表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
179/472

174話 買い物

とある物を買おうとしたら、発売直後から品切れで取り寄せ待ちです。まさかの状況……それはともかく。

最近本の購入を電子書籍に切り替えたんですが、便利で良いし、本棚も限界なんですが……一抹の不安が。

 翌々日。王都西門から城壁を出て、少し人家が切れた場所に居る。


「ここから、500ヤーデン(450m)程。あそこに白っぽい岩が見えますが、敷地はその辺りまででございます」


 地主のゾール氏が、広々とした荒れ地を指し示しながら敷地の境界を説明する。その話を聞いているのは、ダノンとバルサムだ。


 でっぷりと肥えた男は説明しながら、小柄な従者が差し出す手拭いでしきりに汗を拭っている。4月が目前に迫り、このところ気温が上がっている。ただ今日はそうでも無いと思うが。


 俺と言うと、騎士団の財務担当となったケイロンと共に、彼らから少し離れて話を聞いている。

「面積としてはおよそ36レーカー(14ha強)。見事に何もありませんな」

「ダノン殿、訓練所と聞いておりますが、それがよろしいのではありませんか」

「それはそうだが。ここまで土壌が悪いとなるとなあ……」


 ダノンが言うことももっともだ。

 敷地の真ん中辺は、昨夜から早暁まで降った小雨によって、青々と空を映す湿地となってしまっている。


「まあ、半分はこれでもいいが」

 ぼそっとバルサムが零す。

 半分は建屋の敷地だからな。


「やはり、昨日見た場所の方が良くはないか?」

 余り気に入っていないであろうダノンが、難しい顔で疑問を呈す。


「昨日の第1候補地は、西門より出でて、3ダーデン。敷地も300ヤーデン角と狭く、また一角が倉庫街と接しておりますゆえ」


 バルサムは、ここの方が気に入っているようだな。


「確かに、ここは西門より1ダーデンと近いうえに、周りには何も無いというのは良い。周囲に気を使わず訓練できるからな」

 理由も明確だな。ダノンもそれを認めているようだ。


 膠着状態だな。

「では、3番候補地はどうか?」

 まだ行ったことはないが。


「御館、あそこはこの先でございまして。広いのはよろしいが、些か遠すぎます」

「バルサムの申した通りで」


 地主が進み出てきた。

「如何でしょう。他ならぬラングレン卿の訓練場となれば、1レーカー当たり相場としては40ミスト程ですが、35ミストまで値引き致しますが」

 この辺りが商機だと思ったのだろう、こっちにも聞こえるように大声だ。


「40ミストと言えば街道沿い位。ここらでは、ざっと35から32ミストというところかと」

 すかさずケイロンが耳打ちしてきた。と言っても身長は1ヤーデン程だから腰打ちに近い。それはともかく。ただの荒れ地に数十ミストが相場とは高い。シュテルン村だと、整地された牧草地並みだ。流石は王都近郊言うべきか。しかし、分からないな……。


「御館様、何かご不明な点でも?」

 考えごとしていたら、すぐ近くで見上げられていた。

 ホビット族は、人族と背丈以外よく似通っているが、大きく上方に尖った耳が特徴的だ。


「ああ。なぜ、ゾール氏はここを買ったのか? とな」

 先程先祖伝来の土地ではないと、自身で言っていた。


「改めました登記済証によると、買ったのは360年のことでして、街道を敷く計画が出て来た頃でして……おそらくは」

 数百ヤーデン右を見遣った。

 計画を察知して買ってはみたが、実際に街道が通ったのはあそこか。まばらに建物の影が見える。要するに目論見が外れたと言うことか。


 ダノンとバルサムが寄ってくる。ゾール氏はそのままの位置に居る。

「御館様のお考えも伺っておきたいのですが」


音響(ソノ)結界(シーマ)

