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解体屋 鉄治  作者: MiYA
10/25

嚔 (クシャミ)

「呪イノ因縁言ウモンガ何デ続クノカ?呪イモ、要ハ、人間ノ願イデスワ、正デアレ負デアレ、ソノ願イガ叶ワンカラ続クンデスワ … コノ呪イハ、犬ヲ遣イ魔ニシタ呪イデス… 一晩デ 解決出来ルヨウナ簡単な問題デハアリマへン … アッ…アァッ!ウチ冴エテルワ~ヒャ~驚イタワ ~ 思イツイタワ ~ アンサンノ会社ノ社長サン二、電話サセマスワ~ウヒョ~傑作ッ!最高デスワ!」


主は1人で楽しそうに話しているが…



俺にはサッパリ解らなかった …



「あっ、あのよっ… はしゃいでる所、悪いんだけどよ… うちの社長に電話させるってのは何の話しだ?てめぇ、社長巻き込む気かよ!」



「アァ、スンマセン、説明シマスワ… 今、 アンサンノ会社ノ社長サンニ… アノ家ノ呪イヲ受ケルベキ筈ノ人間ノ末裔ニ、穢レヲ払ワセヨウ思イツイテ、社長サン操ロウ思ウタラ … 社長サン、モウ電話シテマシタワ … コノ 人、普通ノ人間デッカ?コノ勘ノ良サ… ヒャ~驚クワ!ナンナン…コノ人…」



「呪いを受けるべき人間の末裔… ?」



「アンサン、ウチ、コレ以上、関ワレマセンワ、時ガ動キ始メヨッタサカイ… アンサン … イイ出逢イシトリマスナァ~後ハ時ニ任セナハレ、ホナ、サイナラ…」



「おいっ、ちょっ、解んねぇよ!なぁ! 」



俺には理解できなくて、何とか主と話そうと思ったが、主は応えなかった …



「ニャ~ゴロ♪ 兄サン水クレヤ …」



「あっ、あぁ、解った …」



俺は玉五郎の前に水入り小鉢を置いた …



ペチャパチャッ、ペチャパチャッ



玉五郎は水を飲みほすと…



「兄サン、俺モ… 妖猫ヤ… サッキ主ガ言ッテタダロ… 犬ノ遣イ魔ッテ… 同類ダ…」



ボソッと玉五郎が呟いた …



「玉五郎 … 妖猫って…何の術使うんだよ ? 玉五郎は普通の猫だろ!チョッと玉がデカイだけだろ?」



玉五郎は目を細め辛そうに俯き…



「玉ノ話シハ置イトケヨ… チャームポイントダロ…

哀レナモンダゼ、遣イ魔・化ケ猫 ・猫神ナンテ呼バレテヨ … カレコレ300年経ッチマ ッタ… へへッ…」



「300年て… 何言ってんだ?玉五郎… 」



玉五郎は前足をペロペロ舐め、耳の後ろから顔の前へ前足を降ろし、顔を洗いながら哀愁を漂わせた。



たっ、玉五郎 … 可愛い過ぎ … SO cute!



それから、また、話し始めた …



「俺ミタイナ動物ッテノハ… 人間ミタイニ 欲デ生キテイル訳ジャネェ… 人間ガ究極ノ 状態ニ俺達ヲ追イツメ、自分等ノ欲ト感情ヲ植エ付ケル … ソウシテ俺達、遣イ魔ガ創ラレル… 俺達ハ自分ヲ創リダシタ人間ニ従順ダ… 創リダシタ人間ハ俺達ヲ崇メモスル … デモ、時ハ流レル… 創リ出シタ人間ガ死ンデモ、俺達遣イ魔ハ生キテイル… 実態ヲ持ツ持タナイハ別ニシテナ… 人間ノ欲ヲ叶エ続ケタ俺達ノ念ヤ穢サレタ魂ハ生キ続ケル … モウ、欲ハナイヨ、今迄、有難ウ … 遣イ魔ヲ創リ出シタ人間、又ハ、遣イ魔ヲ継イダ人間 … ソウイウ奴等ガ、何年掛ロウト 、何代続コウト、心カラソウ想ッテクレタナラ… 何レ穢レガ離レ、俺達ハ本来ノ動物トシテノ魂ニ戻レル … 散々、俺達ヲ遣ッテ欲ヲ叶エサセ … 先祖ハ、ソウダッタロウケレド私達ハ迷惑ダ、ミタイナ態度ヲスル奴等ニハ、ソリャ祟ルサ!当リ前ダロ?祟ラレタラ怖クナッテ崇メヤガル!寝テモ覚メテモ自分達ノ事バッカリダ… 俺達ハ尽クシテ、泣キ濡レテ…煙タガラレテ … 笑ッチマウ… 笑イ過ギテ涙ガ出チマウクライサ … 」



