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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
7章 青年期IV 王都2年目の早春編
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141話 人格解離

解脱って、何ものにもとらわれない状態と聞きます。それって人間辞めてるよなあと思うのですが。うーむ、煩悩有り過ぎますね、私。

 悲しげな遠吠えが響き、見上げると墜ちる前に見上げていた天井が目に入った。

 かなり鮮明だ。 

 高低差は150ヤーデン程に見える。


 シュァァァ……。

 聞き覚えのない音と共に、消えた床が塞がっていく。

 それが、完全に前に閉じ切る前に、何かが飛び込んできた。


 蒼白き礫──

 それは墜ちながらも壁を蹴りつけ、対角線に跳んだ。勢いを殺し、最後にはふわりと我が傍らに降り立ったのは、セレナだ。

 心配そうに我を見上げた。


「愛いやつ」


 後頭から背筋を撫でる。

 手の跡が仄かに輝きだすと、全身の毛という毛の青さが際立った。


 それを境に茫洋とした意識が明瞭となっていく。

 思考が回り始める。

 俺からセレナへ、何かが(うつ)ったような。


「ラルフ!」

 ああ。

 クゥンと喉を鳴らしてまとわりつき、俺を一回りすると眼が合う。

「ラルフ! 大丈夫? 痛くない?」

「えっ……」


 喋った……それもちゃんとした発音で!

 念で意思疎通はできたし、”ラルフ”だけは前から言えた。が、それもアリーによれば飼い主の欲目だそうだ。


「セレナ、お前喋れるようになったのか?」

「喋れる? 私 喋ってる?」


 たどたどしいが。

「おお喋ってるぞ。立派に喋ってるぞ」

「うれしい ラルフ 撫でられた 何か 入って来た 温かい」


 そうかそうか!

 頭と言わず、喉と言わず、思いっきり撫でてやる。


「ラルフぅーーー」


 うん、うん。

「だけどな、セレナ。危ないからな。無理に俺を追ってきたら駄目だぞ! あんな高い所から……ん?」


 もう一度見上げる。

 抜けた床は完全に閉まって復元されていた。壁に真新しい焦げ痕があるな……いや、それより。


 高低差150ヤーデン?

 あそこから墜ちて……ここにぶつかるまでには、6秒と掛からないはずだ。


 ありえない。あの浮遊感は何だったんだ?

 飛行魔術を発動できた時でさえ、床まで100ヤーデンはあった。


 深瞑(シマラナ)を使ったと言っても、確実に20秒は落ち続けていた。

 ならば仰ぎ見る天井は、1000ヤーデン以上の高さがなければならない。だが現実はは高々150ヤーデンだ。


 わからん。幻でも見たというのか?


────そうだ、幻を見せたのだよ


「誰だ!」

 そうだ、さっきもこの声が頭に響いていたんだった。

 あの時に似てる。


「ラルフ?」

「あっちか」

 声と言うよりは、念が来た方へ首を巡らせると明るい横坑があった。

 セレナもそちらを視ている。


「行ってみるか?」

「うん」

 横坑に向けて歩き出す。


 縦坑の切れ間を過ぎたとき。

 突如、真っ黒な空間に包まれる。


「ラルフ!」

 横にセレナが居る。周りは黒く奈辺すら見えないというのに、セレナは、いや自分の腕もクッキリと見える。


「大丈夫だ!」


 光で視ているのではないのか?


────良い推理だ!


「どう言うつもりだ?!」


────それについては、我が答えよう


 別の念……こちらは、聞き覚えがあるぞ。


────おお、その声は、やはりガル! ガルではないか


────ふふふ……ゲド、久しいな。


「ガルガミシュ9世!」

「何?」

 セレナが不思議そうな顔だ。彼女にも伝えようか。首筋に手を当てる。


────ああ、ラルフ殿。こやつは、ゲド、ゲドネス5世。我と同じ、エルフの領主でな。


「古代エルフ部族?」

 知り合いか


────ガルだと見て反応したところ他人だ 騙されたと


「それで殺そうとしたのか」


────いや、記憶を偽ろうとしただけだが……悪かったな

────ハハハ 見事にラルフ殿に術を破られたな

────むうぅ


 ふむ。そう考えれば辻褄が合わぬことも無い。一応信じておくか。


────そうか あれから千有余年 お主も現し身となったか。


 それにしても、エリザ先生の地図に記された印は、ガセではなかったのだな。

 現し身と言うと、このゲドネスという念の主も、既に死んだ者か。魔導具となって、千年後の現在も存在を示しているということか。


「ガルガミシュ。あんたは、ターセルの遺跡の奥空間と共に滅んだのではなかったのか?」


────うむ まあそのつもりではあったのが 貴公の振る舞いは面白くてな


「面白い?」


────渡した秘術に紛れ込ませて、貴公の中に居る


「なんだと?」


────気にするな 貴公が魔力を活性化した時しか、意識はない 普段は眠って居る


 本当かよ?


────そんなことは、どうでも良い! ガルよ、この人型は天使なのか?

 古代エルフが論争を始めている。


────ふふふ、そうだった ラルフ殿は人間だ! 人族だ! ただ……


「ただ?」


────確かに、さっき墜ちていた時は、これまでにない魔力の高まりがあった

────そうだな、まるで天使の如く見えたが


────何かの縛鎖を引き千切るのに必要だったのだろう


 そうだ。

 確かに、俺は何かに打ち克った。


 そして──


────なにものにも囚われぬ境地 まさしく神の如き所業だった!


「神?」


────いや、天使だ! 神ではない!


「どう違う?」


────神は下界には降りてこない 御姿を現すのは天使だ


 なぜだか興味深い。


「あんたは、天使を見たことがあるのか?」

 なんでこんなこと訊くのか? 自分で自分が分からないが。


────いや、ない。


 どうしてなのか、ほっとする。


────無いが 天使は力の象徴だ!


 ふむ。光神教とは教義自体違う。

 古代エルフ族は、人族が広めた光神教とは違う宗教を持って居たというからな。

 

「ならば、神とは何だ?」


────神とは数だ!


「数?」


────自然数 整数 有理数 無理数 複素数 この世にあるものは 全て数だ!


「自然を記述し、法則を司る。故に宇宙は数でできている」


 そういう説を読んだことがある。


────そうだ、宇宙は神だ! したがって神は数に他ならない

────まぁた始まった! ゲドの謎理論が


────貴公も 今の我も 皆、神の一部だ


「つまり、俺も数と言っているのか? 面白いこと言う」


────我に言わせれば 貴公こそ面白いがな

────だろう どうだ、ゲドも?


   † † †


 気が付くと、遺跡の丸い部屋に居た。

 全てが夢? そうも思えたが……セレナは人間のように喋った。

 

 遺跡から戻り歓待された俺達は、次の日ドワーフの自治村を後にした。


 ヴィドラやシュクルさんは見送りに来たが、スパルナさんは姿を見せなかった。

 臍を曲げて出てこないかと思ったら、シュクルさんに鉄拳制裁を受けて倒れているらしい。


『いい気味です!』

 そうサラも言っていた。なかなかドワーフの家族は過激だ。


 帰り道も一泊になる。

 サラを含めて4人で夕食を済ませ、宿へ戻ってきた。


「なかなか、美味しゅうございましたね」

 2人の部屋に入る。ローザの機嫌は良さそうだ。


「そうだな」

「では、お着替え致しましょう」

「まだ宵の口だ。2人で外に出ないか?」


「はぁ……はい」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/09/24 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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