 バルサムが気付いたように、視線を回した。


「俺か。前にも言ったが2人に任せる。ああ、ただ候補地の位置は変えられないが、土壌の方は……」


「変えられるのですか?」

「まあ、それは契約の後のことだが」

「であるなら、私もこちらを推します」

 ダノンも是と認めた。バルサムの方を向くと肯いた。


「そうか。決まりだな。ではケイロン!」

「はっ!」

「王都に戻ったら、即金で払うと揺さぶってみろ」

「承りました」


 王都に戻り、外縁にあるゾール氏の家で商談を実施した。結果1000ミスト余りで購入することがまとまり、登記済証と双方の署名を実施した譲渡契約書を交わした。1レーカー当たり30ミストと相場の1割引で購入できた。

 向こうにどんな事情があるかは知らないが、ケイロンの手腕と言えよう。


 支払いは即金で実施した。手続きとしては登記の必要があるが、既にこの土地は騎士団の物となった。


   † † †


 2日後の昼。

 本館食堂でローザと昼食を摂っていると、バルサムがやって来た。

 

「お食事中のところ失礼します」

「何か?」

「訓練場の土地の件ですが」

 ローザは不思議そうな顔をしている。


「早かったな」

「周りに堀ができていて度肝を抜かれました。やはり、あれは御館がされたのですね?」

「ああ」


 昨日の夕食後、寄生してるゲドことゲドネス5世の指導で工事をした。

 最近たまにしか戻って来ないガルガミシュ9世に拠ると、ゲドは土木狂らしい。そう言えば彼を見付けた遺跡も彼の設計らしいからな。


 あの辺りは扇状地らしく、地下15ヤーデンまで掘り下げれば水脈に当たると言うことだった。土魔術と魔収納魔術を駆使し、まずは敷地全体を5ヤーデン掘り下げた。


 さらに、周囲幅3ヤーデン深さ10ヤーデンの空堀を築いた。そして、ところどころ縦坑を水脈まで掘り下げた。

 ここで魔術技術の改善が有った。魔収納から分別して出庫できるようにしたのだ。そして縦坑を岩や大きな礫で隙間を空けつつ埋めた。


 その後。敷地全体に渡って、外周の堀へ向けて下り勾配が付くよう整地、その上に平行に傾斜を保ったまま粘土などの非透水層を積んだ。

 最後にその上を礫や土と、ベルヌ砂丘から持ってきた砂を混ぜた透水層で覆った。これで相当水捌けが良くなるはずだ。


「今朝、少し(にわか)雨がありましたな」

 ああとローザが肯く。


「あの敷地の脇では、泥濘の土地になっていましたが……」

「予定地はどうだった」

「はっ! あの土地だけ覆いでも掛かっていたかのようでしたよ。綺麗に整地されてましたし」


「それは良かった」

「良くはありません!!」

 おぉぅ……。


 横に居たローザから、ゆらっと怒りが立ち昇る。


「今日は土木の業者を連れて、工事の見積もりに行ったのですが……」

 あっ、まずい。


「馬鹿にしているのか!? そう、詰め寄られました」

「ああ……」

 やっぱり。今日言おうと思っていたんだが。


「そのようなことをお願いした覚えがありませんが」

「バルサム殿!」

 ああ、ローザはだいぶ怒っているようだ。

 どうも、バルサムとは相容れないところが有るようだ。


 手を翳して止める。

「確かに頼まれてはいない」

「御館が、多くの才能をお持ちなのは存じております。ですが、それは超獣退治に絞ってお使い下さい。それ以外は団員にお任せ戴ければ幸いです」


「善処する」

「はっ! お食事の邪魔を致し、申し訳ありませんでした。失礼します」


「スープが冷めてしましましたね。取り替えましょう」

「ああ良い。バルサムの件だが」


「はい。どうやらあの方は、誤解を受けやすい質のようですね」

「おお、そうなんだ。その誤解をものともしないところが、悪いところでもあるが、良いところでもある。15歳の俺が言っても説得力がないが」


「いいえ。分かります。つっけんどんな態度に見えますが、よくよく考えると、あなたのことを第一に考えてくれます。もう少し長い目で見ることにします。まあ、私から言わせると超獣退治だけに没頭されてしまっては、それはそれで嫌なのですが」


「ああ、そうならないようにするさ。俺はローザの夫だからな」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。



Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/06/13 誤字訂正(ID:209927さん ありがとうございます。)

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