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解体屋 鉄治  作者: MiYA
24/25

穢れなき魂



意識はあるっつうのに…


かっ躰が動かねぇ …


玉五郎、バロン、鴉、多田さん…



なぁ… 皆 … 頼むよ…


生きててくれよ …



鉄治の目から流れた一粒の涙が…


首に掛かるイラタカを濡らした




ポツッ …





観~自~在~菩~薩~行~


深~般~若~波~羅~蜜~多~


時~照~見~立~




イラタカから般若心経が聴こえる …




「なっ、何ですか…」



羽波行者は鉄治のイラタカを見つめた…


経の声は崩れかけたリビングに響き渡る



羽波行者の皮膚が…


彼方此方と(メク)れ上がり…


削げて落ちた …



羽波行者は鉄治から、数歩、後退った …



イラタカは、ゆっくりと廻りながら、鉄治の首をスルリと抜け…



鉄治の頭の上で黄金色に光り出し…


目の眩むような…


眩い光りを放射線状に放った …




「うっ、うわぁ~あぁ~落ちる、私の肉が 、私の皮膚が~」




羽波行者はオロオロし…


ボトボトと床に肉片を落とした…




「わっ私は、究極の悟りを得たのですよ、何故、此の私が朽ちるのです!何故!」




黄金色のイラタカは素早く四隅へ移動し、家を取り巻く炎を鎮火させた …



その間にも羽波行者の躰は、次から次へと欠けて行く…




「助けて下さい!誰か! 嫌っ嫌です!私は … 私は … こんな事を望んではいない!」




イラタカは玉五郎の頭の上に留まると …



ゆっくりと廻り始めた …



放射線状の光りが羽波行者を照らす度…



羽波行者は加速するように欠けて行く…




「嫌だ!嫌です!こんなっ、私は即身成仏 をしたのですよ!酷…い… 」




羽波行者は泣き崩れた …



玉五郎の胸の奥が…

ポッポポッポと熱を持ち…




「オェェ ~ッ、ゲップッ」




青々とした葉を吐き出した …


緑色の葉は(タチマ)ち大きく拡がり


人の背丈程になると…



バリバリバリバリッ



自らの力で葉を破いた…



グゴォ-バリバリバリバリッゴォ-ッ



雷鳴のような恐ろしい音と共に


辟邪尊が憤怒の形相で、破れた葉から現れた …




「へっ、辟邪尊 !お助け下さい!私は即身成仏を成した者で御座いますが…あの黒焦げの男に呪われ… このような姿に… どうぞ 辟邪尊、御慈悲をっ…」




羽波行者… 否 … 羽波 勘吉は…


辟邪尊の足元にひれ伏し…


涙を流しながら懇願した…




壁邪尊はジロリと勘吉を見つめ…



涙…カ …




勘吉ヨ…


ソナタ何故ニ泣イテオル… ?



勘吉は顔を上げ …



「はい… 此のように呪いに巻き込まれ、身を滅ぼさなければならない事を…私は悲しんでいるのです… うっうう…」



勘吉はボロボロと涙を落とした…



勘吉 …


ソナタハ …


己ノ身ノ為ニ涙ヲ落トスカ…



勘吉の顔は青醒め…




「いぇ、辟邪尊決して其だけでは御座いません!唯… 私も頭が混乱しているのです… 気が動転しているのです…何と悲しい事か 、何と言う悲劇かと嘆いて おりました …」




辟邪尊は目を細め…



勘吉 …


ソナタハ真ニ …


小賢シキ者…


他ノ者達ヲ見渡セ …


ドノ者モ、愛シキ者ノ為 …


涙ヲ流シ… 傷ツイテオル …


ソナタハ ドウジャ ?




勘吉はオドオドし顔を伏せた …



ソナタノ腹ノ中カラモ…


温カナ涙ガ見エルゾ …



… 勘吉 …




我ガ知ラヌトデモ思ッタカッ!




グォオ-ッ辟邪尊の怒りに併せ風が鳴る




未ダ …


我ニ伝エタキ事ガアルカ ?




勘吉は躰をプルプルと奮わせた。


躰の彼方此方から覗く白い骨が擦れ、カタカタと音を鳴らす…



「わっ、私は、唯!永久(トワ)の命を望んだだけっ!そして悟りを開き…」




黙レ …


ソナタニ懺悔ヲ望ム事…


其ガ永久ニ無駄デアル事ヲ…


我ハ今、悟ッタ …


ソナタノ 言葉デナ …



ソナタハ人トシテ生マレタノダ…


人ノ身デ永久ヲ生ル等…



我等ハ望ンデハオラヌ…



如何ニ全テノモノニ愛ヲ抱キ …


如何ニシテ、己ノ魔ト闘イ …


如何ニシテ、心穏ヤカニ生キルカ…


其ガ人トシテノ行 …



ソナタノ心ニ見ルハ、己ヘノ愛ノミ!


我ノ眼ニハ、ソウ映ル…



朽チヨ… 勘吉…




… … 生身ノ者トシテ … …




辟邪尊は剣先を、勘吉の鼻先に向けた…




「いっ… 嫌だぁ~死にたくない!死にたくない!私は死にたくないのです!辟邪尊、辟邪尊!どうか!御慈悲を~辟邪尊~!」




辟邪尊は眼を綴じた …




ソナタニ懺悔ヲ望ムハ…


ヤハリ無駄デアルノカ …


憐ナ… (シカバネ)ヨ …




辟邪尊がポツリと呟くと…


辟邪尊の腕から…


稲妻のような青白い光りが走り…


剣先から放たれた…



ゴォ-バリバリバリッゴォ-ッ



勘吉の皮膚や肉は溶けるように消えた…




「嫌だぁ~!私は死にたくない~!私ハ … 死ニタクナイ … 死ニ…タ…ク…ナ…イ…」




勘吉は泣き叫んでいたが …


その声も遠くなり…


軈て… 聴こえ無くなった …




勘吉の消えた後には…


勘吉の黄色み掛かった骨だけが…


悲しそうに… 残されていた …




辟邪尊は剣で空を凪ぎ払い…



玉五郎 … 鴉 … バロン …


陽・月・雲・空・地・五匹ノ犬達ヨ …



目覚メナサイ …



多田氏の焼け跡から五つの光りの玉が…



勘吉の肋骨の間からも … 一つ…



バロン、そして、玉五郎の躰からも一つずつ、ピンポン玉程の光りの玉が飛び出し…



辟邪尊の周りに集まると…


クルリクルリと廻った…



サァ …


行クベキ処ヘ逝キナサイ …


穢レナキ魂達ヨ …



七つの光りが崩れた天井を抜け…


空へと昇った…



一つだけ残った光りの玉は …


宙に浮くイラタカヲ押し…


鉄治の首に戻した …




鉄治 …


俺、逝クニャン♪


仲間ガ待ッテル …


鉄治、オ前ニ逢エテ…



最高ニ幸セダッタ …


アリガトナ 鉄治 …



… … 愛シテクレテ … …



光りの玉はスリ~ッと1度だけ…


鉄治の頬を撫で …



空へと高く昇って逝った …



辟邪尊は光りの玉が全て空へ昇ると …



剣を突き出し…


グルリとその場で一回りした…


風が起こり…


渦を巻くその風の中に …




… … … 消えた … … …





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