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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
11章 青年期VIII 新世界編
224/472

217話 非番と言えば

船系の経験者に訊くと当番と非番では色んなことが違うようです。当番だと酒に酔いづらいとか病気に罹りにくいとか。あれか! 連休初期に風邪引くやつ(小生)


──お断り──

章構成を見直し、この話(217話)を第11章の開始とします。

 7月となった。

 我が騎士団の月番が終わり、非番となった。


 月番はウチだけではない。よって前回の出動が終わってから、月番と言いつつも、今月はもう出動指令は来ないだろうと高を括っていたが。実際非番になるとやはり気分が違う。

 昨夜は、久しぶりにゆっくり寝たしな。


 1階に降り食堂に入ると、最近俺の睡眠時間を奪っていた人物が居た。


「ラルちゃん、おはよう!」

「おはようございます。御館様……じゃなかった、ラルフ君。おはよう」


「おはよう、アリー。おはようございます、エリザ先生」

 奪っていたのは無論後者の方だ。

 救護班の2人が並んで食事中……いや、既に食後のお茶段階だ。


 ふむ。ローザは居ない……魔感応によると公館に居た。とは言え、メイドも増えたので、不自由はない。座るとまもなく、いくつかの皿が運ばれて来た。


 スープを掬いながら、前に座っている2人を見る。出動先では、凜々しいのだが。この館に居るときには、2人とも自堕落娘だ。


「先生」

「んぐんぐ……何かな?」

 飲み込んでこっちを向いた。


「俺は進級できたんですよね?」


 そう。7月は学年の変わり目でもある。修学院も5日から新学期だ。

 もっとも俺は通う必要はないが。


 それを耳にした、先生が小さくあっと言う表情になった。


「なになに、ラルちゃん留年の危機とか?」

 アリーがニマっと笑いながら訊いてくる。


「もちろん進級だよ」

 んん? 先生の反応が何か怪しい。眼が泳いでるし。


「なーんだ」

 残念そうに言うな、アリー。それはともかく。


「ちなみに伺いますが、2日前に提出した論文。あれは、俺の評価確定に必要と仰いましたよね」


 10日前に突然そう言われて、慌てて書くことになった。だから、上級職と騎士団の執務が済んでから、夜な夜な頑張った訳だ。まあ本筋の研究とは違うが、軽い気持ちで資料を集めて実験して居た内容だ。よく言えばまとまりの良い、悪く言えば安易な着眼点で書いたので、30枚ぐらいで終わった。したがって、遺憾ながら会心の出来ではない。もう1週間あれば、考察に更なる深みが出せたのだが。


「あぁぁ、言ったねぇ」


 ますます疑惑が深まる。

 怪しいと言えば。そもそも、この時期の論文の話は事前にはなかったのだ。

 超獣対策特別職を引き受けたときに、修学院への登校不要と言うことになった。もちろん自主研究については、最終的に論文にして審査に合格しないと卒業資格は得られない。しかし、それは先の話だ。それ以外にも定期的に研究の進捗状況を報告する必要はあるが、それは5月末に提出済みだ。


「何の評価なんですか?」

 少し威圧を込める。


「ちょ、ちょ、ちょっと。顔が恐いから。ああ、あれよ……学位の評価かなあ」

「学位? なんのことですか?」

 神学者になるためには、学位が必要だが。


「うっ! いっ、いやあ、それはぁぁ……」

 動揺が隠し切れてない。

「ラルちゃん、ちょっと待って! あぁ、エリちゃん」

 そう先生を呼んだアリーがスプーンを置いた。


「なんです。班長!」

「永く、ラルちゃんと一緒にいるけど」

 何を言い出すつもりだ?

「ふんふん」


「とぼけても時間の無駄だから。さっさと白状して謝った方が良いよ。アリーちゃんは5歳の時に悟った」

 嘘付け!


「うぇぇぇ。光柛よ、お救い下さい」

 いや、あんた仮にも司祭だろう。


「それで?」

 さらに威圧。

「うっ、うぅむ。いやあ、院長がね」

 院長?


