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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
7章 青年期IV 王都2年目の早春編
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134話 姉妹と書いて好敵手と読む

強敵と書いて友と読むらしいです(実感無し)。134話のサブタイトルは、それとはちょっと違いますが、肉親で相争うのは怖いっすよねえ。

 スパイラス新報社の社章だ! ならば、あの女記者がこの辺りに居るに違いない。

 妙に運が……勘が良いからな。


光学迷彩(アオゥラト)


 門から50ヤーデン程離れた位置でゴーレム馬から下りた。

「ゥオォロロ……」

 匂いはするのに、姿は見えないのが合点が行かないのか、セレナは不安そうな鳴き方だ。


「俺はここに居るぞ。しばらく、セレナはここに居てくれ」

「ワフッ!」


 門が人混みで通れないので、土塀に跳び乗る。

 母屋に納屋、それに蔵か、典型的な農家の庭だな。


 居た!


 庭の一角に人が集まっていて、半円の人垣ができている。囲みの中に、大きな(むしろ)が敷いてあり、そこに法衣姿のアリーが居た。


 なんで頭巾に覆面?

 いや、前も光柛教会の依頼では被っていたけど、ここでやる必要があるのか? そう訝しんだが理由が分かった。


 やはり女記者のカタリナが居たのだ。

 アリーはエヴァトン村で顔見知りになっているからな。素顔を晒していれば、その治癒能力の高さと魔力量の多さで、最近話題の頭巾巫女とアリーがカタリナの中で結びついて居たことだろう。


 頭巾と覆面から覗くアリーの目が慈しみ深い。

 ローザと姉妹なんだなあと思い知らされる。性格は対照的のようで根は同じだ。まあ、いつもはその良さが発揮されないのだが。

 やはり、修羅場には連れて行かなくて良かったな。神聖魔術の使い手は殺生を厭うべしと言うからな。


 治療が終わったようだ。礼を言いながら爺さんが立ち上がる。と言っても、既に怪我人の治療は終わっていて、神経痛か何かを診てやっていたようだ。


 次の順番を争うように、今度は数人の老女が身を乗り出す。


「はいはい! 頭巾巫女様は怪我人を治療しに来て下ったのよ。本当に具合の悪い人だけにしましょうね!」


 おっ、カタリナが仕切っているのか。囲んでいる老人に言い聞かせている。


 土塀の上を伝って移動し、離れた位置で庭に降りた。そこから回り込んでアリーのすぐ横まで近付いた。


 掌から黄金の光粒子を降らせなから、不意に頭巾巫女(アリー)がこっちを向いた。

 回りに居る人達は全く反応しないが、アリーには俺の姿が見えるようだ。俺が肯くと、アリーも小さく肯いた。耳元に顔を寄せる。


「……オークはみんな斃した。治療が終わったら帰るぞ」


 頭巾巫女は微かに肯いた。


「皆の衆! お告げが降りた。先程、冒険者によってオークの群れは討伐されたとのことじゃ。危機は去った」


 おおぅ!

 響めきが上がった。

 ああ、爺ちゃん婆ちゃん達、拝んでるし。

 まあ、自分たちを診てくれる巫女だからなあ。気持ちは分からなくもない。


 一方、奥で控えて居た分限者に見える小太りの男、村長だろう──顎を(しゃく)っると、周りに居た若い者達が飛び出していった。


 オーク達の危機が本当に去ったのか確かめに行かせたのだろう。巫女の能力は利用しても、お告げまでは無条件には信じないか……上に立つものは、そうでないとな。



 それから30分。

 頭巾巫女は、なおも集まった者達に取り囲まれていた。


 それを捌いて脱出させてくれたのは、カタリナだった。

 門を出てすぐ、頭巾巫女は魔術でその姿を消した。


 数百ヤーデン離れると、ゴーレム馬を出庫した。アリーも後ろに乗せて走り出すと、すぐ横をセレナが跳ねるような歩様で駈けてくる。


「待たせてごめんね。でも早かったんだもん、ラルちゃん」

 確かに夕陽は、大分傾いてきてる。

 

「もうちょっと掛かるかなと思ってさあ、怪我人以外も見始めたのは良くなかったね」

「いや、アリーの魔力に問題がなければ、別に悪くない」


 抱き付く腕に力が籠もる。

「ラルちゃん、やさしぃぃ……やさしいと言えば」

「ん?」


「ああ、カタリナさん、意外と優しくて良いヤツだった」

「そうなのか?!」

「うん。アリーちゃんが着いたら、もうあの屋敷に居てさあ」

「ふぅん……ちょっと待て。その時アリーはもう頭巾巫女の姿だったのか?」

 じゃあ、カタリナにばれるのを嫌ったわけではないのか。


「そうだよ」

 なんでそんなこと訊くのという感じだ。

「いや今回は、教会の依頼じゃないだろう」


「ああ。教会の神職なら、冒険者が治療に来ましたって言うより信用があって、話が早いからさあ。でも法衣で顔出しはマズいし」

 なるほどな……いや違う。


「いや、そうかも知れないが、勝手に神職を名乗ったら駄目だろう」

「ん? ああ、もちろん許可は得てるよ。だって名誉司祭女なんだよ! アリーちゃんは!」

「本当なのか? 初めて聞いたぞ」

「あれ? 言ってなかったっけ……? でさあ、この前! 優しそうな司教様にすんごい褒められてね。任命してくれたよ。ラルちゃんが、准男爵になった日だよ……」


 司教? それも優しそうな?

