勇敢なシェパード
玉五郎の長い爪が…
羽波行者の目を突き刺す…
「フィギャァァー」
バロンは脚に咬みついた …
「グッワァン… グェ―」
鉄治は阿相パワーで殴り掛かった…
「おらぁ~喰らえ―っ!」
羽波行者は不気味な笑みを浮かべ…
「皆さんに見苦しいところを、お見せ致しましたね… 」
平然とした顔でそう言った …
「ギャヒッ!」
玉五郎の爪先に、神経を突き上げるような痛みが走り、爪を引いた…
「グェ―ッワウン…」
バロンはニッキを噛んだ時のように、情けない顔になり口を開けたままだった…
「うっ,グェェ―ゲロゲロ…」
鉄治は羽波行者に殴り掛かったのだが…
噎せ返るような匂いが目と鼻先を突き 、どうにもならずに吐き出した …
羽波行者はニヤニヤと笑い
「私、お腹が空いてしまいましてね… 本当は、鳥 … 食べてはならないのですが…緊急事態でしたから… 少々の殺生はお許し下さるでしょう、ワァ―ハッハッ! さて… 皆さん 、お解りでしょう? 私は死なないのです … ですが皆さん、私の秘密を知ってしまいました… はぁ…困りましたね… 殺生を重ねなくてはならないのですから…生きていられては迷惑です…何方から死んで頂けるのでし ょうか?」
羽波行者はギロリと鉄治達を見回した …
「…口は災いの元と言いますから…鉄治さん 、貴方からにしましょうか … 」
羽波行者は吐き気に襲われ、蛙のようにゲロゲロ泣いている鉄治の髪を鷲掴みにした
「鉄治―ッ!ニャニャニャニャンッ!」
玉五郎が羽波行者に飛びかかり、羽波行者の手を引っ掻きまわした。
「はぁ… 憐れな猫…」
羽波行者は玉五郎を床に投げつけた
ダンッ…
「ギャヒッ… 力ガ増シテ… イル…ニャ…」
玉五郎はグッタリと床に転がった …
バロンは玉五郎に駆け寄り
「クゥン玉五郎…」
ペロペロと玉五郎の顔を舐めた
「この野郎… 離せや… ゲロ吐いてんだろうがぁっ!」
ゴッツンッ
鉄治は羽波行者に頭突きを決めた …
「かっ、固い頭ですね… おぉ~痛… でも死んで下さいね …」
羽波行者は両手でグイッと鉄治の首を締め上げた …
ギュギュッギュー
「ぐっ…何て… バカ力だ… 糞…野郎…」
鉄治は必死に、羽波行者の手を外そうとしたのだが、羽波行者の手は一向に外れず、寧ろグイグイッと力を増し締め上げた …
「くっ… そっ… うっ …」
鉄治の顔が紫色に変わり始めた
舐めても舐めても玉五郎は起きない …
鉄治の顔色は斑に変わる …
バロンは意を決し …
「玉五郎… 僕、頑張ル!見テイテ…」
ウゥ~ガルル~ウォンッ!ウォンッ!
バロンはペットとしての内気な性格を今は隠し …本来持っている野生を勇気と言う想いで呼び覚まし羽波行者の脚に咬みついた
「邪魔ですよ…退きなさい…」
羽波行者は脚を振り回し、バロンを振り払う…
「キャンッ!」
床に打ち付けられても…
「ガルル~ウォンッ!」
お腹を蹴り上げられ宙に飛ばされても…
何度も何度も、羽波行者の脚に咬みついた
負ケナイ…
絶対、負ケルモンカ…
僕ハ、負ケ犬ナンカジャナイワンッ!
僕ハ隣街ニ在ル、Niceワンニャンランドノ店頭デ売リニ出サレテイタンダ …
僕、シェパードナンダケレド… 内気デ…
ダッテ、怖インダ…
生マレテ数週間デ、母サントモ兄弟達トモ離レテ …
人間達ニ、ジロジロ見ラレテ…
四六時中観察サレテイルンダ…
「可愛イ~」「寝テル~ 」「水飲ンデル」
全部全部見ラレテイルンダ…
僕、何サレルノ… ?
