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天狗の弟子になった少年の話  作者: たまむし
三章 身
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百十一 やり遂げてみせる

11/4 誤字脱字、文章表現を一部修正。

お話の筋に変更はありません。




 ほどなく川べりに小さな背が並んだ。

 あまり近いと糸が絡むので、並んだ、と言うにはいささか距離を置いてはいたが、間に隔たりはないので隣と言っても差し支えはないだろう。

 その背後、二者の丁度中間のあたりに高遠が立つ。


「川の流れは霊流(ちりゅう)によるゆえに、これを感じ取れれば、それは霊の動きを感じることとほぼ等しい。要点は先に言った通り。流れを感じ、次に乱れを感じ、生き物が作る乱れを感じ分ける。先ずは流れを感じ取るところからだ」

「はい!」

「あい!」


 三太朗は張り切った。

 今度こそ、と望みをかける気持ちもある。ただ、出来るかもしれないという希望にわくわくと高まっている方が強い。

 やるぞ、という意気込みももちろん十二分(じゅうにぶん)(みなぎ)っていた。




 ――さらさらと、静かに水が流れていく。

 水音は、時そのもののように果てがなく、切れ目なく淡々と続いていく。


「……」

「……」

「……」


 全員無言のまま、時が過ぎる。

 三太朗と鶸黄はじっと水面に目を向けて、高遠は霧を見透かすようにやや顔を上げたまま微動だにしない。


 風も吹かず、周りを囲む笹はさやとも揺れず、霧の壁はゆらぐこともなく視界を狭く区切り、見える範囲に動くものは水面だけ。

 糸の先についているのはただの石だ。

 魚が勝手に食いつくことはなく、よって付け直す必要などなく、そもそも魚を釣るために糸を垂れているのではないから、魚影を求めて場所を変える必要もない。

 必然的にその場の全員がほぼ動かない、不変の時間が続いていた。


 三太朗はそろそろ最初の意気込みと肩の力が抜けきって、なんなら自分が何をしているのか分からなくなってきつつあった。

 恐らく無表情を通り越して、ちょっと目が死んでいることであろうという自覚もあった。

 そんなときに、彼は気づいてしまったのである。


――――地味…!!


 この外経の修行は懸命になるような、分かり易い修行としての努力がいらない。


 具体的には、飛んだり跳ねたりして疲れ果て、一心に努力し悩み挑戦と失敗を積み重ね、励まし合ってとうとうやり遂げる…そういった達成感必至の切磋琢磨である。

 あれば苦労するだろうが、やり甲斐もあるそれらはひとつとしてない。見事にすがすがしく皆無。

 努力どころか霊流(ちりゅう)のちの字も掴めない彼らは、虚しく座っているだけ。


 つまり、この年頃の子どものやる気を補給する源がひとつたりともなかった。


――――気づくんじゃなかった…!


 あまり意識したくはなかったが、気付いてしまったのだから仕方がない。

 三太朗は現実を受け容れざるを得なかった。

 この修行はとても、そう、要点を掴めてない所為のはずなのだが……平たくいえば、実に残念なことに、とても、甚だしく、退屈なのだった!


 後悔先に立たず。

 一度気が散ってしまうと、やる気は一向に戻ってこないものである。

 三太朗はつつつ…と目だけを彼の小さな配下へ向けた。


 向こうの方にいる鶸黄は、最初より若干俯き加減で、顔で唯一見える口元がちょっと緩んでいるように見えた。

 もしかしたら髪に隠れた目は閉じているのかもしれない…と想像し、三太朗は軽く頭を振った。

 彼は鶸黄を起こして責めるつもりもなければ、苛立つ気持ちも少しも起きなかった。


――――だって、釣り竿から川の流れとか水の動きを感じ取るってどうやるんだ。わかんないことをじっとやってるんだから、眠くなるのも仕方ないよね。いっぱい頑張って歩いてきたし、ひわだって寝ちゃうよな。ていうか、流れを感じ取ったら魚がどこにいるかって、どうやってわかるもんなの?ほんとにこれ、オレに向いてるの?


