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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
7章 青年期IV 王都2年目の早春編
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131話 いくつかの精算

友達付き合いでも犯罪一味でも、諍いを起こすのは金払いが切っ掛けとなることが多いと、何かの番組で見ました。特に功績を分け合うのは難しいですよね。

 修学院の応接から神学科の教室へ戻る。


「光神暦284年に第一次遠征……」

 バナージ先生と目が合って、説明が途切れた。


「戻りました!」

「おお、案外早かったな。席へ着け!」


 ん? バナージ先生は、俺が何の用件で呼び出されたか知っているのか?

 それは、いつか訊くとして。

 窓際まで歩いて席に着く。


「それで、284年に」

「先生! 質問があります!」


「おお! アネッサ、お前が質問するの珍しいな。なんだ?」

 出鼻を挫かれたはずの先生は少し嬉しそうだ。俺は嫌な予感しかしないが、


「ラルフ君が、男爵様になったってのは本当ですか!?」

 やっぱりか! 瞑目。


「何の話だ? アネッサ!」

 先生顔が引き攣ってますけど。


「朝会が始まる前に、教員室へ入っていくラルフ君を見て、ピンと来た私は扉に自慢のこの耳を当てて聞きました。とぼけても無駄です! 先生が男爵になったって言ってました! 間違いないでぇす!」


 一瞬にして教室が蜂の巣を突いたような騒ぎになる。

 朝、確かに教員室でバナージ先生はそう言った、やや叫び気味で。


「男爵!?」

「えっ、男爵ってなんで?」

「准男爵の息子だったよね!?」

「もしかして、お父さん亡くなったとか?」

 勝手に殺すな。


「騒々しいぞ! 静かに、静かに!」

 喧噪は先生の制止で、ようやく収まった。だがこのままだとみんな授業が手に付かなそうだ。隠すつもりはないし言ってしまおう。


「良いですか。先生」

 手を挙げた。


「あっ、ああ。良いが……ラルフの方こそ、いいのか?」

「ええ、来月には官報の、まあ隅には載るでしょうから」

「わかった」

 肯いてくれた。


「昨日ミストリアの准男爵に成りました」

 おおうと声が上がり、なんだ男爵じゃなくて准男爵じゃないかと、みんなの視線がアネッサをなじる。まあ確かに大違いだからな。

 えぇぇ、男爵って聞こえたもんと反駁している。


「理由については、みんなも知っての通り、南前門の魔獣騒ぎを鎮めた功績です。准男爵の爵位はいずれ父が隠居すれば受け継ぐものなので、それが少し早まっただけのことです」

「じゃあ、お父さんは?」

「ちゃんと生きてます!」


 はあ……。


「それから、それとは関係なく、縁あってプロモスという国の名誉男爵にも成りましたが、男爵と言っても名誉男爵で、役職もないので特に何の特典もないし、この国では外国の爵位は余り意味がありません。よって、これまでと変わらず接して下さい。以上です」


 言うだけ言って、席に着いた。


 ほらほら、合ってたでしょとかアネッサが得意げだ。


「はぁい。ラルフはちゃんと説明してくれたぞ。それと神学科といっても光神教に関わる者、身分や爵位に拘泥するべきではないことは、皆知っての通りだ! それにこれ以上は授業に差し支える。今週末試験であることは忘れてないだろうな、授業を進めるぞ!」


 中には不承不承の者も居ただろうが収まった。


 放課後、アネッサ達に捕まるかと思ったが、幸い来週頭の試験休み奉仕活動打ち合わせがあるとかで、皆早々に寮へ戻っていった。予めクルス君達には今度詳しく話すと言っておいた。


     †


 昼食後。

 アリーと冒険者ギルド東支部へやって来た。

 何か既視感(デジャブ)がある光景だが、支部長室でギルマスと向かい合っている。 隣のアリーは心なしか鼻息が荒い。


 今日の議題は、この前のミスリルの組織的横領解決に対する報酬の交渉だ。


「それで、財務省からも報酬受け取りは、ギルドを通すで良いんだな!?」

「はい!」


 俺は承諾すると、ギルマスはこめかみを抑えた。


「まあ、その方が良いとは俺も思うがな。とは言え、一応説明しておこう。この仕事は後付け(仕事達成が依頼より先)だから、必ずしもギルドを通す必要はないぞ」

「分かっています」


 事件の顛末を簡単にまとめておこう。

 横領されたミスリル備蓄は、すべて国庫へ回収された。

 ブリオット商会は総支配人以下の逮捕、営業停止など処分を受けているものの、財務省、外務省を含む不祥事ということで喧伝されてはおらず、新聞沙汰にはなっていない。


 俺が貢献したことを知っているのは極限られた者だけだ。関係各所への連絡は、黒衣連隊が活躍したことになっている。とは言えきちんと報酬が俺に仕払われることになっているが。