不安ニナッテ…
生キタ心地ガシナインダ…
僕、毛ガ抜ケチャッテ…
紗菜ハ 1人デ…
仕事帰リニ店ニ来タンダ…
クリアケースの前に立って、怯エテ震エル僕ヲジット見テイタ
僕ハ怖クテ、苦シクテ …
ワンニャンランドノ店員ガ…
「コノ子… 気ガ弱クテ… 毛モ抜ケテシマッテイマスケレド… シェパードナンデスヨ~ 血統書モチャント有リマスヨ~オ値段モ半額ニナリマシタヨ~特価デスッ♪」
営業トークヲシタンダ …
紗菜ハジット僕ヲ見テ…
「抱イテ良イデスカ?」
店員ハ笑顔デ、僕ヲクリアケースカラ抱キ上ゲ… 紗菜ニ抱カセタンダ …
紗菜ハ僕ノ頭ヤ躰ヲ撫デテ …
「今日、連レテ帰レマスカ?」
「アッ?少々オ待チ下サイ、店長ニ確認シマスノデ…」
マサカ、僕ガ売レルトハ思ッテイナクテ、店員ハ慌テテイタンダ …
前日、店ノ営業時間ガ終ワッテカラ、店員同士デ話シテイタンダ …
「アノシェパード、店ニ置クノ、今月イッパイダッテ、ダメナラ… 戻スッテ…」
戻スノ意味知ッテイル?
交配サセルカ、屠殺サレルカナンダ…
店員ハ店長ニ確認シテ
「ハイ、オ渡シ出来マス…」
僕ハ紗菜ニ連レラレ車ニ乗セラレタ …
僕ハ怖クテ…怖クテ…
紗菜ハ、僕ヲソノママ動物病院ヘ連レテ行 ッテクレタンダ…
「可哀想ニ… 脱毛症?抜毛症?…私ト同ジ ネ …」
紗菜ハサイドテールニシテ隠シテイタケレド、5円玉程ノ円形脱毛症ガ二ツ出来テイタンダ …
病院モ終ワリ、僕ノ餌ニ混ゼテ飲ム薬ト、エリザベスカラーヲ首ニ巻イテ、コノ家ニ来タ …
紗菜ノオ父サンハ紗菜ノ頬ヲ叩イテ…
「家ハペットハ駄目ナンダト、何十回言ッタラ解ルンダ御先祖ガ許サナインダ!」
紗菜ヲ怒鳴リ散ラシタケレド…
「私ニハ友人ガイナイノ、皆、最初ハイイケレド気味悪イッテ離レテ行クワ、子供ノ頃カラ引ッ越シバカリダシ … 犬クライ飼ワセテヨッ!」
紗菜ハ僕ヲ抱エテ、自分ノ部屋ニ連レテ行 ッテ… 僕ヲ撫デナガラ… 泣イテイタ…
オ父サンハ納得シナカッタケレド…
紗菜ガ仕事ニ行ッテカラ…
僕ヲ散歩ニ連レテ行ッテクレタンダ…
頭モ撫デテクレタヨ …
紗菜ニハ内緒デネ …
時々、煙ミタイニ黒クテ…
モワモワシタ犬達ガ家ニ来タケレド …
最初ダケ威嚇サレタ、デモ次カラハ…
僕ヲ見テ見ナイ振リト言ウカ…
気ヅカナイ振リシテイタンダ…
オ父サンガ散歩ノ時ニ言ッテイタ…
「命取ラレタラ… ゴメンナ、バロン… 家ノ 御先祖様ハ、狗神様ト縁ガアッテナ… オ前 ヲ憎ラシク思ウカモ知レナイ …」
僕ハ、紗菜ノ家族ガ大好キダカラ…
僕ノ家族ダッテ、想ッテイタンダ …
ケレド… 先祖ノ想イハ強クテ…
オ父サンガ… オカシクナッテ…
家族、皆デ…
狗恋山ニ登ル手前ニ在ル、ダムニ車ゴト…
見ツカッテハイナインダ …
僕ガ、アノ時モット勇気ヲ出シテ、咬ミツイテデモオ父サンヲ止メラレテイタラ…
僕ハ後悔シタンダ…
ダカラ、今度ハ後悔シナイヨウニ…
大切ナ人達ヤ友達ヲ守ル為に闘ウ!
僕、負ケナイ!自分ノ弱サニ!
バロンは何度も羽波行者に飛び掛かる…
「しつこい… 」
バンッ …
羽波行者は鉄治を放り出し …
バロンの後ろ足を持ち、床に何度も叩きつけ、腹や顔を踏みつけた…
「キャンッ、ギャンッ… ウゥ~ッ!」
それでも勇敢に立ち向かったバロンだったが …
「キャインッ … 」
そのうちに、動かなくなってしまった …
「馬鹿な犬… 私はお前の実態が無くても、 お前を痛めつける事も、お前を消す事もできるのですよ… 何の為に修行していると思っているのですか … ふんっ!さて、お待たせしました… 」
羽波行者は再び鉄治の首に …
手を伸ばした …




