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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
8章 青年期V 上級魔術師選抜試験編
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153話 第2回披露宴(上)嵐の前の静けさ

世の中、義理でやるイベントってのはなかなか億劫ですよね。小生のそう多くない経験ではそうでしたが……。

 砂丘の地底──

 氷漬けとなった火蜥蜴(サラマンドラ)が弾けた広間で、水晶の6角柱をまた見付けた。(ワイズ)晶片(クオーツ)だ。

 今回も古代の超技術が入っていることが期待されるので、情報だけエルフ辞書(ペディア)に吸い上げ実体の方はそのままにしておいた。

 地底から出た後、外殻を土魔術で塞いでから、砂丘に開いた大穴を砂で埋め直してから引き上げた。


 館に着いてから、情報を見てみたのだが。


 あれ?

 目次がない。索引もない。

 んんん?


 えーと。無理矢理適当に情報を読み込む。

 橄欖(かんらん)石。ケイ酸塩鉱物……なんで橄欖石だ? 次だ!


 細胞壁。植物や菌類に見られる細胞の構造。はっ? 次!


 遠心力。回転座標系における慣性力の成分ベクトル。


 …………

 ……


 むう。情報と言えばそうだろうが。

 ざっくり科学系ということでは共通しているが、分野も順序もデタラメだ!


────宿主殿!


【なんだ? ガル!】


────分かったと思うが、情報はそのままでは役に立たない


【そうらしいな】


────エルフ辞書は、我等らの時代の技術規格だが、これらには合わない


 なるほどな。

【何とかできるか?】


────任せておけ! 少々魔力を消費するがな


 自信があるようだ。

【分かった。よろしく頼むぞ!】


 そういうことがあったので、戦闘になるようなことを控え、エリザ先生に出された課題をこなしていると、あっと言う間に10日が経った。


   † † †


 今日、1月15日は第2回披露宴、王都の部の日だ。


 郷里のシュテルン村でも似たような宴をやったので、正直3度目ともなると食傷気味なのだが、色んな義理があるので喜んでやっている(てい)にしなければならない。


 会場は、ダンケルク子爵家本館から二筋北に行ったところにある別邸だ。


 綺麗に手入れされた庭に、大きなホールを内包する建屋がある。

 ただ、ここには誰も住んでは居らず、パーティーや今日のような催しがある時にのみ使われるそうだ。

 ちなみに王都城内にあと2つ別邸があり、少し王都から離れたところにも別荘があるそうだ。

 改めて子爵家の裕福さを思い知らされる。

 あの館を俺にくれる(無償譲渡)わけだ。

 ちなみに正式な登記も最近済んだ。


『ローザの持参金代わりと言うことですか?』

『まあ! 結婚のお祝いよ!』


 そう言った時の、義母上は分かっているでしょという笑顔だった。

 俺にディアナ嬢を宛がおうとして無理だと悟り、勝ち馬に乗ったわけだ。ならば、馬に過ぎないローザに思い入れはそれほど無いはずなのだが。


 最近の義母上とローザの親密ぶりを見ていると、単純に割り切れない。

 そもそも王都に来る前、館を貸したのは文通相手であったローザを気に入ってのことだしな。


「はい!」

 ノックに回想が破られ振り返る。


「ラングレン様。新婦様のご用意が整いました」

 ダンケルク家の執事の声だ。待ってました!


