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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
7章 青年期IV 王都2年目の早春編
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118話 トラブル

なんでしょう成人するまでは、トラブルというと自分で起こしていた気がするのですが。その後は、巻き込まれる方が増えてきました。しかも結構予測できるけど、自分では不可避みたいなことが……。

 冬至を過ぎて1ヶ月半。まだまだ日没は早い。

 夕闇があっと言う間に迫って来てる。


 今日も修学院から帰って来てから狩りに出た。が、東門からを出たのが14時過ぎだったので、10ダーデン(9km)も離れていない荒野をぐるっと回っただけだ。


「魔獣少なかったねえ」

「ワフッ!」

「そうだな」


 今日は、小物を10頭くらいしか斃してない。

 元々冬場は、魔獣の活動がまばらになるしな。


「それにしても、セレナの毛はいつもピッカピカだな!」

 蒼白な魔狼(ウォーグ)のモフモフを撫でる。


「知らないと思うけど、毎日お姉ちゃんが、ブラシで念入りに梳いてあげてるよ」

「そうなのか?」

「ワフッ!」

 肯定した。


「時々アリーちゃんも、やったげようとするんだけど……」

「ふぅん」

「……セレナが嫌がるんだよね。もう子供の頃みたいに、力一杯引っ張んないって!」


 セレナは首を振った。

 信用が無いな。


「いいなあ。ラルちゃんとセレナは仲良くて。サラっちが居ないから張り合い湧かないよぅ!」

「仕方ないだろう。サラはしばらく家に帰っているんだから」


 親御さんから、一度帰って来いという手紙が届いたそうだ。親にしてみれば心配するのは無理ない。サラは、俺達のクランというか、狩りのことを気にしていた。遠慮なく行ってこいと言って、そうさせたのだが。


「そうだけどさあ……」


 アリーは出掛ける数日前まで知らなかったそうで、ずっとやや不機嫌だ。


 そもそも、セレナも首輪に光盾の魔導具を組み込んでから、怪我という怪我をしなくなったし。回復や付与魔術を掛けてやっていたのは、サラ7、セレナ3と言うところだからな。アリーが手持ち無沙汰なのは事実だし。


 迷宮とか行けば、活躍の場もあるのだが。荒野じゃなあ……あれは気になるから明日になったら行って見るも良いが、今日は早めに帰ろう。


 王都東門に帰って来たが、いつもと状況が違っていた。


「あれ? 何これ! どうなってるの?」

「ああ……」

 いつもは列ができないくらいの勢いで入城できる住民口なのに、今日は人集りができている。


 待ち行列の最後尾からちょっと遡って、少し前から並んでいるであろう人に話しかける。

「あのう伺いますが。この列は住民入り口から入るために並んでいるんですよね?」

「ああ、その通りだがなあ。珍しく時間が掛かってるようで、困ったよ。5時までに帰らないといけないのになあ……」


「原因は何ですかねえ?」

「原因? ああ……ほら! あそこに、豪華な馬車が居るだろう」

「ありますね」


 通常馬車の屋根は汚れが目だないように黒っぽい。が、見えた馬車は、少し砂埃で汚れては居たが白を基調とした色で塗られていた。小まめに洗車する大貴族の馬車だ。


「あそこに、ずーと居座っているんだよ! おそらく原因は、あれじゃないか?」

「そういうことですか。ありがとうございます」


 アリーのところに戻る。

「わかった?」

「ああ、なんか大貴族の馬車いるんだが、それが問題みたいだ」

「へえ……あっ、でも進み始めたよ」


 アリーの言った通り、行列が流れ始めた。審査する役人を増やしたようだ。

 住民口は、俺たちも通るが、大貴族も通ることもある。

 門の守備隊、審査役は、不正を通さない、その次に大貴族に迷惑を掛けないことを気にしているからな。つまり混雑で待たせてはいけないのだ


 ようやく審査所が見えてきた。

 ん? 聞いたことのない言葉が聞こえてきた。

 馬車の方だ。

 煌びやかな服を来た、筋肉ムキムキの男と入城審査官が揉めている。


「だから、他国の貴人は、正門である南門に回ってくれと言っているだろう!」

「⪆⪄⪇⩵⩣⩷⩹⩙……」

「うーーむ、なんで通事を連れてきていないんだ」


 彼らを横に避け、別の審査官が入城審査を進めている。


 馬車の丁度横にやって来た

 審査官と相手の話が聞くとはなしに聞いていると、また頭の芯が冷たくなるのを感じた。


 俺たちの審査の番になった。

「ラングレン様とアリーさん。どうぞお通り下さい!」

 すんなり通れた。

 が、アリーが少し戻って、審査官の後ろに居る顔見知りの守備兵に話しかけた。


「ザルツさん、あの人達の言葉が分からないの?」

「そうなんだよ。何でも珍しい言葉のようでな、相手はラーツェン語も片言で、審査官もお手上げなんだよ!」

「ふっふーん! ラルちゃんなら、なんとかできるかもよ」

 おいおい、余計なことを言うな!


「おおう! あのう、ラングレン様は、本当にあの言葉がわかるのでしょうか?」

「本当だよ、ラルちゃんは修学院に通ってる位、頭良いんだから!」

 それは関係ないだろう!

