102話 調査開始
今日は今の会社に引っ張って貰った方の勇退の送迎会。酔ってます。
(注:本文は事前に書いてます)
調査って難しいですよね。特に動く物とか。いやあ、海に居る鯨の個体数調査とかどうしてるんだろう!
統計学万歳!
「あっ、おはよぅ、ラルちゃん……うっ、寒!」
「ああ、おはよう」
一夜明け、俺とセレナが軽く辺りを流して帰ってくると、丁度アリーが出て来た。
「アリーが起きてるということは、サラも起きてるな」
「うん、起きてる……ってどういう意味よ。で、昨夜は何も無かったようだけど、お姉ちゃんと喧嘩とかしてないよね」
「何かして欲しいのか?」
仕切りも何にも無いとこでするわけないだろう。ベッドも別だ。
「ふーんだ。朝食出来てるわよ。早く食べよう」
一瞬で膨れっ面になった。
ゲルに入ると、温かいスープの香りが充満していた。
なるほど、ねぼすけのアリーも起きるはずだ。
「お帰りなさいませ」
館よりは簡素だが温まる食事を摂り、俺達は二手に分かれて、本格的に調査を開始だ。
俺とセレナは走り出す。
無論全速ではない。感知魔術を張りながら、魔獣を見逃さないようにしている。
ラルフ隊は、アリー隊との速度差を考慮して周縁の500ヤーデン幅、3平方ダーデンを受け持つ。アリー隊は中央の1平方ダーデン、面積は1/4を受け持って貰う。
拠点を出て5分。73地区の境界まで来た。セレナは、俺と二人なのが嬉しそうだ。思いっ切り尻尾を振って走ってる。そうだな、王都に戻ったら、しっかり可愛がってやるからな。
走りとしては、ざっと時速12ダーデンだが、木々が有って真っ直ぐは進めないことを考慮すれば、こんな物だろう。
途中1頭魔獣が出現したが小型で、セレナが回り込んであっさり斃したので遅延は無いに等しい。
【さて周回に入るか】
「ワフッ!」
最外周7.6ダーデン。
ぽつぽつと出現する魔獣を、セレナが爪や光爪で切り裂き、もしくは俺が閃光で瞬殺して、50分で一周した。
休憩がてら記録のために、一旦止まる
セレナは、舌を出して白く荒い息を吐いている。
水飲むか? とセレナに聞くと肯いたので、深皿を出庫して魔術で水を注いでやる。
森の真ん中で水場がないから仕方ないが、この水は味も素っ気もない水だからな、悪いな。
俺も水筒を出して、温かい茶を飲む。相変わらず、ローザの淹れたのは美味だ
後は、表情は変わらないが腹を空かせているだろうから、彼女に魔力を譲渡しつつ魔獣の種類と位置を帳面に書いていく。
斃したのは計8頭だな。少なくない気がするが、さりとて多くもない。
大きくても小柄なワイルドボアで、ぱっと見で人族の体重位だったろう。今では魔結晶と化しているので推定だが。やはり昨日のマンティコアは、流れ者ぽい気がするんだよな。何となくだが。
さて、15分ばかり休憩したら、100ヤーデン内に入って、もう一周しよう。そしたら、一旦様子を見に拠点に帰るか。
11時を少し回った頃、拠点に戻ってきた。
「お帰りなさいませ」
「うん、ただいま。ローザだけか?」
「はい。私だけ帰ってきました」
「どのくらい回った?」
「1ダーデン角を半周したところで別れました」
「そうか。なかなかだな」
俺が回る分の境界近くを回ったということだな。
「ちなみに、ラルフェウス様は?」
わざとむっとした表情を作る。
「2人の時は、何て呼ぶんだった?」
「……あなた」
いきなり紅くなった。
「14ダーデンだな」
最外周に行くまでの行程も加えれば、16ダーデンを超えるが差分は重複するからな。
「それは凄いですね」
そう。渦巻き状に5周の行程だが、1周ごとに周長が800ヤーデン短くなる。最初は7.6ダーデンだが、最後は4.4ダーデンとなる。
「と言うわけで、昼まで休憩だ」
近付いて、抱きしめた。
「ああ、お食事の用意が……」
「堅いこと言うな」
†
「あっ! セレナが居る。ラルちゃん、帰ってるんだ。たっだいまあ!」
アリーが帰ってきた。
「ああ、おかえり」
すんすん……。
ん?
「空気が良すぎる。2人で何してたの? セレナが外に居たし」
何言ってるんだ? と言う顔をする。
こういうとき、慌てて言い訳すると、ボロが出る。
「なんだぁ。外したか……」
「何言ってるか分からないけど。お昼にするわよ」
流石、ローザ。軽く流したな。
「ああ、私お手伝いします」
サラが、槍を置いて、ローザの所へ行った。
「暖かい!」
アリーはしゃがんで魔石ストーブで手を焙る。
「どのくらい回った?」
「1周したよ。行き帰り入れて、ざっくり5ダーデンってとこ」
「お疲れさま」
水筒に入っていた茶を、カップに注いで渡す。
「ああ、ありがとう。ラルちゃん」
「で、魔獣はどんな感じだった?」
「うん。あんまり大っきいのは少なかったな。魔山羊位かな。みんなサラっちが斃したけど。強くなったよねえ」
「ああ。だが、無理するな、危ないと思ったら逃げてくれよ」
「うん。分かってる」
アリーは、柔らかく笑った。
「できたわよー」
昼食を食べて午後の周回に出たが、特に午前中と変わるところなく、調査は順調に進んだ。1周を終え3時前には切り上げて帰って来た。通算調査距離は20ダーデン、面積にして2平方ダーデンに達している。俺の残る受け持ち分は10ダーデンだ。
4時頃には、アリー隊も帰って来た。
「ただいま、ラルちゃん」
「おつかれさま。サラもおつかれ」
「はい」
「うん。ああ、お腹すいちゃった。距離短かったのに時間掛かったねえ」
そうだな。
「魔獣多かったですものね」
「そうなのか」
「そうなのよ。ちっさいのが多くてさ。でも本当にサラっちは、がんばったよね」
巫女は殺生を極力避ける。真偽は分からないが、回復系や聖属性の魔術の効果が落ちると言われてる。
「いえ、アリーさんがいち早く魔獣を見付けて頂きましたし、沢山魔術で助けて貰いました」
「いやあ。ラルちゃんが居ないときは、ちゃんと働かないとねえ!」
居るときもちゃんと働けよ!
「ところで、アリーさん。例の件は?」
サラが、何か言い出した。
「ああ、そうだった。ラルちゃん、明日でいいから、一緒に行って貰いたい所があるんだけど!」
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2019/05/22 誤字訂正(ID:1076640さん ありがとうございます)
2022/01/29 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)
2023/02/17 誤字訂正(ID:1552068さん ありがとうございます)
2025/05/20 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)