 廊下から出てしばらく佇んでいると、ローザが義母上の手を引いて出て来た。


 おおう。

 薄紫のシルクのドレスを着ている。色白なローザに素晴らしく映える。

 郷里での姿ではない、初めて見る。


「綺麗だ!」

「はい」

 開いた手で襟元を直しながら、胸元を見ている。

 ドレスを褒めたのではないのだが。


「お義母様に貸して戴きました」

 そうだろうな。

 ローザが自分の為に誂えたにしては、とんでもなく高価なドレスだ。


「ラルフさんにもっと頼って大丈夫なのにねえ。それはともかく、あなたの体型に合わせて手直ししたのだから、もうローザの物よ!」


 義母上がローザの手をこちらへ掲げ、微笑む。

 笑い返して受け取る


 すべすべとした滑らかな手指。

 ついこの間まで、俺に手を触られるのを厭うていたのに、別人の肌だ。

 苦労させていたな。

 嬉しく思う。

 手を荒れさせる仕事が無くなったわけではない。大いなる偽善だが、それでもだ。


「では、お客様をお出迎えしてきなさい」

「はい」


 ホールに出る。主な催し場だ。なんかちょっとした競技ができそうな位、でかい。 


 既に客が入っていたので、連れ立って近付いていく。

「やあ! 皆んな。よく来てくれたね」

 クルス君、ヨーゼフ君、ペレアス君。俺の学院での友達だ。


「やあ。ラルフ君。おめでとう!」

「「おめでとう!」」

「ありがとう! 妻のローザだ」

 にこっと笑って会釈すると、男性陣はおおっと唸った。まあそうだろうな。


 ただ予期しない級友の女性陣も来ていた。隣のテーブルに居る

 彼女らに招待状は送っていないが、受付を通ってきているわけだから、クルス君達の連れとして来たに違いない。

 招待客は、同伴可と招待状に書いたからな。

 横目でクルス君を見ると顔で謝っている。きっと彼女達に強訴されたのだろう。


「アネッサさん、ジゼルさんにドーリスさん。よく来てくれたね」

 アネッサといつも一緒に居る2人だ!