 つい先ほどは意気揚々と始めたというのに、三太朗は退屈からうんざりしてきていた。

 色んな疑問が不審を呼び、なんで自分はこんなことをしてるんだ、まで行ってしまって、そこで『これではいけない』と再度小さく首を振る。


 なんといってもこれは修行であり、高遠はこの方法で魚を感知して釣り上げたのだ。決して不可能なことではない課題なのである。たぶん。


――――釣りは魚が針にかかるのを待つものでしょ。師匠は魚を糸でくるっと巻き取ったよね?それって釣りなの?


 三太朗ははっとして、良い弟子にふさわしく、逸れかけた意識をちゃんと自力で釣り竿に戻した。

 水に引っ張られてか、握った手からは相変わらず少しの重みを感じるのみだ。


――――ちょっと整理しよう。師匠はできないことはやれって言わない。落ち着いてやればできるかもしれない。


 一度落ち着いて、今ある手応えについて考えてみる。


 竿を握った手をじっと見た。

 引っ張られているのとは別に、さざ波によるものか、ほんの少し震えている気がする。

 だからといって"()"とやらはさっぱり理解できる気がしなかった。

 そもそもこの震えが気のせいだと言われると反論する気も起きないし、ここから何かがわかるとは、三太朗には思えなかった。少なくとも今は。


 ふと思いついて首を傾げた。

 そもそも、川の流れから、ひいては釣り竿から魚を感知しなくてはいけないものなのだろうかと思ったのである。


――――まず流れのおかしいとこを感じ取って、次にそのどれが魚が作ったやつかを分かるようになるんだよね?


 じゃあ、と考えを転がす。


――――魚がどこにいるのか分かるようになるのが目標なんだったら、最初から魚の気配をさがしてしまえばいいんじゃないの?


 そう思い至れば、なぜ回りくどいことをするのかと彼の頭は疑問符で埋め尽くされてしまう。


 三太朗は元々気配、ひいては相手が発する感情(こころ)を自然と感じ取る感覚の持ち主だ。

 目で見えること、耳で聞こえること、それと同列のものとして感情を感じ取るのが彼の普通であり、当たり前の感覚(・・・・・・・)だった。


 三太朗の中で"気配"や"感情"として整理してあるそれらは、目で見るというのとも似ていて違い、触れて感じ取ることにも似ていて違い、聞き取る音にも、温度にも、色にも似ていて全く違う。

 何をどうして感じるのかは説明できないけれど、少なくとも彼の経験では、釣り竿を触覚のようにして感じる何かではない。

 だから修行内容を聞いて、いつもの感覚とは別ものだとして真っ先に除外していたのだが。


――――まぁ、でも一回やってみても良いんじゃない?


 師が求めているのはこれではないかもしれないけれど、そのときはそのときである。小さな弟子は、どう間違っても師が怒ることはないと確信している。

 怒るどころか、指示とは別の方向から課題を達成したことを面白がって褒めてくれる光景がありありと思い浮かんで、三太朗はちょっとにやっとした。


 段々と乗り気になってきて、彼は無邪気に、気軽に、じゃあやってみようと軽ぅくこの思い付きを試すことを決めた。


 それが将を射んとするときに真っすぐ将を狙い撃ちするような、上に行きたいからと回り道も道具も使わずに崖をよじ登るような、普通は上手くいかない困難な試みであることを彼自身は知る由もなかった。


