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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
8章 青年期V 上級魔術師選抜試験編
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157話 第1次実技試験

実技試験ってもちろん受験者も大変なんだけど……試験官が結構大変なんですよね。私がやってたのは、とある社内試験だけど使う設備や器具の準備やメンテナンスもだし、受験者に平等に受けてもらおうとか、筆記試験にはない様々なアクシデントとか、気の使い方が半端なかったです。

でも、ちゃんと受験できて当たり前なんですよねえ。

 上級魔術師選抜、実技1次試験は始まっている。

 時刻から言えば順番は俺の2人前、つまり5番目の人まで来ているはずだ。指示された通り、測定塔と呼ばれた尖塔の近くまで来ると、また柵があった。


 ん?

 尖塔の頂点付近に何やら細い線が見える。

 ミスリルか……。

 3基の尖塔を囲うように巻き付けてあるようだ。

 何の機能、いや意味があるんだ?

 考えつつも、立て看板に描かれた矢印に従って歩いていると、塔の手前に設置されている何張りかの大きなテントが見えた。番兵が立っている。


 7番という番号札を見せると、1つのテントを示し、こちらお待ち下さいと案内された。


 中に入ると、深緋連隊(サカラート)の軍服、6番さんが居た。

 こちらに気が付いたので、会釈すると少し間を開いたが向こうも返してきた。

 受験の注意事項に、候補者同士の接触は最小限に留めることとあったし、話しかけるのはやめておこう。そのまま少し離れた椅子に座る。

 もうひとつ人が座って居ない椅子があるが、背もたれにコートが掛かっている。


 5分ぐらいすると、20歳代後半から30歳位の軍人が入って来た。普通の軍服だ。

 俺と6番さんを睨み付けると、足音を荒らげて空いていた椅子に近付き、コートを引ったくった。ばさっと払って羽織ると、そのままテントを出て行った。どうやら5番さんだったらしい。


「未熟者め……」


 漏れ出た言葉に振り返ると、6番さんが顔を背けた。

 まあ、彼の言う通りだ。

 上級魔術がこの距離で発動すれば否応なく気付く。

 時間間隔からして、5番さんは1回しか上級魔術を発動していない。ならば不合格だ。


 しばらくして別の男が入って来た。係員だ。

「6番の方、出番です。私に付いて来て下さい」

 肯くと、一瞬こちらに視線を向けてから、テントを出て行った。


 1次試験の持ち時間は、各自10分。

 その間に限定状態における上級魔術相当強度の魔術を2種類発動する必要がある。

 持ち時間以内であれば、試技回数に制限はない。


 6番さんが出て行って、しばらくして火属性魔術、それからさらに3分後に風属性魔術が発動した。いずれも上級魔術だ。おそらく彼は1次試験を通過したろう。


 その間に、別の軍人が入って来た。軍服は深緋連隊(サカラート)のものだが、6番さんとは別人だ。8番さんらしい。


 それから、少し経って係員が俺を呼びに来た。

 テントから出て付いて行くと、柵が見えた。柵は直径20ヤーデンに丸く設えており、その中に3基の尖塔が立って居る。柵は1箇所切れておりアーチ型の門が有った。

 その横に高さ1ヤーデン程の台がある。上面が土で汚れて居るところを見ると、人が乗るようだ。

 脇に籠がある。ああ……あれか。


「恐れ入りますが、着衣と靴を全て脱いで、その籠に入れて下さい」

 はいはい。

 魔導具を使った不正を防止する為だ。予め知って覚悟しているので、言われた通り、真っ裸になる。


「では、その門を潜って中央へ移動して下さい」 


 門を通り抜けるとき、微かに魔界強度を感じる。薬師ギルドの書庫の関門にあったものと同様の検知器に違いない。


 中に入ると、一抱えもある煉瓦積みの基部があった。そこから上に向けて鉄塔が生えている構造だ。


 2本の基部の間を通り、対角にある尖塔の狭間、正三角形の敷地の中心へ向かう。

 見上げると、尖塔の頂点付近にミスリル線が何重かに巻き付けられている。

 

