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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
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224話 眠れる美女は悪魔憑き?!

眠れる森の美女って、シンデレラと区別が……。7人の小人が出て来るのが後者ですよね。

 さて。

 図らずも妙齢な女性の寝室へ、深夜に忍び込んでしまったが。


「うっ、うぅん」

 身動いで、夜具が捲れ上がる。

 うん。油の灯火は最小限だが、今の状態だと見え過ぎるぐらい見える。


 細身の種族の割になかなかのボディーライン……いかんいかん。これじゃあ、ただの覗き魔だ。ローザに合わす顔がないな。


 ああ……。誰だと思ったが、伯爵の娘か。

 父とは似ても似つかぬ端正な顔立ちだ。

 伯爵の個人情報はほとんど飛ばして読んだので、顔を見るまで気が付かなかった。


 ん?

 よく見ると両足に鍵の付いた革の足環が填まっていて、その先に鎖が繋がっている。軟禁されているのか。


 顔が眼を開くとこっちを向く。

 俺を感知したのか?


「んがっ!」

 突如ベッドの上に起き上がった。

 

 ハァァアアア……ィャザァ、ガアァァァァァァ!。

 獣のような息遣い。そして、寝顔とは打って変わって鬼気迫る相貌。


 だが、吠えているのは全く見当違いの方向、扉に向いてだ。

 なんだ。俺が見えているわけではないのか。


 バン! 音と共に扉が開き、何者かが入って来た。

 僧服だ。ランプを持って、灯りを娘に向けている。


「レオノーラ殿! 静まられよ!」


 すると、娘は灯りを厭うように身動ぐ。

「黙れ! 女司祭め!」

 確かに僧服の人物は、年配の尼僧(シスター)だ。


「我が恐いのか? 大司祭に相応しい力があるというなら、我と戦え!」

「何度も申し上げて居りますが、憑いておるモノが落ちなければ、外すわけには参りません」

「ならば下がれ! 教会の者よ!! 我は地獄の大元帥ヴァーズズ様の右腕ゾラシ-ム・オノアレスなるぞ!!」


「ぐうぅぅ。私にもっと力があれば……」


 尼僧は悪魔祓い(エクソシスト)か。娘が所謂悪魔憑きで外聞も悪く、軟禁されている訳か。

 不憫だな。


 さっき、邪悪な波動を感じたが。この娘だよな?


光壁(オーラ)!】


「うぎゃぁぁあああ!」

「なっ! 何?」


 燦然たる輝きで、畏怖させる。


光託身(リーンカナティオ)!】

擬人装(マスケラーレ) (レヴォルブ)!】


 姿を顕現させる。


「貴様……何者だ?!」

「こっ、これは……はっ、ははぁぁぁぁぁ」

 狼狽えて平伏した尼僧を尻目に、レオノーラは立ち向かうように腕を構える。


「レッ、レオノーラ殿! 頭が高い。畏れ多くも、神にございますぞ」

「神だと?」


───如何にも


「はっはぁぁぁ!」

 尼僧は畏まったが、訊いた本人は涼しい顔だ。


「我が名はゾラシ-ム・オレアノス! フシャァァア………」


 ああ、はいはい。

 傲然と胸を張って強がっているが、鎖で繋がれていては様にはならぬ。


───黙れ!


口噤(シレンジオ)!】


「ぅんんん……むぅぅぅ」


 レオノーラが苦悶の表情で喉を押さえる。


───そこな 尼僧よ! 面を上げよ!


「はっ、はい!」


───我を 疑わぬのか?


「めっ、滅相もございません。神々しくも聖なる光を纏われた御姿。努々(ゆめゆめ)見間違うことなどありません。紛うことなく我らが神にあらせられます」


 いや、見間違っているぞ。


───神妙なり! 敬虔なる者よ 望みを申せ!


「お側に侍りし光栄の至り。この上、望みなどございませ……」

 ん?


「……いえ。ございました。この娘レアノーラ・ゾシムスのことにございますが。このようになる前は、貴方の敬虔なる(しもべ)にございました」


 へえ。


「これも試練と存じておりますが。神よ! なにとぞ、彼女を哀れと思し召し、何卒憑きしものを祓い給え! はぁ、はぁ……」


 大丈夫か?

