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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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186話 率いる者の

上司には気を配りますが、上司は上司で部下に気を使って居るんですよね。無論個人差はありますが。

 教会を後にして、土塁の外の騎士団拠点に戻って来た。


 暑いな。

 傍の街道に蜃気楼が上がっている。

 ここは遮る物がないのだが、風もない。


「お館様、お帰りなさいませ」

「ペレアス。ご苦労」

 待ち構えていた男に声を掛ける

「そうだ、用があると訊いたが? ああ、ボルソルン! 悪いが、バルサムを呼んで来てくれ。彼はあの角のゲルに居る」


 30ヤーデン程離れた場所を指差し、警備に立っていた団員に頼むと、走って行った。

 いや走らなくても良いんだが。


「まあ座れ」

 ゲルの入口前に張られた天幕(タープ)の下に入る。


 ふう。

 標高が高いだけある。陽光を遮るだけで爽やかさがやってくる。

 椅子に腰掛ける。


「ペレアス殿も、紅茶でよろしいですか?」

 回り込んでローザは、お茶を淹れ始める。

「あっ、ああ。お構いなく」


「それで……?」

「ああはい。あのう、ペルザント卿は拠点を動かされましたが」

 何か提案があるようだ。


「ウチの騎士団も動かした方が良いと?」

「はい。ああ、補給担当の私が差し出がましいことを申しまして」


「いや。軍事からだけでは見えない部分が出て来る。その点、商売、経済というのは物も動くが情報も動く。今後も遠慮なく申し出てくれ」


「はい」


 その時、大きい陶器のティーポットを、ローザが運んできた。

 中は茶が満杯なんだろう、輻射熱が来る。

 俺の前のテーブルに置いた。


「お館様、お願いします。既に砂糖は入れましたので」

「ああ、分かった」

 またローザは中に入って行った。


「えーと。何をされるのでしょう?」

「んん……ああ」


氷晶(クリオス)!】


 足音が来た。


「お館様。お呼びだそうで」

「ああ、バルサム。座ってくれ……ああボルソルン。少し待て」

 案内が終わり、立ち去ろうとする彼を呼び止める。


「ボルソルンも暑いでしょう? 飲んで行くと良いでしょう」

 ローザが、お盆の上にカップを5脚持ってきた。

「はっ、はい」

 ボルソルンは、バルサムが肯くのを見て返事した。


 茶器をテーブルの上に置くと、ポットから注ぎ始めた。

「どうぞ」

 カップを摘まむと、ゆっくりと飲む。


「では、遠慮なく。おっ、なんと!」

 ペレアスは変な声を出すと、注ぎ終わったポットに触った。

「さっ、さっきまで熱かったはずなのに」

 そう。紅茶を冷やした。

 暑いからな。


「お館様、あまり余分なことに魔力を……」

「お頼みしたのは、私です……ああ、美味しい」

 バルサムの諫言に、済ました顔で返したローザが茶を喫する。


「とっ、ということは。これは魔術……詠唱なしで?!」

「あの時もな」

「そっ、そういうことだったのですか。なるほど、なるほど」

 