 って、なんでアリーが胸張ってるんだ!


 仕方ない。

「まあ。聞いていて、大体意味は分かります」

「そうですか! それは良い。ちょっと待っていて下さい!」


 ああぁ。守備兵が揉めているところに駈けていった。一言二言話して、すぐ戻って来る。

「ラングレン様。審査官が是非来て頂きたいのとことです」


 やっぱりね。

 まあ、まだ夕食の時刻までは時間があるかぁ……入城審査官のところに行く。


「おお、ラングレン殿! 本当にこの人達の言葉が分かるのですか?」

「まあ、おおよそ。分かります」


 そう。さっきまで聞いたこともない言葉だったが。

 今では分かる。

 奇想天外な俺の特殊能力。村の司祭様はそう呼んだ。


 しばらく会話を聞いていると、知らない言語も突然理解できるようになる。会話以外も、文章を眺めていても同じことが起きる

 俺の特殊能力だが、それがさっきも起きたのだ。


「紋章からしてプロモスの国の方々とは分かりますが、それ以上は……とにかく、外国の使節は南門から入場して貰う決まりですので伝えて貰えますか。少し話してみて頂けますか」

「ええ。わかりました」


【この少年は、何だと言うんだ!】


 軍服の上からでもムキムキと分かる武官が苛ついている。


「ああ、それとなぜ通事、ミストリアの言葉が通じる者を連れていないか聞いてみて下さい」

「はい」


【ああ、プロモスの方、私の言うことが解りますよね?】


 大男は、大きく目を見開く。

【おお、驚いた! 言葉が通じる! 光神様の助けだ!】

【光神様はともかく、東門審査官は、南門に回ってくれと言っています】

【そうか。さっきの話はそういうことか。でもなぜこの門ではいけないのか?】

【南門が正門だからです。外国からの使節はそこを通る決まりです】

【しらなかった……結構立派な門ゆえここで良いかと思ったが……】


【ああ、あなたのお名前は】

【私の名は、ルンガだ】

【ルンガさん。その辺りのことは、通事なら当然知っているはずですが? この一行には居ないのですか?】

 居るなら出て来るとは思うが、一応訊いてみる。


【通事は、急病で20マース手前の町の宿に居る。南と言うことは、少し戻って右に行けば良いのだな?】

【そうです】

【では正使様に申し上げる】

 正使?

 ルンガさんは、馬車の扉を開けて中に入った。

 どうやら、用は済んだようだ。


「ああ審査官殿分かりました。この一行の通事は急病で、20マースと言ってましたから、18ダーデンぐらい離れた町の宿で休んでいるそうです」

「そうか」

「ああ、この一行は、南門に回ってくれるそうなので。じゃあ、俺はこれで」


 会釈して入城しようとしたら、審査官に押し留められた。

「いや、待って欲しい」

  押し合いをして居る間に馬車から、ルンガさんが出て来た。折角見えない間に退散しようと思ったのに。


【南門へ回ることになった】

【そうですか。では、俺はこれで失礼しますね】


【いや、待ってくれ。正使様が、あなたを臨時通事として雇いたいと仰っている】

【なんですって?】


「南門へ行けば、プロモス語を話せる人はいますよね?」

「いや、怪しいぞ。小官も審査官として何カ国語か話せるが、プロモス語はできない。南門なら1人ぐらいはいるだろうが、今居るかどうかは正直微妙だ」


 いやいや。あんた、さっきはそこへたらい回しにしようとしてたじゃないか。


【とにかく馬車に乗ってくれ】

 乗ったらまずいことになる匂いが、プンプンしてる。


「何? ラルちゃんどうしたの?」

 面倒なのも来た。


「いや、なんか俺を今すぐ雇いたいって言われて」

「はあ? ギルドでもないのに?」


「そうかそうか、ギルド員か。指名依頼がラングレン殿に出ると支部長に言っておこう。私は知り合いだ」

「いや、ちょっと!」

【ラングレン殿!】


 名前を憶えられた。


【はい】

【先程からギルド、ギルドと聞こえるが。そなた、冒険者ギルドに所属しているのか?】

 ギルドと言う言葉は、共通語だ。


【はい。そうですが……】

【それは好都合。ギルドを通して、そなたを雇うことにする。それで良かろう? 迎賓館へ来るよう伝えてくれ】


 あぁーーもう。

 正使とか言っているし、断っても無意味だ。


「アリー。俺は雇われることになった」

「はっ? じゃあ、私も……」

「だめだ! セレナも連れていけない。連れて帰るんだ! ローザには、遅くなるって言っておいてくれ」

「はぁああ。ご飯は?」

 心配すること違ってないか?


「無理だな」

「ちょっとぅ!」

「ああ、お嬢ちゃんは任された。行ってくれ」

 審査官へ肯いて、前部の扉から馬車に乗り込む。

 

「冒険者ギルドの外商担当を迎賓館、プロモス使節の所に来るよう伝えて下さい」

 肯いていた。


 後ろで扉が閉まる音がすると、まもなく走り出した。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/10/09 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

2025/09/04 名前間違い(ゾンビじぃーちゃん(さん)ありがとうございます)

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