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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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168話 実力見極め

世間って意外と狭いなあと思うときが結構あります。本業の業界が正にそれですけどね。転職されても活躍される人が一杯いらっしゃいます。良い業界かも知れませんね。

「引っ越し準備はもういいのか?」

「いや、まだあっちでドリスがちまちまやっています」


 ソノールへ行った明後日の朝。

 応接室でダノンさん……じゃなかった、ダノンと向かい合っている。

 仕える者に敬称も丁寧な言葉遣いも不要と、目の前に座った男に、何回も念を押された。


「まあ、あれは趣味みたいなものですからね、ほっとくに限ります」


 うーむ。荷造りなどしないでも、全部魔収納に入庫して、こっちに来たら全部出しますからと、ドリスさんには言ったのだが。王都に持っていく物を取捨選択したいからと、時間が掛かることになってしまった。


 ほっとくか……手伝いも必要だろうが。


『いやあ、そんなことやるなら、私も立ち会わないといけないでしょう』

 そういって今日早朝王都にやって来たが、半ば逃避だと俺は見て居る。


 おっ、来たか。

 玄関ホールに出るとメイドのマーヤさんが、濃紺のローブ姿の男を迎えていた。


「やあ、バルサム。元気そうだな!」

「ダノンさん。ダノンさんなんですか?」

 バルサムさんが、驚いたように俺とダノンを行きつ戻りつ見ている。

 誰かは理解したが、納得がいかないようだ。


「ああ、この姿か。ヤキが回ってな、この有様だ。まあ生きて行くだけなら不便はない」

「そうだったんですか……何も知らなくて」

 バルサムさんは渋い顔をした。


「いやいや、俺の話はどうでも良いが。先日御館様、ラルフェウス様の家宰になった。バルサムも仕えてくれると嬉しいが。ああ、今日のことを邪魔する気はない。私も見てみたいからな」

「はあ。 おい、ラルフ。ダノンさんのことをなぜ黙っていた」

 揃って睨まないでくれますかね。

「黙ってるも何も。2人が知り合いとは、先日会った時は知りませんでしたよ」

「むう……」


「まあバルサム。演習場まで時間が掛かるんだ。道々話すとしよう」

「分かりました」

「ああマーヤさん。ローザを呼んでくれ!」

「はい」


 玄関を出る


「西門まで移動しますか」

「ああ、いえ。ちょっと下がって貰えますか」


 馬車を出庫する。


「馬だと?」

「ゴーレムなのか!?」

 流石はバルサムさん、瞬時に気が付く。


「この御者もか?」


 御者は、ひらりと降りると扉を開けた。

「レプリーと申します。お見知り置き下さい」

 バルサムさんは、呆れた表情で首を振った。

「私とはゴーレムを使う目的が違うようだ」


「これがなあ……」

 ダノンさんは、レプリーの背中を音が発つ程の勢いで叩いた。


 俺とローザ、前の席にダノンさんとバルサムさんが乗って、馬車は走り出した。



 東門では軽く止められたが、降りることもなく通過した。

「流石は、上級魔術師。乗車したまま通り抜けられるのか。伯爵並みの待遇だな」

「内郭の門は無理ですが」


「そりゃそうだろう。あの紋章で通れるのか? お貴族様だな。エドワルド(爺様)殿も喜ばれることだろう」

 馬車の扉の紋章のことだ。ダノンさんが、何度か肯く。

「……うふふっ」


「どうした、ローザ殿?」

「ダノン殿、あの紋章、何か気付きませんでした?」


「楯に立ち上がった狼、ラングレン家伝来の紋章だったが?」

 ああ、ローザには今まで通りのしゃべり方だ。


「私も最初見たときそう思ったのですが……上げてる前足が右ではなく、左なんです」

_

 あと目立たぬようにだが、頭上に環を描いてある。

 前の席から、ダノンさんがこちらを振り返った。


「その表情……間違えたというわけではなさそうだな」

「実家から独立するという決意……と、いうことか?」


 バルサムさんも乗ってきた。


「まだ言えませんが。分けておく必要が有りまして」

「ふむ……」

「ほう、その時はそれほど遠くないようだな」

「分かるのですか? ダノン殿」

「長い付き合いだからな……と、それにしても、この馬車。乗り心地が良過ぎないか?」

 

「まあ、色々細工はしてますよ」

「ふーん」

 感心したのか呆れたのか。両方のような気がするな。


    †


 借り受けた演習場に着いた。

 何も無い荒野だ。差し渡し4ダーデンぐらいはあるな。中央近くまで行って馬車を降り、レプリーごと入庫する。

 

「バルサムさん。どう戦うかご要望はありますか?」

「そうだな。手始めに上級魔術を、何発か……」

「おいおい何発かって!?」

 ダノンさんが口を挟む。


「できるだけ、間隔を詰めて行使してみてくれ」

 しかし、バルサムさんは意に介さず続けた。

「了解です。どのくらいの出力でいきますか?」


 ダノンさんは目を閉じて首を振った。

「まあ、発動できるなら、適当で良い。ダノンさん、ラルフなら大丈夫なはずです」


 適当って、なんだよ。


 おっと。

「ローザ、あれを使ってくれ!」

 バルサムさんに怒りの視線を向けていた、ローザの機先を制する。


「はい、あなた」

 ダノンさんが訝しむ中で、ペンダントを取り胸元から引っ張り出すと、飾りの蒼い魔石に触った。

 

