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天狗の弟子になった少年の話  作者: たまむし
二章 蓋
13/131

十三 歓迎会


 ぽん、と放った小石が山なりの弧を描いて、透明な流れに落ちていく。着水の音は、岩場を縫って下る清水の音に紛れて耳には届かなかった。波紋も音も、存在した証をなにも残さずに水に呑まれて消えた小石。なんとなく物悲しい気分になって、溜息を洩らした。


 少年がひとり山中の沢の岩のひとつに腰を下ろして、岩の間を流れ下るせせらぎを眺めていた。

 顔の左右の他より長い髪を後ろに回して赤い紐で括り、真新しい着物に膝丈の袴を履いて、その下の脚には黒い脚絆を巻いた、活動的な服装だが、その顔色はくすんでいて、目の下にはくっきりと隈がある。そうしてぼんやりと見るとはなしに川を眺めているその表情には、子どもらしい活発さや元気は一切見当たらなかった。


 髪を切ろうとしたのが今から三日前。そのとき、自分が刃物に恐怖を覚えることを知った。

 オレにとって刀を持って戦うというのは、憧れだった。

 父がいつも手入れしていた刀は、鋭くきらめいていて、いかにも格好良かった。庭に用意させた藁束を居合で鮮やかに一刀両断するのは圧巻だった。いつも憧憬の眼差しで見ていた。いつかきっと、父と同じく武人の道に進むのだと、兄たちと共に見よう見まねで木刀を振るう毎日だった。それは出家を決めたときに一度諦めた夢だったけれど、天狗に弟子入りしたときに取り戻した希望でもあった。


 弟子入りしたときに、一番嬉しかったのが実はそれだった。

 高遠は、オレの髪を刀で切って助け、あの山賊たちを倒すのにも剣を振るった。振り向いたときには終わっていたのだけど、それは瞬く間に戦闘を終わらせたという証。あれを学んで強くなるのだと思った。天狗になっては表立って帰るという訳にはいかないだろうけれど、いざというとき、陰ながらでも母や妹を守れるようになりたかった。目立たないように戦うのなら、時間を掛けずに勝てるような圧倒的な強さが要る。そう、僅かな間に何人もの武装した男たちを倒してのけた高遠のような。


――――だけど、それももう、無理だよな。

 くしゃっと顔がゆがむ。取り戻した夢は幻想だった。取り戻す前に消えてしまっていたのを突きつけられた。小さな鋏ひとつを前にして恐慌に陥るオレが、どうやって刀を使えばいい。

 憧れだと、強くなるのだと、そう自分に言い聞かせてみても、心に浮かび上がるのは抵抗できずに首を跳ねられた僧侶で、満月の下で振り上げられる刀。

 怖かった。命を奪われる恐怖が頭にこびりついて離れなかった。

 理不尽な暴力は残念ながら世の常だ。村や町から外に出たら、浪人崩れの野盗やら山賊に襲われることは、多くはないにしても決して少なくはない。運が悪い旅人に時折襲いかかる者がいる。そう、あのとき襲ってきた男たちのように。

 暴力に屈したくなかった。でも、想いに反して体は怯えて震えて、立ち向かうどころか見ただけで負けてしまう。こんな状態では戦うことなどできはしない。


 こんな自分は、天狗の弟子としてはふさわしくない。

 刃物というものは戦うためのものだけではなく、日常でもなくてはならない物なのだ。料理に使う包丁、布を切り、糸を切るのには鋏、薪を割るには鉈で、木を切るには斧。細々(こまごま)とした作業に使う小刀。それらが使えないというのは、自分ひとりで生きるのにも不自由するということ。

 刃でもって戦うことができない。妖術や神通力なんかを修行して使えるようになればあるいは身を守ることは出来るかもしれない。しかし、生活で必要な刃物も使えない、素質も取り柄も特にないただの子どもを…普通より手のかかる子どもを弟子に取ってわざわざ仕込む意味がそもそもあるのだろうか。高遠がオレを育てて得することが何かあるだろうか。

 何度考えても答えは否。


「ここを追い出されたら、どうしたら良いのかなぁ…」

 寝不足の頭で纏まらない考えを転がす。

 あの日以来、夢見が悪かった。あの山の出来事は夢の中では改悪されて、オレの首が切り飛ばされる内容に変わっていた。気付けば実家にいて、あらゆる知り合いから役立たずと罵られて、いなくなって清々したと笑われる夢もあった。館の中を延々と歩き回って疲れ果てたところに現れた高遠が、やっぱり弟子に取るのは止めたと宣言してオレを外に追い出す夢も見た。

