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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
6章 青年期III 王都1年目の冬休み編
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105話 総力戦

ワールドカップ視てましたが。チームによって、個の力か! 組織の力か!とか、話題になってましたね。CSの番組でも言ってましたが、どっちが強いとは言えず、歴史的には年代で遷移したと言う結論でした。ただ、視てて思ったのは個の力は、周りの組織があってこそ光るってことですかねえ。

 玄関に馬車が回してあり、そこにローザ達が待っていた。


「ラルちゃん! この馬車を貸してくれるんだって!」

 幌馬車で乗り心地は良くないだろうが、軽い分速度は出る。


「ああ。みんな乗り込んでくれ! サラ、操縦を頼むぞ!」

「私にもお任せ下さい! 西支部のペドロと申します」

「頼むぞ」

 ギルドの職員が1人御者台に乗ってきた。

 

 間もなく、馬車は走り始めた。

 俺は例の粘土細工を再び出庫すると。

召喚(サモナ) ゴーレム!!】


 ゴーレム鷹となった。

 さっき書いた手紙を脚に結わえる。

「よし、行け!」

 窓から放った。


「ローザ、アリー。俺を動かないように支えてくれ。鷹を遠隔操作するために瞑想に入る」

「はい!」

「ラルちゃん、瞑想って、また?」


「いやちがう。今度は鷹を王都まで飛ばす!」

 既にアリーの顔に、森林の俯瞰の光景が二重映りしている。

「ちょっと。ここから何ダーデンあると……」

「24ダーデンだ」


「むり届く訳が……」

「やってみせる。だから支えてくれ」

「分かったわよ!」


 放った鷹は高く舞い上がった。

 速度はぐんぐん上がり、時速120ダーデンを超えた。


 5分経過。

 順調だった飛行は、徐々にだが、明らかに不調に傾いている。届く魔導波の強度が弱っていく。魔導波の強度は、距離の2乗に反比例するからだ。


 俺から離れること5ダーデン(4.5km)程までは、まるで自分自身が飛んでいるような鮮明な視界だったが。10ダーデンを超えるに至って映像の伝達が遅延し始め、ぽつぽつと小さな斑点が混じり、時々途切れるようになった。鷹に仕込んだ魔石に込めた魔力はまだ半分も使って居ないはずだ。


 放ってから十数分が経過。

 薄らと王都の城壁が見え始めた。あと数ダーデンだ。


 さて。そろそろ、鷹に結わえた手紙を目的の人にどう届けるか、それを決定しなければなるまい。王都城壁の上空には魔獣除けの結界が張られている。ゴーレム鷹で突破できる可能性0に違いない。

 ならば……。

 案は2つある。東門の衛士に届け、伝達して貰う。門脇にある厩舎に飛び込ませてギルドの職員に届けて貰う。


 いずれにしても目的の人はギルマスだ。

 あの人、ぱっと見太ったおじさんにしか見えないが、なかなかの大人物だしな。非常の用には頼りになる。

 ギルド繋がりなら飛行先は後者だが、いかんせんもう鷹の操作がままならない。


 視界が途切れることが9割を超え既に、途中は勘で飛んでいる。

 それももう限界か。

 瞬間、石畳が見えた。東門広場! 100ヤーデンもない。


 それっきり、視界は復活しなかった。


 目を開けると、心配そうなローザの顔が有った。



「ああ、ラルちゃん! 届いた?」

「わからない」

「えっ?」

「東門外市場の上空までは行ったが、そこで魔術が途切れた」

「だ、大丈夫だよ、そこまで行けば。届くって! それより顔蒼いよ、ラルちゃん。また無理したでしょ。魔力が残っているからって、良いわけじゃないからね」


「だっ……ああ。ありがとう」

「そう? ああ、サラっち、急いで!」

「はい!」

 御者台では懸命に、サラが馬達を操っている。


     †


 エヴァトン村に着くと、ペドロが他のギルド職員に命じて、新しい馬車を手配してくれて乗り換えた。


 今朝見付けた、あの仕掛け。同じ時刻に孵化するならもう45分余りしかない。そもそも王都の城壁は超獣対策で造っている。そう簡単に抜けはしないと思うが。

 最悪のことも考えないと駄目か。


【セレナ!】

【ナンデモ ヤル!】

 察したのか、実に頼もしい返事だ。首筋を撫でてやる。


 そうだな──


 このパーティー。俺が引っ張って居るように見えて、本当は皆に支えて貰っているのだ。ローザにもだ。


 1人で焦っても何ほどのことはない。世の中はそのようにこそできているのだ。


 ならば、しばらく甘えるとしよう。


「悪いが、王都の5ダーデン手前まで行ったら起こしてくれ」

「承りました」

 荷台の床に横になった。


「ラルフェウス様!」

「ん……」

 覚醒した。

 なんか早い気はするが……頼んだ通り王都東門まで、あと5ダーデンだ。


 ゆっくりと起き上がる。

 む! 御者台の後ろで、アリーがへたれて座りこんでる。

 逆に疲れているはずの馬達が、どうしたことか元気が良い。


 まさか!

「馬達に回復魔術を掛けたのか?!」

「はぁ、はぁ……アリーちゃんも、少しは働かないとね!」

「ああ、良くやってくれた」

 ふっふぅん!

 引き攣りながら笑った。


 それに、俺も考えつかなかった。馬を魔術で回復させるなんてな。

 行けるところまで行って、セレナに乗せて貰って、最後は自分の脚で走ってと思っていたが。


「アリー手を出せ!」

「何!」

「魔力を分けてやる」

 何か紅くなった。


「良いよう。ラルちゃんだって魔力温存しておかないと……」

「想像したくないが、怪我人が大勢出るかも知れん。まだまだ働いて貰わないとな」

「もう、人使いが荒いんだから」

 ローザの方をちらっと見てから差し出した。

 俺は、ぎゅっと握り。


「気を強く持て!」

「えっ、うん……うわっ、ハニャァァア!!」

 魔力を流し込むと、表情がだらしなく融けた。

 

「うわぁぁあ。すんごく気持ち良いんですけど。うぅぅーゾクゾクするぅ」

 横に居るローザの眉が、ひくひくしながら吊り上がっていく。

 いや、ローザさん。決して、いかがわしい行為じゃないから。


「はぁぁああ。満足ぅ! ふぅぅ」

 なんか艶っぽい。

 だからといって、お腹さすられてもなあ。


 えっ、何ですか? ローザさん。この手は?

 新妻の手を握ると、魔力を流し込んでみる。


「ほうぉおお……まあ、でも、あれよりはね」

 なぜか少し勝ち誇ったように微笑んだ。余裕を感じさせる。

 何のことだか。まあでも他でがんばります。


「もう結構です」

 10秒ほどで手を離した。


 あと王都まで1ダーデンまで来たとき、例の魔導波が押し寄せた。


「くっ!」


 北門?

 ここまで近いと、どこで出現したか、三角測量するまでもない。


 それにしてもこれは──

 12時には、まだ10分あるのに!


「ラルフェウス様?」

「どうしたの、ラルちゃん?」


「北門に魔獣が出た!」

「じゃあ、北門に回る?」

 城壁から、200ヤーデン離れたところに周回路がある。


「いや。周回路を左へ曲がってくれ!」


 数分後、俺達の馬車は、周回路を魔獣が現れた北門とは逆に曲がった。


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/01/24 東門広場! 100ダーデンもない。→東門広場! 100ヤーデンもない。

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