 やろうとしていることの突拍子もなさを露知らず、三太朗は魚の気配を感じ取るために、今日初めて竿ではなく川に意識を向けた。

 なんとなく察してはいたが、水の中はなんだか見通し(・・・)が悪かった。

 それでも、耳を澄ませるように意識を拡げていく。


 三太朗はさらに集中すべくゆったりと目を伏せた。三太朗のいつも(・・・)の感覚は、視界に頼らないので目は必要ないのだ。


 見るのを止めれば、その分の意識を聴覚が埋める。そう大きくはないはずの水音が迫ってくるようだった。

 それは他の音がないがゆえだろうか。川鳴りばかりが耳を満たし、轟音のように響く気さえした。


 次に三太朗は、音を意識から外そうと、水面から水底(みなそこ)へ、流れに沿って上流へあるいは下流へ、目を向けるように、手を伸ばすように、捉えどころのない何かを求めて探る。

 だが、風呂の湯に潜ったときに耳が詰まって音がこもるような、水の中で目を開くと滲んで見えるような、そんな風に、気配がぼやけたようになって、上手く感じ取れない。

 彼はもどかしい思いに身動(みじろ)ぎした。


――――……水に遮られてる?…でも、ちょっとわかる。ああ、これは揺らめいてるだけ。風の中と、似てるのかな。


 三太朗は近いものを知っていた。

 高台の強い風の中で目に頼らず気配だけを探るとき、風は気配を押し流す。強い風の中で音が流され掻き消されるように、砂ぼこりが立って視界が霞むように。

 水の中を探るのは、なんだかそれと似ている気がしたのだ。


――――ああ、そっか。気配は流されてるだけ。だから、感じたところのちょっと上流なのか。形がないんじゃなくてぼやけてるだけ。水の外とちょっと違うだけだ。


 閃くような直観だった。

 その当たり前を彼は悟ったのだ。


 するとそのとき、三太朗の中ですっと焦点を結ぶように、感覚のぶれが修正された。

 感じ取ろうと気負って強張っていた体から余分な力がふっと抜けた。

 視界が広くなるが如く、周囲の気配が近く迫る。

 さながら目の前にあった壁が取り払われたように、彼は水の中でも広くわかる(・・・)ことに気付いた。


――――……ああ、ある(・・)


 判ってしまえば、三太朗にとって水中を探ることはとても容易だった。

 彼はいつしか閉じていた目を開き、それでも感覚は水の中を探っている。

 しかしその姿勢からは、川面(かわも)に集中しているようには見えなかった。

 寧ろ顔は上がり、真っすぐ背筋を伸ばした格好…無意識に最も集中しやすい姿勢を取っていた。


 ただし、開いた目が霧に満ちた真白い景色を映していても、それを意識していない。

 自分の姿勢さえ意識の外であり、辛うじて握ったままの釣り竿が、腕が下がって笹の枝先を水面にそよがせていることには気付かない。


 彼の感覚は、深い水の中でいくつかの小さい気配が揺らめきながらもそこにいる(・・)のを感じている。

 潜む(ひそ)もの、ゆっくりと動くもの、素早く通り過ぎるもの。

 感情とも言えない単純な情動。これぞ本能と言える、思考の揺れ(・・)がないそれが、言葉を交わせる相手とは全く違う形でしかし、確かに意思として感じ取れる。

 三太朗はついに水の中の生き物の気配をしっかりと捕えた。


「ああ……」


 途端、と言ってもいいのかどうか。

 劇的な何かがあったわけではない。ただ自然に、三太朗はそこには、生き物の気配を包むような流れがあるということに気がついた。

 水がある(・・)ということを真の意味で知覚した瞬間だった。


 僅かな波を立て続ける水面、その下にある澄み切った水。

 細かな光が乱反射するように、細い糸のような流れが撚り合わさって乱れ、ひとつの川となって混じり溶け合い、流れて行く。


 それは、触れてもいないのに触覚に近く、その全てが音を奏でている。

 揺らめく水、流れて行く水、逆巻きながら、絡み合いながら、奔放なのに同じ終着点へ向かっていく水が立てる、水そのもののように透明な、冷たい、しなやかな音色。何気なく聞いていたこれまでは重なりすぎて雑音になっていた無数の音。

