19話 魔獣使い(テイマー)への道 2章本編最終話
今日ももう1話投稿します!……在庫が(汗)
新AIBO、いいなあ……
夕食の前に、帰って来たお父さんに報告だ。
居間のソファに座って向かい合う。
「おとうさん。僕、1年1組に入ることになりました」
「おお、そうか。それはよかったなあ……で、アリーは?」
壁際の椅子に座っているアリーの方を向く。
「はい! ラルちゃんと同じ1組になりました」
「そうか。それはよかった」
お父さんが、僕とアリーの頭を撫でてくれた。お母さんも、横でうんうんと頷いている。
「子供の頃は、よく遊び、よく学べだ! どっちも励みなさい」
「まあ、あなたったら」
「それから、1組がたとえ優秀な子が集まった学級だとしても同級生だ。自信を持つことは大事だが、他の学級の生徒を見下げるようなことをしては駄目だぞ。アリーもな」
「はい!」
「はい!」
「それでだ。ラルフに渡すものがある」
親父さんが、鞄を開けて手を突っ込んだ。
なんだろう?
「セレナの登録票だ! いわゆる鑑札ってヤツだな」
革の帯に、長円の真鍮板が付いている。帯の端には金具が付いて、もう一方の端にはいくつも穴が開いている。輪の径が調整できるようだ。
「ありがとうございます。お父さん!」
しっかり礼を言って受け取る。
金属板には、スワレス伯爵領、従魔登録票と3種の番号が書いてある。魔狼、牝、青白毛、金瞳。
そう、牝なんだよね……。
「うむ。それを着ければ、外に連れ出せるぞ」
「うん。うれしいよ! だけど、あのう、随分早かったけど、仲間の人に無理を言ったんじゃ……」
「ははは! 子供は細かいことを気にするな!」
豪快だなあ、
「ああ、担当から言付けがあった。首輪だが、最初は大体の魔獣や獣は着けられることを嫌がるそうだ」
「では。どうしたら?」
「そうだな、それを作った職人に拠ると……」
「拠ると?」
「ああ、いや。答えは、自分で探ってみなさい。その方が楽しいし、身になる」
親父さんは、相好を崩して、僕の頭を撫でた。
「はい。お父さん」
†
食事が終わり、自室に戻る。
また、セレナが箱から顔を出した。
【ママ ママ!】
口をワフワフさせながら、僕を呼ぶ。
ここ数日で、大体思考が分かるようになってきた。
近づいて、頭を撫でてやる。
興奮が盛り上がる。
「ワフワフワフ……」
だけど、大きな声では吠えない。いつもの行っとこう。
【ラルフ! 言って!】
【?】
【ラ・ル・フ】
「ワワフ【ワルフ】」
惜しい。
発音は無理そうだけど、思考の方は近づいている。後は、飽きさせないように学習有るのみだ。近くなったときは、 喉元と耳と顎の辺りを擽るように引っ掻いて喜ばせる。
【ラルフだ!】
「ワワフ!【ラウウ】」
おっ、あと一歩。
「ワワフ!」
【おお……できた】
【デキタ? ママ ホメテ!】
【おお偉いぞ! セレナ!】
……ん? あれ?
ラルフという言葉は覚えたが、ラルフが僕のこととは思ってない。
「よしよし。偉いぞ」
しかし、着実に進歩はしてる。全身まさぐってやると、何かうっとりとした表情になった。
【キモチ イイ!】
舌を出してハアハア言いながら興奮している。
僕も凄く楽しい。もう少し毛が伸びたら最高だろうなあ。
そのまま、ワシャワシャと前脚の付け根から脇腹を揉み込んでやる。
【ハァァァ】
床でグテっと腹を見せて横になって恍惚となっている。そうだ、今日はもう1つやるべきことがあったんだった。
今が好機だ。
首輪を取り出して、セレナに押し付けて擦る。
僕の動きを気にするが、今は警戒感が下がっている。一頻りゴシゴシとしたが、どうだろう。
【ナニナニ?】
だんだん僕がやってることが気にしだしたところで、擦り付けるのを一旦やめて嗅いでみる。うーむ。まだ元の革の臭いが強いな。
そうだ!
木の箱の中に敷いている布を取り出して、首輪を擦りつける。これもセレナの臭いが強いからな。どうだ?
おお。臭い……行けるかな。
「ほーら、セレナ」
首輪を少し離して、見せてみる。
一瞬びくっと首を縮めたが、ゆっくりと伸びた。少し首輪を揺らすと、視線が頭ごと付いてくる。臆病だけど好奇心は強いみたいだ。
【ナニ ナニ タベルノ?】
ゆっくりと顔のすぐ前に持っていく。
すんすんと鼻を鳴らしながら、臭いを嗅いでいる。とりあえず嫌いな臭いではないようだ。
1分程、そうしていたら口を開けて、ぱくっと噛んだ。と言っても、セレナにまだ歯は生えていない。歯茎に少し堅いところがあるから、もうすぐ歯が生えるそうだ。
留め金を外して、輪から伸ばす。眼がずっと首輪を追っている。
【良い仔にしてろよ】
頭を撫でながら首に回す。
【ナニ? ナニ?】
気にはしているようだが、大人しいもんだ。賢い仔だ。
留め金を掛けて、装着完了だ。
前に、鑑札がゆらゆら揺れて光る。これ付けてないと駄目だからな。外に行けないし。
【ウーーン】
後ろ足で、首輪をゲシゲシと叩いているが、それぐらいでは外れない。
5分ぐらい、時折そうしていたが。諦めて受け入れたようだ。
同じように、引き綱も付けてみたけど、あまりこちらは気にならなかったようだ。
「じゃあ、外行ってみるか」
【ナニ?】
【外だ!】
【ソト?】
セレナを抱き上げ、そのまま庭に出た。
お母さんが好きで、芝生を育てて世話してる。おじいさんの家と比べると、所々ムラがあるけどね。
久々の外の光景に、興奮しているようで、時折ピクピク脚が動く。
ゆっくりと降ろしてやると、自分の脚で立って歩き始めた。時折芝の葉に鼻を突っ込みクンクン臭いを嗅いでる。
おおぅ犬ぽい!
犬は狼が人間に飼い慣らされて、変わってきた種なんだから当たり前か……セレナは魔狼だけど。
「ファン! ファン!」
【ココ スキ!】
セレナの思いが流れ込んでくる
上機嫌のようだ
「脚ちゃんと動いてるね」
「わっ、びっくりした!」
「キャン,アン!」
「ごめんごめん……もう! アリー、気配消して近付かないでよ!」
びっくりして飛び退いたので、セレナの引き綱を引っ張っちゃったよ。頭を撫でながら宥める。最近この魔術を憶えたので、調子に乗っていたずらしてくる。周りを気にしてると分かるけど、他のことに集中してると気が付かない。
「ふん! ラルちゃんは、最近すぐ1人で遊びに行っちゃうしさ! アリーちゃんも付いてくの大変なんだよ!」
「いや、付いてこなくて良いでしょ!」
「はぁあああ?」
アリーの中では、付いてくるのが当たり前みたいだ。
おっと、引き綱が引っ張られた。セレナは嗅ぐのが飽きたのか、いつの間にかグルグル歩き回り始めた。速度が上がる。
「走った! セレナが走った!」
あの河原の上流で助けた時は死にかけてたのに、今では凄く元気になった。よかったぁ。
「そりゃ、走るでしょ。狼なんだし」
感動が薄いよな、アリーは。
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訂正履歴
2019/01/17 誤字(ID:774144さん,ありがとうございます)
2022/10/05 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)