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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
6章 青年期III 王都1年目の冬休み編
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98話 調査に赴く

前の職種では、製品の不具合の原因調査とかに出張ってありました。

よく分からないって場合、本当にちょっとしたことが手掛かりになることあるんですよねえ。

情報提供者大事ですね。

 準備万端整えた俺達は、翌朝東門外広場に向かった。

 冒険者ギルドが雇った馬車が、何台も停まっている。


「あぁあ、行っちゃった……」

 集合場所に着く直前に、馬車が出発していった。それを見て、アリーが肩を落とす。


 満員だったじゃないか。間に合っていても乗れないぞ。俺達は4人と1頭も居るんだからな。

 乗り場まで来たが、冒険者ぽい人達の影は見えない。


「あなた達は、応募の冒険者ですか?」

 声の方向を向くと、中年男性が立っていた。腕に西支部と書かれた腕章を着けている。ギルド職員だ。初めて見る顔だが、何だか表情が険しい。


「はい、そうです。従魔1頭と従者1人も居ますが」

「過半数が中級冒険者なら、基準内ですので……冒険者カードを拝見…………ああ、人数は大丈夫ですけど、装備が軽すぎませんか?」

 訝しそうな顔は、その所為か。とは言え確認が甘いけど、まあ本当の申請は先の町だからな。


「行った先では、補給が基本できないと連絡してありますよね」

 そう行く先は小さな町で、何百人動員された冒険者達の補給を賄えないとは事前に聞いている。

 

「大丈夫です。魔導鞄持ちが居ますので。ちゃんと準備してきてます」

「ほう、そうでしたか……失礼しました。6人乗りでは、この従魔の重量が保ちそうにないので、こちらの10人乗りに乗って下さい」

 ちゃんと謝って誘導してくれた。


 後尾から乗り込むが、御者台が無人だ。

 まだ発車時刻は遠いようだ。


 幌は有るけど、中も、朝の陽光が通ってきて、それなりに明るい。

 それは良いが、荷台に椅子の代わりに2列長い箱が置かれただけ、まるっきり荷馬車だな。まあ大量かつ俄に馬車を調達したのだろう。仕方ないことだが、前回乗った馬車より乗り心地が数段劣る。このままだと、エヴァトン村に着く頃には、尻が痛くなるよな。


 魔収納からクッションを出して、ローザに渡す。

「あっ、ありがとうございます」

「ああ!」

 アリーが不満げな声を出す。

「もちろん、全員分ある」

「だから、ラルちゃん好き!」

 現金なヤツだ。


 俺達が乗った馬車は、次ではなく、さらに次の便だったようで、1台の出発を見送った。まあ、仕方ない。

 セレナは家族だし、今回の調査依頼では大いに役に立ってくれそうだからな。


「これですか?」

「はい、あと2人乗れます」

 外から女性の声とさっきの職員の声が聞こえると、後尾から顔が2つ覗いた。若い女性が2人だ。


「従魔が居るけど、広々してる」

「いんじゃない? ああ、荷物は屋根の上ね。同乗しまーす。よろしく」


 そのまま乗ってきた。


「こちらこそ」

 サラがにこやかに返す。

 俺も、軽く会釈した。


「じゃあ、出発します! ハァー」

 パシッと手綱が鳴り、馬車が動き始めた。


 走り出して5分ほど、なんとなく俺達の顔を、観察していたようだったが。


「いやあ。よかったねえ、テレーゼ。女ばっかりの馬車に乗れて」

 はっ?

「そうだね。男がいると、何だか視線が気になってさ」


「クックク……ハハハ」

 アリーが笑い出す。


「あのう……1人、男性が乗ってます」

 恐る恐るという感じで、サラが申し出る。


「ああ。御者さんなら良いのよ、ずっと前向いてるし!」

 アリーが自分の膝を叩いて、笑いを堪える。


「いえ、このローブの方は、男性です!」

「はっ? 冗談よね!」


「何か?」 

 少しドスを効かせた声で返してみる。

「「嘘ぉお!」」


 ヒーヒー身体を折って笑うアリーの背中を、ローザがバシッと叩いた。


「済みません」

「これだけ美形なら、男でも歓迎というか!」

「何言ってるのよ、ビアンカ!」


 これ以上関わるのはやめにしよう。腕組みして、眼を閉じる。


「ああ! この人達、何か敷いて座ってるよ」

「見たらお尻が痛くなってきた。そこまで、頭が回らなかったよ、食料で頭がいっぱいで……何時間かかるんだっけ」

「2時間って言ってたよね」

「うわー。毛布は屋根の上か……」


「えーと。これ、よろしければ、どうぞ!」


 ん?

 サラの声だ。


「いやいや、悪いよ!」

「私は、大丈夫ですから」

 確かに、人族よりはドワーフ系は丈夫にできているが。


「使って貰え!」

 追加でクッションを2個、影で出庫し、サラに渡す。


「うゎあ。ありがとうございます」

「さっきは、本当に済みませんでした」


 会釈して体勢を戻す。


「それにしても美男美女のパーティーですね。驚きました」

 あんた達も、そこそこ整った顔立ちだけどなと思ったが、口にはしない。


「と言うか、こちらとこちらの人、顔が凄く似てるよね」

「姉妹だし」

「やっぱり、そうだよね。似てる似てる」

 アリーとローザのことだ。


「でさあ、奥のお兄さんとは、誰がデキてるの?」

「ちょっと、ビアンカ!」

「何よ、テレーゼ! あんたも気になるでしょ?」

「見た通りだって!」

「なるほど。やっぱりね」

 アリーめ!