 その度飛び起きて、夢だったことに安堵するも、もう一度眠ればまた悪夢を見て飛び起きるを繰り返し、髪を切ろうとした日もあまり眠れなかったのを考えれば、ここ四日まともに眠れていなかった。

 気分が落ち込んで食欲もあまり湧かず、怪我の治りも思わしくない。もうそこそこの日にちが経っているのに、右肩は鈍く痛むし、膝もまだ完治には遠かった。


 怪我などよりむしろ、その夢が本当になる可能性が更に気分を重くする。

 館の者は相変わらず三太朗に優しかったけれど、明らかに持て余しているのと何かに迷い悩んでいるのが伝わってきて、負の方向へ向いた気持ちが勝手に思考を進めていく。


――――弱った状態で放り出すのが偲びないとか思ってるのかもな。

 半分本気でそう思う。

 彼らは優しいから、子どもが弱っていると可愛そうに思うだろう。だけど同時に高遠を崇拝しているから、オレが主の弟子に似つかわしくないのを知って、出て行って欲しいと思うのじゃないか。


 そういう風に想像してしまうと、止まらなかった。

 確かめるのが怖くて、できるだけ感情を読まないように、意識を向けないようにしていた。目を合わせないようにして、避けて通って、そんな風にしてしまうのが後ろめたく感じて、気付けば外へ出ていたのだ。


 これでは怯えて逃げたあの時と全く変わらない。変わると決めたのに。

 そうは思うけれど、いざ破門を言い渡されても、額を地にすりつけて食い下がることなどできる気がしなかった。

 高遠はあの日以来会っていない。

 ともかくゆっくり養生しろと言い残して出て行った。

 高遠がいないから嫌な想像ばかりが膨らむのだと、理不尽な考えさえも浮かんできて、そんな自分が嫌になる。

 尤も、帰ってきたとしても顔を合わせて最初に出ていけと言われるのなら、会わないでいる方がましかもしれない。


 なにもかも上手くいかない。何をどうしても裏目に出る。そんな考えが、目頭を熱くする。

 何月か前までは確かだと思っていた何もかもが崩れ去ってもう何も残っていない。


―――ここを追い出されたら、どうしよう。

 父の最後の言葉も、兄との約束も果たせないどころか自分自身のことも危うい。ただ無力で無価値だ。

 堂々巡りする思考を抱えて、岩の上で膝に腕を回して俯いていた。


 どこか少し遠くでカラスが鳴いた。しばらく同じ体勢でいたオレは、のろのろと顔を上げる。

 少し青さが白んできた空を背景に、黒々としてきた木々を見上げて、夕刻が近いのを知る。

「……帰らないと…」

 山では日が傾いたらあっという間に暗くなる。空は明るくても、鬱蒼とした木々の影はあっけないほどすぐに濃くなる。暗くなっても帰らなければ、自由行動を容認している彼らも流石に探しに出てくるだろう。顔を合わせるのが気が重くても、彼らの仕事を増やすことはしてはならない。

――――もしかしたら探そうとせずに、勝手に出て行ったなら厄介払いができたと笑うだろうか。

 そんなことをちらとでも考えてしまう自分にまたひとつ溜息を吐いて、のっそりと立ち上がった。




「…ただいま」 

 空が紅を帯びる頃、たどり着いた屋敷の、玄関の引き戸を開けた。

 今日は珍しく出迎えがなかった。いつもはごんたろうかぎんじろう、それと必ずユミが出迎えて「おかえり」と言ってくれる。少し不思議に思ったけど、理由を考えるのも面倒だったということもあって、顔を合わせたくない今は好都合、誰にも遭わないならこのまま部屋に戻って引き籠ってしまおうと廊下へ上がった。


 溜息を吐きながら重い足を引きずって、橙色(だいだいいろ)の光が差し込む廊下を進む。

 部屋にいたとしても夕餉の支度が出来れば誰かが呼びにやってくる。顔を俯けてもそもそと食事を済ませて逃げるように部屋へ戻る。それでやり過ごせるのはいつまでなのだろう。

 高遠が帰ってくれば、そんな風な態度では流石にいられない。彼が帰ってくれば事態が動き出す。それが酷く怖いのに、どこか待ち遠しかった。ここを出たら行き倒れて死ぬ未来しか見えないのに。


 黙々と歩きながらふぅ、とまた息を吐いて、なんとはなしに顔を上げて思わず立ち止まった。

 蜜柑色の光が満ちた廊下が真っ直ぐ(・・・・)続いている。

 俺の部屋は玄関から上がってすぐの分かれ道を右へ曲がり、進んで突き当りを左へ出たその通路の奥、右側の部屋だ。

 そう、突き当りを左(・・・・・・)。その突き当りはどこだ?

