117話 女教授
なんか、女教師とか、女性看護師とかプラスアルファで魅力を感じます。
どういう状況か忘れましたが、母とそういう話題になったときに、そうだねえ、あんたの初恋って幼稚園の●●先生だもんねえとうんうん肯かれながら言われました。
11月も半ば。
修学院が再開して2週間経った。
金曜日の3時限目前の休み時間。
俺は神学専攻の生徒がほぼ来たことがない建屋、通称神職科の教室が並ぶ廊下を歩く。
神学科の連中とは異なり、歩いている者は皆、光神教神職の法衣を着ている。無論、袖や襟の色で本物神職と神職見習いである学生は見分けが付く。
魔獣退治と人命救助で表彰されたこともあって、多少修学院内で俺の顔が売れてしまったようだ。前回この建屋へ来たときは結構騒がれた。神学科ではもう慣れてくれたようだが、こちらではまだ新鮮らしい。
なので今日は対策を施した。
そのお陰か、誰にも騒がれずエリザ教授室まで来ることができた。ちと驚かせてみるか。
「エリザ教授。こんにちは」
本を読んでいた教授が、顔を上げてこっちを見る。
「えーと。君は? 誰ですか? 1年生?」
微妙な表情で、俺の顔をマジマジと睨む。
「神学科のクルスと申します」
「クルス? はあ。でも神学科の君が、なぜ神職の服を?」
全く気が付かない。
「冗談です。失礼しました!」
【解除擬人装】
「エーーーー!」
教授は大声と共に破顔すると、急に立ち上がった!
「顔が……ラルフ君だぁ! えぇ、どういうこと?? 別人になった!!」
大興奮だ。
エルフだから見た目より結構年齢が行っているはずなのに、反応が子供っぽい。
「ねえ、ラルフ君! もう一回、さっきの顔に戻って! 戻ってよ」
かわいいなあ。
何度かクルス君だけでなく、バナージ先生など共通の知人数人の顔を、行きつ戻りつして、腹を抱えて爆笑を得た。その後、数分経って……エリザ教授は、やっと落ち着いた。
「こほん。で、課題はやって来ましたか?」
そんな鹿爪らしい顔をわざと作っているな、まだお腹付近がヒクヒク波打ってるし。
「はい。仰った通り半分ですが……」
ノートを渡す。
「ふむふむ……」
課題を読み始めたら、数分前とは別人のように落ち着いたようだ。
3ページ程読み進め。
「いいでしょう。後半もこの調子でやりなさい。流石に理解が早いですね」
「それはどうも」
「というわけで!」
はっ?
「こちらの飜訳もお願いしますね」
3冊の冊子が目の前に置かれる。
古代エルフ生態の一考察、古代エルフ文化史における経済的側面……。これも、あれもエルフの資料の冊子。
全部神代文字で書かれている。
「いや、あのう先生。この文書は、俺の研究内容と関係ありませんけど」
この先生、前回俺が読めることを知ってニマッとしてたが、こういうことだったか。
「世の中に関係ないことなどないのです!」
「いや、決まった! って顔して、哲学ぽいことおっしゃられてもですね。大体、これ先生の研究の資料ですよね」
仕方なく渡された冊子をぱらぱら見てると、地図があった。
ん?
これって王都だよな。山や川の配置から行って間違いない。しかし、違う名前が書いてある。
ああ、光神暦152年か。王都遷都前……というより建設が始まる前だ。
「師匠の研究を手伝うのは、弟子の喜び! でしょう?」
「えーと。俺って先生の弟子なんですかね?」
「むう、生徒と弟子は似たようなものです」
うーむ。似て非なる代表例な気もするが。
「前例を参照したいのですが、他のお弟子さんはどちらに? 会ったこと無いですが」
「そっ、それは!」
あたふたしだした。
「修学院を長く空けていましたから。いっ、今居ませんけど……ラルフ君は、いじめっ子ってヤツですか?」
ニヤけていたら、途中から怒りだした。
「さて、どうなんでしょう。基礎学校の途中から、隔離されてましたから、いじめるも何も」
「へえ。あなたもですか……」
ふむ。お互い芳ばしい幼少期を過ごしてきたようだ。
「で、いつまでにやれば良いんでしょうか?」
「ああ、やってくれるの? できれば11月中にできるとうれしいなって」
かわいさを強調しても関係ないですけど。
「わかりました。それだけですか?」
「あれ?! 余力があるなら……」
がさごそと、机に堆く積まれた資料をあさり出す。
「えーと、これだけで結構です。失礼します!」
教授室を辞した。
「さてさて、気が付くかな。天才少年……」
何か呟いたようだが、聞かないようにしていたので何と言ったのかは分からなかった。
†
修学院の方はそんな感じで、まあ平和と言えるだろう。
俺の婚姻の手続きも着々と進み出した。
義母さんへ、俺、ローザ、ダンケルク家から都合3通手紙が送られ、ローザの意向に任せるとの返信が来た。加えて俺宛の返信には、何とぞローザのことを頼みますと書いてあった。
猶子縁組み届は、滞りなく処理され、ローザはダンケルク家の猶子となった。ローザンヌ・ダンケルクと名乗ることになった。
まあ暮らしの方は何も変わらないけれども……と言いたいところだが。変化がひとつ。
「まあ、まあ。ラルフ様。お帰りなさいませ」
「ただいま。マーヤさん」
うちの庭の掃除をしていた壮年女性に挨拶を返す。
裾がやや広いスカートに、白いエプロンを着けて、箒を持っている。
俺の実家からの返信の一文。
ローザに何時までもメイドをさせておくな!
おふくろさんの指令に順った結果だ。
まあ、確かに小なりと言っても貴族の夫人だからなあ、家事はしないのが一般的だ。ミストリアの通念上は、おふくろさんが正しい。
これに対してローザは、メイド道? として家事をするのは譲れないと言っていた。
が、そもそも、この館は広い。炊事洗濯はともかく掃除はキツい。今ではサラに手伝って貰っているし、再来月になったらソフィーも来るし、これ以上ローザに苦労させたくない! と言ってはみたが、本音の正面突破は効かず。
ローザのメイド道とは、主人に肩身の狭い思いをさせることか! そのように詭弁という名の搦め手を使って、なんとか折れさせた。
もう1人メイドさんを雇うことにした。
それが、このマーヤさんだ。
ダンケルク家に紹介して貰った。
「奥様とアリー様がお待ちですよ」
「ああ」
それにしても似てるよな、マーサさんに。
身元はしっかりした人をということで、彼女の従妹が選ばれた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。また遅くなったな」
と言っても1時過ぎぐらいだが。
「ええ、アリーとセレナが狩りに行くぞーって待ってますわよ」
「ああ。でもローザの昼食はしっかり食べてから行くからな」
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謝辞
121話の「鹿爪らしい」につきまして、ご指摘戴きました。誤用というか誤字ではありませんので変更は致しませんが、紛らわしいのでルビを振ります。ありがとうございました。




