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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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171話 騎士団の骨格

組織は目的遂行の為にあるのですが、いつしか組織維持が目的にすり替わることが往々にしてあるんですよね。目的を達するか、意味がなくなっても、延々と。

 スワレス伯爵領から戻った2日後。


 別館改め公館の1階大会議室。

 前の持ち主の頃は舞踏会が開かれていた大広間に皆を集める。広すぎて持て余しているが、まだ内装工事中のところが多いから、邪魔にならないのはここだ。


 テーブルをいくつか置き、椅子を丸く並べてそこに座る。

 各人と俺はそれなりに話しているが、それぞれは初見に近い。


 マーヤさんと、パルシェが手分けしてお茶を出してくれる。もうすぐ公館専用の執事とメイドも着任してくれる予定だ。行き渡って退出していった。


「騎士団結成に当たり、我が家の者と団員の顔合わせをさせてもらう。超獣に対抗するためには、我が家と騎士団が車の両輪となってもらう必要がある。よろしく頼む」

 本音だ。


「まずはそれぞれ自己紹介していってもらうが。今日のところは肩肘張らず話をしてくれ。何か質問や提案があれば、その場ですると良い。じゃあ、まずは家令のモーガン」


「はい。モーガンでございます。よろしくお願い致します。御館様が安心して戦地に赴かれますよう努力致します」

 いつもながら上品な物腰だ。


「うむ。次は騎士団を統括してもらう家宰、ダノン。俺とは子供の頃からの付き合いで、師匠でもある魔術師だ!」

 騎士団結成に当たり、団員に対しては年長者であっても敬称を付けぬように、ダノンより、即日呼び捨てになっている。


「ダノンだ。御館様は、師匠と言われたが魔術は教えたことはない。御館様は天才だからな。スワレス領軍に居た頃は魔術師部隊のとりまとめをしていた、その線で役に立ちたいと思う、よろしく頼む」


 白い髭で覆われた顔で言うと、中肉中背の割に貫禄がある。


「ダノン殿、王都は初めて来られましたでしょうか?」

 モーガンが紳士の慎み深い態度で尋ねる。


「ああいや、若い頃は国軍に居たので、何度かは」

「そうですか。他に何かございましたら、なんなりと」

 両者が会釈し合う。


「うむ。では騎士団の方から紹介しておこう。戦場の指揮者である副長をやって貰うバルサム。冒険者ギルドから出向で来て貰っている」


「バルサムだ。御館様に生き残って貰うよう微力を尽くしたい。よろしく頼む」

 いつもながら言葉少なだ。


「それから、調達補給担当のベレアスだ」


「ベレアスです。この間までギルド西支部に居りましたが、やっていたのは事務仕事です。戦闘では物の役に立ちませんが、騎士団の方々を飢えさせぬよう懸命致します」

 西支部依頼動員の時、パルヴァンで俺達に協力してくれた職員だ。

 どうやらあの一件で、俺に心酔したそうだ。こっちは出向ではなく、ギルドを辞めて来てくれた。ギルマスによると、なかなかに有能な人材らしい。俺としても、判断の早さに一目置いている。今回の騎士団結成における3幸運の1つ目だ。


 次はと思った時

「提案してもよろしいでしょうか」


「ああ、何か?」

「騎士団では制服を作るのは如何でしょうか?」

「制服か……」

 考えなくもなかったが、時期が早いと思っていた。


「有れば、他と区別できます。騎士団の働きを目立たせるばかりでなく、その姿を民が見れば安堵させる効果が出ると考えます」

 そうだな。逆に悪目立ちもするかも知れないが。


「どう思う? ダノン」

「良き提案だと思います」

「バルサムは?」

「はい。家宰殿に同意です。騎士団とそうでない者を明確に別けておくに()くはないかと」


「では、意匠を整えよ。決まり次第、内務省に届け出ることにする」

「はっ!」


「それから、財務・経理担当のケイロンだ」

「ケイロンにございます。よろしくお願い致します」

 小柄なホビットだ。

 

 彼はギルマスの紹介で来てくれた。

 なんでも大手冒険者クランの金庫番だったが、代替わり時に派閥争いに巻き込まれ逐われたそうだ。剣を持って脅されたが、最後の経理手続きが終わるまで、頑としてその場を動かなかったとの逸話がある。その精勤さに引く手数多だったにも拘わらず、なぜウチに来てくれたかは謎だ。ギルマスによると、同じくホビットであるギルド西支部の出納主任のアンシャさんの知己らしいが。その辺かも知れない。3幸運の2つ目だ。


