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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
6章 青年期III 王都1年目の冬休み編
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103話 埋蔵物

発見って意外な人がすることあるんですよね。

ああ、先輩できました!何か理屈分からないですけど、パズル感覚でやったらできました!

はあ? ……マジでできてるしぃ。特許登録!ウン十万円get!(実話)

 朝9時。


「お帰りなさいませ! ラルフェウス様。お疲れ様、セレナ!」

「ああ」

 ローザが出迎えてくれた。


「ええぇ! もう帰ってきた! ラルちゃん、全部回ってきたの?」


 昨日アリー達が言い出したことが気になって、前倒しで俺とセレナで調査をしてきた。本当は昨日の内に行きたかったのだが、生憎日没が目前だったので断念したのだ。


「ああ、アリー達は準備出来てるか?」

「できてるけど、ラルちゃんこそ朝食は? 食べてないでしょ!?」

「ああ、また後でな」


「そう仰るかも知れないと思い、作っておきました。途中で食べて下さい」

 紙包みを受け取る。

「うん、助かる!」

 ローザがにっこり笑った。


「朝から熱いねえ」

「バカ言ってないで行くぞ!」

「はーい!」


 俺は持たせてくれた軽食を摘まみながら、アリー達と昨日言っていた場所に向かった。




「サラっちぃ、この辺じゃなかったけ? そうだよね?!」

 拠点から直線で1,100ヤーデンくらい離れてたところまで来た。周りは樹齢が長そうな樹ばっかりだ。


「ええぇと。ああ、その大木の裏側ですね」

 サラが、杉の老樹を指差す。

「ああぁ、そう、そう、そう!」


 一緒に回り込むと、地面にこんもりとした膨らみがあった。


「むう!」

「ほぉらね! 何か、やな感じでしょ!」


 15ヤーデン程まで近付くと、確かに感じる。

「ああ。これ魔導波か……」


 魔導波と言えば魔導波だが……なんというか、魔術や魔獣が発するものとは違う。なんだろう、周波数か?

 気にし出すと、今までさほど感じられなかった、この感じがどんどんと強く感じられてくる。


 感覚鋭敏化脳回路。

 少し頭が痛み、突然知りもしないはずの言葉が浮かぶ。


 視界の左半分に半透明の膜が被さり、古代エルフ語が羅列されていく。

 エルフ辞書(ペディア)が発動したのだ。

 ターセル遺跡で手に入れた情報閲覧システムというやつだ。うっかり口にしてもごまかしが利く名前で呼ぶことにした──それはともかく。


────感覚鋭敏化脳回路。アセチルコリンによる大脳抑制回路の活性……


 医学的な知見が知りたいわけではないが、まあいい。要するに、気にし出したことが感覚として鋭敏になるということだ。

 感知魔術に応用できるな。


「皆、少し下がってくれ」


西風(ゼフィロス)!!】


 風魔術で積もった杉の落ち葉を吹き飛ばしてみると、少し盛り上がった地面の色が周りと明らかに違っている。


「うわー。なんか変!」

「ああ。最近、一旦掘って埋められたようだな」

「何のために?」

「何か埋まって居るってことですか?」

「恐らく魔石を使った魔導具だろう」


地壁(マウアー)!!】


 地面を掘り崩して土を退かしていく。40リンチあまり下に何かが見えてきた。丸い円?

 感知魔術に機能強化を加えていくと、下に向かって軸となる円筒であることが分かる。直径23リンチ、軸長31リンチだ。

 不吉な予感が背筋を上ってくるが、無視して周りの土を退かしていく。

 上と側面の土がなくなり、埋まっていた物が露わとなった。


「何これ? ラルちゃん」

 俺の不安に当てられたのか、アリーもサラも眉を下げ暗い表情を浮かべる」

「なんかの容器だな。この蒼さは、ミスリル……感知魔術によると0.1リンチ厚の缶で、中には……」

 隣で生唾を飲み込む。


「中には固まりが2つ入っているが、開けてみないとそれ以上は分からない」


 ミスリルは魔力を伝えやすい金属だ。故に魔導波を閉じこめる隔壁に使われると聞いたことがある。

 ならばこの中は、魔導波で満たされていると考えるべきだ。ただの装飾用途ならばもっと安くて見栄えのする材料があるからな。


「2人とセレナは50ヤーデン位離れてくれ」

 アリーは顔をしかめ、サラは疑問を呈した。

「ラルフ様。危ない物なのですか?」


「分からんが、明らかに誰かが埋めたものだ。このまま放置するという選択はない。ここに来ているのは調査のためだし、第一放置するのは、何やらまずい気がする」


 一歩前へ出かけたサラの肩をアリーが叩く。

「サラっち。離れるよ」

「いや、でも……」

「無駄無駄。ラルちゃん、笑ってるでしょ」


 はっ?

