表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/472

10話 不可解な外出

明日から、仕事が始まります。投稿ペースが(段階的に)落ちます。ご容赦下さい。

 書斎の窓を壊したので、こっぴどくおかあさんに叱られた。

 最近覚えた言葉、自業自得だ。


 夕方、おとうさんが帰って来た。おとうさんは腕白に寛容なので、窓を壊したことは、さほど怒らず、逆にまあまあと、怒りが収まらないおかあさんをなだめてくれた。

 しかし。

 アリーが、3時の鐘が鳴るぐらいまで、ウーとかアーとか反応はするけど、何をしても起きなかったことをおかあさんから報告され、おとうさんの顔が凍り付いた。

 強く念じてそれを相手に飛ばすと、人を眠らせられることを白状させられた。その後、拳骨で殴られました。


 それで、僕は泣かなかったけど。殴られたところを見ていた、おかあさんの方が大泣きしちゃった。びっくりしたんだね。

 なんて言うか……初めて後悔して、反省しました。


 おかげで、魔術は禁止、人に念は飛ばさない。書斎にしばらく一人で入らないことを約束させられちゃった。親父さんが居ない時は、しっかり錠前も掛けられているし。



 それから数日後。


 僕は鞍上、おとうさんの前に座っている。

 常歩(なみあし)だけど結構速いし、なにより高くて気分が良い。揺れるけどね。

 それにしても、この馬はマールって名前で、前にウチに居たおじいちゃん馬と違って元気が良い。色も青鹿毛って言うそうで、少し黒が深い。


 もうすぐ領都(ソノール)だ。城壁が見えてきた。

 黄色い土を突き固めて築いたって聞いた。


「おとうさん」

「何だ? ラルフ」


「あの城壁の高さって、どれくらい?」

「ああ、あれはな……ううん。ああぁ。領軍の機密なのでな。たとえ、お前でも教えられないんだ」

「はぁい」

 おとうさん、真面目だなあ。


 城門へ辿り着いた。荷物を抱えた人や荷車だったり列ができているが、その横を馬に乗ったまま追い抜いていく。門の前まで来ると2人の兵隊さんが待っているので、止まった。


「これはラングレン様。おはようございます。どうぞお通り下さい」

「うむ。ご苦労」

 再び、馬が歩き出して、門の中を通り抜けた。

 石畳の道が広がって、すこし広場になってる。


「あの人、おとうさんのこと知ってたね」

「ああ、平日は毎日通るからな」

 おとうさんは、城壁の中。さらにあの高いとこにあるお城に勤めている。財務方の役人だ。なので、門番さんも何もしないで通してくれたのだ。

 普通だったら、荷物とか調べられてるところだ。


 しばらくして十字路を、真っ直ぐ通り抜ける。


「ねえねえ、おとうさん。おじいさんの館は、さっきのところを右だよ!」


「ああ。その前に行くところが有るんだ」

「へえ」


 左に曲がった。

 シュテルン村を出るときは、おじいさんの館に行くから、一緒に行くぞって言われたんだけど。お土産でも買いに行くのかな? 

 そう思っていたけど、お店がある街区からどんどん離れていく。進んでいく道が細くなって行って。小さい家が並ぶところに入った。街並みは綺麗だけど、なんだかみすぼらしい感じがするなあ。

 あっ、家の庭に干されてる洗濯物、領軍の軍服だ。

 あっちの家もだ。この辺は兵隊さん達が住んでるところらしい。


 こんなところに、おとうさんは何の用があるのだろう。


「ラルフ。着いたぞ」

「ここ?」

「どうどう。ああそうだ」

 周りの家よりは、立派だが質素な家の前で止まった。


「ほれ。ラルフ」

 おとうさんが先に降りて、僕を降ろしてくれた。


 ブフヒヒゥゥン。

 乗ってきた(マール)が、軽く身震いして嘶いた。ふーん。


 手綱を引っ張って、敷地の中に入る。庭の横に別の芦毛馬が居た。

「ラルフはここに居なさい」

 あの馬の横に繋げるみたいだ。


 あっ! 


