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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
10章 青年期VII 非番と冒険編
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201話 こじ開ける動員の術

商売柄、何人も頭が切れる方にお目に掛かったことがありますが。やっぱり凄い人は発想の転換ができる人ですよねえ。憧れます。

 親父さんに呼ばれて応接室に行ってみると、立派な体躯の男が居た。


「おおう、ラルフ様」

「バロックさ……バロック、久しぶりだな」

 ついつい昔の呼び方になる。


 立ち上がって、握手してきた。


「いやあ。お活躍でやすな。この辺りでもお名前が轟いておりやす」

「ははは」

「いつまでこちらに」

「ああ。あと3日位で、王都へ帰ろうかと思っているが」


「そうなのか?」

 意外にも親父さんが反応した。残念そうだ。主にソフィーを連れ帰るのが嫌なのだろう。


「ええまあ、そう長く王都を空けるわけにも行きませんので……」

 本当はそんなこともないが。

「では、近いうちに王都のお館にお邪魔しやす」

「わかった」


「ああ、いつ帰るかはまた後でな。それよりバロックに来てもらったのは、頼みがあるのだ」

「アッシにですかい。何なりと仰って下せえやし。ディラン様」


「うむ、実はな。鉱夫が俄に足りなくなってな」

「鉱夫でやすか?! 新たに大理石の鉱脈が見つかったとは聞いておりやすが。そちら関係でやしょうか?」

「流石、耳聡い。その通りだ」


 うむ。親父さんが考えがあると言ったのは、やはりバロックさんの線か。


「そうでやすか。差し当たり、どの程度の人数でやしょう?」

「うーん、遠慮なしに言えば1000人、500人程は欲しいところだだ」


「ううむ。1000人でやすか……」

 眉間に皺が寄る。


「石材を扱う鉱夫は、なかなか専門性が高いでやすから……正直申しやして、かけずりまわりやしても、やっと100人ってところでやしょうか」

 確かに。石炭や鉄鉱石とは違って、石材は掘り出す形や大きさが価格に影響する。特別な技術が要求されることは想像に難くない。100人集まるだけでも大したものだ。

 そもそもバロックさんが得意なのは、農業系人材だからなあ。


「でも、アッシに仰ると言うことは、ヴィクトール商会とは不調なんでやすよね」

 親父さんを見る。


「そういうことだ」

「ふむ。彼の商会は、領主変われど方針は変わらずでやすね」

 これについても、バロックさんは承知しているようで、忌避感を漂わせる。


「そこでだ! 集めてもらうのは、人族でなくとも構わない」

「むぅ……」

「無論、ドワーフ族やホビット族が最初から勘定に入っているのは承知の上だ。だからコボルト族でも構わない」


 コボルト!

 流石は親父さん。気が付いていたか。

 確かにコボルトは、採掘技術が高い。岩を割る技術もだ。行き詰まったら提案しようと考えてはいた。ただ……。


「コボルトでやすか……」

 バロックさんは眉間に皺を刻み、俺と親父さんを見遣る。

「……前代未聞ってやつですなあ。考えたこともありやせんでした。うーーむ。とは言うものの。大体やつらとは言葉が通じやせん。それに頑固だ。なかなか人の言うことは聞きやせん。泣き言は言いたくねぇでやすが。雇うなんざあ至難の術ってやつでさぁ」

 だよなあ。


「数が増えているのではなかったか?」

「へえ。ウチで働いているドワーフによるとツァルク村に居る数が、以前の倍位になっていると言ってやした……」

 シュテルン村の隣村だ。ああ、一悶着有ったな。俺が11歳の頃、中等学校に上がる前の話だ。


「ですが、多くなればなるほどまずいことも」


「確かにな。スワレス領全体でも増えているという話でな、スワレス伯爵様も手を焼いていた。移動してきたコボルトには、財産がない、無論土地がないし、生業もない。伯爵様も援助はしてきたが、数が多いからな、我が男爵領には100弱、伯爵領では1000以上、近隣の諸領を合わせれば、2000弱は居るという話だったが」

「ほう!」

 それは驚いたな。


「ほうって! ラルフ様が集めたようなものでやすぜ!」

「んん?」

「いやいや、ここには天使様がいるって噂になりやしてね。集まってきてるんでやすよ。その天使様とはラルフ様のことでやすぜ」

「なんだと。どういうことだ」

「確かに、それは聞き捨てならないな」


 そう訊かれたバロックが興奮している。

「あれですよ、あれ! 4年位前、近隣の農民とやつらの諍いを納めたときのことでやすが。頭に光の輪ができてたって言ってやした」


 ああ。あれか。

 俺の体内を循環している魔束が漏洩して、まるで燐が燃えるように光っているようだ。部位で言えば髪、状況で言えば魔術を使うと光が強くなってしまうのだ。別に俺だけではなくて、程度の差はあれ、魔力上限値が高い者は共通しているようだ。

