17話 入学準備と能力検査
今日は、もう1話投稿します。
人格分析のテスト結果って細かく出ますよね。当たっているのかどうか解らないけど。
暫くして、基礎学校へ入学時期の秋、7月が目前に近付いた。
2年生以上は夏休みだそうだが、新1年生は、入学前の準備登校日だ。アリーと2人であの丘の上にある学校に向かって歩いている。あと10分ぐらいで着きそうだ。
親は付いてこない。
と言っても、いつも行く光神教会のすぐ隣だし、心配はない。
基礎学校は、資金面では領主であるスワレス伯爵、人的な面では教会……光神教会の絶大な支援がされているそうだ。
「ねえ。ラルちゃん」
「ん?」
「今日は、なんで学校へ行くんだっけ?」
はあ?
「おいおい。ローザ姉の話は聞いてなかったのか?」
「聞いてたけど、忘れた」
昨日の夕食時だったから、絶対上の空だったな、アリー。
「学級を、分けるって言ってたろ」
「そだそだ。そう言ってた」
胡散臭い。
「学級って何か分かっているか?」
「うーん。なんとなく?」
「僕とアリーが別の学級になると、学校に居る時は別々だってことだ!」
「えっ、嘘! 嘘だよね?」
「僕が嘘言ったことあるか?」
「えぇぇぇぇ……」
何だか反応が劇的だ。
アリーは頭を抱えている。どうやら、学校、入学といった言葉と同じように、なんとなく通り過ぎていたようで、学級分けでどうなるかまでは想像もしてなかったようだ。
「いいじゃないか。家でもずっと一緒に居るんだし」
「いーーーや! 嫌ったら嫌!」
道に止まって、何度も地団駄を踏んでいる。
おっとりした顔している割に、時々気性が激しくなるんだよな。
まあ去年までだったら、地べたに寝っ転がって騒いでいたからな。少しは成長したのかも知れない。
「ねえ、ラルちゃん。どうやったら、同じ組になるの?」
「うーむ」
「何、それーー」
半泣きだ。
多分、校長の司祭様や先生方が決めるんだろう。しかし、それ伝えたら、今みたいに泣いて、ラルちゃんと同じ組にしてぇーとか頼み込むに違いない。
「もう、遅くなるから、行くぞ!」
「やだぁ、うぁわゎゎん」
嗚咽し始めた。
「ここに居たら、入学もできなくなるぞ!」
「うぅぅん。いっグ、ひっく、ひっく……」
アリーの手を引っ張って坂を上り、校庭を横切って玄関まで来た。何とか泣き止んだ。
助祭様に、女子は2階、男子は1階と言われた。
結構消沈しながら、アリーは階段へ向かう。
「アリー」
「何?」
「多分、僕は1組になる」
「1組?」
「ああ」
「じゃあ、あたしも1組にして貰う!」
「おお、がんばれ!」
「うん!」
涙は乾いてなかったが、少し元気が出たような足取りで階段を昇っていった。
学級分け。
基礎学校と言えども、生徒個々人の適性が診られ、進路の推奨とそれにあった学級に分けられると聞いた。
廊下に並んだ椅子に座って待っていると、10分ぐらいで前の男子が出てきた。別のシスターに呼ばれた。中に入る。
「失礼します」
ふう。流石に緊張する。
「やあ、良く来たね、ラングレン君。この日を3年待ったよ」
細身で人の良さそうな壮年に差し掛かった男性がいた。黒い僧服を身に着けている。
「はい? ダルクァン司祭様」
この人とは、毎週の礼拝で顔を合わせている。
「うっ! うううん」
隣に居る年配女性の、名前はたしかサーシェル助祭様が咳払いした。痩せていて眉毛が吊り上がっている。
「ごめんね。今年は入学者が多くてね時間が無いんだ。早速だけど、この水晶玉を触ってくれるかな。そうしたら、君の能力と適性が分かるんだ」
あの水晶玉は魔道具らしい。
「はい」
言われた通り、直径50リンチほどの珠を触る。
すると、仄かに光った。
その瞬間。
【ਇਕਚਮਰਮਟਡਮਸਏਬਬਨਲ ਞਬਟਖਜਟਕਉਧਝਏਘਯਚਙਞ ਹਡਕਙਚਦਝ ਚਢਡ ਪਨਏਮਲਥਲਅਮਗਗਕਝਸਝ ਟਕਰਢਠਥਏਵਵ ਬਢਯਛਦਏ ਢਞਝਥ ਙਏਪਘਙ ਮਬਙਕਦਕਥਝ ……】
何だ?
眼の中に、古代文字の奔流が流れ込む!
【…… ਉਮਘ ਗਜਛਸਭਕਟਇਜਅਡਘਪਣਕ ਤਜਟ ਖਵ ਭਟਦਪਠਵਬ ਞਘਨਢਡਰਙਅਸਪਵਣਝਥਨਣਡਢਉ ਬਕਛਕਏਏ ਰਜਟਬ ਕਵਫਜਫਖਢਲਗਹਏਕ ਹਫਅ ਮਣਕਣਭਛ ਨਣਢਲਮਮਗਖਗਬ】
呪文だ。
この水晶玉から伝わってくる。意味がざっくりと分かる。
いつもの神様を褒めちぎる所は置いといて。水晶玉に触ると、何かの波動を読み取って、それを、何かに表示するようだ。
これは、攻撃魔術に比べてずっと難しい。文字数も多いし、途中で言葉じゃないとこもあった気がする。分からない所は、数字みたいだ。
「おっ、おう……」
司祭様の呻きで我に返った。司祭様が大きく目を見開いている。
「どうされました? 司祭様」
助祭様が寄っていく。
「いっ、いや。すごい! やはり凄いよ。ラングレン君は!」
そうか。司祭様の前にある板に、僕の能力値が映っているのか。こちらを見たので目が合う。
「ああ、済まない。少し興奮してしまった!」
少し……には見えませんけど。
「では、告知するよ。今から言う数値は、100が普通の大人の男性と思ってね。じゃあ知性、賢さだね、それが720。体力、体の丈夫さは350、おおう。魔力が880とは」
司祭様は、金属板の上で指を滑らせた。
「そっ、それは聞いたこともない数値! 司祭様……司祭様?」
「そんなことより、霊格が……」
いや、人の能力値をそんなことって!
「というと? 彼の霊格値は幾つなんですか?」
司祭様が呆然とする中、助祭様が突っ込む。まあ、彼女は記録係だからな。
「霊格……霊格値は……分からない」
「はっ? なんです? 0と言うことですか?」
ひどいな!
「いっ、いいや……」
司祭の顔が引き攣っている。
「この魔道具の測定可能範囲は、-1,000から1,000までです。0ならすぐ分かります」
「でっ、では?」
「正か負で言えば正値となっていますから……ラングレン君の霊格値は正の範囲外……」
「つまり……」
「1,000超」
「馬鹿な! ありえません! 歴代聖人の霊格値でも、600を超えた記録は数名しか……しかも、それは晩年の話で……こんな子供が」
霊格値?
「あのう。霊格値ってどんな適性なんですか?」
訊いてみた。
「うっ、うん。極簡単に言えば、人徳というか、神様に愛されているというか……これだけは善良なお爺さんが基準だけど大体100になる」
はっ? それで、6歳の僕が1,000を超えてるの?
「あっ。そうです。司祭様。この魔道具が故障ということも! 女子の部屋で使ってるのを、そちらで測ってみては!」
助祭様の提案で、水晶玉を取り替えて触ってみたが、結果は変わらなかった。
「うん。ラングレン君! 君が、君が成るべきは!」
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