表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
187/472

182話 超獣との戦い

連休進行を終え、通常の投稿ペースに戻します。


いよいよ超獣との戦いです。やはり大なる者と闘うのは心が躍るところ。ラルフ君にはがんばってもらいましょう。

 騎士団出動!

 ユングヴィ伯爵領、領都バスクアーレへ向かう。


 今回は何度か使った都市間転送場ではなく、少し奥まった部分にある軍事用を使う。馬車も通せる程の大型魔導器だ。バスクアーレの都市間転送場を出ると、若い軍人が待っていた。


 魔導器が作る虹色の門から数歩進み、バルサムと共に彼が立っている脇に避ける。立ち止まると、キョロキョロと辺りを窺いながら後続の人員と7台の馬車が続く。



「ラルフェウス卿と騎士団の皆さんですね」

 バルサムが、進み出て応対する。


「いかにも。こちらが男爵様。私は騎士団副長のバルサムです。貴官は?」

「ペルザント隊第3普通科小隊所属メディル軍曹です」

 ビシッと軍礼した。


「ペルザント隊?」

「はっ! 正しくは、近衛師団対超獣魔導特科連隊、特務第6隊と支援大隊第17中隊の混成部隊です」


 対超獣魔導特科連隊は、有名な深緋連隊(サカラート)のことだ。同連隊は他にはない構成で、特務部隊と支援大隊から成る。


 前者が典雅部隊(エレガンテ)だ。

 そこに所属するのは、我が国最高最強の魔術師。三賢者、さらに13人の上級魔術師達と彼らを補佐する従者だ。つまり特務は第1隊から、先頃できたばかりの第16隊まである。


 後者の支援大隊は、上級魔術師の予備軍たる魔術師科、一般の戦士である普通科、工兵科、補給科の小隊を複数含む中隊から成る。


「ペルザント隊の状況説明を致したく。また、そちらの監察官もいらっしゃいますので、すぐ近くの拠点までご案内します」



 城ではないが、何やら石作りの塔がある建物から街道へ出た。

「物見櫓ですな」

 同じように振り返ったダノンが呟いた。なるほどな。一応軍施設のようだ。


 そこから60ヤーデンも進むと石が敷き詰められた街路に出た。両脇に煉瓦造りの建物が並ぶ。真っ直ぐに伸びた街道の先に街壁が見える。差し渡し400ヤーデン程の街らしい。

 古くて、こぢんまりした街並みだが、瀟洒で落ち着きがある。


 領都の目抜き通りなのであろう。馬車と人通りもなかなかのものだ。


「こちらです」

「ああ、あちらが?」

「ええ、ユングヴィ伯爵様の城です」

 北の方角。石造りのなかなか立派な城が見える。が、それよりも目を引くのが、さらにその向こうの山の端だ。真夏の5月に入ったというのに白く雪を被っている。


 それとは反対側に進み城壁間近まで来ると、通りを一本奥に入った。門には旅館と書いてあるが……。

「こちらを後方拠点として徴発しています」


 徴発と言う言葉が、少しチクッとくる。


 庭園には、補給物資だろうが積まれ、防水加工の大布が被されている。

 玄関ホールを入って行くと、数名の軍人に軍礼される。

 団員は庭園で待機、ダノン、バルサムと共に中へ入って行く。ああ、言うまでもないがローザは付いてくる。


 まずは、監察官の執務室に案内された。

 怜悧な官吏を想像していたが、俺なんかより余程体型もがっちりしていて、体力も一般人よりは高かった。まあそうで無ければ、上級魔術師の従軍もままならないだろうからな。

 いずれにしても、今後騎士団が撤退するまで同行することになった。


 次は、ペルザント隊の留守部隊幹部の部屋に通され、1時間程談合した。それからバルサムは、これからの移動経路を確認し、皆に指示を出している。


 それが終わるまで、茶の饗応を受ける。

「それにしても、意外にも友好的でしたな」

 ダノンが切り出す。


「確かに……我等など歯牙に掛けていないと言うことだろう」


 ペルザント隊にとって、俺達の助勢はあまり面白いことではないはずだ。要するに、ありがた迷惑と言うヤツだ。それで、手柄でも掠われた日には目も当てられないしな。しかし、我々を目の仇にすることもなく、対応してくれた。