 光神教の洗礼を受けたとき、そういうことが希に起こると、司祭様が仰っていたのはそう言うことだ。


 今は体内循環魔束を制御できるようになっているから、非常時以外はそれを意識して抑えてはいる。が、4年前はやってなかった。昼間は目立たないが、あの時は夜だったしな。それにコボルトは、穴の中で暮らす習性上、光に対する感度が高いから、よく見えてしまったのだろう。


 親父さんが俺を見る。


「まあ、アッシもドワーフからの又聞きでやすが。それがコボルトの間で噂になってるそうで」


 ああ、基礎学校の頃は、あの近くに行く度に少し寄っていた。中等学校に上がってからは、とんと行っていなかったが。


「うーむ。それで集まってきているとはなあ。まずいな」

「と、仰いますと?」

「コボルトは、基本温和で実直だ。言葉が通じず先住民に虐げられても、今のところ暴動などは起こしていない。しかし、収穫前の時期だ。食糧事情は決して良くはない。大人しいと言っても、飢えれば話は変わってくる」

 うーむ。


「わかりました」

「ん? 何がだ、ラルフ?」


「何とかしてみます」

「へへへ。ラルフ様が出張って下さるとなりゃあ、このバロックも一肌脱がねえと、でやすな?」


   † † †


 明後日。ツァルク村に来た。

 開けた荒れ地の端、土魔術で高さ2ヤーデン程の舞台を造った。

 今は、その後ろに居る。


 あぁ。結構集まっているな、コボルト。

 コボルトは亜人の一種だ。背は成体で1.3ヤーデン程で、ホビットと変わらないが。見た目よりは腕力がある。外見の特徴としては、耳が大きく、鼻筋が突き出しているので、昔は犬系の亜人と思われていた。同族意識が高く穴の中で集まって暮らすことが多い。

 独自の言語を話し、人間の言葉を解さない為、知性は低く見られているが、俺としては亜人の中ではそこそこだと思う。

 性質は臆病で温和だが、頑固な面もある。人間との意思疎通は、通常ドワーフやホビットを介して行う。


 そのコボルト達は、5レーカー(2ha)余りの場所に、ざっと1000人は集まっている。ここで集会をやると言ってから2日しか経っていないのだが。


 スードリに宣伝させたからな。しかし、コボルトまで動員できるとはな。正直感心した。おそらく、話ができるドワーフに頼んだのだろうが。俺ですらどれだけ配下や関係者を抱えているか知らない。


『知らない方が宜しいでしょう。御館様は、ただ使えば宜しい』

 以前ダノンはそう言っていたが。


 ああ、遠巻きに領軍の騎兵が見えるな。とは言っても数十騎しかいないから、力で制圧する気はない。不測の事態に備えてという感じだ。


 昨日、ソノールへ飛んで、今日のことは伯爵様に許可は得ている。

 

「ラルフ様、刻限でやす。よろしいでやすか」

「ああ」


 その時だった。

 向かって左の方が、一気に騒がしくなった。


 聴覚を強化!


「᱕ᱚᱦᱵᱛᱧᱶ᱑᱔ᱴ ᱫᱵᱠᱪᱵᱯᱫ ᱨᱥ᱒ᱶᱪᱴ᱒ᱫ᱘」

「ᱥᱜᱡᱧᱠᱲᱯ᱖ᱝᱳ ᱭ᱙ᱤᱯ ᱑ᱩᱯᱟᱧ ᱲᱴᱫᱯ ᱭ᱗ᱥᱞ᱔ᱰᱠ᱓」


 意識するとコボルトの言葉の意味が伝わってくる。


【嘘っぱちだ! 天使なんか居ない!】

【デタラメ ダ! 俺 ムカシ 天使サマ 見タ!】


 騒ぎの方を良く視ると、コボルトの中にドワーフが居る。

 少し流暢な喋りの方だ。


【騙しているんだ! お前らは 殺されるぞ!】

 ふむ、煽っているのはドワーフか。


【ウルサイ! 俺タチ 天使サマ 見ニキタ ジャマ スルナ】

【【【ソウダ! ソウダ!】】】


 見渡すと、何カ所かで同じような光景が見えるが。どこも扇動はうまくいってないようだ。とは言え俺も気が重くなった。


「ラルフ様、おおっふ!」

 バロックの呻きは、俺の横に急に人間が数人現れたことに息を吞んだのだろう。現れた者達は一斉に跪く。


「ああ、彼らは手の者だ。怪しい者ではない。で?」

「ドワーフが、妨害工作を図っております。如何致しましょう」


「うむ。考えがある。手を出すな!」

「よろしいので?」


「ああ。ただし、ここでの事が済んで、やつらがどこへ行くかは確かめてくれ」

「委細承知!」


「おぅっ! 消えた! なっ、何でやすか。彼らは?!」

「まあ、ああいった者達も必要と言うことだ」

「はぁ……」


「では行くとしよう!」


光翼鵬(アーヴァ・ガルダ)!!】

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/07/20 バロックの一人称「あっし」→「アッシ」

2019/08/17 中程の名前間違い,ダノン→バロック (ID:1133937様ありがとうございます)

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