「たしかに、うっすらと」

「ああなったら止まらないから。行くよ!」

「ワフッ!」


「わかりました。気を付けて下さい。ラルフ様」


 皆が離れていった。

 あの顔はヤバい時だからとかとアリーが諭している。

 ああ、例の……とかサラも答えてるし。

 どんな顔してるんだ、俺は。


 それはともかくも、始めるとしよう。

 まずは、ミスリル容器に掌を翳す。


魔収納(インベントリ)!!】


 ……ほう。

 ミスリル容器は、依然としてそこにあった。

 本気で収納しようと思って、初めて入らなかったな。


 生きているもの──


 この魔術は、魔導鞄の術式を改変した物だ。

 魔導鞄に入らない物はいくつかあるが、代表的な物は生きているものだ。少なくとも眼で見て動いているものは入らない。あとは、生きているものと強く結合しているものもだめだ。


 しかし。

 金属缶に入れられて、さらに土中に埋められて生きていられるのは、精々小さな虫だ。それが単に紛れ込んで居るぐらいなら、虫を残して魔収納に入るはずだ。


 魔獣だな。

 結晶化していない魔獣だ。

 だが、こんな小さな缶に入るほどの魔獣では、何程のこともない。そんな魔獣を高価なミスリルの缶に入れる意味が分からない。


 それとも何かの実験か。

 エヴァトン村で見かけられたという黒いローブのやつが、何かしているのか? 


 情報不足、考えるだけ無駄だ。

 ミスリルの缶には、上から2分目に合わせ目がある。あそこから開くはずだ。

 が、用心に越したことはない。


光壁(オーラ)!!】

 腕は守られないが。


 魔術の障壁から突き出し、上辺を両手で挟む。

 固いな。捻るように力を加えると。動き始めた。キュッキュッと嫌な金属音を聞きながら、さらに力を加えると間抜けな破裂音がして蓋が分離した。


 その途端、魔導波が上面から溢れた。残念ながら尋常な物ではないことは明らかだ。


「ラルちゃぁーん。大丈夫なのぉ?」

「ああ、そこから動くなよ!」

「わかった!」


 何が入ってるんだ? 1歩前に出て、上から覗き込む。


 魔石? 赤黒い掌大の塊が、半透明な樹脂のようなもので缶の内側に留められている。

 これにもエルフ辞書が反応した。


 高圧縮魔力蓄積体──


 ふむ。結構な魔力が、この中に封じ込まれているって訳か。

 何か術式が刻まれているが分析は後回しだ。


 もっと気になる物が見える。魔石の下、薄い灰色の丸っこいのはなんだ。生気を感じるんだが。

 魔獣卵──


 生で食べると滋養強壮、精力増進とか書かれている。

 げっ、エルフは食べていたのか。

 孵化前に魔導波暴露により鮮度を維持可。


 ほう、面白い内容だな。自身で憶えているはずなのに意図しないと知見が顕在化しないのはどうかと思うが、使えるシステムだな。


 この辞書の脚注はなんだ?

 魔獣卵を医薬に使う方法が次々出て来る。流石は医療系。病原を、卵体に移植して培養……。人工孵化逆転? 強制成長促進?


 恐るべきことが書いてある。

 大意。魔獣は孵化までの期間が短く、手に入れ難いので、成体から卵に逆成長させる方法。孵化を抑制する方法。具体的には……機密等級1級……未収録か。前言撤回だ。

 強制成長促進……魔力を授与することで、魔獣卵から成体への成長を短時間で強制する方法か。


 まてよ!


 この魔石の術式。大雑把にみると。やはりそうか。基幹は魔力授与だ。俺も使っているやつにそっくりだ。


 つまり……この缶は、魔獣を卵の形で保存して、何らか切っ掛けがあれば成体として出現させるものか。

 俺達が斃した(ヒュージ)甲蝦(バーガス)が浮かぶ。

 あれも、もしかして。


 ならば──


 俺は魔石へ掌を翳した。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2018/07/25 改題「魔獣を追っててとんでもないものをみつけてしまった」→「埋蔵物」

2022/10/09 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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