 魔石が耀き、ブーンと低周波音を上げながらローザを包み込む繭形の光障壁を作った。そして土煙を上げながら地面を穿っていくと、瞬く間に首元まで埋まった。


「なんだこれは?」

「障壁用魔導具ですよ。地面に埋まることで、耐衝撃、耐熱効果が大幅に高くなります。今のところ、その大きさの魔石で30分しか持ちませんが。ダノンさんも使ってみますか?」

 ペンダントを出庫する。


「おお、悪いな」

 渡すと、早速首に掛け起動させた。

 今回は手動起動したが、念を送ることで30ダーデンぐらいまでの距離なら俺が遠隔起動できる。あと足下が地面でないときは、埋まらない。


 あれ? 障壁を叩いて何か言っているな。残念ながら、起動すると遮音されて音声は聞こえないんだよな。


「バルサムさんは、どうします?」

「不要だ」


「そうですか。では始めましょうか」


光翼鵬(アーヴァ・ガルダ)!!】


 見下ろすと、3人がこちらを見ている。

 左手を挙げ合図をすると。


紅蓮弾(フロガ) × 乱舞(ソリヴォーゼス)!】

 前方1ダーデンの地面を睨み付け、魔力を解放──


 周囲の光が右腕の先に集束したように薄暗くなると、甲高い唸りを上げいくつもの赤白い箭を射出──


 網膜に滑らかな輝線が刻まれていく。

 極微の刻、百合の華が開くように軌道を異にすると大地が爆ぜた。


 紅く白く膨らむ火半球が透明な粗密波に熔けると、宙に浮かんだ俺が見上げる程の高みまで、燃えた土石を吹き上げる。

 凄まじき破裂は連鎖し、王冠の如く次々と尖った環を描いた。


 轟音と土煙を従えた衝撃波が何度も去来、無意識に発動している障壁が僅かに震える。

 右足下を見ると、バルサムさんも輝く腕を前に突き出して防いでいる。


 次は──


 身体を捻り、左を向くと。

地極(エンデ)垓棘(シュターヘン)!!】  


 もうもうと土煙が上がる側に、岩棘が無数に繁茂するを見届けると。


金剛迅雷(ヴァジュラム)!】


 目映き光の柱列が屹立──

 大気を裂く打撃音が次々響き、恐るべき電流が鋭棘を灼き昇華した珪素が猛烈な迅風を発すると、分に満たない過去の痕跡を薙いだ。

 だが高空にまで吹き上がった暗曇には幾筋の爪傷を残したものの、全てを吹き払うには至らなかった。


 まだまだ──


「もういい、もういいぞ。十分だ!」


 遠雷が残る中、下から声が聞こえた気がして見下ろすと、バルサムさんが大きく手を振っていた。

 ああ。もういいのか。


 降下して降り立つと、ローザの光繭が迫り上がって地表に戻った

 

「ん? ああ、戻り方を言い忘れた」


 ダノンの繭に向けて何度か自分の胸を突くと、やり方を理解したようで、彼も地表に戻ってきた。


「ふう。凄い凄いとは思っていたが、ここまでとは」

 そう言いながら、太い首を竦めた。

 傍らに寄り添うローザは大きく笑う。俺を信じ切っているのか、生得肝が太いのか。

 その笑顔は人の気配に途切れ、再び顰めた。


 ザリザリっと足音がして、バルサムさんが歩み寄って来る。


「この次はどうしますか? バルサムさん」

「いや、もう結構だ」


「結構とは?」

「ラルフの戦い方は良く分かった」


 続きを待ったが、バルサムさんは黙った。


「で、どうなのか? バルサム」

「どうとは?」


「旦那様を試した結果はどうなのかということです」

 ローザ。


「妙なことを仰る。ラルフを試してなど居ません。戦い方を見ないと、私がラルフの役に立つのか否か、どのように支援できるかできないのか分からないからな」


「では旦那様の能力を試した訳ではないと?」

「ローザ」

 はっとなったローザは、数歩下がった。


「言うまでもないが。ラルフの能力は、上級魔術師選抜試験に合格したことで証明されている。私が試すなど烏滸がましい限りだ。とは言え、奥方やラルフには無用な誤解を与えたようだ……申し訳ない」


「俺の戦い方が分かられたならば、回答を聞きたいが?」

「はい。このバルサム。喜んで仕えさせて頂きます。よろしくお願い致します」


「それは良かった。よろしく頼みます」


 ダノン、バルサムさんの肩を叩き、握手を交わした。


「さて、少し地形を変えてしまった。馴らしておくか」

「ああ、ではお昼に致しましょう」


 ゲルを出してやり、その場を離れた。


     †


「バルサム。御館様の魔術を、どう見た?」

「凄まじい限り。あれでまだ余力十分とは末恐ろしい限りでしょう」


「確かに。まだ本気を出されていないようだったな」

「上級魔術をあのように立て続けに、呪文も唱える暇もなく……賢者も斯くやといったところでしょうが」


「ああ。それだけに危ういところがある。未だ齢15歳だぞ。周りの者が伸びる方向を誤らぬように心を配らねばな。貴族共もなにかと干渉して来ようでな」

「ああ。それは、ダノン殿に任せます。何せ家宰殿ですからな」


「おい!」

「冗談です。しかし、空を飛び強大な魔力を誇れるともなれば、慢心されぬ方が不思議というもの」

「そうよ。踏み外さぬよう、補佐せねば……な」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/11/30 誤字訂正(ID:209927さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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