 思わず後ろを振り返ると、ずうっと先までまっすぐまっすぐ伸びた板張りの廊下があった。…先が見えない。


「…どこへ連れて行こうって言うんです?」

 そうぼやきながらとりあえず目の前の廊下を歩いていく。この館自体が意志を持っているのはよく知っている。その形は任意で変わることも。無限廊下は初日で既に体験済みなのだ。

 いつもと形が変わったというなら、何か目的があって塗り壁が変えたのに違いない。例えば以前は我を忘れた子どもが一人で山に迷い込むのを防ぐために出口を隠した。なら、今回部屋に帰りつかないようにしているということは、オレを自室じゃないどこかへ行かせたいのだろう。


『こちらだ』

 目線の先の壁に、黒々とした文字が浮かび上がる。その字の先には右手への曲がり角がいつの間にか現れていた。

 角を曲がるとその先もやはり廊下がある。今度は窓が無く、そして相変わらず真っ直ぐの。正し、突き当りがあった。

 更には角と突き当りの丁度真ん中に、両開きの襖がぴったりと閉じて、薄暗い中で白々と浮かび上がって見えた。


 他にはなにもないのを見てとって、その襖の前へと歩いていく。

 白地に亀甲紋が浮かび上がる襖紙の、ふちが艶のある漆塗りの襖。この屋敷でよく見る普通の襖である。

「ここですか?」

 他にはなかろうと思いながら壁に向かって問えば、『この中だ』と(いら)えがあった。

 どういうつもりかは分からなかったが、もう考えるのも嫌になって、さっさと終わらせようと投げやりに引き開けた。


 中は深淵の暗闇であった。全く光のない漆黒の闇。窓が無くて薄暗い廊下でさえ明るく思えるその部屋の中に溜まった黒。

 ぎょっとして思わず一歩後ずさったオレは、いきなり背中を押されて逆に部屋へまろび入った。

「え!?ちょっと!!」

 振り向いた先で壁から伸びた手が引っ込み、すたん、と音を立ててひとりでに襖が閉まる。

 慌てて襖に手を掛けたが、ぴくりとも動かない。縦横に揺さぶっても一切音もならず、力を込めて紙の部分を押してもたわむ気配もない。

 中に鉄板でも仕込んでるのかこの襖は!?


「なんで!?開けて下さい!!」

 必死に声を上げたそのとき、ぼぅ、と微かな音が背後から聞こえた。

 同時に真っ黒だった視界が、ほんの少しだけ明るくなる。目の前の襖と、そこへ掛かった自分の影が朧げに浮かび上がった。

 恐る恐る首をねじって後ろを見ると、部屋の奥に、ゆらりと揺れながら輝く光がひとつ。

 揺らめく青白い炎の玉。


「ひ…人魂(ひとだま)……?」

 顔を引きつらせてどうにかその火に向き直ったそのとき、ぼぼぼぼぼぼぼっと青白い火が部屋の左右の壁際に、奥から順に灯っていく。

 その青い光に照らされたのは。


「ひぃっ」

 部屋にぎっしりと並ぶ黒い鳥。火が灯るのと同時に、こちらに向かって一斉に顔を向けて鳴きはじめる。ぎゃあぎゃあがあがあと耳障りな大音声が湧き上がった。暗闇で気付かなかったが、左右の足元の、ごく近い位置にまで潜んでいたカラスも鳴きだしたのに驚いて、思わず前へ出た。カラスは壁際を埋めるように陣取っていて、部屋の中ほどはぽっかりと空いていたのだ。


