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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
7章 青年期IV 王都2年目の早春編
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136話 辛口人物評

人物評と言えば「治世の能臣、乱世の姦雄」(曹操)が有名ですね。

以前に、自他認知教育(実習)を何度か受けたことが有ります。先輩(上司)、同輩、後輩(部下)の複数人に予め頼んで人物評を書いて貰うのですが。なかなか抉られますよ、あれ。見てないようで意外に他人は、自分のこと見てるんだなあと、思い知らされます。

 俺達の馬車は順調に走行している。

 王都外縁を抜けてからは速度を上げ、通常3日行程の所、1日目の夕方には旅程の半分以上を走破した。現在2日目の昼近く、駅馬車が通っていない脇街道へ入っている。


 格段に道が悪くなって、大小の起伏がつき始めた。しかし、さほど揺れを感じない。魔導具振動緩衝の調整が上手く行ったようだ。


 昨日とは異なって、今日はどんより曇っている。できれば、今日の早い内にヴィオーラの里に着けると良いが。まあ最悪ゲルに泊まれば良いのだけだが。


「ねえねえ、ラルちゃん」

「ん?」

「初めて来た場所の割に、躊躇がない走りだけど。大丈夫なんだよねえ……」

「アリー……あなたはパーティーの中で斥候職兼回復職と訊いていますが?」


「おぉお、お姉ちゃん言い方が恐い」

「いつも旦那様に頼り切って、それで良いと思っているのですか?」

 ローザが三白眼で、アリーを睨み付けている。

「いや、ちゃんと役に立って……何それ?」

 釈明の間に、ローザが鞄から紙束を取り出した。


「サラさんの覚え書きによると……」

 ほぅ、サラが書いた物らしい。


「アリーさんは、戦闘時以外では旦那様の言うことを聞かず、だらけている」

「げっ!」


 覚え書きというか人物評だな。ということは。


「回復魔術は活躍していて、私も世話になっているが、斥候職でもあったのでは? という感じ」

「サラっちの裏切り者!!」

「はい、ここに居ない人の悪口を言わない! それで、書かれていることは本当なのですか?」


「はっ、はい。概ねその通りですぅ。くぅ……怖すぎる。やはり、切り札(ごはんぬき)を持った姉には敵わねぇぇ……」

 おもいきりへこたれている。

「アリィィィ……」

「ヒィィィ!」


「まあまあ。ローザ、そう言ってやるな」

 おっと、俺のことも湿気のある視線で見たよ。紙束を捲っていく。


「覚え書きに依ると……アリーの行動を助長しているのが、あなたの甘さとも書いてあります!」


 やっぱり、飛び火してきたか。

 結婚してから初めてと言って良い強い調子、まるで基礎学校の頃に戻ったようだ。

 ローザはそう言ってから、頭を下げた。

「申し訳ありません」

「いや、確かにアリーを甘やかしてきたんだろうとは思う」

「ラルちゃん……」


 多分一番アリーの回復職としての能力を買っているのは、俺だろう。だから無意識に……な。

 あと、おそらくは……。


「他には?」

「えっ?」

「サラのことだ。俺への批判はもっと書いてるだろう?」

「ええ、まあ……」

「読んでくれ」


「分かりました。ラルフ様は、自らの能力に(たの)むこと大きく、他者を余り必要としないように事を運ぶことが多い。そのくせ、他者に気を使い過ぎな面があり、仲間と認められているか不安がある」