 それだけに留まらず、親切にも関係各所の地図を渡された。地図には超獣の発見場所、これまでの進行経路、最新の位置情報、それに、中隊の展開まで書き込まれている。


「いやあまあ、それもあるでしょうが、慣れて居るのでしょう。いくつかの隊で組んで取り組むことは、良くあることですとバルサムが言っておりました」

 バルサムは、深緋連隊(サカラート)に居たからな。


「ふむ。俺達を教化してくれるということだな」

「教化ですか……」

 ダノンが考えて居ると、バルサムが入って来た。


「準備終わりました。何時でも出立できます」

「分かった」


「ではお館様。私はこちらの伯爵様にお目通りし、王都に戻ります」

「ご苦労だった。ダノン」

「いえ。ではご活躍を祈念しております。バルサム頼んだぞ!」

「はっ!」


 ここでダノンと分かれ、バスクアーレを出立した。

 向かうは北へ約60ダーデン(55km)。ストラバリという小さな町だ。さっき見た雪を頂く山地の中腹にあるらしい。

 出発以来ずっと登りの街道を進んでいたが、11時30分になったので、休憩だ。昼食の準備をするため、街道脇に留まる。


「あと、どのくらいだ? 彼らは1日掛かりと言っていたが」

 我が騎士団員の移動は馬車だ。

「そうですな。夕方には着くでしょう。彼らは物資を運ぶ荷駄車も牽いているでしょうからな、そのような物でしょうが」


 騎士団も有蓋の小型の荷馬車を2両持ってきている。が、大型の魔導具となっていて荷駄車20台分の積載量がある。持ってきた物資は、警備団員2人ずつが乗っているだけで実質空荷のような物だ。しかも、牽く馬はゴーレムだから速度は速い。


 昼食を挟んで、再び移動が始まった。


 そして、眠くなって来たときだった。

 夏だというのに総毛立つ。ゾクッと何かが背筋を駆け昇る。


 超獣──


 去年の10月王都正門で感じた、いやそれより強い。8歳の時に感じたのと同じ圧力を感じる。

 出現の報を得て来たのだ、当たり前か。


「さて……」

 馬車内で立ち上がると、天井の取っ手を掴む。

「旦那様?」

 ローザが見上げる。


「少し出て来る」

 ぐっと前に押し出すと、天井がずれて開いた。

 ローザは肯くと、両手を大きく開いた。抱いて連れて行けということか。首を振って拒否。


「私は旦那様の従者なのですから、片時も離れてはならないのです」

「超獣と対するときは別儀だ!」

「むぅ」

「むぅじゃない。着くまでには戻る」

「分かりました。行ってらっしゃいませ」

「ああ、行って来る」


 光学迷彩を発動すると、そのまま飛翔する。

 馬車が芥子(けし)粒に見えるまで一気に高度を取り、北北西へ向かう。


 黒煙──

 密集に(むら)のある針葉樹林から、もうもうと煙が上がっている。


 その南南東に土塁に囲まれた集落が見えた。あれがストラバリだろう。

 煙とその町の距離は、10ダーデン(9km)と言ったところだ。


 町を横目に見下ろしながら、さらに森に接近する。

 光が見えた。魔術の炎。

 戦闘がまだ続いているようだ。


 ならば、余り近付くわけには行かない。

 魔制動を掛けると、数倍もの負の体重がのし掛かり、瞬く間に静止する。


 あそこだ。

 距離がまだあるにも拘わらず、伝わってくる禍々しさが弥増(いやま)す。


 源泉は? 目を凝らすと見えた!

 深緑の角鱗に包まれた大樹を凌ぐ巨体。鋭い棘棘が幾本も生えている。

 胴ばかりでかく、申し訳程度に付いた腕と脚はどうしたわけか細く脆弱だ。それゆえ自身を持ち上げられず腹這いで移動している。

 何かに似ているとも思えるものの、魔獣だろうが特定できない。頭部は亜竜のように顎門がその半ばまで占めているが、全く体躯には見合わず、不釣り合いな程小さい。


 唯々醜悪だ。


 この世の理を無視し、淘汰されるべき姿しか見えないのだが

 何かを求めている。

 その証左は、延々と地に刻まれた痕跡だ。それが木々の密生に紛れる数ダーデン先まで辿ることができる


 そう──

 ヤツは進んでいる。地に擦れる嫌気が差す騒音を上げながら

 遅々とはしているが、着実に這い続ける。

 こんな速度でも領都に数日で到達する。


 それを阻止するのが、上級(アーク)魔術師(ウイザード)の責務だ。


 その時だった。

 ダダっと破裂音が響くと、火線が4条。東から伸びた。


 超獣に直撃──しかし。


 大型魔獣ですら一撃で葬れそうな火力が複数重畳しても、超獣の鱗は焦げることもなく、鬱陶しそうに身動いだだけで終わった。


 魔導障壁。

 超獣のそれは、恐るべきことに大概の攻撃を無効化する。それを破ることができるのは、上級魔術のみと言うのが定説だ。

 だが、放たれたのはいずれもが中級魔術。ペルザント卿ではない。


 あれしきの魔術ではと悪寒を憶えた刹那、凶悪な魔界強度に視界が歪む。


 その数瞬後、立木の間を白い蒸気が走った。

 数十年は閲したろう樹木を薙ぎ倒し、あるいは根刮ぎ吹っ飛ばされている。

 しかし衝撃波が、先程の火線の発動点の前で拡散した。

 耐魔したか。ふむ、無防備で魔術を行使したわけではないのか。当たり前と言えばそうかも知れないが、相手は超獣だ。並の魔獣と比べる訳にはいかない。


 何?


 超獣の衝撃波攻撃の轟音が遅れて響く頃、別の魔圧の高まりを感知した。先の攻撃とは別の場所。


 ペルザント卿──

 上級魔術鮮紅炎(プロミネンサ)だ!


 陽の下でも網膜を灼く、深紅の豪焔が迸った。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


誤字訂正

2021/05/11 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