「よいしょ、よいしょ……」

「おっ、なんだ、水か。どこにあった、この木桶」

「あ、あそこの井戸。マールが喉渇いたって」

 井戸端に置いてあった。水は魔術で出したけどね。


「うーん。まあ水は綺麗そうだし良いか」

 おとうさんが横木の前に桶を置くと、マールは勢い良く中の水を飲み出した。


「よく喉渇いてるって分かったな、ラルフ」

「うっ、うん。首筋に沢山汗掻いていたからね」


 本当はマールが、そう言った気がしたのだけど。

 おとうさんは、そうかと頷いていた。


「ディラン殿。良く来られた」

 おとうさんが呼ばれた。

 玄関の方から、知らない人が歩いてきた。

 この人、いつ出てきた? 気配を感じなかったけど。


「ダノン殿。こんにちは」


「こちらがご子息ですな」

「ラルフェウスにございます」

 胸に手を当てて腰を折り挨拶する。

 歳はおじいさんぐらいだろうか、結構痩せた人だ。切れ長の眼に、長い銀髪を後ろに肩の後ろに流している。


 すっと、僕に顔を近づけてきた。

 じっと眼を見ている。

 なんだろう。


 そう思ったら、頭を撫でられた。何か髪がちりっと感じけど。


「ふむ。随分賢そうだ。おっとお客人を、戸外お留めするとは、無作法でしたな。どうぞ、中へ」

 玄関を抜けて小さなホールに入ると……。


「おじいさん!」

「おおぅ、ラルフ来たか!」


 なぜ? どうして、ここ居るの?

 後で行くと言われてた家に居るはずの、僕のおじいさんが、さっき会ったばかりのダノンさんの家に居た。


「父上……」

「ディラン。儂も直接訊きたくなってな」

「はぁ……」


「ドリスぅぅ!」

 奥から、おばあさんが出てきた。

 おとうさん達に挨拶した後、こっちに来た。


「まあまあ。可愛い坊ちゃんだこと。ああ、おとうさん達は、大人の話があるって仰ってるから……」


「では、エド、ディラン殿。あちらの部屋で」

 おじいさんを愛称で呼んだ。仲の良い知り合いのようだ。

「もう良いのですか?」

「はい」

 おとうさん達は、一瞬僕に向いたけど、そのまま廊下を歩いて行った


「じゃあ、私達はあっちの部屋に行きましょうね。お茶とお菓子があるわよ

 ドリスさんは、にこにこと笑ってる。


 大人の話、おじいさんが直接聞きたい話というのは、とても気になったけど。多分僕に聞かせたくない内容だろうと思って頷く。


 老婦人に伴われて、食堂に通された。

 それで、お名前は? 年齢はいくつ? 兄弟は居るの? お母さんは優しい?

 そう言った他愛の無い話をした。


 一応、ダノンさんの職業を訊いてみたけど。


「今はねえ、隠居して何もしてないのよ!」

「昔は、兵隊さんだったんですか?」

「そうねえ。兵ではなかったけれど、軍には居たようだわよ。それよりねえ……」


 うーーむ、このおばあさん、人の良さそうな感じだけど、なかなか旦那(ダノン)さんと同じで、底が見えにくい。



 30分くらい経った頃だろうか。おじいさん達が、僕が居た部屋にやって来た。


「ドリス。お客人がお帰りになる」

「あらぁ。まあ、まあ何のお構いも致しませんで。それに、この坊ちゃんと、もっとお話ししていたかったわ。また来て下さいねえ、ラルフちゃん」


「よかったな、ラルフ。ああ、奥さん、ご厄介になりました。失礼します」


 その後、おじいさんの館に行って、おばあさんが作ってくれた林檎のパイを食べて帰って来た。

 結局、何のために領都に行ったのか。さっぱり分からなかった。


 わからなかったが、いいこともあった。

 領都に行った次の日から、おかあさんの読書禁止令はなくなった。

 魔術も、人に使わない以外は、使っても良くなった。


 関係あるよねえ。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2025/05/20 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「うーーむ、このおばあさん、人の良さそうな感じだけど、なかなか旦那ダノンさんと同じで、底が見えにくい」 人の底が見えないって、感じたことありません。主人公、前世の記憶を持っていてそんなこと感…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