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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
8章 青年期V 上級魔術師選抜試験編
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151話 夜行供一頭

夜行……夜行動するの結構好きです。特に涼しくなって来た位の秋が良いですねえ。

「ラルフ ひとり で どこ行く?」


 夕食後。

 出掛けようとしたら、ホールの暖炉前で寝そべっていたセレナが起き上がってきた。


「ああ、ちょっとな」

「一緒 に 行く」

 そう言うと思ったから、言葉を濁したのだが。


「いや、急いでるんだ。空を飛んでだなぁ」

「問題ない」


 はっ?

 てくてくと俺を追い抜いて、玄関を出ていく。セレナは、庭まで出て上体を持ち上げると地面を蹴った。


「おお。飛んだ!」

 凄い。

 何も無い宙を走るように飛んでいる。しかも結構速いぞ。

 扉を閉めて追いかける。


「ほぉぉ、いつ飛べるように成った?」

「聖獣 に 成った 時」


 そう言えば、このところ喋り方が流暢になってきてる。聖獣になって知能が上がってきているかも知れない。


「そうかそうか。じゃあ、一緒に行こう。ちゃんと城門は通らないといけないから、一旦降りるぞ」

「うん」


 東門を出る。

 まだ7時前だから人通りもそこそこある。もう春だからな。

 路地に入って光学迷彩魔術を行使し、空へ跳び上がる。


 空気中の水蒸気が多いのだろう、満月が霞んでいる。


「ラルフゥゥ」

「オワッ!」

 体当たりしてきたのを避ける。

 何だかとても嬉しそうにしてる。長期休暇の間は色々あって、余り構ってやれなかったからだろう。


 それにしても、どういう原理だ? セレナの脚が速く動くと飛行速度も上がる。後日検討するか。


「セレナ、付いてこれるかな?!」

 飛行速度を上げると、必死に付いてくる。


「ラルフ 意地悪!」

 声も明瞭に聞こえる。

 じゃれつきながら飛んでいると、8ダーデン程の距離もあっと言う間に着いた。


「ここなの?」

「ああ、ベルス砂丘だ!」

 ベルス砂丘と小さく復唱している。


 半年ぐらい前、王都に来た頃は時々来ていたところだ。ここまで来れば流石に人目はない。昼に来ても良いのだが、ソフィーが淋しがるからな。それは、もう少し猶予しよう。


 女王大砂虫(サンド・ワーム)を葬った中央部を通り越して東の寄りに降りる。あと5ダーデン東行けば、丘陵の扇状地から、さらに高原へと繋がっている。


 地中に砂虫の反応は無くも無いが、精々人の背丈くらいだ。放っておこう。

 エリザ先生の本で見た印はこの辺のはずだ。もっとも、古地図上では砂丘の東端だったのだが、時の流れと共に高原から流れてきた礫が砂丘を広げ、端からは離れている。

 降りるぞと宣言して降下した。傍らにセレナも着地した。


「何 が 有る?」

 セレナの言う通り、緩やかな砂の起伏があるばかりで、特に目印に成る物も無い。が、何やら地中には反応がある。


「分からないが、結構大きそうだ」

 跪いて掌を、砂面に掌を着ける。


魔感応(レゾナント)!!】

 感応領域を下方に指向させ探ってみる。


「金属? 地下30ヤーデンぐらいか。砂が邪魔だな……ああ、セレナ、飛び上がってくれ」


魔収納(インベントリ)!!】


 砂が直径150ヤーデン程消え失せる。

 突如落差30ヤーデンの断崖ができた直後、雪崩の如く崩れた。もうもうと砂煙が上がる。境界部分に斜面が生まれたものの、中央部分までは及ばなかった。

 目算通りだ!


 下の方は、意外と水分を含んでいるな。おそらく扇状地の途中で地下に消えている川の水だろう。


 直径50ヤーデン程、砂ではない平面は露呈した。


────宿主殿、何やら表面に紋様が見えるぞ!


 んん? 暗視するより……。


魔灯(イルミナル)!】


 魔光源を出現させ、頭上50リンチ(45cm)に固定すると、明々と謎の構造体が浮かび上がった。

 感知した通りだが、金属……何やら合金だな。鉄に錫、ミスリルとかだな。

 その上面に何か描かれているようだが、砂が被っているので判然としない。


光壁(オーラ)!!】

西風(ゼフィロス)!!】


 光る障壁で防ぎつつ、風で残った砂を吹き飛ばす。


────おお、見えるぞ!