 会話は途切れ、皆が束の間の居眠りをしている間に、中継地となっているエヴァトンの村落に入った。馬車馬が疲れるので、ここで馬車を替えるのだ。

 6日ぶりだなとの思いを胸に、馬車を降りた。


「ああ、ラルちゃん、サラっちと花摘みに行ってくる」

「ああ」

【ハナ ミアタラナイ】

 続いて降りてきたセレナが、キョロキョロ見回してる。

 その花じゃないが、説明面倒臭い。

 

 その後に乗り合わせた2人も降りてきた。 

「ああ、クッション。ありがとうございました」

「ああ、いや」

「ラルフ様! ラルフ様じゃないですか!」

 若い男の声だ。

 振り返ると、顔見知りの村人が駆け寄ってきた。


「マール!」

 俺達が(ヒュージ)甲蝦(バーガス)と戦ったときに、ギルドの馬車を避難させてくれた青年だ。20歳らしい。酒盛りになった時に少し一緒に飲んだ。


「あら、知り合い?」

 ビアンカに訊かれる。

「ええ……マール、元気そうだな。」

「はい。おかげさまで。村の衆は元気ですよ。ラルフ様が、デカいヤツを被害もなく斃してくれたってみんな感謝しております」


「ちょっと待って、1週間前、椰子蟹のお化け魔獣を斃したのって?!」

「ええ、こちらのラルフ様とお仲間です」

「うわぁぁ。聞いた? テレーゼ」

「聞いたわよ、男前だけじゃなくて強いとはねえ。光神様は不公平だわ」

「いいじゃない、不公平賛成! でも、羨ましいわ!」


 ローザは、軽く頷いて微笑んだ。


「ああマール、頼みがある。情報が欲しいのだが」

「情報ですかい? アッシが知ってることなら何なりと」


「ありがたい。例の魔獣が出現した後、何か変わったことはなかったか?」

「そうですね……」


 回答をまとめると。

 エヴァトン村では、先週以来異変は起こっていない。

 起こっているのは宿場町パルヴァンより奥。

 魔獣は多く出現しているが、人の身長を超える物は見つかっていない。

 マールが物心ついてから、そんなことは起こったことはなかった。


 むう……。


「どうでしょう? 何かお役に立ちますか?」

 ウチのパーティーの面々が、同じように肯きながら、俺の方を向いてる。

「そうだなあ……何、期待してるんだ?」


「だって、ねえ」

「そうです。あの迷宮でも、素晴らしい謎解きをされたわけですし……」


 アリー達の後ろに居たビアンカが大きく目を見開いた!

「ええ? やっぱりあの新聞の記事合ってたんだ!」

「ということは、迷宮の大発見もこのパーティーで?」


「ああぁ……すみません」

「ああ、バレちゃったねえ……」

 申し訳なさそうなサラに、うれしそうなアリー。


「マール!」

「はい!」

「魔獣が現れる前はどうだ? 先週より前にエヴァトンで、なんか変なことは起こらなかったか?」

「変なことっすか? うーーむ……」


「例えば地震があったとか、大きな音がしたとか……」

「いやあ……そういうことはなかったですねえ」

「ないかぁ」

「ああーー。”こと”はないんすがねえ。変な”ヤツ”らは来ましたね」


「ほう……どんなやつだ」

「いえ。アッシが直接見たわけではないんすよ。パドメのヤツが、ああいや、村の娘なんですが。そいつが、黒い服、そうラルフ様と同じような……ローブでしったけ、それを着たヤツが、ここらの森や貯木場を彷徨いていたと。いやまあ、何をしていたと言うわけではないですが」


「興味深い話だな。その黒い服を着たヤツ、その後は?」

「ああ、いえ。あのデカい魔獣が現れてからは、見た者は居ませんね」


「そうか。ありがとう」

「いえいえ、何かお役に立てましたか?」

「それは、まだ分からないがな。アリー!」


「ん? ラルちゃん。何、その手?」

「持ってきてるんだろ、一本出せ!」

「えっ、ええぇ……」

「早く!」


「うぅ……はぁい!」

 アリーは口を尖らせ、渋々という顔で、魔導鞄から瓶を取り出し、俺の手に乗せた。


「マール、これはみんなで飲んでくれ!」

「ああ、これは前に振る舞って戴いた、凄くおいしいワインじゃないですか、よろしんですかい」

 肯くと、何度も礼を言って、瓶を押し頂いて去って行った。


「前に……ねぇ」

「おっ、お姉ちゃん。なんで、そんなに恐い顔するかなあ」

 いつの間にかアリーの横にローザが居る。


「その鞄、貸しなさい!」

「ああ、いや! いやよう……ラルちゃんのバカ!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/05/08 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)

2022/02/14 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

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