 司教って王都に何人も居たか?


「それは知らなかった……で、司教様って?」

「ああ、名前は……痩せたおっちゃんで……うーん、名前は……そだ! デイモス司教様だった」


 思わないでもなかったが……眉間に皺が寄った。

 しかし、あの司教がなぁ。


「肯いてるけど、ラルちゃん知ってるの?」

「ああ。この前、学院に来た……その司教様は、何か言ってたか」

「ああ、民衆を助けるときは、この神職の法衣を着て貰って構わないって言ったよ」

「へえー」


 それは、法衣を着て人助けすれば、光神教会の名声も上がるっていう解釈は穿ち過ぎか? いずれにしても、アリーに言うのはやめておこう。


 王都に戻り、ギルドに寄って報告した。

 オークの群れの偵察と調査のつもりだったが、結果的に1000頭程を殲滅したと。

 流石に半信半疑だった。

 ギルマスが言うには、上級魔獣1匹を斃すのと、下級魔獣千匹を全滅させるなら後者の方が難しいらしい。まあ取りこぼしがどうしても出るからな。


 だが、獲ってきた夥しい魔結晶を見せることでようやく信じてくれた。とは言え、本当に全滅させたかどうかは調査が必要と言うことで、別の冒険者を急遽送ることになった。報酬もその結果で変わるため、魔結晶を預けて今日の所はギルドを後にした。


 夕暮れの中、館へ帰ってきた。


「マーヤさん。たっだいまあぁ」

「まあまあ、アリーお嬢様。お帰りなさいませ」


 館で出迎えてくれたマーヤさんが眼を顰めた。

「差し出がましいと思いますが、もう少しお淑やかにして下さいませ。お嫁入り先が……その」


 アリーが、キッとこちらを向く。


「ラルちゃん、笑いすぎ! ああ、マーヤさん。お転婆でも、ラルちゃんがもらってくれるから大丈夫だよ」


 マーヤさんが複雑な顔をした。

「そうだとよろしいのですが」

 取り合ってない。

「ブーー」


「あれ? お姉ちゃんは? どっか出掛けた?」

「いえ、そのようなことは」

 ああ、ローザは裏庭に居る。隣家との境近くだと魔覚が告げてくる。


「早く来ないと、ラルちゃん取っちゃうぞー」

 何言ってるんだ!

 無視して執務室に入る。


 そこでしばらくいると、ローザが入って来た。


「お帰りなさいませ、あなた。お出迎えもせず済みません」

「ああ、いや。それでお隣がどうかしたのか?」


 ローザは一瞬眉が上がったが、すぐ平静に戻った。

「ご存知のように、お隣はほぼ空き家だったのですが……」

「ああ」

 俺達がここに来て以来、ほとんど人気(ひとけ)を感じたことはなかったなあ、確かに。


「……この度、本格的に引き払われるようで。主立った家具などを整理されていたようで、気になったものですから……」

 それを見ていたと。

「ふーん。そうなんだ」


「お召し物を……」

 ローブを脱がせて貰う。

 何気なく振り返ると、ローブに顔を当てていた。

 なぜか少し不機嫌そうな表情だったが、目が合うと和らいだ。

 クローゼットに仕舞わないところを見ると、洗濯してくれるようだ。汗臭かったか?


「ああ、それからサラさんから、あなた宛にお手紙が届いておりました」

「ほう。そう言えば、ここを発ってから大分経ったな」

「そうですね、2週間になりますね。あなたもお忙しそうにされていたので、アリーが淋しそうにしていました……さっきは機嫌が直っていたけれども」


 そう。エリザ先生に研究内容を承認して貰い、研究者登録されたので、晴れて王立図書館の一般人進入禁止の区画に入れるようになった。それで神学……ではなく、魔術関連の禁帯出本を読み漁っていたのだ。この前ロッカゴーレムを斃したのも、さっきオーク達を斃した地極(エンデ)垓棘(シュターヘン)も術式を入手したのもそこでだ。

 2月の上級魔術師試験までには、ある程度使い熟しておく必要がある。


 その代わりに、この一週間はほぼ狩りに行かなかったので、アリーやセレナを構えなかった。まあ、他にやることもあったしな。


 そうだ。サラの手紙。

 封を切って、中の便箋を読む。


「むぅ……」

「いかが致しました?」

 心配そうに寄ってきた。


「少々まずいことになっているようだ」

 便箋を渡す。


「まあ……これは」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2018/11/10 隣家との境近くだ。→隣家との境近くだと魔覚が告げてくる。

2019/06/30 誤字訂正(ID:496160さん ありがとうございます)

2022/07/23 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/10/09 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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