「なっ、何!?」

 無数のカラスに鳴き立てられて、ほとんど涙目で見回した目が、奥の壁に止まる。じわり、と浮かび上がるものがあったのだ。

 おどろおどろしい赤色で、壁が血を流したかのようにだらだらといくつも伝い落ちる流れを引いた、漢字。


『歓迎』


 まるで惨殺現場のように血飛沫に彩られた、さながら地獄からの(いざな)いの手紙。

 余りの恐怖に我を忘れて襖へ向かって走り出そうと振り返りかけたそのとき、白い物がオレに素早く巻き付いてきつく縛りつけた。


「うあああああああああああああああああああ!!!」

 度重なる恐怖の中、逃げることも出来なくなったオレは、ついに恐慌をきたして絶叫した。







「お前ら寄って(たか)って三太朗を泣かせるんじゃない!!!」

 居残り組の妖怪たちがずらっと並んで正座していた。周りには居心地悪そうに沢山のカラスが犇いているが、皆押し黙って羽毛を萎ませていた。

 それに向かって仁王立ちで怒鳴りつけるのは、オレの悲鳴を聞きつけて駆け込んできた高遠だ。どうやら帰り着く直前だったらしく、あの後すぐに下駄も履いたままものすごい勢いで飛びこんできた。そうして今は怒っている。オレをどういう訳か強制肝試しまがいの目に遭わせた配下を並べて、あの温厚な高遠が怒鳴りつけているのだ。…この人も怒ることがあるんだなぁ。


 オレはというと、腰が抜けて座り込んだ体勢のままで、目の前にとぐろを巻いたタチに尻尾で頭を撫でられながら、天狗が配下を叱っているのを眺めていた。なんだか色々限界を越えたのか、半分放心したような状態で、泣こうとか思わなくても目からだらだら涙が溢れてとまらないのがちょっと自分でもどうにもならない。

 目の前の白蛇はすごく焦っているようで、しゃーあしゃーあ言いながら頭を撫で、自分の頭を上下左右に振ってみたり首を傾げたりして、どうやらなんとかあやそうとしているように見える。

 横ではジンが座ったままでオレの顔と怒られている面々を見比べて、くぅ・・・ん、と途方にくれたように唸っている。

 必死だなぁ、と目の前を行き来する白いものを見ながら他人事のようにぼんやり思っていると、向こうで続いていたお説教が止んだ。


「三太朗」

 こちらへ歩いてきた高遠がいつも通りの声音でオレを呼ぶ。のろのろと見上げた顔を見て、彼は眉根を寄せた。

「酷い顔だな、大丈夫か?」

「ぅ…ぁ……はい…」

 少し逡巡して嘘をついたオレの傍らに膝をついて、自然な動作で頭を撫でた。

「あいつらも悪気があった訳じゃないそうだ。やり方は悪かったが、お前を元気づけたかったようだし、許せぬならそれでも良いが、その心は分かってやって欲しい…まあ、こんなになるまで放ったおいた俺が一番悪いな。すまなかった」


 呆然とそれを見る。ばつの悪そうな顔で高遠が謝っている。

「え…いえ、高遠さまは何も悪くはないでしょう…?だって、オレが、オレは…だって…」

「悪かったさ、出かけてばかりでここまできてしまった。何を置いても先に病を治す手立てを打っておくべきだったな」

 不安定な状態をまずは脱するのが先決だというのに、悪化させてしまうとはまったく、と続けて背後をじろりと見遣った師の言葉の後半は、頭に入ってこなかった。


 目の覚めるような感覚がした。

「…治るんですか?これが、本当に?」

 当たり前のような顔をして、高遠が返した応えは是。

「わりあい、よくある病だ。戦に出た者などがよくかかる。人であれば治すのに苦労するものだが、天狗になるなら対処はそんなに難しくはない。まあ、根治するのには流石に気長にやっていくしかないがな」


 全身から力が抜けるような気がした。追い詰められて狭まった視界が急に開けていく。

 だって、オレの悩んでいたことなんて一切合切が被害妄想だったのだ。高遠は最初からオレを手放すことなんか考えてなくて、配下たちも心配こそすれ、追い出そうなんて思ってなくて、そもそも、刃への恐怖も、治せるもので。

「そ…っか…」


 高遠の向こうから向けられる視線を感じて、そちらを見る。心配そうな顔が並んでいた。彼らから向けられる中には、悪い感情なんかひとつも無かった。

 暗闇の中に閉じ込めて、人魂を並べて、カラスの群れをけしかけて、血文字で脅かした上で拘束するなんていう、言葉にすれば性質(たち)の悪い悪戯でしかないやり方に何故たどり着いてしまったのかは分からないが…彼らもまた、恐らく焦ってしまっていたんだろう。