玉五郎は、心を吐き出すように話した…


俺は玉五郎の頭を、ゆっくりと撫で …



「なぁ… 玉五郎…主ってのは、お前を遣い魔とやらにしてるのか?」



玉五郎は首を横に振り



「イャ 、主ハ… 俺ヲ穢レカラ解放シテクレタノサ … 120年前ニ出逢ッタンダ … 」



「えっ!120年前っ? 主って人間?仙人か っ?霞み喰ってんのかっ?」



玉五郎はニヒルに笑い …


「近イカモナ… 」



そう言うとコロンッと俺に腹を見せた …


いや、あのっ、キュート過ぎだろ…


矢野さんと張る気か… 玉五郎 …



そんな、もっふ~な腹見せられたら、撫でたくなるのが人情ってもんだろ …



俺は玉五郎のもっふ~な腹を撫でた…



「ニャン♪ ア~気持チイ … 明日、アノ家ニ関係者ガ集マル … ソレヲ、静観シテイロト 、主ハソウ言ッテンダ … 先ガ解ラネェッテ事ダ … スー スー」



玉五郎は疲れてしまったのか、話し終えると眠ってしまった。



玉五郎 …


俺には理解し難い話しだけどよ


お前みたいに、哀しい想いしてる動物達が沢山いるなら …


酷い話しだな…



俺は玉五郎の躰が冷えないよう、クッシ ョンの上に玉五郎を運び、ケットを掛けた。


玉五郎はスースーと寝息をたて眠ったままだった。


「清じゃねぇが、動物愛護協会に訴えたくもなるな … 玉五郎の話し聴いたら、嗚咽するだろうな… 清 …」



玉五郎の可愛い寝顔を見ながら、鉄治はそう呟いた …





… 清の家では …



「ただいまー」



「すいませんっ!お邪魔しまーす!」



政を連れ、清が帰宅すると …



「まぁ!清がお友達連れてくるなんて!嬉しいわ~さっ、入って入って! 」



清の母、美智代は政を大歓迎して迎えた



「母さん、今日、政さん泊めるからね」



清の言葉を聞き政が


「初めまして里中 政です、清君と一緒に鉄虎で働いています、宜しくお願いします 」


美智代は嬉しそうに



「あらぁ、そうなの~じゃ、清の先輩さんなのね、どうぞ宜しくお願いします。今日は楽しい夕飯になるわね♪何にしようかし ら~♪ お母さん買い物行って来るから 、清 、頼むわね♪」



「あっ、うん」



美智代は嬉しそうにルンルン♪しながら買い物に出掛けた。



「清… お前の母さん可愛いな… 俺、母性的な女に弱くてさ …」



政が何気なくそう言うと



「政さん … うちの家庭を壊すような事したら 、ぶっ殺しますからねっ!」



清は真剣な顔をして、政に忠告した。



「解ってるよ~ 冗談だろ~そんな怖い顔すんなよ …」



「それなら良いですけど… 僕の部屋はこっちです…」



清はツカツカと歩いた



「もぉ~清~ツンケンすんなって~」



政は清の後を追った



清の部屋は8畳程の広さで、部屋にはダンベルやパンチングボール等、やたらと躰を鍛えるグッズが置かれていた。



一瞬、清は健康オタクか、筋肉好きなのかと政は思ったが…



「パンチングボール?あ!そっか、清、矢野さんにボクシング教えて貰ってるんだもんな 」



「いぇ… まだ、本格的には… コーチには、 先ずは躰を確り鍛えなさい♪全てはそこからよっ♪と言われています、仕事でも毎日 走り廻っていますから…体力はついたと思うんですが、コーチには、まだよ清君♪と言われています …」