「それから、情報諜報担当のスードリ」

「スードリです」

 低く発声すると会釈した。


 つるっとした顔貌で、黒っぽいローブを身に着けている。それ以外は特段特徴が見当たらない。

 スードリが来てくれたのが3幸運の3つ目だ。ついこないだまで、存在を知らなかったからな。謎だらけの人物だ。仕えてもらうに当たっては一悶着有ったが、いずれ語るかも知れない。


 バルサムがスードリを訝しそうに睨む。

 それを見ていたアリーがフフッと失笑した。

 

「ダノンの下で勤めて貰う。次は、今笑ったアリシアだ」

「アリーです。御館様の義妹です。救護班を受け持ちます。よろしく」


 普通に挨拶したな。

 まあ、俺を御館様、自分のことをちゃん付けしないと固く約束させての騎士団入りだ。


「失礼ながら救護班というと?」

「ああ、えっと。超獣との戦闘で被災した方々や、負傷した団員を癒やすのが任務です。班員は募集中ですがなかなか。数人に目星は着けていますが、交渉中……です!」

 ベレアスの問いにアリーが答えた。


「戦闘だけではなく、被害住民の応急処置も、我が集団の活動の柱と位置づけるつもりだ」

「軍と差異化していくことはよろしいかと」

 バルサムもそう言い添えて肯いた。


「次に我が妻、ローザだ」

「秘書兼筆頭従者を務めさせて戴きます、ローザンヌです。よろしく」

 何だか嬉しそうだ。


 次は──


「騎士団の幹部はここまでだ。後は、我が家で騎士団と繋がりが深い者が居る。そちらを紹介しよう。1人目だが。救護班が、回復魔術だけでは心許ない。よって我が家の事業として、製薬業を営むことにした。責任者のサラだ」

「サラスヴァティです。よろしくお願い致します」


「財務面の支援をやって貰う、主査のブリジットだ」

 人族の女性だ。

 細身で銀縁の眼鏡が似合い、ぱっと見怜悧そうだ。


「ブリジットと申します。よろしく」

 素っ気ないな。

 今日朝、『ブリちゃんって面白いよね』とアリーが言いだした。一昨日、引っ越しを手伝って仲良くなったようだ。

 話によると面白くなるのは、酒を飲んだときのことらしい。


「紹介は以上だ」


 とりあえず士爵位は、スードリ、ベレアス、ケイロンに与えることにした。ちなみにダノンとバルサムは、元から士爵だ。

 アリーは辞退した。


「ああ、茶が冷める。飲んでくれ」

 テーブルに並ぶカップから湯気が立ち昇っていたが、今は大分弱まっている。

 俺がカップを取ると、皆が飲み始めた。


「幹部は何とか揃ったわけだが、団員を増やさないとな」

「どのくらいを想定されていますか?」


「うむ。戦闘ができる人員はざっと15人。内5人程はスワレス領から借り受けることになっている」

「そちらは、近日中に王都に着任するはずだ。上屋敷から連絡が来ることになっている」

 そう言ってダノンは肯いた。


「それから救護班には基幹となる回復系魔術師を最低5人、看護人を5人、補給班を5人が、まず必要だな」

 無論もっと多い方が良いが。巫女をはじめ巫覡など回復系魔術師の需要は高く、ある程度の実力を持つ人材はそう簡単には集まらない。アリーなど引く手数多だ、最初は性格など分からないからな。


 これもまたギルマスに頼んではあるが、時間をくれと言われている。


「合わせて30人。小隊規模ですが、些か少なくないですか?」

 ベレアスだ。軍事も少しは明るいようだ。


典雅部隊(エレガンテ)上級(アーク・)魔術師(ウィザード)は12人……いや13人になったのか。従者は各3人。深緋連隊(サカラート)の規模は1000人。半数は独自活動として、1人頭30人から40人位だな。そういう意味では、さっき仰った人数は少ないだろうな。だが……秘策はある」


