」

「ああ、ペレアス班長」


「はい。今回は国外ということで、補給が問題になるかと存じます。先程の出動団員数10人というのは、補給の限界から逆算された数字でしょうか?」


 よく分かっているな。

 調達補給班の人員は、確かに足りていない。なり手が乏しいのだ。危険と隣り合わせだからな。それでいて華やかな任務とは言い難い。

 また、人員は冒険者ギルドから集めようとしているが、西支部があまり協力的でないのも効いている。


「それもあるが、今回は要請に応じていく格好だから、アガートに負担を掛ける。だから作戦に支障がでない範囲で最低限の員数を設定した。それでも異議があるかね?」


「分かりました、副長」

 今回はともかく、本質的な解決ではないな。


「急造の騎士団だ、全てに人員が行き渡るわけではない。ただ運搬に関しては考えがある。それに関しては明日打ち合わせよう」

「明日……分かりました。ありがとうございます」


「他に質問は?」

 バルサムが皆に問うたが、発言がなかった。


「では、出発予定を仮に3日後の午前10時とする。綸旨の内容で変更がある場合は、速やかに伝える。連絡が取れるようにしておいてくれ。では解散」


 皆が立ち上がる。

「アリシア班長!」

 呼びつけるとニヤッと笑って、こっちへ来た。会議室は、ローザを含めて3人になった。


「何でしょう?」

「狙いは分かるが、幹部は概ね承知している。やるなら、一般団員が大勢いるときにやった方が良いぞ」


「うわっ。バレてるし。流石(さっすが)ラル……御館様。じゃあ、今度からそうする!」


 そう。

 アリーは、皆が俺に遠慮して言いづらいことを、敢えて発言したのだ。手を振って、会議室を出て行った。


「アリーも少しは気が回るようになりましたね」

 横に立つローザを見上げる。


「本当にアリーを側室にした方が良いのか?」

 ゆっくりと肯いた。


「わかった。そうしよう」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989 さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/02/14 子爵夫人→伯爵夫人、誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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