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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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184話 斃すだけが

百戦百勝は善の善なるものに非ず(孫子)。敵が人間ならそうでしょうね。

 日が昇る。

 夏の盛りだが朝夕は肌寒い。ストラバリ(ここ)の標高が高いからだ。


 んんん……。

 ゲルを出て伸びをしていると、後ろから近付いてくる物が居る。


「おはようございます。お館様」

「ああ、おはよう。ゼノビア」

 騎士団の女魔術師だ。


「あのう……昨日の15時くらいから、攻撃はされていないようですが?」

「ああ。超獣ゲランについては、撃ち滅ぼすより昇華までの時間を稼ぐことが、基本方針だそうだ」


「はあ。随分まどろっこしい話ですね」


 付き合いは短いが、何時も朗らかにしているゼノビアにしては、憎々しげな表情を浮かべている。


「どう言う意味だ?」

「ああ。やはりアイツらは、町……極言すれば王都さえ良ければ、村の人々などどうでも良いのだなと、改めて思っただけです」


 はっとしてゼノビアを見遣ると、すっと細身の身体を翻した。


「私は、お館様の生まれたシュテルン村の隣、インゴート村出身なんです」

「インゴート」


「はい。父と母は、373年に超獣に殺されました」


 あの時、俺達が駆け付ける前に数十人の死者が出た。フェイエ君の家族と同じ列か。

 そう、全ての人々を救えたわけではない。



「それは──気の毒だったな」

 ゼノビアは俺より9歳上の24歳、当時は17歳か。

 スワレス伯爵領屈指のゼノビア程の魔力上限値なら……変だな。


「私は──幸か不幸か領都に居りましたので難を逃れました。お館様のことを知ったのは、それから少し経ってからです」


 そういうことか

 ローザを昏倒させ、アリーを瀕死に追いやった魔導爆発で、過ぎ越したのは、そういうことか。あれは魔力が強い程、つまり魔術師に成るような人間には強い衝撃を与えるからな。


「それで、魔術師に成ったのか?」

「そんなところです。これでも一時期深緋連隊(サカラート)を目指したこともありました。が、ヤツラの実態を知って止めました。結局ヤツラは、村人などどうでも良いのです。死のうが生きようがどちらでも。その方が効率が良いのでしょう」

 むぅ。


「ああ、お館様。そんな顔なさらないで下さい。私には、それを恨みに思う資格などありません。死力を尽くして闘っても、今日のペルザント卿の足下にも及ばないこと、よく分かっていますから」


「旦那様?」

 ゲルから、ローザが出て来た。話し声が聞こえたのだろう。


「おはようございます。ローザ様」

「ああ、ゼノビアさん。おはようございます」

「では、私はこれで。朝食の当番なのです」


 そそくさと、ゲルの前から小走りで去った。


「まあ……」

「ゼノビアは、インゴート村出身だそうだ」

「そうなのですか……」


     †


 俺達は、拠点と実働部隊を編制し、救護活動を始めた。そう、対超獣活動ではなく、救護だ。


 まあ、仕方ない。


 命令書には、先任であるペルザント卿の命に服せと書いてあるし。俺は手を出すなと言われたからな、やれることから進めざるを得ない。

 拠点はアリー、救護機動部隊はエリザ女史が率いて活動を始めた。戦闘班も一部を除いて、救護班の警備をしている。


 だからといって俺は救護を手伝えない。出動の対象の超獣が健在の内は、出動の主旨から外れるわけには行かないからな。もどかしい話だ。


「しかし……」

 超獣から1ダーデン程離れた丘の上で、役立たず同士バルサムと茶を喫している。彼は何か考えた風だ。


「何か気になることがあるのか?」

「私が連隊に居た頃のペルザント卿の戦い方は、善きにつけ悪しきにつけ、もう少し力任せなところがあった印象が強いのですが」


「それは、何年前の話なんだ?」

「ざっと、5、6年になりますか」


 さほど前の話でもないな。

「老成されたということではないのか?」


「老成……そうであれば良いのですが」


 バルサムの言わんとしたことは分からないでもないが。ペルザント卿の撃退率は、連隊の中でも悪くない。分からないな。


「ん……」

「始まりましたな」


 中級魔術の攻撃が始まった。

 20時間余りで上級魔術の超獣は癒えたのか? 再び南進を始めている。


 炎系魔術が、3、4、5条! 直撃した。

 昨日よりは効いているようだ。超獣が纏った魔導障壁までは破れては居ないが。


 超獣からの反撃は……ない。

 昨日痛い目を見たからな、


 ペルザント中隊は、俺から見て右側からのみ攻撃を加えている。つまりは、何とか西へ転進させようとしているわけだ。


 おぉ。魔圧が高まっていく。ペルザント卿だ。


 風系……鮮紅炎(プロミネンサ)とは術式が明らか異なる。しかし──


「ううむ!」

 横に居るバルサムが、腕を上げ掛け止まる。


 黒い風壁(ベール)が続けざまに発現し、樹木を薙ぎ倒しつつ超獣(ゲラン)に襲いかかる。


 (くろ)き靄が霧散して、弾き飛ばした。


黒南風(フォラータ)……」

 嘆息。

 そういう名の魔術か。


 中級としては凄まじい魔界強度が現れては消える。


 その度、超獣の巨躯は眼に見えぬ鞭に弾かれる。

 しかし、それだけだ。有効な攻撃には成っていない。ただヤツを数ヤーデンずらすだけだ。


 ブンとここにも衝撃波が到達した。遅れて轟音が来る

 目標に集束されて居たのだろう、大した風圧ではない。


 おかしい。


 俺に分かるなら、ペルザント卿に分からないはずはない。

 間近で観ているのだからな。

 この程度の攻撃では、超獣には効かないと気が付かないわけはない。


 ならばなぜ、この魔術攻撃を止めないのか?


 先程から、少なくとも数十発の魔風弾が爆ぜている。中級魔術としても魔力消費は夥しいはず。

 無意味な──無意味な?


 攻撃としては効いていないに違いないが、別の意味があるのか?


 一撃で数ヤーデン進路がずれるだけ。しかし、この連鎖で既に数百ヤーデンは変位している。


 轟音が止んだ。


「そうか!」


「お館様?」

 声に出ていたようだ。


「連鎖攻撃の目的は、超獣の進路を逸らすことだ」


 超獣(ゲラン)は、西南方向に転進した。


「つまり、あの町(ストラバリ)を進路上から外すことが、ペルザント卿の狙いと言うことですか?」


 振り返ると、ローザが何度も肯いていた。腑に落ちたようだ。


「無論領都への進行を遅らせる意味もある」

「流石は老獪ですな」


「ああ。教訓を頂いたな」

 魔術は、目的を達する術であり、強さが全てではない……か。


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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