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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
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229話 求めよ さらば与えられん

サブタイトルですが。強い願望を持ったら、それを与えてくれるって意味じゃないんですよねぇ。

「おっ、おい! 聞いたか?」

「聞いた聞いた。空から、星が落ちてくるって、やつだろ?!」


「星?」

「箒星だ、箒星!」


「ああ、夜になると白い尾を牽いてる星だぁ」

「あれか?! なんだか不吉だとは思ってただ」


「嘘付け! だけど、星なんか、あんな小っちぇもん、落ちてきて来たって。どうってことねえだろ?」

「馬鹿かあ。あれはなあでっかいんだ。だけど遠く、トンデモねえくれえ遠くにあるから、小さく見えてるだけだ」

「遠いって、王都ぐれー遠いか?

「その何百、何万倍も遠いんじゃ」


「本当かよ、それが見えてるっことは、やっぱりでかいってことか!」

「そういうことじゃあ」


「おめえ、そりゃ司祭様の受け売りじゃじゃろ」

「ははっ、バレたか」

「しっかし、本当なのかぁ? おらの頭じゃ信じられねえ」

「お前、信じろって。司祭様が嘘をついたことがあったか? 俺は今から家に戻って、(かかあ)と息子を連れて教会へ行く」


「きょ、教会へ行ってどうするんだ? それより、どっか逃げた方が良いんじゃないのか?」

「落ちたら、どこに居たって駄目だってよ。助からねえそうだ。だから王様もどこにも行かねえってよ」

「王様がかよ?!」


「んじゃあ、おらっちみたいな、庶民はどうしようもねえってことか?」

「祈りゃあいい。祈りが通じれば、アズダー様が助けて下さるってことだ」


「そっ、そうなのか。オラもこうしちゃ居られねえ」


     †


「お父さん? お空がどうかしたの?」

「うむ……」


「ああ、綺麗なお星様」

「綺麗か?」

「うん! 白くて、びゅーんて長くて。なんか手が届きそう」


「そうだな。確かに昨夜よりだいぶ大きくなってるよな。よし! 夜が明けたら教会へ行くぞ」

「教会? でもお祈りの日はあさってだよ」

「ああ、それでもだ」

「ふぅぅん。お隣のジョルちゃんも行くかなあ?」

「ああ、みんな一緒だ」


     †


「報告します!」

「うむ」

「ザリム村、ドーレク村への布告が終わりました」


「ご苦労! で、反応は?」

「はい。2村とも村長の指揮で、教会へ集めると確約が得られました」

「そうか。それで良い。貴官も小休止の後、教会へ行くのだ」


「はあ、警備でしょうか?」

「違う。祈るのだ! 全ての報告があり次第、儂も行く」


     †


「陛下。お呼びでしょうか?」

「うむ。宰相よ。教会からの申し越しの件、如何なっているか?」


「はあ。王都の周りについては、ほとんど行き渡りましたが。遠隔の地には何分にも。早馬を飛ばしておりますが……」

「うむ。それで良い。あと3時間か」


「はっ! 天文方より、肯定の報告もありました故、もはや疑っておりませぬが。この度の教会の強気ぶり。臣としては、(いささ)か目に余るかと」

「強気な」

「はい。いくら時間が無いとは言え、我らを無理矢理使役するとは」

「気に入らぬか?」


「はあ……為政者の権威を何と心得るかと、問い質したくなります」


「それだけ必死だと言うことであろう」

「無論そうだとは思いますが」

「大司教に拠れば、ヴァフラムの宗主様直々の指示ということだからな」


「しかし、教団の狙いがよく分かりかねます。ここ数十年で教団の威信は低下しております。それを取り戻さんがための博打だと申しておる者もございますが」

「ふむ。的を射ておれば賞賛し、外せば咎めれば良いだけのこと」


「はい。確かに、何も起きなければ殉教すると,大司教の言質を取ってありますが」


「ふふふ。我らももうじき死するやも知れぬのに、宰相は肝が太いな」

「畏れ入ります」


  † † †


「おっ、おい。さっきから、箒星がどんどん大きくなってきてねぇか?」

「ああ、夕暮れのときから倍にはなってるぜ!」

「本当だ! やっぱり落ちてくるんじゃ、ここへ! だっ、誰も助からねえ」


「静まりなされ」

「こっ、これは司祭様!」

「司祭様、司祭様! おらっち達はみんな死ぬんですかい?」

「嫌じゃ! 嫌じゃ! おらはおっちんじまうのは嫌だ! ど、どど、どうなんです、司祭様」


「あなたたちは、恥ずかしくないんですか?」

「なっ、なんじゃ? すっ、すみません。どういうことですか?」


「見なさい。あの幼子達を。泣きわめきたいのは、生まれて間もないあの子達でしょう。それが一心に祈っている。大人達ができないとは言わせませんよ」


「うっ、ううむ。分かりました。でもどう祈れば良いのでしょう?」

「それでよいのです」


「へっ?」

「神は求めよと仰いました。さらば与えられんと」

「はぁ」

「どう祈れば良いか考えることが、良い祈り方そのものなのです」

「はっ、はい」


「さあ、皆々。焚き火を囲んで、手を繋ぐのです」

「はい。司祭様」

「ほ、本当にあれが落ちてくるのか」


「ああ。宗主様がそう仰っている」

「ど、どこに落ちるので?」

「そこまでは分かりかねます。ただ宗主様は、こう仰ったそうです。皆々懸命に祈れば、必ずやアズダー様がお助けになると」

「そいつは……」

「祈るのです」


   †


「ん? なあに、なんなの?」

「サーリァ。静かに。そして祈りなさい」


「だって、お父さん。声がしたんだもの」

「しーー。誰も喋ってないぞ。薪が爆ぜた音じゃないのか?」

「違うよ! お父さん、聞こえないの? ほら、また。光、光って」


「あっ、聞こえた! 私も聞こえたわ」

「ジョルちゃん。聞こえるよねえ?」

「うん!」

「本当か?」


「おおぅ、何か聞こえる気がする、どこからともなく……」

「頭の中で聞こえるの!」


「皆さん、静かに! 静かにして、神の御言葉を聞くのです!」


──光


 光あれ(フィアット・ルクス)──


「きゃあ! 空が!」

「ああぁぁ、皆、伏せろ!」


「ぁぁぁあ、光が。ひかりが」




 突如夜空の星が消え失せるように闇が包みこむと、箒星がありありと浮かび上がった。


 最後の声が聞こえるや。


 虚空の一角から幾筋もの光芒が迸ると、如何なる力が作用したか、ねじれ、集束──

 彗星にぶち当たった。


 その刹那───


 空が輝いた。

 太陽が彗星に取って代わった如く。



「うぇぇぇえええええ…………」

 静かな教会前の広場に、幼女の泣き声が響き渡った。


「おおい。大丈夫か?」

「どっ、どうなった? おらあ、まだ目が開けられねえ」

「昼みたいだったのに、夜に戻ってるぞ」

「ほっ、本当だ」


「ああ!」

「どうした?」


「帚星が……帚星がなくなっているぞ」

「本当だ! 司祭様!」


(アズダー)よ! 神よ、感謝します!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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