「うーむ御館様の意向に沿うには、救護班、特に回復系魔術師を揃えることが第1の課題と言えますな」

「そうだな。ただ一足飛びに増やすのは難しいとも言える。地道に勧誘するしかないな」


「次に、宿舎、訓練所などの整備が重要と思われます」

 ケイロンだ。

「うむ。ダノンどうか?」


「バルサムおよびスワレス領王都上屋敷推薦の場所を含め、いくつか外縁で宿舎建設地として目を付けている場所がある」

 ほうと皆が響めく。


「しかし、ここから遠いのは厳しいからな。東門から出た外縁が相応しいと考えている」

 そう2人に方向性を示し、後は任せた。おそらく俺はそんなに使うことはないだろうからな。


「分かりました。予算は議論させて戴くと思いますが。手続きその他は、お任せ下さい」

「おお、助かる。ケイロン」


 その後も、議論が続き1時間程で散開となった。

 俺とダノン、ケイロン、ベアレス、それにモーガンが残り、主に金の話を1時間程してそれも終わった。まあ、俺だけで済む話ではない以上、何にしても金は大事だからな。


 本館に戻ってきて、直接居間に向かった。扉を開ける。


「やあ、いらっしゃい」

 3人の来客を感知したからだ。


「ああ、ラルフさん!」

「おひさしぶりです」


 入り口で軽く手を振ると、3人の客達は立ち上がって略礼してきた。いずれも妙齢な女性だ。


「ああ、テレーゼにビアンカ、久しぶり」


 客の内2人は知っている。

 パルヴァン奥地の魔獣探索依頼の時に、馬車に乗り合わせた、女冒険者2人だ。もう1人も服装から言って……。


「えーと、こちらは?」

「初めまして。カタリナと申します。ああ2人と同じクランに居ます」

 やっぱり冒険者だった。


「ああ、こちらこそ……」


 会釈しながら少し観察。

 感知魔術によると、3人とも21歳らしい。なかなか魔力上限が高いな、400弱もある。まあテレーゼも350と負けてない。もっともアリーは780あるが。


「それで今日は? アリーに会いに?」

「3人は私が呼んだのよ。ラルちゃんに用があるから」

「俺に?」

 良く話が見えないが、居間に入ってアリーの横に座る。


「ラルフさんは……」

「ビアンカ、ラルフ様は男爵様になられたのだから……」

「ああ、ここでは別に構わないよ」


「いえいえ。ラルフ様は私達がこの部屋に居ると思って来た、じゃなかった、来られたんですか?」

「いえね。さっき、アリーさんがこの館に戻って来られたら、すぐに居間に来られるからと」


「ああ、まあ。はっきり誰かまでは分からなかったけど。それが?」


 ビアンカとテレーゼが顔を見合わせた。

「やっぱり。本当だったんだ」


「まあ、そんな話はどうでも良くて……」

 アリーが話を進めたがっているようだ。


「さっき目星を付けているって言ったのは、レーゼちゃんなの!」

 ビアンカはそうでも無いが。テレーゼは魔力上限値が高いとは思っていたが。


「テレーゼは、回復魔術が使えるのか?」

「はい。いや、アリーちゃん程じゃないですけど」

「いやいや、何回か教会の仕事を一緒にやったけど、なかなかのもんだよ!」

 この手のことで、アリーは嘘は言わない。


「おお、そうなのか……」

「でね! はい、レーゼちゃん」

「アリーちゃんから聞いて、ラルフ様の崇高な決意に感動しました。ぜひ私とビアンカ、それにもう1人を、騎士団に入れて下さい」

 テレーゼはともかく……。


「ああ、ビーちゃんは看護が得意なんだよ」

「はい。テレーゼと一緒に居たかったので、以前教会で必死に学びました。ギルドに訊いて貰えれば、すぐ分かります」

 なるほどな。


「そうか、それは願ってもないことだ。家宰に伝えて、入団の可否を検討してもらう」


「えー。わざわざダノンさんに諮らなくても、ラルちゃんが決めてくれれば……」

「アリィー!」

 

「何? ラルちゃん……顔が怖いよ」

 睨んだ上に、声が低くなったか。


「幹部を除く団員の採用は、家宰の専権事項だ。俺が決めてはいけないんだ。憶えておくんだ。良いな!」

 言いながら偽善の念が押し寄せる。


「うっ、うん」

 珍しくアリーが涙目になってる。


「ああ。3人とも声を荒らげて済まなかったな。だが、聞いた通りだ。推薦はさせて戴く」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

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訂正履歴

2019/03/29 名前が被っていたので変更します。カーラ→カタリナ

2019/07/10 誤字訂正(ID:976719さん ありがとうございます。)

2020/07/05 スワルス→スワレス

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2022/09/24 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/10/09 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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