 この尼僧、えらく躁状態で、血圧と心拍数が上がってるが。


 何かこの状況が、俺の所為になってるし。

 まあ、ここの神は全知全能だから、そう言うことになるのか。

 光神教は、多神教だから何事も神の所業とは考えないが。


 そもそも神とはそういうものじゃない。

 彼らは、この世界の物理法則の守護者だ。人間や生物といった、マクロな対象に意図を持って接するような暇はない。


 そういう仕事は、無数の天使が担っているのだ。


 とはいえアズダーの役を果たさないとな。

 取り憑かれているという意味では、俺は経験者だ。


───それが汝の望みか?


「はい!」


───ならば 請け合おう!


「あっ、有り難きしあ・わ・せ……うぅぅむ」


 平伏から突っ伏して失神した。とりあえず、放置で可のようだ。


「ふん。狂信者が! 神など何ほどのことや有らん、祓えるものなら祓ってみよ!! カァカカカァァ!」


───悪魔祓いは失神した それくらいにしておけ!


「何だと?」


───汝 真の悪魔憑きに非ず 狂言は止めよ!


「訳の分からぬことを、我が名はゾラシ-ム……」


───それはレアノーラ・ゾシムスの並べ替え(アナグラム)であろう!


「うぅぅむ」


───首の装身具で邪な力場を醸しても 我が眼は欺けぬ!


 あれは魔導具だ。

 大体扉の方に向かって吠えている段階で不自然だ。まあ悪魔憑きが自然という論理も変だが。


 レオノーラは力なく肩を落とすと、そのままベッドの上に跪いた。


「非礼の段、何とぞ、ご容赦下さいませ。てっきり何かの詐術かと……」

 ある意味、真を突いているがな。


───なぜ このような仕儀となった?


「父伯爵に政略結婚を強いられそうになりまして」


 ありがちな話だな。


───汝も貴族の子女ならば 覚悟もあろう


「お恐れながら。私が侯爵家へ嫁げば、父の立場が強化されてしまいます。私は父の所業を許せません」


 確かに、あれだけの悪行の上に、私腹まで肥やしているからな。


───して 如何するのか? 


「私が時間稼ぎをしている間に、仲間が父に近づき悪行の動かぬ証拠を集めています」


 ん?


───紅毛の若い女か?


「なぜ、それを? ああ。失礼致しました。神でございました」


 いや、神だからじゃなくて、さっき伯爵の寝室で見たからだが。

 身を賭して、やっているのか。


───ならば 良いものをやろう 手を出せ!


「手を?」

 レオノーラは怖ず怖ずと差し出してくる。その手を取った。

 うーむ。情報を読み取ってみたが、やはり、災厄に関する情報は持っていなかった。


 代わりに、さっき読み取ったばかりの、伯爵の記憶をレオノーラに流し込む。


「ああっ、これは……」


 1分程掛かったが、手を離す。

 渡したのは俺が読み取った分の万分の1にもならない情報量だ。


───どうだ 役に立ちそうか?


「立ちます。立たせて見せます」

 まあ裏帳簿やら、隠匿した財物の隠し場所の情報も入っていたから、がんばれば何となるだろう。


───では励め!


「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」


 さて、俺はそれどころじゃない。災厄をなんとかしないとな。

 ああ、そうだ。その前に。


 手を尼僧に翳すと、そのまま魔界強度を印加し、持ち上げて立たせる。

 掌が彼女の額に触れた


 んん、これは? 尼僧の記憶に引っ掛かる物があった。


「はっ!? ああ、私はどうなっていたの?」

 尼僧が覚醒した。


「司祭様」

 寄ってきた。

「レオノーラ殿? 正気に戻ったのですか」

「はい。お世話を掛けました」


───約定通り 祓っておいた


「ああ。神よ! 感謝致します!」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴及び謝辞

2021/08/28 宇宙の物理法則→この世界の物理法則(ID:800577さん ありがとうございます)

「彼らは、この宇宙の物理法則の守護者だ。人間や生物といった、マクロな対象に意図を持って接するような暇はない。」に”マクロ”ではなく”ミクロ”では?とのご指摘を戴きました。

これにつきましては、宇宙の物理法則は、いずれも量子を対象としており、その結果が重ね合わさって、人間やさらに天体、宇宙の大規模構造に及んでいるとの認識で書きました。ただ「宇宙の」で始まってしまうと、確かに天体運動レベルのイメージが先に来そうなので、頭書のように訂正しました。ご了承願います。


2021/09/11 誤字訂正

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)


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