清はしょんぼり俯いた



「へ ~矢野さん、厳しいんだ、意外だ」



政が驚いて言うと



「コーチは躰が出来ていないと、パンチを避ける事も出来ないし、パンチを受けた時の反動も躰にそのまま入るから死んじゃうわよ~♪ 清君、焦って死にたいの? ワシ、何人もそういう無謀な人間見て来たから~清君には、そうなって欲しくないの~♪と 教えてくれました」



「言葉、軟らか過ぎるけど… 言ってる事凄 ぇ怖ぇ… 」



政の顔は青醒めブルブル躰を震わせた



「ただいま!清ごめんね、今から夕飯作るからね~行って来ていいわよ♪」



美智代が買い物から戻り、玄関から清に声を掛けた。



「解った!」



清は政を夜のジョギングに誘った。



「嫌だよ!俺ゲームして待ってるから行って来いよ!」



「僕は、政さんを母さんと二人にする事が嫌なんです!母さんのチャリに乗っていいですから!一緒に来て下さい!」



清の真剣な表情に、政は渋々



「ん~もぅ~!」



政はブツクサ言いながらも、美智代のママチャリに乗り、清のジョギングに付き合った。



政は美智代のママチャリに乗りながら …



清の前で、鉄治さんから人妻乱乳を返して貰ったのが悪かったんだよな… と後悔していた。



1時間程で清がジョギングを終え、政と2人自宅へ戻ると、美智代が笑顔で清と政を迎えた。



「お帰り~♪色々考えたんだけれど、若いし沢山食べれるように、鶏の唐揚げにしたんだけれど大丈夫かしら~?」



美智代はルンルン♪しながら2人に聞いた



「うん、美味しそうだよね… ハクシュンッ !」



「清、風邪?大丈夫?」



美智代が清の(クシャミ)を心配したが、



「風邪じゃないよ、誰か噂でもしてるのかな?アハハ!」清は笑って応えた。



清は政を連れ自分の部屋に戻り



「政さん、僕はシャワーを浴びて来ますから、部屋から出ないように外鍵を掛けさせて頂きます!」



「はぁ~?マジで~? まぁ、いいけど …」



清は本当に外から南京錠を上下2ヶ所に掛け 、風呂場へ向かった。



清の母親想いと言う強固な警戒心に、こんな事なら無理にでも、天野さん家に泊めて貰えば良かったなぁ… と政は思っていた。





… 天野の家では …



「ねぇ、浩ちゃん、私達って結婚するの? しないの?」



「いゃ、どうしたの急に… 今、夜ご飯食べてるのにさ、止めようよ… 難しい話は …」



彼女の奈保が、夕食を食べている最中に突然、結婚と言い出し、天野は思わずそう応えてしまった …



奈保は天野をキッとした目で見つめ



「じゃ、いつ難しい話をしたらいいのかしらねぇ~?浩ちゃん、私達つき合って何年 ?」



「うっ、そろそろ5年かな?ハハハ!」



天野は笑った序でに、煮物の里芋に箸を伸ばした



バシッ!



「痛いな、叩く事無いだろ?蚊でもあるまいし…」



天野はそう言ったが、奈保は半眼の仏像のような仏頂面で



「食べない… 話し終わってないでしょ … 」



地べたを這うような低い声を出し、天野に言った。



流石に天野も怒りだし…



おやっ? おやおや?



天野は、おもむろに立ち上がり



「1パチ行って来ます…」



それだけ言うと、後は何も喋らず家を出た



「ハックションッ!風邪かな?誰か噂でもしてるかな?ハハハ…」



天野の住むアパートから徒歩5分、パーラー1番星と言う名前のパチンコ店に入ると…


お魚物語コーナーの前に立ち、お魚占いを始めた…


パチンコ台の液晶画面に手をあて、下から上へ手を動かすと、気泡・ワカメ・お魚群のどれかが画面下から上へと上がってくる 、天野は何時もお魚占いをしてから、良さげな台に座る。


中でも、金色のお魚群が下から上へと上がる台は要チェックとしていた。


お魚物語の台が並ぶ列の端から端まで、お魚占いをし、チェックした入り口側から3台目の台に座った。


1000円札を入れ玉貸ボタンを押す


ジャララッジャララッ


玉がパチンコ台の上皿を満たした、天野はハンドルを右に回し、玉がチャッカーに入り易い位置で手を止めた。



トゥルットゥルルルル♪トゥルットゥル♪


陽気なお魚物語の曲が流れる


お魚物語と言うだけに画像は海の中だ …



天野はパチンコを打ちながら、奈保の事を考えていた …


最近、カリカリしてるな … 仕事で疲れているのかな…


でも、飯食ってる時にアレはないよな …


最初は結婚はしたくないって言ってたから 、その話しはしないで来たのに … 結婚、結婚て …



お魚~!リ ~ ~チ !



