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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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188話 来た 見た 勝った!

想定外の出番てのはままあるもので、その時に慌てず騒がずやれる人は結構得がたい資質だと思います。

 超獣が宙を舞った。

 2000ガパルダ(1500トン)を越すだろう巨体がだ。

 俺が放った黒き球体が跳ね飛ばしたのだ。

 

 魔力を運動量に変換する魔術。

 それゆえ障壁を破る衝撃はない。が、慣性を無視した初速度を得て、数十ヤーデン飛んだ。そして落下、大地が同心円に波打った。木々がちぎれんばかりに揺さぶられる。


 凄まじい破裂音と打撃音が重く轟く。


 馬鹿な!

 ペルザント卿が投入した魔力を上回っては居ないはずだ!

 なぜここまで威力が? そう脳裏では訝しみつつも転がっていく超獣を飛行追尾する。


 ここが領都からはまだ遠く、見渡す限りの牧草地や荒れ地でなければ大惨事だったかも知れない。無論、だからこそペルザント卿も策戦したのだろうが。


 魔力消費に対する効果は意外だったが、この機を逃す手はない。


黒南風(フォラータ)!!】


 注意深く極々僅かな魔力のみを投入して無詠唱で発動。

 それでも魔導球が弾けると、面白いように褐色の超獣が転がり続ける。濛々たる土煙が数百ヤーデンも巻き上げ、棚引いて行く

 人間なら、それだけで死するであろうが。超獣は堅い、その上幾重もの魔導障壁が覆っている。しかとは見えぬが、傷一つ付いていないだろう。


 右に逸れれば左を撃ち、左に反れればその逆と、続けざまに魔導球を放ち、超獣を西へ西へと運んでいく。


 潮時だ?!

 ペルザント卿の陣地からも、ローザからも2ダーデンは離れた。これ以上転がせば、人家が間近くなる。


 一気に飛行を加速し、超獣の前に回り込む。

 転がりの速力はだいぶ落ちたが、真っ直ぐこちらへやってくる。


穿(エッド・)(グラーベ)!!】


 土響きと共に大地が、凶悪なるその顎門を開いた! とは、後世の筆に拠る。


 ともかくも我が目前に、直径深さ共100ヤーデンの大穴が突如として穿たれた。

 そして狙い違わず、超獣が転がり落ちると一際デカい地響きが(どよ)もす。


 狙い通り!

 ここまで来れば撃滅あるのみ。


 行使するは──


竜爪白炎(フラムナグ)──】


 光を奪い去るように、俄に辺りが昏くなる。


 刹那、光の紡錘が生まれた。

 息を吐き腕を広げると、膨大な魔力が流れ出た。


 輝きの上下端が鋭く伸びて、遙かに見上げる程に屹立していく。


 流石は限定解除上級! 背筋から脳幹に戦きが走り抜ける。


 ここまでは、発動したことがあるが……これは実戦だ。

 光錐が眩くなり2本に別れた。


 まだだ!

 夥しい魔力を投入し続けると、3、4、5本と別れる。

 俺の周りを籠のように取り囲み、唸りを上げて廻り始めた。


【──開華(ブルートゥ)!!】


 脳裏で思念を終えるや否や、発光錐が俺の頭上へ舞い上がった。

 紡錘の下端が集束し、錐の如く形を整えるや。


 墜ちた!

 轟と大気を揺らし、狙い違わず大穴へ突き刺さった。


 不可視であった障壁が何枚か吹き飛び甲高い音を響かせる。

 さらに螺旋に錐揉むと、白き炎となりて渦巻いていく

 次々と割り進み一際盛大に破片を捲き散らせた。


 キッシャァァアアアアァァァァ・ァ・ァ……


 断末魔が力なく途切れた。声が聞こえたと言うことは、障壁がなくなったということ。


 炎の錐はゆるりと止まる。


 瞬く間に──

 まるで血を吸い上げる灯火の如く、深紅に燃え上がると解れるように広がった。


 華。

 炎が象る華となった。

 禍々しいモノ達の魂を刈り取る、美しき華が開花した。


 美しい──


 想像していたよりも華々しい。ローザに見せてやりたかったなあ。


 身惚れていると、華諸共に超獣が弾けた。

 光粒子が尾を引いて散っていき、俺が居るところの寸前で滅した。


 ああ。どうやら斃したらしい。

 見下ろすと、穴の中が赤黒く光っている。土や岩が熔けたのだろう。300ヤーデンは離れているここまで輻射が届いている。


 さて……来たか。

 散ったはずの光粒子が穴の上空に再び現れ、凝集していく。

 すると1分を待たずして、薄紅色の魔結晶が紡がれた。

 間際まで飛んで行く。


 透き通った雲が歪んで見える。

 

