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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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166話 人材狩り ~続いて身内から~

血は水より濃いという諺がありますよね。他人より血族の方が頼りになるという意味です。そうだなあと思う反面。世の中の出来事を見るにつけ、今はそうでも無いのかも知れないなとも思えますが。

 呼び出されてダンケルク子爵家へ、ローザとやって来た。

 男爵に成った所為か、前の応接室から格が上がった部屋に通された。

 2人でソファーに腰掛けていると、義母上とメイドのマーサさんが入って来た。立ち上がって挨拶すると、義母上が腰掛けた後ろにマーサさんと初めて見る男が並んだ。


 50歳を超えているだろう。痩せ型で背が高い。総白髪を上品に撫でつけ、これまた白い髭を蓄えている。

 見るからに謹厳実直そうだ。穏やかで感じも良い。


 義母上が穏やかにこちらを向く。

「ラルフさん。彼が、頼まれていました家令の候補です」

 やはりそうか。

「ご挨拶しなさい」

「はい。男爵様、ローザンヌ奥様。モーガンと申します。よろしくお願い致します」


 こういう紹介の仕方は、俺が断らないと義母上が確信しているのだろう。考え方はいくつもあるが、彼女がモーガンを信頼しているのは間違いない。


「モーガンは、3代前から我が家に仕えてくれています。ずっと亡き夫に付いていてくれましたが、最近は城外の屋敷の総括を務めています。ちなみに彼の息子も我が家の執事ですのよ」

 ああ、そう言えば披露宴で俺達に付いてくれた若い執事が似ている。

 それにしても3代前からか。流石は歴史ある家とも言えるが、考えようによっては息子を人質に取っているようなものだ。


「名門ダンケルク家から、できたばかりの我が家だ。不足はないか?」

 モーガンは微かに微笑む。


「お恐れながら、どのような名家も初めはございます。ラングレン家の隆興をお支えできれば仕える者として光栄です」


 なかなか頭も回るようだ。義母上が薦めるのであれば才覚もあるはずだ。


「では、我が家に仕えて貰おう」

「ありがとうございます」

 跪礼したので、立ち上がり手を取った。

 座り直すと、モーガンが俺の後ろに回ってきた。


「よかったわ、ラルフさんが気に入ってくれて。そちらも忙しいでしょうから、すぐ移った方が良いけれど……住むところがねえ」


「お母様、手に入れました隣の館には、使用人が住む建屋もありますわ」

 隣の館との間だ裏庭に面して木立があり、その向こうに一軒家3軒と大きめの長屋がある。そこのことだ。


「そうなの? ローザ」

「はい。お義母様。そうだわ。この先は、自身で差配してもらえばよろしいかと。ねえ、あなた」

 なるほど。

「そうだな」

「畏まりました」


 しばらくして、ダンケルク家を辞した。

 モーガンを連れて館に戻る。

 玄関に入ろうとしたところで、後ろ……門の方から騒がしい声が聞こえてきた。


「ちょっと何! あんた誰なの?」

 玄関のところで、文字通り宙に浮いたアリーが騒いでいる。無論飛行魔法が使えるわけではなく、見えない何かに乗り上げている。

 サラは、少し離れて胸元のダガーに手を掛けつつもブルブルと震えながら、引き攣った顔で見ている。


「ラルちゃん、ラルちゃん。コイツが!」


 はあ……。

「アリー、離してやれ」


 眼には見えなくとも、何かを捕まえているのは魔術で認識できている。アリーに触られて露見しかけているところを、姿を隠す魔術を何度か重ね掛けしている。その術式が流れ込んでくる。かなり高等な隠形魔術だ。が、それに気が付くのか、アリー。


「はっ? ちょ! どういうこと、なんで?」

「いいから、離してやれ」


 力が抜けると、ずり降りた

「あ、痛っ!」

 芝生に尻餅を付いたアリーが、恨めしそうにこっちを睨んだ。気配が数ヤーデン程離れたが、逃げもせず留まった。


「ああ……見えて居るのは俺だけじゃない。これからは気を付けるんだな」

 気配の方に声を放つ。


「もういい。さあ、みんな中に入れ」

「何、どういうこと? 誰なの? あいつ、ウチを覗いてたのよ」


「知ってる」

「はっ?」


 玄関ホールに入ると騒ぎを聞きつけたのか、ソフィー達も玄関へ集まっていた。


「言っておく。さっきアリーが飛び掛かっていた見えない人間は、政府の手の者だ!」


「政府?」

「旦那様の言うことを聞きなさい」

 ローザの窘めにアリーが膨れ面になる。

 その横で、はぁぁぁと息を吐いたサラの肩が落ちた。

 なんだ……と微かに聞こえた気がした。

 何だと思っていたんだ?


