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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
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221話 ラルフ 小手調べされる

ここ数日体調が優れません。……申し訳ないですが、週末は投稿が滞るかも知れません。

 意識がはっきりしてくると、浮遊感を感じた。


 ここはどこだ?

 足が。いや、身体のどこも何にも触っていない。


 辺りは底無しに暗い、闇夜の空のようだ。瞬かない星──


 うっ。

 咄嗟に喉を押さえたが苦しくない。どういうことだ?

 星が瞬かないのは大気がないから、ここは見たままの宇宙空間のはずだ。


───ああ、ラルフ君。浸っているところ悪いけど


 はっ?

 ガルやゲドのように直接声が頭に響く。


───単純に星幽(アストラル)体になってるだけだから いつもの魔術も使えるよ


 ふむ。

 星幽体か。

 肉体ではなく精神を形作るいわゆる人魂(ひとだま)状態のことだ。

そう意識すると、自分のカタチらしきものが自発光し始めた。

 肉体がなければ呼吸の必要もないし、真空や絶対零度近い環境も関係ないというわけだ。


───どうやら納得したみたいだね


 ソーエル審査官は、腕を上げた。

 なんだ?


───じゃあ まずは小手調べだ 後ろから来る 星屑を潰してみて


 後ろ? うわっ!

 凶悪な圧力──

 岩石天体だ! 俺の周り数十ダーデンの範囲には何もなかったのに。


(ラーマ)


     †


 遙か次元の向こう。

 

 辺り一面が白い空間に、黒々とした大きな鏡が鎮座していた。そこに映る光景を覗き込む。


───ソーエルが言っていたのは 浄玻璃(ジョー・ハリー)に映っている人間かね?


───はっ! 首席

 そう答えたが、実際見たのは初めてだ。


───神通力が如何ほど使えようと 人間如きが北方天使会の相手に使えるとは思えぬが


 鏡には一体の星幽体とアートマ体まで下天したソーエル審査官が映っている。

 我らの視線を感じたのか、鏡の中でソーエルが腕を上げた。


───合図です 始まります


───むっ! 小惑星か あれでは衝突するぞ


 小惑星?

 主席も仰った通り、遙か彼方から忍び寄る星屑があった。浄玻璃鏡には直撃コースが描かれている。

 アストラルとて、あの質量と交差すれば無事では……何だと!!


───きっ 斬った!? 一刀両断


 一瞬にして神通力──彼らの言葉では魔術を、あの短い時間で発動したのか。


───いや 2度斬ったな 神通力で虚数光子を励起したようだ


 2回、だと。

 浄玻璃に微かに映った小惑星は4つに割れ、その後、粉々に分裂して遠ざかっていく。

 首席の視られた通りか。


───面白いが 地味だな


───わっ 分かりました


     †


───斬った! 斬ったかあ はぁぁ相対速度0.1mC(秒速30km)の小惑星を斬るかね  はっ……地味? はい 分かりました


 何をブツクサ言ってるんだ?

 何だか、誰かと喋っているような……。


 それにしてもちょっと危なかったな。

 ここは宇宙空間だ。普段通りの魔感応では、相対速度的に反応が遅れる。

 そう意識すると、範囲がザーっと広がっていった。


 我ながら、とんでもない距離まで感知できるようになった。数百万kmの範囲にあるのは、小天体だけしかない。

 明るい恒星を見付けたが、20億km位離れている。


 って、あの星。


───ああラルフ君 咄嗟の対応なかなか良かったけど もうちょっと何か……


───はっ?


───いや なんて言うか もう少し ズバーンとかドカーンとか


 宇宙空間は音がしないが。


───派手に? という意味ですか?


───そうそう もう少しわかりやすくね


 んん? 誰かに対してわかりやすくだ?

 もしかして、その対象は、この状況が見えているのか?

 ならば、やはり上級天使か。

 

 ふむ。それはいいとして。さっきの(ラーマ)

 発動にほとんど抵抗がなかった。恐るべき速さで刃が量子化したしな。

 やはりこの身が、星幽体だからか。研究が必要……って下界に戻ったら、憶えていないか。


───派手にと言われても この辺りには何もありませんが


 魔感応を意識すると、信じられないほど感知可能範囲が広がる。恐らく数百kmを越えているが。微かにさっきの残骸が飛んでいくのが見えるぐらいだ。


───確かに

───ここ 俺の居た星系……外惑星の軌道上でしょう

───よく分かったね

───放射スペクトルが一緒ですから


───じゃあ もう少し内へ行こう


 なっ!

 ソーエル審査官の言葉が終わる前に、景色が切り替わった。

 重力波を感じた途端に、岩塊群が視界を覆った。


 ぶつかる。

 岩塊のあまりの余りの多さに、魔感応が悲鳴を上げつつも、脳裏に無数の岩塊座標を投影する。


光壁(オーラ)!】【光翼鵬(アーヴァ・ガルダ)!!】


 岩塊の低密度方向へ加速──

 生身では到底耐えられない加速度。立ちはだかる一切を弾き飛ばしながら飛行すると、ものの数秒で外に出た。そのまま数kmも進むと全貌が見えてきた。

 数十cmからは数kmまで、大小さまざまがひしめく無数の岩塊やら氷塊やらが寄り集まって緩やかに孤を描いている。


 その曲率中心には、渦巻く雲がいくつも見える視界を覆わんばかりの巨大な球体が鎮座している。

 第5番惑星ゾハル。

 俺達が住む星の外側を回っているが、天文学者の言う通り大部分がガスでできていることを魔感応が伝えてくる。


 さっきまで居たのは、その環。つまり小天体群の帯の中だったわけだ。


 主惑星の方は、直径24万km。


 ここは生物が生きることができる環境じゃない。

 ならば──


 帯中の比較的大きな岩塊を照準──


竜爪白炎(フラムナグ)!!】


 上級魔術の術式が軽やかに弾み、腕先から大いなる魔束が迸っていく。


 数十km先の小天体は、魔力の奔流に押し流されつつ、新星の如く網膜を白く塗り潰した。

 恐るべき火力は、5ギガトンになりなんとする岩塊を瞬時に昇華──

 空間に珪素のジェットを引き起こし、その衝撃波で、惑星の環を引き千切ってみせた。


 フフフ……………


 爽快だ!

 我ながら黒いな。

 アリーが言っていた、戦闘中俺が笑うってのは、これか。


閃光(ゼノン)!】


 輝線が環を掃引していくと、並んだ熟柿を切り裂くように弾ける。


閃光(ゼノン)】【閃光(ゼノン)】……


 数万km先にも光束(ビーム)は届き、惑星の環の大部分が蒸発して白く煙った。


───ああ ラルフ君 その辺で良いよ 十分十分!


 最近同じ台詞を聞いたなと思いつつ、魔術発動を中断した。


───わっかりました 合格ということで

 ソーエル審査官の声と言うかテレパシーが聞こえづらい。そう思ったら、こちらに向き直った。


───終わったなら 元の体に戻して貰えませんかね


───ああいや これからが本番って言うか


───はぁ?


───じゃあ、任地に向かって貰うから!


───任地って何です? そんな話は聞いて……


 ちっ!

 念を発し終える前に、視界が眩い光に包まれた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/10/02 小惑星の速さ 秒速30000km→秒速30km(mとkmと間違えました)、誤字等

2019/10/03 岩塊の重量調整 500ギガトン→5ギガトン(すみません)

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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