「デカいな……」

 両腕でも抱え切れないな。


 だが問題ない。右腕を一振りすると、魔結晶は収納された。


伝声呪(パルレ)!】

「ああ、聞こえるか!? 騎士団前衛隊!」


   † † †


 お館様の通信に従い、私達は地下壕に籠もった。私は一番奥だ。

 横には、救護班のラース女史、トラと勝手に呼んでいるトラクミルと続いていき、口の方にはローザ奥様がいらっしゃる。

 青狼のセレナは偵察のため、外へ出ている。


「おい、ゼノビア!」

 小声でトラが話しかけてきた。


「なによ? トラ!」

 私も小声で返す。


「トラって……お館様は大丈夫だろうか?」

 なるほど、声を落としたのは奥様に気を使ったのか。


「大丈夫に決まっているわよ! トラは信じていないの?」


「まっ、信じてはいるが……さっきの尋常でない音に地響きだぞ!」

 言う通りだ。生きた心地がしなかった。しかし。


「お館様ね。シュテルン村では天使様って呼ばれてたのよ。全然問題ないわ!」

 ツーンと右を向く。

 そうとでも思わなければ、正直やってられない。

 あのおぞましい程の魔力を放つ超獣相手なんだから。


「天使様なあ」

 知ってか知らずか、トラはのんきにそう独りごちた。


 ん? 入り口に。

「セレナ! どうでした?」

 青狼が戻ってきた。


「超獣 遠く 行った もう 大丈夫」


 はあぁぁ。思わず溜息を吐いてしまった。

 この子は、トラの百……は言い過ぎね、十倍は頼りになる。後でまた、毛を梳いてやろう。しかし、ますます流暢に喋るようになったわね。お館様の従魔だけど聖獣と言うのは本当のようだ。


 その聖獣様の言に従って外へ出ると、土埃が数ダーデンの彼方まで続いているのが見える。

 防御魔導器がある、これだけ離れれば、たとえ超獣が昇華しても衝撃波でやられることはない。


 ああ、私のことなどどうでも良かった。

 お館様は、どうやったのか? どうやってあの遙か彼方まで、超獣を運んだのか?


 壕に入ってから5分程しか経って居ないというのに。あのペルザント卿を以てしても、1度に数十ヤーデンずらしただけだ。大きく逸れたのは超獣が、嫌って自ら転進したのだ。今はそんな暇はないはずだ。


 その時、ドーンと遠雷が落ちるような音が響き、地も大きく揺れた。


「なんと!?」

 驚いていると……


「おい、あれを!」


 トラクミルの声に西を見遣ると、空がかき曇った。

「なんだ、何が起こっているんだ?!」


 曇っただけには留まらず、昏く陰って行く。

 魔術! それもとびきりの。上級魔術というのは分かるが。


 なに? この桁外れの魔力は? 

 恐ろしいばかりの魔界強度は、ここに居ても伝わってくる。


 不安が私の心を曇らせ始めた頃、眩い光の塔が生まれた。魔術の光だ!


 それがさらに高く舞い上がると、真っ逆さまに地へ刺さった。


 恐ろしく眩く輝いた後、瞬く間に赤く燃え、数秒の後に光が弾けた。

「うわっ! 昇華か?」


「違うわ」

 奥様が誰にともなく呟いた。確かこの人は、あの超獣の昇華をお館様と見たそうだ。


『ああ。聞こえるか!? 騎士団前衛隊!』

 魔導具が喋った! 御館様の声だ!


『超獣は俺が斃した! 繰り返す、超獣は俺が斃した! 今から帰投する!』


 超獣を斃し、そしてご無事だ!

 信じがたいことだが、お館様が嘘など仰るはずはない。それにあの魔術。

 我知らず、喚声を上げていた。何度も喉を痛めんばかり叫んでいた。


 皆が喝采し騒ぐ中、独り端然と佇む女性が目に入った

 奥様だ。


 ふうと息を漏らして、肩を少し下ろした。流石に安心されたのだろう、セレナの頭を撫でていらっしゃる。

 それにしても、この人は19歳。女の私から見てもとんでもない美形だ。毅然とされているが、物腰も柔らかいし。5歳も年下なんてね笑うしかない。


 私も、魔術師なんかやっていなければ、今頃……。


「あなた……」

 奥様の呟きに、空を見る。

 

「おっ、お館様だ! お館様が飛んで来られた」


 おお。翼はないけれど、何やら頭上が輝いていらっしゃる。


 本当に天使様だ!


 私は、ちぎれんばかりに腕を振っていた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

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訂正履歴

2019/06/04 誤字訂正(ID:209927 さんありがとうございます)

2021/05/11 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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