 ちなみにこの種の報酬は全金額の1割から5分らしいが、金額が金額のため5分となった。そのお陰で無税となった。


「それで、今回ギルド側の手間は現金の授受だけだ。したがって、取り分は2分半だ。いくらになる? ラウラ」


「およそ300ミストです」

 計算してあったのだろう 秘書(ラウラ)さんが即座に答えた。


 そう、報酬総額は1万2千ミスト。つまり回収された総額は24万ミストということになる。ちなみに男爵の平均収入は1万ミストらしい。


「良いんだな?」


 アリーが身を乗り出す!

「ああ! ちょ、ちょっと! ちょっと待って下さい、ギルマスさん。ラルちゃん、ちょっとこっち来て! いいから、こっち来てって」

 途中から小声になったアリーに、立ち上がらされ部屋の隅に引っ張られる。


「何だ?!」

「なんでギルドを通すのよ! 300も有ったら、家賃2年半分だよ!」

「家賃に換算するな!」

「だけどさあ」


「言っておくが、財務省からの報酬はアリーと無関係だぞ!」

「そりゃあ、プロモスからの報酬は、この前半分貰ったからありがたいと思ってるけどさあ」


 プロモスからの依頼は、護衛、治療、関税大幅増大の非正規業務の貢献が考慮され、報酬は当初額から倍以上の200ミストとなった。税金とギルド取り分を除いて150ミストを受け取った。

 そこからクランの供託を10ミストとして、残りの半分70ミストをアリーに既に分けた。ギルドで調べ物をして貰ったし、本来の通事さんを隣町まで行って治療して貰ったしな。まあ、あとアリーの東門でのお節介がなければ、依頼に繋がらなかったというのも一応は考慮した。


「それは、そうなんだけどさあ……でも、300ミストは惜しいじゃない」

 はあ……。


「分かっているのか。物凄い大金が動くんだ。そのきっかけを作ったのが俺と知れれば、波風が立つ。それに横領の一味が一網打尽に成ったわけじゃない。逆恨みするヤツが出てくる可能性があるということだ」

「うぅん、それは分かるけど」


「ギルドを挟めば、財務省からの金の流れで、嗅ぎ付けられる恐れが減る」

「まあ……戦うのはともかく、誰に狙われるか分からないのは嫌だよねえ」

「俺が直接狙われるなら、ともかく。ローザや、館を狙われる可能性もあるからな」


 唇を突き出して膨れた。意外とかわいいな。

「分かったわよぅ……」

 ようやく納得したようだ。


 ソファーに戻る。

「決まりだ! ギルマス! ギルド経由受け取りでお願いする!」


「うむ! ラウラ、手配を頼むぞ!」

「分かりました」

「これで確実になったな!」

「なにがです?」

 アリーが聞き返す。


「ラルフの上級(ハイ・)冒険者(ランカー)入りだ」

「金額的、文化的な貢献も申し分ありません。月末の支部間会議でも満場一致で承認されるかと」

「まあ、東支部(ウチ)の提案にケチを付けたがる西支部(西)も、ラルフのことでは逆らいようがないだろうしな」

 人の悪い笑顔だ。


「って、ことは! ウチのクランもハイランカークランってことだね」

「まだ決まったわけじゃない」


「まあ、2月の上級(アーク・)魔術師(ウィザード)試験で合格すれば、自動的にそうなるがな」

「合格するとは限りません」


「どうした? ラルフ。そこまで謙遜することもあるまい。それとも、何か気になることがあるのか?」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

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訂正履歴

2019/4/17 誤字訂正(ID:1191678 様ありがとうございます)

2019/5/22 誤字訂正(ID:1076640 様ありがとうございます)

2022/07/23 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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