「うん……おめでとう」

 そう言いながらも、ほぼ俺の方を見ていない。


「ああ、ローザ。この6人は修学院の同級生だ」

「そうですか。本日はありがとうございます。主人がお世話になっております」


「はあ……花嫁さん、すっごい綺麗なんだけど、ねえジーちゃん」

「うん。美男美女?」

「まあ、ラルフ君が私達女子に見向きもしない理由がこういうことだったのねえ……」

「うんうん、びっくりした! お館にもびっくりしたけど」

「ジーちゃん、建物でビビってどうするのよ。貸衣装代、髙かったんだからね」

「そっ、そうそうよね」


 話がどんどん変な方向へ行くなあ。


「ああ、ラルフ君。子爵様とか貴族様には、失礼の無いように責任もって監督するからさあ」

 いや、クルス君。それができたら連れてきてないだろうとは思うが。

「頼むよ!」

 と一応言っておく。


「私達だって、牢屋に入りたくないもん。大丈夫、暴れないから!」

 いや、そういう次元じゃないのだが。


「……じゃあ、今日は楽しんで行って下さい」

 彼らに軽く礼をして、ホール入り口に向かう。新しい客だ。


「やあ。ラルフ、そして花嫁さん、おめでとう! お招きありがとう。」

 ギルマスだ。秘書のラウラさんを連れている。


「ありがとうございます」

「おい! サーシャ!」

「今……行きますって!」

 ギルド受付嬢のサーシャさんが入って来た。


「ラルフさん、ローザさん。おめでとうございます」

 あれ? なんだか少し落ち込んだように表情が暗いんだが。

「ありがとうございます」

「……でね」

「あーー」

 ん? ギルマスが割り込んだ。

 サーシャさんは、まだ言いたいことがあったようだが。

 ラウラさんがサーシャさんの腕を引っ張って奥へ連れて行ってしまった。


「ああ、そうだ!」

「バルサムか? ヤツは急な用ができてな……」

 出席してくれると回答があったが、欠席のようだ。


「そうですか。分かりました。ですが、サーシャさんは大丈夫ですか? 気分でも悪くなったとか」

「んん……大丈夫だ。ラウラが付いてるからなあ」

「そうですか。何かあったら、いつでも言って下さい」

「おお、分かった!」


 それから、バナージ先生と奥さんが来られた。


「ありがとうございます、先生。ようこそ。ローザ、担任のバナージ先生だ」

「主人がお世話になっております」


「あのう、先生お願いが」

「おお、なんだ?」

「中にアネッサ達が!」

「何? 呼んだのか……そんなわけ無いな。ああ分かった、任せておけ」

「よろしくお願いします」


 これでなんとかなるか。


 それから見知らぬおばさま方が団体で来られた。誰なんだろうと思いつつ見ていると最後に続くのはマーサさんだ。いつものメイド服ではなく、着飾っている。

 ということは……。


「皆様、ありがとうございます」

 ローザが前に出て礼を言う。彼女の客だ。メイドさん関係なのだろう。


 客足が途切れた。これからは貴族の招待客が来る時間帯だ。

 2人で広間を出て、玄関前の小ホールに進む。


 そこには執事が2人待っていた。俺が知らない招待客の名前を教えてくれる為だ。

 広間に通じる扉の前に陣取った。


「アリー達も来れば良かったのに」

「そうだな」

 ソフィーに、サラも来てはいない。


『いやあ、貴族様が一杯来るんでしょ。遠慮しとく』

『シュテルン村の時は出たので……』

『私だけ行ったら場違いなので……』


 アリー、ソフィー、サラの順での断り文句だ。

 まあ確かに、今日の披露宴は、ちょっと性格が違うからな。


 お、馬車だ。

 黒いベールを付けた修道女が降りて来た。


「エリザ先生、ようこそ!?」

 それに続く人物を見て驚く。


「ああ、院長先生……ようこそお出で下さいました。ありがとうございます」

 俺は胸に手を当て礼をすると、ローザもドレスの裾を摘まんで軽く跪礼した。


「ラルフェウス君、ローザンヌさん、おめでとう! 光神の祝福あらんことを!」

「おめでとう! おぅぅ綺麗な花嫁さんだなあ。この幸せ者!」

 あのう、エリザ先生。俺の脇腹に肘を入れるのは……ほらほら痛かったでしょう。

 先生は腕を摩りながら、中へ入っていた。

 俺の腹筋は硬く鍛えてますからね。


 それはともかく。院長先生は、招待はおろか予定もしていなかった、まずいな。

 扉の横に立っている執事を手招きすると、滑らかな身の熟しで寄ってくる。

「何でしょう?」

「祝辞挨拶の追加を頼む。先程の男性神職、私が通っている修学院の院長であるグスターブ様だ。時間の調整と本人への依頼は任せる」

「承りました」


 馬車が軋る音がして車寄せに横付けされると、着飾った招待客が降りて入ってくる。


「……ミハイロ男爵ご夫妻です」

 別の執事が小声で名前を伝えてきた。


「ミハイロ卿、奥様。ようこそお出で下さいました」

「ラングレン卿。おめでとう」

「ありがとうございます。どうぞ中へ」

 略礼していると中へ入って行った。


「ラングレン卿。おめでとう!」

「オルディン様、ありがとうございます。ようこそ」

 最近知り合った、伯爵様の弟殿が来てくれた。随分にこやかだ。かなり喜んでいてくれてる。隣に奥様だろう小柄な女性が腕を組んでいる。


「ああ、お招きありがとう それにしても随分立派な建物だねえ」

「そうですねえ」

「ああ、次の方が来られたな。じゃあ、また後で」

「はい」


 次々入来される、貴族の名を教えて貰い、挨拶を交わす。

 流石は執事、全部客の顔を憶えているようだ。まあ感知魔術でも分かるのだが。


 20組以上の貴族招待客を迎え入れ、少し間が開いた。

 だが執事が終わったと言って来ない。つまり、まだ予定数に達していないと言うことだ。

 まだ到着していない客は。おそらくは……。


 すると、白い馬車が横付けされた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/01/23 副題追加

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/03/01 誤字訂正(ran.Deeさん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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