「なんか、王都(スパイラス)大学の学長と何かあったみたいで、ラルフ君は学位に十分値するとかいう話になって」

「そこの脈絡が、さっぱり理解できませんが」

「ああ、そうだよねぇ。私もそう思う……で、学位論文の合同審査会にねじ込んだと」

 修学院には、神学の教授は複数居るので良いのだが。魔術学の教授はエリザ先生しかいないから、審査会を組織できない。つまり、魔術学の論文については、合同審査会に掛けられる。


「はあ……学位論文合同審査会って、4月でしょう。それに、2年在学しないと駄目なんじゃないんですか?」

 俺は去年入学だ。


「ねえぇ……」

 いや、ねえって。あんたが言うなよ。


「まっ、まあ在学期間てのは、内規だし。ラルフ君の場合は、既に例外に例外を重ねているから、今さらって言うか。別に良いのよ」

 最後開き直ったな。


「はぁぁ。学位論文なら、もう少し題材を選んだんですがね!」

 少し語気を強める。


「いやあ、あれで十分十分!」


 進級に必要だから、簡単なのを適当にって言って書かされたから、不本意だ。

 まあ、それで学位が取れた場合だが。


「ラルフ君の研究内容。呪文に見られる術素の云々かんぬんとか、ああいう画期的過ぎるのは無理だから」

「はっ?」

「あんなの検証にどれだけ掛かると思う? 専門家が精査したって数年だったら早い方! 神学者が一生掛けてやるならともかく。学位が取れるのは、その時期になるわよ」

「その話は10日前に聞きたかったですな」

「うっ、ううう……でも時間は戻らないし」


「あらあら、朝からなんの騒ぎですか?」

 ローザが食堂に入って来た。


「確かに。時間は戻りませんね。でも、これからでも同じ効果は上げられますよ」

「えっ?」

「ああ、ローザ。1週間程、エリザ先生には食事を与えないでくれ!」

 ガクンとエリザ先生の顎が下がる。


「えっ? えーと。承りました。皆々旦那様の仰った通りに!」

「「「はい!」」」

 良い返事だな、メイド達。


「そんなぁぁ」

「司教様から、派遣された神職の方々の生活は、質素を旨とし、自活させるように言われているのですが」


「うっ、ううう」

 先生は塩を掛けられた野菜のように萎れた。

 教団の方針通り、金は渡さないけど、十分な食材は渡しているだろう。女子寮は共同厨房ついてるし、他の教団派遣の団員と同じように自分で調理しろよ。


「お取り込み中のところ……ラルちゃん。非番はどうするの? またエルメーダに行くの?」


「行くとしても月末だな。期間も長くは行かないだろう」

 やりたいことは数多い。


「ふーーん」

「なんだ? アリーはエルメーダに行きたいのか?」

 この前も付いてこなかったし、あそこには行ったことはないはずだ


「いや、そう言うわけでは……」

 だろうな。

 一族縁の土地ではあるが、マルタさんが居る実家でもないし。


「ごちそうさまでした……」

 消え入るような声で、先生が食堂を出て行った。


「ああ、先生の件、やっぱり3日間にしてやってくれ」

「「「はい!」」」

 飢死しかねない。


「ふむ。非番か……そうだな。ローザと少しどこかに行くか」

「まあ!」

「ちょ、ちょっと」


 アリーが思い切り膨れる!

 ギルドからの回復系魔術師の応募者も増えているようだが、前回の非番と違って救護班も形になってきた。まあアリーも少しぐらいなら空けられる。


「まあ、人員は考えるか……」


「やった!」

「ローザに一任する!」

「お姉ちゃんに?」


「そうねえ。ソフィアさんが居るから、本館の人員を残していくとして。何人連れて行こうかしら」

 そうだよな。男爵が普通にどこか行くなど、王都周りだと厳しいよな。

 1人とか2人とかは有り得ず、随行を10人ぐらい連れて行くのはざらだ。


「はい! はぁい! アリシア16歳、立候補します!」

「16歳……今回、連れて行くのは20歳以上です。残念でしたね」


 ローザ、目が笑ってないから。


 2日後。

 ラルフェウス男爵家は、7人と1頭の一行で王都を発した。

 向かうはダトリーア。風光明媚な保養地だ。


 3両の馬車は、朝発して夕方到着した。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/09/18 誤字、加筆、言葉尻など修正

2019/09/25 章を11章に変更。

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989 さん ありがとうございます)

2021/05/11 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
この物語、楽しいですね。 現在のランキングに乗っている日間10位以内の作品群と比べて、遜色ないどころか好きです。 無駄に苛立たせる様なザマァされるキャラが居なくて、個々のキャラが生き生きと動いている気…
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