 幾何学紋様の周囲に蔓草のような有機的紋様

 課題書籍にあった構造強化魔術に近い気がする。


 再び魔感応を行使して、構造体の中を探る。

 ふむ、魔導波が通り難い材質なのだろう、詳細は分からないが稠密な塊ではない。この下には結構大きい空洞が有るように感じる。


────然り! 古代遺跡だ


 だろうな。

 あの地図に示された印は、今回も正しかったということだ。


 まあ、それは良いとして。入口は……分からんな。

 

 穴を開けると、後で叱られるだろうが。この段階で当局に通報したところで、中に入られるようになるのは相当先になるだろうし。俺を入れないようにする可能性の方が高いからな。

 やむを得ない、孔を明けよう。


 しばらく歩いて、せめて文様を避ける。


閃光(ゼノン)!!】


 眉間のすぐ前から発した光線を螺旋状に掃引させると、昇華した金属がもうもうと白煙を上げる。


西風(ゼフィロス)!!】

 金属蒸気が再び付着させないよう、吹き払いながら縦坑を穿っていく。


 一気に孔を開けることもできるだろうが、仮にも学者……の卵としては、なるべく壊さないようにしないとな。


 おっと!

 5分も経った頃、光輪の内側にある殻がずり落ち始めたので、慌てて魔収納へ格納した。

 覗き込んだら、空間が空いている。

 中に……風で砂が動いている。ここは窪になっているからな。埋まる可能性もあるか。


地壁(マウアー)!!】

硬化(アダマント)


 縦坑の周囲に砂堤防を作って、硬化させていく。自分の背丈位まで積み上がった。何だか蟻塚の入口みたいだ。

 これ少し風が吹いたぐらいでは埋まらないだろう。


「どうする? 付いてくるか?」

「もちろん」

「じゃあ、穴の周りはまだ熱いからな、触らないようにな! 先に行くぞ!」

 縦坑に突入する。

 数ヤーデンも降下すると床に着いた。

 上からセレナも飛び降りてきた。


「むう」


 ……少し饐えてる。淀んだ空気だ。

 長い間換気したことがないようだな。だが、まあ息苦しくはない。いけそうだ。


 辺りを見回すと、そこはやはり広間のようだった。

 丸柱が10ヤーデン程の間隔で立っており、それ以外は何も無くガランとしている。

 最外殻は金属だったが、内部は他の遺跡と同じように石造りだ。ただ相当な石工技術、建築技術を駆使されている。なめらかな肌理、継ぎ目も隙間無く詰まっている。ナイフとかも食い込みそうにない。


「ラルフ あっち!」

 セレナが、何も言わず歩き出した。もう少し観察したかったが付いていく。


 その方向が仄かに明るい。

 歩いて行くと、床が明るかった。さらに近付くと下へ続く階段があった。

 無造作にセレナが降りていく。


 5ヤーデンも降りると、セレナが止まっている。突き当たりだ。右と左に通路が開けていた。右は50ヤーデンほど先で緩やかに左に曲がっている。左は同じように緩やかに曲がってる。


 どっちに行くかと考えている内にセレナが左に行った。まあ聖獣様の勘に賭けるのも悪くないか。


 そう思って間もなくだった。

 曲がり角の向こうから、気配とけたたましい足音が押し寄せて来る。

 なんだ?


 2体が曲がって来る、騎士?

 甲冑武者だが、何か色が変だ。板鎧が金属ではない。石でできているではないか。

 それらが擦れ合いぶつかり合いながら、耳障りな不快さを増幅させて迫ってくる。


 その刹那。

 セレナが床を跳ね壁を蹴って、爪が燦めいた。

 武者一体が瓦礫と化し、もう一体が体当たりを受けて横倒しとなる。


 凶悪な頼もしさだが、残念ながら2体で済む騒音じゃない。


「セレナ、退がれ!」

 通路を埋め尽くす程の大群が曲がってきた。

 首に喰い付いていた青狼は地を発し、数完歩で俺と擦れ違う。


衝撃(エンペルス)!】


 横並びになった武者が、蜂の巣に成って倒れ伏せた。が、そいつらをなかったことにするように、押し寄せて来る。


 ふふふ……。


 俺は、右腕を持ち上げて歩み出した。


萬礫(ズァヘイル)!!】 【萬礫(ズァヘイル)!!】 【萬礫(ズァヘイル)!!】…………


 角を右に曲がり、さらに魔術を連射する。その度に、騎士を貫通し弾け飛んだ。

 

 何十も、何百体も。

 立った者も崩れ落ちた物も、知ったことではない。

 耳を劈く轟音が、無数に(こだま)した。

 俺を阻む何物も許さず、幾度も幾度も礫を撃ち続け、崩潰させ吹き飛ばし続けた。


 やがて遮る物すら無くなり行進が止まった。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2021/05/09 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/10/09 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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