 そのひとつずつ全てが流れやうねりと結びついていく。


 両岸の壁にぶつかり生じた乱れ。

 川底に転がる大きな石を回り込み、くるくると巻くような流れ。

 どこからか流れてきてここで沈んだか、朽ちかけた流木に、戯れかかるように絡んではほどけて通り過ぎる水流。


 その中に、水に乗って共に揺れ、流れに逆らって力強く泳ぎ乱す、微かな気配。小さくとも確かに流れを作り出す生き物たちがいるのだ。

 それら生き物たちだけではなく、その周りの水の動きさえもが"感覚"で感じ取れる。いや、感じられていたことに気づいた(・・・・)のだった。

 三太朗は我知らず目を見開いていた。


「みずのけはい…」


 それは、三太朗には覚えがあるものだった。

 それは確かに、普段認識しているものだった。

 生きているものたちから発されるのと同じと言うにはあまりにも大きな、ちからの流れ。


 振り返るまでもなく、彼は無意識に感覚だけをそちら(・・・)へ向けた。

 分厚い霧の壁の向こうに、白鳴山の頂があるのが三太朗にははっきりとわかる(・・・)


 三太朗の脳裏に遠いいつかの師との授業が(よぎ)る。


 天地を走る何本もの線――"天流"と"地流"。

 地流が天へ、天流が地へと向かい交わる場所――"流穴"。

 そこへ足された曲線――『つまりはこれが山だ』――師の声で語られた言葉が、納得感を伴って心に落ちる。


  膨大な力の奔流が遥か地下深くから湧き上がって白鳴山の頂上から立ち上がり、あるいは遥か天空から流れ下り、重なって巨大な柱のように真っすぐに天地を繋いでいる。

 地に降りた流れは山裾を下る内に分かたれ細まり、しかし無数に広がりながら遠ざかる。

 天に昇る流れは遥かな高みへ上るにつれて、少しずつ解れ支流を作って、枝葉を伸ばすように空に広がりながらも、幹はさらに高みへ、上天へと消えていく。


――――これが"()"だったんだなぁ。


 それは雄大無尽の途方もない光景だった。が、かつてこの光景を感知することに成功したどの者たちの反応とも違い、この小さな雛は見入るでも呆然とするでもなく、すぐに前に向き直って手元の釣り竿を持ち上げて一度振った。


 なんと彼は、以前から知っていたものに、正体を悟った納得以上の感想は覚えなかったのである。


 それよりも、竿にした笹の先に付いたままの濡れた葉っぱから、振ったときに雫がきらきらと飛び散った方に興味を惹かれ、もう一度手を揺すってみた。

 そのときにはもう、感じ取った霊流の印象は薄れてしまっていた。

 再び飛沫が煌めきながら舞ったが、一度目より少なくてちょっとつまらなかったことの方が、彼には大事だった。


 三太朗は背中に高遠の視線を感じた。

 仄かな期待と楽しそうな感情も同時に伝わってくる。

 どうやら、ほんの少しの様子の変化から、弟子が何らかの成果を上げたことを察したらしいと、三太朗は正確に理解した。

 彼は師がいる方へ気を取られかけたが、振り向くのは思いとどまった。


 霊が感じ取れたことを報告すればすぐにたくさん褒めてくれるだろうというのはわかっていたけれど、この修行の目標はまだここではないことを思い出したからだ。


――――魚を捕まえたらもっともっと褒めてくれるはず!


 そわっと体を揺らして、三太郎はうずうずと口元を弛めた。自然と翼も少し開いてしまう。


 涼やかな音色をたてる川面を越えて、澄み切った水底に魚を探す。

 目を向ける必要などない。雛は一番近くの小さな気配に向けてそっと釣り竿を傾けた。


 括りつけた石と糸が水を掻き分けるのさえわかって、三太朗は生き物の以外の、気配がないものでも霊流を介すれば感じ取れることにも気づいた。


――――師匠がして欲しかったのって、これかぁ!