 ん? 審査員が来た。相変わらず変な覆面を被っている。


「候補者番号7番。ラルフェウス・ラングレン殿ですね?」

「はい」


「それでは試技のやり方の詳細を説明します。魔術は頭上の三角に張られた線の内側を通して下さい。外れた場合は威力に拘わらず無効です」


 ああ、あのミスリル線は魔導コイルか。魔束が鎖交すれば、予め印加している探査魔束の波形が歪み、測定できるというわけだ。


 しかも的がある訳でなく、魔術は虚空に消えていくだけ。だから的が壊れず、客観的な評価ができる訳だ。このシステムを考えた人は賢いな。

 それはいいとして、狙うのは真上か。少しやりづらいが、あのデカい三角を外すことは考えられない。


「次に、候補者が発動した魔術が基準に達しますと、三角に並んだ尖塔の中程にある魔導判定器が輝きます。そうしましたらできる限り早く魔術を解除して下さい。輝きが消えたら2種類目に移って戴いて結構です。なお、魔導具の使用が感知されますと審議対象となりますので、絶対にやらないで下さい。よろしいですか?」

「はい」


「最後に。10分経っても基準に達しない場合は遺憾ながら終了を宣告します。逆に5分未満で、2種の魔術で基準を満たした場合は、その時点で1次試験は通過、通過者の人数に関わらず2次試験進出が決まります。それ以降は通過者が4名に達するまで、終了時間で競って戴きますので、ご承知置き下さい」


 要項で読んだ通りだ。最終確認だな。


「わかりました」

「では、始めて下さい」


 さあ、さっさと済ませよう。


 右手を天に掲げた。まずは定番の……。


鮮紅炎(プロミネンサ)!!】


 赤紫の卓越した焔が、腕の遙か先で出現した。

 熱っ! 一瞬で空が夕焼けのように染まり輻射熱が押し寄せる。

 やばっ!


【|解除:|鮮紅炎!!!!!】

 焔を調整しようと思った刹那。魔導具が輝き、火属性魔術を中絶した。


 1種目が終わった。思ったより基準が緩い。

 次は、予定を変えて雷撃にしよう。


 むう、もどかしいな。

 発動の準備は整っているが、塔の中程にある判定器の輝きがなかなか消えない。まさか、壊れてないよな。

 心配しかけた頃、やっと消えた。


金剛迅雷(ヴァジュラム)!】

 目が眩む紫電の塊が駆け抜ける。

 とは言え、所詮元が中級だ。南前門で使った時より集約して魔力を込めたが、後悔した。判定器が輝いているかどうか見えない。


治癒(サナーレ)!!】

 恥ずかしながら、左手を瞼に当て行使すると網膜が回復した。

 上を見ると、判定器は再び輝いていた。


 終了だ。


 あれ?

 審査員に顔を向けたが、終了の宣告がない。別の審査員も同様だ。


「ああ……もう良いですかね?」


「あっ、はい。」

「あーいや。駄目だ! 第13項該当だ!」

 13項?


「そうだ! そのまま、7番候補者は、そのままでお待ち下さい!」


 はっ?

 もしかして審議なのか?


 台を飛び降りた審査員の2人が、血相変えてアーチ門から入ってきた。

 どういうことだ?


「済みません。不正はないとわかっていますが、規則ですので!」

「はあ……」


 これも魔導具だろう、何かゴテゴテした棒を手にしている。

 それを、全裸の俺の各部に擬しながら、何事か調べている。なんで股間が念入りなんだ。男同士だが、少し恥ずかしいぞ!


 地面を調べていた、もう1人が寄って来る。

「どうだ?」

「反応有りません」

「だろうな。そっちはぁ?」


 柵の外に居る1人に声を掛けると、その審査員は大きく手を振った。


「申し訳ありません。1分以内に2種とも基準に達した場合……さっきは10秒程しか掛かって居ませんが、特異事項13項に該当しますので調査させて戴きました。結果は問題ありませんでした。一次試験ですので、これ以上の再審議はありません。本日同様明日10時に開始の二次試験に進んで下さい。お疲れ様でした」


 なるほど。試技時間の問題だったのか。


「了解しました。ありがとうございます」

 一応礼を言って、一次試験会場を後にした。


     †


「10秒か……信じられん」

 審査員が覆面を外しながら零すと、残る2人も寄ってきた。


「ああ9秒5だな。有り得ん」

「気の所為だと思うが……1種目の後、判定器が消灯するのを待っていたような」

「ははっ、冗談は止せ」


「これまでの歴代最短は、電光(ブリッツ・デ)バロールだったはずだが」

「10年少し前だったか。初の13項適用で、結構陸軍が騒いだよな」

「ああ……今回も厄介なことになりそうだ」

「そうだな」


「ふん! しかし、ミストリアの為にはなる。我等審査員は周りの思惑などは無視し、粛々と審査を進めるだけのことだ」

 残る2人は肯いたが、その表情は芳しくなかった。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2021/05/09 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/09/24 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2025/03/01 誤字訂正(ran.Deeさん ありがとうございます)

2025/05/20 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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