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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
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220話 黒幕降臨!

光臨と降臨。なんとなく、天孫降臨とか言う言葉もあるので,後者の方が格調高そうだけどと、調べる。神様系はやっぱり後者。だけどまあ目上の人でも可か……。何か微妙だなぁ。

「はぁぁ。ビビった。ラルちゃん、ありがとうね」


「ああ。蛇の魔獣は気を付けた方が良いぞ。せ……」

「せ?」


 赤外線で感知とか、小難しい話をすると嫌がるから止めた。


「なんでもない。やつらは、眼で見えてなくても感じるらしいぞ」

「うん。分かった」


 ニコッと笑って、バジリスクが居た方へ歩いて行く。

「うぅわっ、蜂の巣みたくになってる」

 アリーは、俺の流れ弾を喰らった脇の柱を撫でている。無視だ。


「ワフッ!」

 下り階段の前で、セレナが吠えた。

「わかったわよ、今行くって」

 促されて、降りていった。


「行こうか」

「はい。あなた」

 ローザの手を取って繋いだ。

 結構な段数を降りると、アリー達が見上げていた。


「見て見て、セレナ。あの2人、手ぇ繋いでるよ。嫌らしい」

 俺達は夫婦だ。

 おっ!

 見せつけるように、ローザが俺の腕を取りぎゅっと自分の胸に押し付ける。


「ちぇっ! いいなあ」


 階段を降り切り合流する。


「ああ、こちらにも転層陣がありますね」

 床に丸い紋章が刻まれ、中心に腰高の石柱が植わっている。


 迷宮の別層の変わり際に良くあるやつだ。

 ローザがしゃがみ込んで見ている。そこに転層石を翳すと、鈍く光って登録が完了した。


「旦那様。何時ですか? もうすぐお昼になるかと思いますが」

「えぇー。まだ11時頃だよね」


「そうだな。アリーの言う通りだ」

「そうですか。あのう、一度戻りませんか」


 確かに。昼頃には戻ると、留守番の者達に言って出て来た。

「えぇー。お姉ちゃん。まだ1時間位しか経ってないよぅ。大体、食料持ってきてるでしょう」

 持って来てはいるが……。


「戻るぞ!」

「ワフッ!」

 セレナが、近寄って来る。


「あっ、セレナ! 裏切ったわねぇぇ。ああ……女の友情なんて儚いものよねぇ。分かりましたよ。戻りますよ!」

 首をがっくり折ったアリーも、こっちへ歩いて来る。

 

 皆が環に入るのを見計らって、魔石を翳す。

 すると床の紋章が眸と輝き、自分たちも足から透け始めた。


 これで転送──


 しかし、転送しなかった。

 それどころか。周りの光景から色彩が抜け落ちていた。


「ローザ……」

 自分の声がボアボアくぐもって聞こえるが、そんなことは気にしては居られない。

 思うように動かない脚を懸命に動かして、妻に寄る。


 ローザは、固まっていた。

 薄らと浮かべた笑みも、少し持ち上がった衣装も凍り付いたように動かない。

 どういうことだ?


 アリーも、セレナも微動だにしない。

 まるで、時間が止まっているようだ。


 時間が? 止まる?


 電光が頭を駆け抜けた。


「おおぅ、これは驚いた。自力で解くとは……」


 通路の奥から、何者かが歩いて来る。


「やあ、ラルフ君。久しぶり。と言っても、こっちは時々覗いてるから。実感は無いけどね」


「ソーエル……審査官」


 そう。俺を2年間酷使した豹頭の天使だ。

 身体が眩く輝き神々しさを弥増(いやま)している。


 思い出した。何もかも。前世と今世の端境のことを。


「何回も記憶を書き換えてるから、バックドアの立て付けが甘くなっちゃったかな」


 軽い口調に怒りが込み上げてくる。

「そんなことより、これは何の真似ですか?」


 ローザ達を振り返る。


「ああ、もう気が付いているとかも知れないが。君と彼女達は時間の流れが違っている。君だけ因果律が異なる亜空間に居るって訳だ。もちろんみんな無事だよ」

 やはりそうか。


「俺が訊いたのは、どうしてやったのか? ですよ」

「恐いねえ! 天使を脅すなんて、罰当たりだな。何の為に宗教の学校に……通ってないか」


 睨み付ける。


「うっ、うぅん。冗談はともかく。君にやってもらいたいことがあるんだ」


「俺を天界へ拉致するなら、ここまでやる必要ない」

「そう、必要な処置なんだ。ラルフ君が承諾してくれれば、その理由も教えるよ」


 いつもこうだ。

 先に承諾を強要して、悪い条件を切り出す。


「つまり、俺に亡者の転生審査以外をやらせようということですか?」


「鋭いね。反省しないとなぁ、君の知性を上げ過ぎた……で、承諾してくれるのかい?」

「断ったら?」


「さあて、僕の口から言わせる気かい?」


 俺は死んでいない。生者を星幽(アストラル)化させるのは天界法に違反している。何回かやられているが、天界に呼びつけることも該当している。例外は、天使の補助を生き霊の承諾を得てやらせるときだ。

 だが、行先が天界ではないとすると、俺の事後承諾の如何によらず、重大な違反行為。箍の外れ具合が段違いだ。それほどのリスクを負ってやらせるのに、根回ししないというのは考えられない。今の状況は、背景に組織ぐるみであることを示している。


「俺に何をやらせようとしているんですか?」

 亡者の転生審査でなければ、さほど毛嫌いする程でもない。


「ふふふ、話が早い。ラルフ君には、あるところへ行ってもらう」


「あるところ?」


「そうだね。引き受けてくれたら教えるが、新世界── とでも言っておこうか」


 新世界?


 変だ。

 どこかは知らないが、遠距離の宙域へ行くなら天界を経由した方が早い。

 因果律が隔絶されているから距離が関係なくなるからだ。

 なぜ、いつも通り俺を呼びつけないんだ?

 そもそも新世界とはどこだ?

 1番怪しいのは──


「俺の移動を、天界の記録に残したくない場所とはどこです?」

「忠告だ! 余り詮索しない方が良い」


 豹頭が凄みを増す。恫喝しなければならない程のことらしいな。


「分かりました。協力しましょう。ただし報酬はきっちり貰いますからね」

 ブラックなバイトではあるが、必ずしも報酬は悪くなかった。第一未知の場所へ行くのは、心躍るものがあるしな。


「ふむ。そう来なくちゃ。ああ報酬は君次第だ。多くを得るも得られないもね」


「では、答えてもらいましょう。なぜ俺なんですか? そして、なぜ今なんです?」


「理由は、ラルフ君が時空操作を自力で使ったからだよ」

「時空操作? 重力魔術のことですか?」

「そうそう。重力とは、まあ時空の歪みそのものだからね」


 一般相対性理論──

 ここは天界ではないが、記憶のリミッターが外れている。


「実はね随分待ったんだよこれでもね。やっと連れて行ける最低限の条件はクリアした。既に君は特別な生物に成ったということだ。だから今なんだ。とは言え、まだ不十分だ。力を見せてもらう必要がある」


「力……ですか。見せられなければ?」


「記憶を消し、なかったことにするよ。そして、また何年か待つ」

「それは嫌だな」


「あははは。じゃあ、手始めに、ひとつ星屑を潰してもらうか」


「了解!」


 豹頭天使は、下卑た笑みを浮かべると腕を揮った。その途端、脳から血が引くような感覚に襲われ、意識が遠のいた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/09/28 誤字訂正

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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