 ひとつの納得。

 その驚くべき発見は――普通は驚嘆に値する有用な技能のはずだったのだが――三太朗は一度瞬いただけで済ませてしまった。

 とても色んなことが解るようになって便利そうだったけれども、そんなことより師匠に褒めてもらうこと、(すなわ)ち魚を捕まえる方が重大だったので。


 糸がぐうんと振れて、竿から少し遅れながらも動いていく。

 流れに押されて下流に靡きながらも狙い通りの場所へ小石が近づいて、我知らず三太朗は唇を舐めた。



 ところが近づいたはいいものの、その先はゆらゆらと定まらない。 

 竿先がゆんゆんと縦に揺れる。

 押し寄せる川の流れが重なって、待っても揺れが止まることはない。

 雛はぎゅっと眉を寄せ、小癪な震えに苛立った。

 幸い、魚と思しき小さな気配は、気づいていないのか動かない。


――――落ち着けオレ…狙いを、定めるんだ……!!


 少しずつ少しずつ、水の流れに邪魔をされながらも、確実に魚の気配に石を近づける。

 彼は焦らないようにと自らに言い聞かせ、ものすごい集中力でじりじりと寄せていった。


――――もう少し……あと少し………。


 そうしながら、魚を捕まえるための糸の動き、ひいては釣り竿の動かし方を脳裏に何度も描いていく。

 とうとう小石を、魚の少し向こう側の川底へ回り込ませ、砂利にざらりと擦る手応えを感じ取った。


――――今だ!!!


「うぉらああ!!!」

 三太朗は力いっぱい素早く竿を振った。

 細い笹枝は折れそうなほどしなりながらも、腕の捻りを増幅して糸に伝え、糸は振り回された竿先を追って弧を描いた。

 ぴんと張った糸がびびびび!と震える。


 しゃぱん!!


 ついに飛沫が立ち、きらめく鱗をまとった小魚が水面を越えた。

 飛沫がきらきらと輝き、ついでにぱっと表情を明るくした雛の目もきらきらした。が。


 魚の次に水から飛び出した小石が魚を押し出すように打ち上げて跳ね上がり、空中で弛んだ糸の輪から魚がするりと抜け出して宙を泳いだ。


「ああああーーー!!!!」

 思わず上げた悲鳴も虚しく、手のひらに乗る小さな、しかし大きな成果は、とぽんと軽い音を立てて水へと戻っていった。

「ぴゃああ!」

 飛び起きた鶸黄がすてんと転んで、手放してしまった釣り竿が川に流されながら沈んでいく。慌てて起き上がった小鬼は、届かない手を伸ばしながら見送った。


「――っははははは!なんという!すごいぞ三太朗!!」

「ふわぁっ!?」


 川を覗き込んでいたのが急に視界が持ち上がって、三太朗は驚いて振り返った。

 珍しく興奮を隠さずに弟子を後ろから抱き上げて高々と掲げた高遠は、また嬉し気に笑った。


「ああ、これほど早く霊流を感じ、まさか初日で魚まで狙いにいくとは!外経の素養があろうとこんな話は聞いたことがないぞ!!」

「えっ、えっ!さかな!?すごいでし!さすがぬしさまでし!!」


 大きな声で褒めたたえる高遠と、細かいことは見逃してしまって分からないなりに、高遠の足元で万歳をして跳ね回って喜ぶ鶸黄。


 大騒ぎの渦中、大興奮の師匠に高い高いされながら三太朗は眉をしかめ、しかし口元は弛ませるとても複雑な顔をしていた。

 こんなに褒められて嬉しい。でも、しかしだ。


「感じ取るのよりさかなつかまえる方がむずかしいのって間違ってると思います!!!その『え!?』みたいな顔なに!?これぜったい霊流よりさかなとりの修行いるやつです!!!!」


 八つ当たり半分、照れ隠し半分、修行の手法の本末転倒な部分を力いっぱい抗議したのだった。






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