デデデデデレデン♪デデデデデレデン♪



おっ、マリーナちゃんリ-チか!


おっ、おぉっ!



緊張が高まる…



5の海老反りエビで揃った!



ス~パ~ラッキ~!


陽気なマリーナちゃんの声が、大当たりを知らせる、確変図柄の大当たりだ!


その後も、天野の座ったお魚物語は大当たりを繰り返し 、液晶画面に爆発中の文字が流れた。



2時間弱で持ち玉15000発を獲得し席を立った。



玉を換金し、余り玉で奈保の好きな「里の竹」と言うチョコレート菓子を貰い、パチンコ屋を後にした。



帰りしなに、ふと、鉄治の顔が浮かんだ…



「鉄さん、明日から大丈夫かな … 何もない事を願うか …」



天野は夜空に揺れる星達に、手を合わせ鉄治の無事を祈 った。





… 鉄治の家へ戻り …




「はっはっくしょんっ!何だ突然?誰か噂してんのか?」



玉五郎は眠ったままだった。



鉄治は財布と家の鍵を持ち、玉五郎が目を覚まし心配したら可哀想だなと




玉五郎へ


スーパーへ行ってくる、すぐ戻る



鉄治



走り書きを残し、スーパーへと向かった。



「えぇっと … 猫缶、猫缶… あった!一応、カリカリしたのも買っとくか、後は … 玉五郎の玩具と… あった、お決まり猫じゃらし !それと … これだこれ!キ ャットベッド!それから… 牛乳と俺の飯を買って… よしっ 取り敢えず買って、足りない物は又買えばいいな…」



会計を済ませると、玉五郎が鳴いているんじゃないかと心配になり、鉄治は走ってアパートへ戻った。



鉄治が玄関の鍵を開け部屋に入ると…



グゥ~スピ~ グゥ~スピ~



玉五郎は気持ち良さそうに、もふ~な腹を見せ大の字で眠っていた…


何とも愛らしい玉五郎の寝顔を見ながら



「よっぼど疲れたんだな… 玉五郎…」



静かに呟いた。


玉五郎が何時起きても良いように、別々の小鉢に猫缶・キャットフード・水・牛乳を入れトレーの上に乗せ床に置いた。


キャットベッドを袋から取り出し、クッシ ョンの上で眠る玉五郎を起こさないように 、そ っと移動させケットを掛けた。



ズッピ~グゥ~スピ~ズッピ~


「ニャォンニャ…」



玉五郎は夢を見ているのか、何か言っていた…



鉄治は、静かに音を立てないようにスーパ ーで買った弁当の蓋を開け、玉五郎の寝顔に癒され微笑みながら弁当を食べ始めた 。




玉五郎 … もし、お前が嫌じゃないなら…



此処に住んだっていいんだぜ …



そしたら、お前、誰にも化け猫だの何だの言われなくていい訳だしよ …



俺なら、お前の事知ってんだから平気だろ



此処に居ていいんだぜ …



お前が良ければだけどな …




鉄治は心の中でそう思っていた。




悪イナ兄サン、全部聞コエテルゼ…


兄サンノ心ノ声ハ …


熱クテ … デカイナ …


兄サンソノモノダナ …


綺麗ナ心シテルナ… 優シイ心ダ


兄サンミタイナ人間ハ、生カサナキャナラネェ、ニャントシテモ!コノ俺ノ意地ニカケテ!



狸寝入りをしている玉五郎は、決心を固めていた。



んっ? 気のせいか …


鉄治は部屋を見渡した


今、漢の力強い決意を聞いたような気がしたけどな …何て言うか… 熱く(タギ)る思いみたいな… っか~我ながらキザだね~




鉄治は弁当を食べながら、ムッツリスケベ ェのようにニヤケていた。



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