 それは置くとして。


「俺が上級魔術師になったからな、監視が付いているんだ」

「監視?!」


 厳密に言えば超獣対策特別職になったからだが、両者を兼ねない者は居ないから同じことだ。


「姿を消して任務を遂行しているんだ。それを邪魔することは禁じられている。だから見付けても飛び掛かるな。安心しろ、この館内までは入って来ない」


「むう。じゃあ、ラルちゃんを襲おうとした賊が居ても、区別付かないじゃん!」

「殺気は無い。ちゃんと見極めろ」


「ぶーーー。んん、誰? その人は?」

 モーガンの方を睨んで居る。


「紹介しておく。彼は、先程我が家の家令になった」

「家令?」

 ソフィーが首を傾げた。


 モーガンが一歩前に出る。

「はい。この度ご当主様と、奥様にお仕え致しました。モーガンと申します。皆様よろしくお願い致します」

 胸に手を当て敬礼した。


「ソフィアお嬢様。ちなみに家令と申しますは、仕える家の財産、事務、会計、使用人の管理をする者のことです」

 ちなみに、私領があればその管理や経営も行う。俺は宮廷男爵だから領地はないが。


「へえ……あっ、私の名前!」

 情報が行っていたのだろう。子供はソフィーだけだしな。

「よろしくお願い申し上げます」

「こちらこそ!」

 うん。ソフィーは素直で良いな。

「ソフィー以外も紹介しよう。その後ろが、ソフィー付きのメイド、パルシェだ」


「はい」

「よろしくお願い致します」

 今度はパルシェの方が挨拶した。まあ彼女の上司になるからな。


「さっきからうるさかったコイツはアリー、アリシアだ。俺の義妹というか、ローザの妹だ」

「よろしくお願い致します」


「それで、こっちに回って……サラ、サラスヴァーダ。俺がやっている冒険者クランの一員だ。この館に住んでいる」


 両人が会釈し合った。


「それから、メイド頭の……」

「あの旦那様。モーガンさんは知り合いというか、私の遠縁の者です」

 マーヤとそうならマーサさんともそうなんだな。知らなかった。


「そうか。最後に。おーい!」


 ホールの奥の方に寝そべっていた、蒼白いウォーグが立ち上がった。

 小走りでこっちにやってくる。


 紳士然としていたモーガンの眉が吊り上がった。

「セレナだ」

 じゃれついてきたので、頭から首筋を撫でてやる。


「はあ……」

「ここだけの話だが。セレナは聖獣だ!」


「あの、聖獣と申しますと?」

「モーガン 食べない から 大丈夫」

「くっ、口を……」

 モーガンは顔を引き攣らせている。


「ああ。人間の言葉を理解できるし、まあまだ片言だが、喋ることもできるんだ。仲良くしてやってくれ。セレナもな」


「わかった」

 撫でるのを止めると、再びゆっくりとホールの奥の方へ歩いて行った。


「驚きました、てっきり魔獣かと。そうですか聖獣というのですか……ああ、館の外では、このことは漏らしません」

「ああ、よろしく頼む。ああ皆、紹介は以上だ」


「ソフィー様。お勉強に戻りましょう……」

「ええぇぇ……わかった」


 俺の方を向いて構って欲しそうだったが、仲良しのパルシェの言うことは良く聞く。階段を昇っていった。


「じゃあ、ローザ。モーガンをこの館と別館……その内に名前も変えるが、案内してやってくれ。この館は手狭だからな上級魔術師の活動はそちらになる。モーガンの執務室もな」

「はい」

「あっ! 私も別館見たい!」

「ああ……できましたら、私もよろしいでしょうか?」

 アリーが手を挙げ、サラが続いた。そう言えばまだ見てなかったか。


「では4人で視てくると良い。ただ今も工事してる。くれぐれも邪魔するんじゃないぞ。アリー」

「なんで、アリーちゃんだけ? って、ラルちゃんは行かないの」


「ああ、俺はまだ用があるからな、これから出掛ける」

「あなた。お戻りは?」

 まだ昼前だし、今日中には帰ってこれるだろう。


「夕食までには帰る予定だが、18時を過ぎたら先に済ませてくれ」

「はい。お気を付けて」

「うん」

 軽く頬にキスすると、その場を後にした。


 門を出ると気配がある。

「……スワレス伯爵領へ行く」

 呟いて都市間転送所へ向かった。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/07/05 スワルス→スワレス

2021/05/09 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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