 焦った思考はろくな方へ転がらない。あんなに良くしてもらったのに、疑心暗鬼に陥ったオレみたいに。


 オレよりも絶対大きな力を持ってるだろう妖怪たちが、オレを元気づけようとして空回った上に失敗してしょげている。

 それがなんだかおかしくなって、ちょっとだけ笑った。

「もう、大丈夫です。心配掛けてすみませんでした」

 そう、もう…いや、最初から大丈夫だったのだ。































「皆、いるか」

「ちょっお前やっと来たか!前回のアレはどういうことだ!!」

「そうよ!それにあんたこの頃派手に動き回ってるそうじゃないの、あんたの周りの有象無象を全部刺激して回るなんてどういうつもりなのかきっちり全部説明してもらうわよ!!」

「…」

「今日は少し時間が無いから手短に言う。ここ数日はうちの周りでこっちを狙っていたのを重点的に潰して回っていた。今日は動きそうな勢力は全て潰して、他には警告を送り終わったから今後しばらくは動くまい。一応足柄(あしがら)の方で確認してくれると助かる」

「はあ!?この数日で全部!?動かない程完全に!?おまっ…お前だからできねぇとは思わんけどよ…無茶すんなぁ。わかったそっちは手ぇ回して裏取っとくけどなんでまた急に」

「うっわぁそれはまた思い切ったわねぇ、まあ、それはこの際良いとして、弟子って何よ弟子って!身内に虫を飼うつもりなの?」

「ちっ…お前、弟子を取ったら山の周りの掃除を始める癖をいい加減治せ…。何もなくとも少しずつやっておけ、いつか足元を掬われるぞ」

「あー、まぁ、そうなんだが。ああ、そうそう、うちの弟子な。あいつは他と繋がってないのは確定だから一先ずは安心していい。そんなことより大変なんだ。少し知恵を借りたい」

「そんなことじゃねぇよ!油断すんなよ?マジで油断すんなよ!?ったく、それより大変なことって一体どうしたんだ?」

「ああもう、あんたはほんとに…。まあいいわ、白ちゃんが大変って言うなんてよっぽどね。何があったの?」

「…どうした?」

「あいつ…気が緩んだのか熱を出して寝込んでしまったんだ!子どもが熱を出したらどう対処したら良いんだ?」

「おいこら他にもっと大変なことが山ほどあったろ!!」

「ああ……そんなことなの…あんたほんっっとぶれないわねぇ…」

「…とにかく静かにして寝かせておけ。寒がるようなら温かくして、食事は柔らかいものを食わせろ。咳をするようなら薬だ。車前草(おおばこ)の種を干したのを潰して飲ませろ」

「ああ、わかった!ありがとう。…そろそろ青柳(あおやぎ)天狗が来るらしいから行かなくては…はぁ、急に今から行くと言われたんだ…」

「え?青柳って議会の長の?なんでまたお前んとこに急に?」

「あー、あいつってばあんたを目の敵にしてるから、またえらいことやらかしたってんで見に行ったんじゃないの?しっかしあたしたちより耳が早いなんて…まさか白ちゃんを見張ってるなんて暇なことしてないでしょうね」

「……目障りだな。いっそ潰すか…?」

「それはダメだ。少々反りは合わないところがあるが、青柳どのは青柳どので全体のために動いているのだから…ああ、もう境界を越えたようだからそろそろ行く」

「うわぁ、頑張れ」

「後で愚痴聞いたげるわー」

「……何かあったら、呼べ」

「何事もなく終わることを祈っていてくれ・・・」


さんたろさんの保護者最強説。


前回短めになった反動か、今回はいつもよりちょっと長くなってしまいました(;¬_¬)

二回に分けても良かったんですけど、セルフ危機を今回で終わらせようと思ったらこうなりました。。。

どれぐらいの長さが読みやすいんでしょうか。私自身は読む物は長ければ長いほど嬉しい人種なのでよくわからないのですが、やっぱりさらっと読める文量的にはもうちょっと短めなんでしょうかね。

おいおい考えていこうと思います。


次回、主人公ダウン。

あれ?それっていつものこt・・・


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