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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
6章 青年期III 王都1年目の冬休み編
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101話 女連れに大事なこと

大事なんすよね。町中に行くときは良いけれど。山ですかねえ。メジャーな観光地になっているとこはいいですけど。事前に調べていかないと、ひどい状態に陥りますよ。デートどころじゃなくなりますよ。だから、何が大事かって? 本文をお読み下さい!

 マンティコアは、1頭ではなかった。あと5、6頭居るな。


「そっち半分任せるぞ!」


 セレナは、艶っぽく俺を見上げた。


「ワフッ!」

 音も無く駆けていった。

 いいなあ純粋で。


 じりじりと木々の間から、マンティコアが3頭が出て来た。

 包囲する気だな。


 3角に挟んだヤツが迫り来る!

 挟み撃ち。

 正面が上、後方は脚を狙う。

 ありきたり──だが、有効だからこそ使い込まれる。


 ローブが翻り、捩った身が猛進を躱す。


(ラーマ)!】


 俺の両腕が輝き伸び、光の刃と換わる。


 擦れ違った先鋒共の死角──

 刈り取りに来た必殺の獅子の首を刎ね飛ばす。


 砕ける音。

 降り注ぐ光箭。

 散華の余韻を突っ切る。

 踵を返さんとする獅子。

 一歩で背後を取ると、袈裟懸けに薙ぎ払う。


 断末魔の咆哮。

 勢いそのままに水平へ跳ね。

 間一髪、暗褐色の巨軀を躱した。


 轟然と吼え、正面から飛びかかった1頭を、俺は数ヤーデン押されながらも受け止めた。

 眉間と顎門を光剣に貫かれた獅子から、ジジジと音を発てて焼け焦げる白煙が上がる。声にならぬ身震いが両腕に伝わった一拍後、光子と弾け飛んだ。


 ふぅ。

 これまで長く群を組んでいたのだろう。隙のない連携だった。あるいは兄弟だったのかも知れない。


 さてセレナは、どこまで行った?

 姿が見えない。

 無論、心配などしていないが。


 少し気にし出したところで、セレナが木立の間からゆらりと青白い姿を現した。

 

 全身から湯気を上げている。

 見たところ、特に手傷を負っているように見えないな。

 魔収納を確認すると、マンティコアの魔結晶が7つ入っていた。


「お疲れ様!」

 喉と首筋を撫でながら魔力を流すと、上機嫌の顔になった。


「じゃあ、戻るか」

「ワフッ!」


 30分余り、周辺を回り帰って来た。


 あ!

 そうだ、あれを忘れてた。

 とある物を玄関から数ヤーデン離して設置する。


「おーい、入るぞぅ!」

「はい、お入り下さい」

 ローザの返事を受けて、ゲルの中に入る。暖かい。

 

「お帰りなさいませ。ラルフェウス様」

「ああ、ただいま」


 ローザが歩み寄り、ローブを脱がしてくれる。シャツとホーズ姿になり、生活魔術で靴とセレナの足の土埃を除去して中に入る


 真中に2本の柱と、魔石ストーブ兼コンロがあり、既に赫赫と熱を放っている。そのすぐ脇でアリーはしゃがんで暖を取っている。

「あっ、ラルちゃん。おかえり!」

 壁際の椅子に座っていた

「お帰りなさいませ」

「ああ」


 奥に、テーブルと椅子。水が貯められた大きな木桶と水回り。その両脇にベッドが並ぶ。


 2口あるコンロには、大きめの鍋と薬缶が乗っていて、どちらも湯気を上げている。


「ただいま、お茶を」

「うむ」

 ローザは、いそいそと準備を始める。


「何か魔獣居た?」

「ああ、マンティコアの群れが居たな」


「群れですか……」

 サラが嫌そうな顔をする。

「そんなに強かったっけ? 故郷の村にも居たけどなあ……ああ、でも1匹ずつか」


 確かに斃したこともあったな。

「1頭だと、やや強めの魔獣ですが。徒党を組むと、なかなかに厄介だと聞いたことがあります」

「そうなの、ラルちゃん?」


「うーむ。でも、セレナも3頭斃したがな」

「3頭も!」

「やるぅう、セレナ! 勝手に結婚したラルちゃんと別れて、アリーちゃんと組むのはどうよ?」

「ワッフ!」


 首筋を撫でられていた、セレナがそっぽを向く!


「振られましたね!」

「サラ、うるさい! やっぱり牡には勝てん」

 何言ってるんだ!


「そだ! ラルちゃん」

「ん?」


「このゲルだっけ、凄く良いね。暖かくてさ、気に入った。4人と1頭が住むにはちょっと狭いけど、変な宿屋よりよっぽど良いよ」

「そうですね。暖かいのは、あのフェルトのおかげですか?」


「ああ、たくさん空気を含んでいて、優秀な断熱材だからな。それに床にも敷いているのが大きいだろうな」

「なるほど」


「だけど、問題がひとつ。女子としてはちゃんとしたトイレが欲しいよね。サラっち」

「そうですねぇ。ですが、そこまではなかなか……」


「トイレなら出て右側に……」

「は? あれ? そんなのあったけ? 本当に?」

「ああ」


 すくっと立ち上がると玄関から出て行った。


 椅子に座ってローザが淹れてくれた茶を飲んでいると、アリーがご機嫌な表情で戻ってきた。問題ないようだ。


「さて、アリーも戻って来たし、今回の依頼内容を説明するぞ」


 奥のテーブルの周りに皆が集まる。

「まずはギルド職員から聞いた内容を伝える。どう言う仕組みかは知らないが、ギルドカードが所持者の移動経路を記録する」

 あれからカードが微妙に重いと言うか、動かそうとすると抵抗を感じる。


「へえ……」

「したがって、カードは魔導鞄に入れず携帯すること」

「はい」

「依頼の根幹としては、期間内で決められた領域、俺達の場合は73地区を満遍なく踏破するすることを求められる」


「満遍なくってどれくらい?」

「基本的には、歩いた経路の両脇50ヤーデン(45m)が調査済みになる。73地区は1辺2ダーデン(1.8km)の正方形に近い形で、面積はおよそ4平方ダーデンだ。調査済み面積が、地区面積の半分を超えれば、基準達成だ。もちろんその途上で、斃した魔獣、会敵した数と種類を記録して提出する必要がある」


「歩くのと斃すのは良いけど、記録は面倒臭い」

 正直なヤツ(アリー)

「それが、仕事って物だろ」

「組み分けは?」

「うむ。2組だな。俺とセレナ、アリーとサラだ」


「私も、アリー達に付いていってよろしいですか?」

「お姉ちゃん!」

「皆さんのお食事には、支障が出ないように致しますから」


 ふむ。俺とセレナの速度に付いて来られないから分けたが……危惧を抱いたか。


「ああ。ローザ頼む」


 その真意に気が付いたように、アリーがむくれた。


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/07/15 推敲失敗部分を訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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