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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
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218話 大攻勢

うーむ。章立て誤ったかなあ……。調整するかも知れません。

 非番になって出掛けたダトリーアの町は、湖に突き出した小さな半島にあった。

 半島を扼す付け根に城壁が築かれ、いわゆる後ろ堅固の城塞都市となっている。


 宿は、湖畔にあるセヴェレス亭というところだ。大貴族御用達のようで、客は個別の大きめの離れと、水辺を避けて囲うように使用人が泊まる小さな棟が建っている。


 宿代は高いだろうが、我が家の威信を示すためにも、持てる者が散財すべきという経済的原則にも合致しているので文句はない。

 同行は、ローザとアリー、セレナ、執事1人にメイド3人だ。


 なかなか豪華な調度の部屋だ。二部屋の寝室への扉がある。

 名物という山羊肉の蒸し焼きに舌鼓を打って、これまた当地の売りである白濁した温泉に入った。

 泉質としては肌に良い弱アルカリ泉とのことで、入浴を済ましたローザの顔は一際艶やかに光っている。


 ソファに座ってまったりしていると、アリーが身を乗り出す

「でさあ……ラルちゃんと、お姉ちゃんに話があるのよ」

 なんだ?

 アリーは広口の魔導鞄を膝に乗せた。ガマ口を開き手を突っ込む。取り出したのは、見覚えのある冊子だ。バッサバッサと数十冊も出して積み重ねる


「見合いの申込状だな」

「そうそう。ラルちゃんが見もせずに、モーガンさんに押し付けたヤツ」

「不要だからな」


「そうよねぇ。ディラン伯父様が男爵になってから、一段と増えたのはどうかと思うわよね」


 確かにな。

 縁談を持ちかけた者達は、親父が永代男爵を授爵されたので、その後継者である俺の子も男爵となると計算しているのだろう。側室でもうまくやれば、男爵の母となる可能性もあるからだ。


「それで、お姉ちゃんはどう思っているの? 側室は必要? 不要?」

「おい! アリー」


「側室は必要です! お義母様もそう仰っていましたし」

 むう……。

 確かに、ドロテア夫人(義母)もローザの誕生日に言っていた。我が(ローザ)と言うことで遠慮しないようにと。

 そういう訳ではないのだが。


「ラルちゃん。もしお姉ちゃんとの間に子供ができなければ?」

「その時は、ソフィーとその夫が継げば良い」


「いやいやいや。家や爵位の話じゃないって!」

「はぁ?」

「アリーの言う通りです」

「どういうことだ?」


 ローザとアリーの顔をまじまじと見直す。


「お姉ちゃんと私は、ラルちゃん自身の子孫を残したいのよ。できるだけ多く」

 ローザも肯いている。

 むう……二人で示し合わせたな。


「私の望みは、旦那様に健やかに過ごしてもらい、心おきなくお仕事をやって戴くことです。子孫は、その次です。皆がそう願っています」


 何だかなあ。

 確かに子孫繁栄は、貴族当主の義務だ。没落しない程度に子を増やすことは、内務省も推奨している。ミストリアの通念上もそうだ。王の藩塀を強化することだからな。


「ならば、多くの子をローザが成せばいい。無論俺も協力する」

「いやいや、お姉ちゃんだけじゃ限りがあるでしょ!」

 俺は種馬か!


「それにお姉ちゃんに子ができても、女の子ばっかりだったらどうするの? ラルちゃんは魔術師にさせるの?」


「そこまで心配するほど、まだ差し迫っていないだろう」

「差し迫ってるって、アリーちゃんはもう16歳だよ」

  

「それは今、関係ないだろ!」

「大有りよ! お姉ちゃんが、正妻だから許してるけど。お妾さんに気兼ねするなんて嫌だからね」


「アリーは、側室を持った方が良いのか、持たない方が良いのかどっちなんだ?」

 というか、何でずっと同居前提なんだよ、とは流石に言わない。


「決まってるでしょ!」

 ん?


「アリーちゃんを、お妾さんにすれば万事解決!」

 ああ、意識しないようにしてたのだが。その線か。俺がローザと結婚して諦めたかと思っていたのだが。言い分に矛盾はないが、頭を振る。


「だってさ、お姉ちゃんの子供もアリーちゃんの子供も変わりないでしょう、姉妹なんだし」

「いや、そういう話じゃなくてだな」

「お姉ちゃんは? お姉ちゃんはどうなの?」


「うーん……まあ、同じ側室を持たれるなら、アリーは悪くないわ」


 はっ?

 ローザの信じられない言に、まじまじと見る。


「旦那様も、知らない貴族の娘より、アリーの方が気心も知れていてよろしいかと」

「気心は……そうだが」

 どうしたんだ、ローザ。


「何? そんなにアリーちゃんのこと嫌いなの?」


「いや、嫌いってことはないが」

「でしょ!」

 フンすと鼻息が荒い。


「しかし。なんで、今言い出した?」

「なんで? この前、お姉ちゃんが具合悪くなったじゃない……」

「あっ、ああ」

 ボアンの町の話だな。


「その時、思ったの。妊娠したって!」

 まあ、俺もそうは思った。結局違っていたがな。


「で、これはまずいって思ったの」

「何がだ」

「妊娠したら、側室を持つ絶好機になるでしょ」

 まあ、奨める方は力が入るよな。


「あとお姉ちゃん。知ってると思うけど、夫の浮気は、妻の妊娠で始まるのは多いんだからね。ドリスさんが言ってた」

「うーーん」

 おい。


「とにかく、アリーちゃんは、ラルちゃん以外好きにならないんだからね!」


 そう俺に突きつけて、アリーは自分の部屋に引き上げていった。


「まいったなあ」

「でも、アリーの主張は真剣ですから、考えてやって下さい」


「ローザはそれでいいのか?」

「正直、あなたが私を妻にお求めになる前は、アリーと夫婦になると思っていましたし」


 うううむ。

 アリーは近すぎて、余り女性と意識したことがない。


「あなたが断れば、アリーは一生独身で居ることになるでしょう」


    †


 深夜。

 アリーは、むくっとベッドで上半身を起こした。


 瞼は開いているが白目。夢遊病のようだ。


「審査官!」

 彼女の唇は動いてないが、言葉を紡いだ。


「やあ、特務駐在員。久しぶりだね」

 何もなかった壁の前に靄が渦巻くと、像を結んだ。

 月明かりが、薄いレースカーテンを通して、豹頭の人影を浮かび上がらせる。


「報告をお読み戴いたのですね」


「ああ、要監視対象(ラルフ)が、遂に例の力を手に入れたと記されてあったのでね。居ても立っても居られず下界に来てしまったよ」

「ええ。とうとう条件が揃ってしまいましたね。阻止もできたかも知れませんが」


「それはどうかな、君も私も下界では力が制限されているからね。第一私はそれを望んで居たのだから、手を出さないでくれて嬉しいよ」

「はあ……私の任務はあくまで監視ですから」


「それなら良いが。婚姻を働きかけたのは、その所為かな? もっと要監視対象の傍に居る為に」

「否定は致しません。もっとも、依り代(よりしろ)の情動抑制を一部解除しただけで、彼女(アリー)の意思を違えているわけではありませんよ」


「ふむ。まあ余り弄りすぎると依り代が長持ちしなくなるからね。君も気を付けるといいよ」

「心得てはおります。ところで。長続きさせる必要があると考えてよろしいのですね」


「さぁーて。それは要監視対象次第だね」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/09/21 誤字訂正、加筆

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/01 見合いの写真→見合いの申込状,誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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