 ペレアスが、俺を以前庇ったことが間違いだと分かったようだ。そして笑った。


「それで、ご用とは?」

 バルサムだ。


「ああ、本営を分ける。大部分はこのままだが。そうだな、ローザとセレナの他はゼノビアと戦士3人で良い」

「ふむ。移動先は、ペルザント隊の陣地でしょうか?」


「うーん。いやその南2ダーデン位が良い」

「すぐに手配しますが……」


「ん?」

「救護班からも一部人を割きます」

「ああ、任せる」


「では。奥方様。ご馳走様でした。ボルソルン、休憩は終わりだ」

「はい」

 俺とローザへ会釈すると、門番へ戻って行った。


「やはり、拠点移動の件は御念頭にあったのですね」

「まあな。とは言え、今後も思うところがあれば言ってくれ」

「承りました。では私も領都へ戻ります」

「うむ。ご苦労」

 ペレアスは、天幕を辞して行った。


「中に居るのか?」

 ローザは、マジマジと俺を見た。


「分かるのですか?」

「ああいや、気にしていないと分からないが」

 持ち上げたティーポットを揺らしてみせる、ポチャっと音がした。

「まだ一杯分残っているからな」


「まあぁ……私としたことが抜かりました」


 ゲルに入ると、絨毯の上でスードリが跪いていた。奥にはセレナが寝そべっている。

「ご苦労……ここは、暑いなぁ」


 むっとした雰囲気だ。

 さっきの魔術を使って、室温を下げる。後からカップを乗せたお盆を持ってローザも入って来た。


「お館様、この辺で」

 低い声が響いた。


「ああ、済まん済まん。スードリは冷えるのは嫌いだったな」

 黒衣の人物は肯く。結構暖かめで止める。



 どうぞとローザが、スードリにお茶を出しかけ。

「ああ……お茶も熱い方が良かったですか?」

「ああいえ、奥方様。そちらを頂きます」


 スードリが一服喫するを待って、話を切り出す。


「それで、領都の方はどうだ?」

「はい。皆、超獣が近づいて居ることは知っておりますが、大きな混乱はありません。伯爵様も古強者のペルザント卿に、新進気鋭のお館様が戦列に加わって戴き安堵した。ダノン殿によろしく頼むと仰っていました」


「外交辞令が言える程度には、領都も平静ということだな」

「はっ!」


「分かった。ああ、今日教会に行ったか?」

「いえ、まだです」

「そうか。行ってみると良い。スードリの宣伝のお陰で大賑わいだ」

「やり過ぎましたか?」


「いやそんなことはないぞ。まあ、大したことがない者でも教会には来ていたがな」


 そう、無料で救護が受けられる。

 それ自体は凄いことだが、情報が行き渡るには時間が掛かる。こんな田舎だ、立て札を立てれば自然にという物ではない。短い期間内で効果的な活動するには、それを知らしめる必要があるのだ。第一、田舎の民衆は因習に囚われ、新しい事物に飛び付きづらいからな。


「監察官の方は?」

「朝からは大きな動きはありません。ご存じかとは思いますが、4人がペルザント卿に付き従っています」


「そうか。では俺も移動するとしよう。いくら手出しができないと言っても、のうのうと離れた村に居たでは、外聞が悪過ぎるからな」


 首から提げた魔導具を弄る。監察官から預かった10個の内の2つ目だ。


「それから……」

 ん?

「ダノン殿からこちらを預かりました。どうぞ」


 スードリは、封書を2つ差し出した。


「うむ」

 受け取って、目を上げると既にスードリは居なかった。


 何時の間にか飲み切っていたカップを取りにローザが寄ってくる。


「どなたからでしょう」

「うむ、親父さんとモーガンからだ」

「父上様からですか」


 まずは親父さんの方から封を切る。

 何々……。

 げっ!


「この書状をスワレス伯爵領から出したのが3日前。そこから4日後に着くと書いてあるから明日だ。男爵叙爵式典のために、お袋さんと王都館に来られると書いてある」

「まあぁ。しかしながら先程まで封が……」


 ローザの眉根が寄る。返事ができないなということだろう。

 モーガンからの手紙も読む……やはりな。


「ああ、モーガンへも親父さんから同様の問い合わせがあったそうだ。勝手ながら承諾したと書いてあった」

 表情が緩んだ。

「それはようございました。しかしながら、何のお持てなしもできませんのは、心苦しいですわね」


「ああ、モーガンに任せておけば安心だ。それに、俺が居なくてもソフィーが居れば問題ないと思うが」

「そんなことは……」


 ローザは微笑みながら否定しているが、内心は同意のようだ。


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。



Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/05/25 スードリに2回茶を出した記述になっているので、その記述周りを訂正。

2019/05/27 「バルサムの済ました顔で、ローザが喫する。」→「バルサムの諫言に、済ました顔で返したローザが茶を喫する。」

2021/05/11 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/05/24 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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