 うーむ。捲りながら次々読み上げる。


「人格者たらんと自らを律する所は立派だが、思考に固い面がある」

 肯きすぎだ、アリー。

「知識、常識があるようで、ぽっかり抜けたところがあるので、我々従う者の支援が必要である。こんなところでしょうか」

 申し訳なさそうに、俺を見る。


「……結構当たっているな」

「まあラルちゃんは、弱点すらも、ねじ伏せるところが凄いんだけどね」

 なぜアリーが得意そうなのか理解できんが。


「アリー、人のことより自分の指摘を、しっかり省みなさい」

「ううう」

「返事は……」

「はい!」


「やはり。ずっと一緒に過ごしていれば、慣れて来て気にならなくなることも多いですわ。第三者の意見は大事ですね」

「そうだな」


 ローザはアリーの方も向く。

「はーい。わかったからぁ……お姉ちゃん、お腹空いたよぅ」

 確かに、時刻は昼を少し回った。


「では、あなた。どこかで馬車を止めて下さいまし。お昼に致しましょう」


     †


 昼食後少し休んで、再び走り始めた。

 道は差し渡し30ヤーデン程の川の畔に差し掛かり、だらだらと登り始める。


「ん?」

 午睡してたアリーが起きた。


「今、どの辺?」

「ああ。もう結構進んだ。この峠を登り切ったところが目的地。ドワーフ自治村だ」

「自治村?」


「ミストリアは、200年前に人族が移住してできた国だ。敵対的な先住民は駆逐したが、そうでもないが排他的であった種族に直轄領でも貴族領でもない土地を割譲した」

「それが自治村?」

「そういうことだ。そういう村が国内に10数カ所あるという訳だ。わかったか?」

「いやわかんないけど」

「むう。ざっくり言えば納税の義務がない。この村の中だけに限られるが」


     †


 峠の頂上に差し掛かると、関所のような物があった。


「止まぁぁれぇええ!」

 槍を交差させて、道を塞がれる。


思念同調(ドッペルゲンガー)


 客席の視界が消え、御者台に居た。

 兵がこちらへやって来たので降りる。


「何者だ?」

「准男爵ラングレン様の一行です。私は御者のレプリーと申します」

 決めたので名乗ってみた。

 がっちりとした2人の兵士が見える。髭の方が答えた。


「これは、どうも。念のために訊ねるが、この先の土地がどういう領域かご存じか」

「それについては、主人より……」


「レプリー、ご苦労!」

「はっ!」


【解除:思念同調】


 馬車から降りる。

「ラルフェウス・ラングレンと申す。この先がドワーフ自治村であることは理解している」

「恐縮です。入村のご予定ですよね。目的を伺っても?」

 慇懃だ。ウチの郷里もそうだったが、王都に比べて爵位への対応がかさ増しされている。


「無論だ。我がクランの構成員を迎えに来た」

「構成員と仰いますと?」


「この村出身の若いドワーフ女性だ。背は私よりやや低いぐらいだ。おそらく、10日程前にここを通ったはずだが」


「ああ、居ましたね。ドワーフにしては綺麗な娘さんのことでしょう。確かに通りました」

 種族蔑視は良くないな。

「その娘さんを、迎えに行かれると」

「そうだ!」


「分かりました。お通り頂いて構いませんが、ここから出る場合は、税が掛かる品目があります故、予め自治村の長の承認を得ることをお勧めします」

「長?」


「あ、はい。この道沿いに1ダーデン程進んで頂くと、右側に屋敷がございます」


「分かった。話を戻すが、その長の承認を勧める(・・・)と言うことは、必須ではないと言うことか?」

「はあ、ドワーフでなければ不要です。こちらの関所でも手続きできますが、人手がありません故、時間が……」

 確かに柵の隣にある小屋は、入れても数人だろう。

 もっとも、サラはその許可が下りないのだが。


「うむ。心しよう。ではな」

「はっ! お気をつけて」

 手を振り乗車すると、まもなく関所を通り抜けた。


 アリーが何かじっと見ている。

「何だ?」

「いや、やっぱり准男爵になると、待遇というか、扱いが丁寧になるなぁあって思ってさ」

「准男爵は、何かしら公職を持っていることが多いからな。どちらかというと、そちらに敬意を表しているじゃないのか?」


「そういうことか」

「あなたは、旦那様にもっと敬意を表しなさい」

 姉の小言に渋い顔をする。

 嫌なら言わなければ良いのだろうが、おそらく姉を挑発しているのだろう。2人で居るときよりもはっちゃけている。


「集落が見えてきたぞ」


 峠を越えると緩やかな谷が見え、緑多かったこれまでとは異なり、赤茶けた大地が目立つ土地に入った。

 調べたところに依ると、この自治域はおよそ3500レーカー(1400ha)程の円形で、差し渡し5ダーデン弱(4.5km)程だ。大体眼に見える谷周辺が領域なのだろう。


 その谷の底に降り切るまでの段丘に、数戸ずつ固まって家屋が建っている。シュテルン村の自作農と同じぐらいの大きさで石造りだ。

 そして、家屋のかたまりの内一戸は大体高い煙突が有って、灰色の煙を吐いている。

 俺が覗く車窓に、アリーが顔を寄せる。


「ふーん。これがドワーフ達の家かぁ……うーん、なんか……扉がデカくない?」

 確かにデカい、特に横に。縦横比が流石に1:1(正方形)までは行かないが。3:2位は有りそうだ。


「あの煙突って鍛冶場?」

「サラが言った通りならな」

 感知魔術によると、家屋の中でかなりな高温な場所がある。まず間違いない。


「あれか?!」

 守備兵が言っていた屋敷が見えてきた。


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2018/11/17 細々変更(すみません。流れや意味的な変更はありません)

2018/11/20 屋敷までの距離 1ヤーデン(約90cm)→1ダーデン(約900m)

2021/04/14 誤字訂正(ID:668038さん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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