蛇革の白い首輪
聴こえていたさ…
玉五郎の声 …
でも… 俺が目開けちまったら…
あいつ、逝けねぇような気がして …
鉄治の瞼から涙が溢れた…
ガタガタッ!ガタッ!
「酷いな~ 」「焦げ臭いな…」
「何だこれ…」「凄いなぁ…」
バタバタバタバタッ!バタバタッ!
騒がしい物音と、複数の人達の話し声と、足音が近づいて来た…
俺は、さっきと変わらず…
意識はあるが、躰が動かない …
特別、どこかが痛いとかでは無いが…
金縛り?判らなねぇけど動けなかった …
ガタンッバリバリッ!
焼け落ち、崩れかけた多田家の瓦礫を押し退けながら、足音が近づく。
「鉄治さん!僕 … 教わりたい事が、未々あるんです…ゾンビでもいいです…帰って来て下さい!お願いします!」
清の声だ …清、ゾンビが好きなのか?ゾンビで戻ったら流石に逃げるだろ?足の速いゾンビ… 凄ぇ怖っ!駿足!
カタンッ、バキッバキッ
「全部焼けてる~鉄治~何処~? 焼けてるのぉ~?」
矢野さんの声… 俺 …此処っす…
黒焦げだったら、悲し過ぎでしょ…
ガツッバリッドカッ
「鉄サンッ!即死カ安楽死カ!焦ゲ焦ゲ」
ジミーの野郎 …
何が焦げ焦げだ、 まぁでも、ありがとな
ガタンッバンッバリッ
「鉄治さぁ~んっ!俺、東京行かないから …グスッ…鉄治さんてばっ!」
こりゃ、政だ… 泣いてやがる…
それが良いって… 華やかで楽しい都市だけどよ、金持って遊びに行くくらいが丁度良いって… 泣くな …
バキッドカドカッ!バリバリ
「鉄治!おいっ鉄治!返事しろ!生きてんのか!死んでんのか!」
冴木さん…
すみません… 伸びてまーす…
冴木さんは大丈夫なんですか?
ダンッガタッバキッバリッ
「鉄さんっ!鉄さんっ!… 鉄さん、いた- !こっち!あっ…汚っ!涎でてるよ … 鉄さん… 」
天野の声が聴こえた…
「ば~か… こりゃ、鼻水だ… 」
俺は天野をからかった…
「うわっ…」
天野は後ろへピョンと兎みたいに飛んだ
俺は、皆に支えられ多田家を脱出した。
家を出ると直ぐに…
「てっ鉄治-!無事だな、無事なんだよな !」
社長が車椅子に乗っていた …
熊谷さんが社長の乗る車椅子を押し、俺の前迄来ると…社長は俺の手をグッと握り … 涙を落とした …
その日は、その後、病院へ行ったんだ …
CTだ、何だかんだと、躰中検査したぜ…
何処も特別悪くは無かったんだ…
全身打撲って程度さ…
俺、病院嫌いなんだよな…
まぁ、仕方ないけどな …
後日談だが… 不思議な事によ…
俺、冴木さん、社長 …
3人とも、あの家に入ってからの記憶がバラバラなんだ…
幾ら話しても、互いの記憶がズレてんだ …
つ-か話しにならないくらい違う …
社長は家に入る前に、ギックリ腰になった って言うし …
冴木さんは、家に入った途端、ガス爆発でぶっ飛んだって言うし …
依頼主の多田さんは…
体調不良で、御浄め欠席して寝てたって言うしよ、奥さんは裏の畑で花の手入れしてたって言うし…
お食事処 羽波に電話したら …
羽波 勘吉と言うのは確かに先祖だが、1000年以上も昔の事ですし… 勿論、死んでいますと言われた …
おかしな話しだぜ、全くよ …
関わった人間全員の記憶が、見事にバラバラ …
消防署と警察が言うには…
不審火じゃないかって…
これまた合わねぇんだ …
そんな事が出来るなんてよ…
神様とか…神仏とか… そうだろ?
俺、思うんだけどよ …
誰も悪くならねぇように神仏が
細工してくれたんじゃねぇかなって …
… … … 正に神業 … … …
でもよ、俺の中じゃ…
俺の記憶が確かだって言いきれるし、証拠だってあるんだぜ!
それはな …
俺の部屋に遺されていた …
玉五郎の白い蛇革の首輪さ …
猫缶もカリカリも持って逝ったのか …
消えているのによ …
あいつの首輪だけは残っていたんだ…
俺の枕の上に白い蛇革の首輪が…
ちゃんと置いてあったのさ …
話し飛んで悪いなっ、そんで…
翌日から、冴木さんと俺と天野と政と清 の5人で、異例のVIP対応をして多田家の現場の後片付けをしてよ、何事も無く更地にして仕事は終わらせた …
依頼主の多田氏から
「皆さんで、どうぞ…」
菓子おりとジュースを3箱頂いた …
社長と冴木さんと俺の3人の記憶は、御浄めの日、多田氏の家の前から可笑しな事にな っているから…
勿論、3人とも食い物・飲み物・贈り物の話しは覚えていたんだ…
でも …俺はよ …
タコ社長の所みたいには、ならない気がしてよ … 飲んじまったんだ …
案の定、全然、何処も何でもなくて、腹も壊さなきゃ、ピョンピョン、ガルルルもしなかった。
社長は笑って …
「ガハハ! そうか、タコ社長の所だったからかもな~ガハハッ!」
冴木さんは …
「鉄治 … この際だ…3箱とも1本ずつ出して 飲んでみてくれや …」
何時に無く真剣に言われたから、冴木さんの目の前で3本飲んだぜ、旨かった!
冴木さんは、俺が飲み終わって30分経ってから安心して飲んでいたぜ…
其から皆に配ったんだ、誰もなんでも無か ったぜ …
俺は安心した … キツイ思いしたけどよ…
多田 正美さん生きていたし、呪いも消えたんだろう…
俺、バロンの心の声ってのか…
何か聴こえていてよ …
夢見たって事で多田氏に話したら…
バロンの言った通り …
狗恋山の手前のダムから、乗用車が引き上げられて、消息不明だった弟家族とバロンの死体が上がったんだ… 死体ったって白骨だったって話しだけど
「此で、きちんと供養できます…」
多田氏は、そう言ってくれたんだ …
俺も線香上げさせて貰えたし…
悲しいけど、水の中にいるよりはよ…
まぁ、そう思ってよ …
今回の話しはどうだった?
楽しんで貰えたなら、嬉しいんだけどな…
あっ、それとよ …
もし、もしも… 読者の皆がよ…
赤いペイズリー柄のバンダナ首に巻いてるか、背中に縛りつけてる、黒毛で艶々の玉のデカイ猫を見掛けたら…
鉄治が心配してるから…
ふらふらしてねぇで帰ってやれって、言って貰えねぇかな …
もしも、もしも…
見掛けたらの話しだけどよ…
何か… また逢えるって想っちゃってよ…
すまねぇけど…
宜しくたのむぜっ!
それじゃっ! またなっ!
了
最後まで拝読頂けました事
心より感謝致します。
ありがとう ございます。
MiYA




