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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
9章 青年期VI 騎士団旗揚げ編
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165話 人材狩り ~まずは近場から~

確定申告の時期ですねえ。去年まで申告してました。大した項目数のない小生でも、結構面倒臭い物でしたから自営業の方なんかさぞかし大変なことでしょう。ご同情申し上げます。

 懇親会が終わり、王宮の馬車で館まで送ってもらった。珍しく疲れた。


 着替えて居間で寛いでいると、アリーとソフィーがやって来て、王宮での話をしろとねだってきた。

 気を利かしたローザが、編み物をしながら話してやっている。

 

「へえー。王様に何て言われたの? ラルちゃん」

 国王が壇から降りてきたときの話だ。


 アリーがにやにやしてるので疳に障る。

 散々懇親会でも列席者に訊かれたしな。


「お兄ちゃん。それ、ソフィーも聞きたい!」

 おお、そうかそうか。

 聞かせるとも、聞かせるとも……と言いたいところだが、本当のことは言えない。聖獣の件はかなりの機密らしいからな。


「ああいや、別に。励めと仰っただけだ」

 懇親会でもそう答えた。


「何か、あやしーー!! ラルちゃん」

 うるさいな、アリーは。

「そうそう。だって、隣に居た軍人さんには仰らなかったんでしょ!」

 鋭いな、我が妹は。前者は無視で、ソフィーに向き直る。

「さあ、お兄ちゃんにもわからないよ」

「うーーーん。明後日学校に行ったら、シビラちゃんと、オデットちゃんに聞かせないといけないんだよう。きちんと話して」

 おお、友達か。女の子だよな? 名前からして。


「ソフィー、それは友達か?」

 肯いたので、さらに質問しようとしたが。


「それは、どうでも良くて……」

 どうでも良くないぞ、アリー。


「ああ、あれなんじゃない? 隣に居たお姉ちゃんに目も呉れずに、ラルちゃんのとこへ来たんでしょう。王様って男色の気があるとかじゃない? あっ、痛ァアア!!」

 ローザに(はた)かれた。いい気味だ。

 

「不敬なこと、言わないの。夕食抜くわよ!」

 そうだそうだ! ソフィーが居るところで、何てこと言うんだ。


「ねえ、お兄ちゃん、ダンショクって何?」

 ほらみろ!

 

「んん? なんだろうなあ。知らないなあ」

 アリーが笑ってる。

「嘘! お兄ちゃん。なんでも知ってるよね」

「いっ、いやあ……」


「じゃあさ、アリーお姉ちゃんが教えて……あげようと思ったけど、まだソフィーちゃんには早いから5年後にね!」

 途中で眼が泳ぎ、俺とローザが放った殺気をようやく感じ取ったようだ。死ななくて良かったな。


「5年後ぉぉぉ?!」

 5年後でも早いだろう、その時でもソフィーは13歳だぞ!


     †


「で、何て仰ったんだ?」

 ギルマス、あんたもか。

 翌々日。冒険者ギルドに一人で来た。支部長室に居る。


「言えないことだ」

 ギルマスは、何度か肯く。

「ふーん。じゃあ、選抜試験のことだなおそらく」


 鋭い。


「まあいい。それより問題は、騎士団のことだ!」

 うーむ。ギルマスの言う通りだ。頭が痛い。

 家臣を持たないといけないとは、前から思っては居た。


「もう伝わっているのか? ギルマス」

「ははっ、新聞読んでないのか? どの紙にも書いてあるぞ」


「読んでない。どうせろくなこと書いてないだろうからな」

「そうでもないぞ、話題の美男美女の新男爵ってな。スパイラル新報なんかラルフと奥方の似顔絵入りだ」

 そら見ろ、ろくなもんじゃない。

 仏頂面でいると、ギルマスが肩を揺すった。


「まあ、おしゃべりな貴族というのは沢山居る。と言うか、今回列席者が多かっただろう?」

 出席したのは初めてだ。そんなことと知るわけが……。

「そう言えば、先導の係がそんなことを言ってたな」


「ふん。ラルフ見たさという貴族もいるだろうし。謝礼付きの取材を受けること前提でな、新聞社に(そそのか)されて行ったのも多いんじゃないか?」


 やれやれと首を振る。


「それは良いとして。騎士団の話への貴族達の反応は?」

「想像の通りでしょう。我が家の三男を! とか、我が家の甥を! とかね。見ず知らずの人間を採用できるはずもないのに、とにかく売り込みが多くて。長いこと迫られましたよ、俺もローザも」

 あの場に義母上(ダンケルク家)でも居てくれれば、そうはならなかっただろうが。生憎足の具合が悪いからな、長時間の立ち見は厳しいとずっと欠席されているそうで、今回もそうされた。


「だろうな! で、なんと答えた?」

「答えられませんよ。その時は騎士団自体がよく分かっていませんでしたからね。これから考えますとはぐらかしました」


「今は分かったのか?」

「ええ、その日の夜に貴族局から使者が来て、昨日内務省へ呼びつけられました」

「ほう……」

「ええ。で、その内容ですが……」


 男爵と超獣対策特別職になったことに伴う、諸々の説明を受けた。

 騎士団の件は、そのひとつだ。


 宮廷貴族としての男爵の方はどうと言うことはない。

 まずは男爵家として家令を雇うこと。

 参加すべき宮廷行事。

 家門に相応しい品位の保ち方、醜聞に巻き込まれないことなどの戒め。

 準備金として与えられる3万6千ミストと、歳費1万2千ミストの使途の勧め。

 歳費は領地もないので保全の使途もない。

 面倒臭いのは貴族同士の付き合いだ。一応推奨があるようだが、まあ一筋縄ではいかないらしい。とは言え、家令が決まったら、別途教育してくれるそうだ。


 問題は、超獣対策特別職の方だ。軍に所属しないことが20何年ぶりということで、新たに規定が追加されたそうだ。


 出動および戦闘の斡旋の仕組み。

 都市間転送、王都城内の居住、王都内郭立ち入り、王宮立ち入り、王都外郭内での馬車の使用、それぞれの許可証発給。

 俺に付きまとうことになる監視員に対する職務妨害の禁止。

 国の所有する演習場の使用。


 超獣対応時の動員、現地での徴発について限界の規定。

 動員がうまくいかないことを前提に、常勤の配下たる人員、つまり騎士団を組織すること。

 なお特別職には、初年に2万ミストの準備金と年間7千ミストの基礎経費が支給される。ただし1年ごとに残金があれば回収される。逆に出動斡旋が増えたら、経費も加増されるそうだ。


 新規定として、ここで騎士団の話が出て来る。

 騎士団とは、言うまでもないが、超獣対策特別職の配下の組織だ。

 規約としては……。

 王都に騎士団の団長である家宰を置くこと。

 しかも家令との兼任は不可だ。事務手続きも色々あるし、家宰の他にも会計責任者をなど何人か雇う必要がある。


 無論その他にも、遠征時には俺に付き従う人員が必要だ。したがって騎士団には、在王都団員と、遠征団員の二通りが必要になる。


 騎士団には12名までの騎士つまり士爵の任命権を授与される。ならびに50名までの配下1人当たり50ミストの補助金を出してくれるそうだ。多分出してくれる代わりに、人員の登録が必須だ、面倒臭い。


 男爵の歳費と、この経費が支給される代わりに、超獣や魔獣が出現した土地の領主や麾下、在民から対価を要求してはならないことになっている。

 寄付も強要禁止だ。相手が自主的に言い出したときは難しい。


 あとは会計処理方法の概要。固定資産と経費の分離が、なかなか厄介だ。

 経費として認められる使途、まあ主に人件費と武具、防具、魔導具だ。金額の上限、予算案の提出……。そんなこんなで、専従の会計・経理担当も必要だ。

 計算だけなら俺1人で十分だろうが、そこまで持って行く方が労力が掛かる。


 後は拠点が必要になる。

 無論、騎士団の話がなくとも、ある程度の配下を持たねばならないから、拠点が必要になるのは目に見えて居た。


 それで、目を付けていたのが、隣の館だ。

 もともと空き家になっていたが、昨年の11月に退去された。売りに出すことをローザが知っていたので、1ヶ月ぐらい前から声を掛けていた。内見して昨日の内に契約した。代金は5500ミストだ。


 騎士団でなければ、そこだけで十分かと思っていた。が、常設の軍団となると、宿舎や訓練所などの遠征団員の拠点も必要だ。おそらく、城外の外縁に拠点を設けることになるだろう。隣の館は、騎士団の公的な拠点にしておくべきか。


「しかし、どうして騎士団なんて言いだしたんですかねぇ……」

「おそらく前例の轍を踏まないようにだろう」

 何だかギルマスは詳しそうだな。

「前例?」


「ああ、冒険者が上級魔術師に成ったことが20年程前にあったことは知っているだろう。まだ試験方法が変わる前のことだ」


「ええまあ。ただ結構過去の話なので詳しくはないですが。それが何か?」

「ああ、その冒険者上がりは超獣との戦闘時に死亡した。上級魔術師に成って2年目のことだ」

「ほう……」

 そういうことか。ただ……。


「その人って、ギルマスの知人とか、ああギルドの関係者ですか?」

「いいや……、俺がギルド職員になる前の話だ」

 外したか。


「ラルフは知っていた方が良いだろう。バルサムの兄貴だ」

「……そうなんですか」


「後から聞いた話だが、兄貴は冒険者でな。バルサムは深緋連隊サカラートだったんだがな。他言は無用だ」

 何時にない締まった表情だ。

 それにしても、そういうことだったんだ。なるほどな。

「はい」


「ああ、話が逸れたな。それでだ、なぜ戦死したかと言うと、現地の領主と対立してな。

人員の動員がうまく行かなくてな」


「なるほど、それで常に付き従う麾下が必要だと……。ならば、軍に入ることを強制すれば良いのでは?」

 俺自身は困るが。


「もし、大貴族が上級魔術師に成ったら、どうする。そいつらは軍など入らないぞ。そんな前例があるのは、合格した魔術師を大貴族の一族に加えたと言うものだがな」

「そういう、立て前ということですか。助かりましたね」


「ふん。ああ、そうだ。頼まれていた、財務の人材だが。西支部にも照会したんだが、なんとかなりそうだ」

「そうですか。ありがとうございます」


「2人を明後日そっちに行かせる。それで決めてくれ、おまけも来たがな」

「分かりました」

「そっちも報酬はギルド通さなくて良いからな」

「助かります」

 ギルマスが何度か肯いた。


 むっ!

 ノックが有って、ローブ姿のバルサムが入って来た。

 今日の主目的だ。


「おお。来たか、バルサム」


 立ち上がった俺と暫し睨み合い。


「依頼の件。引き受けるかどうかは、ラルフの戦い方を見て決める」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/02/21 誤字訂正(ID:702818さん ありがとうございます)

2021/05/09 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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