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天狗の弟子になった少年の話  作者: たまむし
三章 身
117/131

百 寄り添い

お待たせいたしました!




 三太朗は口を薄く開いたまま、まじまじと初めての配下(・・・・・・)を見ている。


 白い着物を着た人型の体。小さな姿――そう、今の三太朗よりもまだ幼い、精々が五つを数えるかどうか。

 ぱっつりと顎辺りで一直線に切られた黒い髪は、頭に沿って素直に流れ降り、丸い頭の形が強調されていた。

 広い袖の両手を腹の前で握り合わせている所為で、体の周りをぐるりと古風な礼装の広い袖が囲い、体を円筒形に見せている。

 柱型の胴体に丸い頭――なるほど次朗がこけしと言い表したのは無駄に的確である。


 しかし、当たり前だがこけしではない。

 黒い髪に白い着物を着て、鈍色(にびいろ)指貫(さしぬき)は大きめなのか、つま先が少ししか見えない。

 体型からはまだ性別を見分けられない年頃だが、服装から見て男児。


 礼を失せぬ形と色合わせの無地の衣装は、落ち着いたと言えば聞こえは良いが、華に欠けるとも取れる。

 その全体像の中で、大きな特徴を上げるなら、髪が一部飾りのように白いことと…顔が見えないことだろう。


 顔を伏せているとか、覆面をしている訳ではない。前髪が長く伸ばされていて、(すだれ)のように鼻の下までを覆っているのである。

 白すぎるほど白い顎から、引き結ばれて色をなくした口元までがかろうじて見えている。


 その前髪の内、両目があるだろう辺りより少し外側に線を描く、額の際ほどから生えている髪は、なぜか左右ひと房ずつ純白だ。

 雑じり気なしの黒髪の中、くっきりとした白は光るように目立つ。

 そしてよく見れば、白い髪房の生え際に、指の先ほどの小さく細い角が僅かな弧を描いて起立していた。

 例え小さくとも、角は鬼の一種に属する種族であることの立派な証だ。ただのこけしではないのだ。


「はえ…」


 三太朗が無意識にこぼした一音に、新しい配下は哀れなほど盛大にびくっと震えた。

 立ちすくんでいる子鬼は、やってきたそのときからびくびくと委縮している。

 顔が隠れていて、表情は判らないが、焦りか恐怖か緊張か、何にしろびくびくしているその有様は見る者に酷く気弱な印象を抱かせた。


 "主"との関係はこれからを左右する。このような場ではがちがちに緊張しても仕方がないこと…なのだが、あまりに気弱で頼りない様子に、兄弟子三羽は密かに目を見交わした。


 師がいつも通りの穏やかな笑みのままでいるので、資質に問題はないのだろうが、育てば役に立つとしても、育つまで面倒を見ることになる兄弟子たちは、苦労の度合いが大きいのは御免だ。


 それに弟弟子と相性が良いのかは別である。

 三太朗の幼い目で見ても頼りない様子は明らかだろうし、先ほどまでの会話上、初配下への期待値は高まっているはず。

 期待外れから落胆して、この子鬼を気に入らないかもしれない…と思ったのだが。


 三太朗は、見守るその他の面々にお構いなしに、ただじーーーーー……っと子鬼を見つめていた。その表情は無。無である。悪感情の有無は窺い知れない。


 一方、主だと紹介された雛天狗に一瞬たりとも休まず無表情に凝視されて、こけし完全に静止。

 息をしているのかさえ怪しい。


 新入り幼児鬼対、まじまじと見続ける新米主予定雛天狗の構図は、なぜかどこかただならぬ緊迫感を伴って膠着している。


 無表情だから分かりにくいものの、三太朗が真剣そのものなのは判るので、誰もが手を出しあぐねて傍観に徹した。

 突如始まった言葉のない圧迫面接か真剣勝負か、そのどちらでもないようなよく分からない何かに、さすがの白鳴山の実力者らも付いていけていないとも言う。


「え」


 さすがに子鬼に穴が開くんじゃないかと思われた頃、三太朗が不意に瞠目した。


 こけし子鬼が、ひっと息を飲んでびくついた。

 高遠が、よろめきかけた小さい背に、転んだ場合に備えて微妙に手を上げかけて待機した。

 兄弟子三羽が、末っ子が驚いているのを確認して、『一体何にびっくりしてるんだ? 』『さあ?』と困惑した。


「えええええええ!!!」

 びっくーん!

 三太朗、突然の絶叫。

 次朗に紀伊と武蔵までもがびくっと震え、こけしは心臓が止まるのではないかと心配になるほど体を大きく跳ねさせ、倒れかけたところを高遠に受け止められてはじめて「ひえっ」と掠れた悲鳴を上げた。


 この場全体に不意打ちを叩き込んだ本人は気づいていない。

 どうしたのか尋ねる間もなく、完全無意識の追撃が一同を襲う。


「さらってきたの!!??」


 天狗勢は目が点になった。

 子鬼は硬直した。


「…待て待て」

「どういう流れでそうなった」

 いち早く再起動した双子が対話を試みる。


「だってこんなに怖がって嫌がってる!来たくないのに連れてくるのは人拐いでしょ!!あ、人じゃなかった!!えっと、でも師匠がそんな人でなしだったなんて!!ん?人じゃなかった!!?え、でも師匠がそんな人の道にもとる…人じゃなかった!!??」

「「落ち着け」」


 どうやら静かだったのは見た目だけで、内心ではえらく混乱していた模様。

 配下は喜んで来てくれるものだと思っていたのが違い、混乱したのが無表情凝視に繋がったらしい。


「あのな、びびってんのはてめーがなんも言わねーでじーっと見てっからだろーが」

「違うよ!オレが見る前からだったでしょ!」

「あ゛?ハナっから縮こまってんのは緊張してんだろ」

「緊張と怖がるのと嫌がるのは別だよ!」

「別でもんなのアレ見てわかんねえだろ!」

「わかるよ!!」

「こらこら、落ち着け」


 しゃがんだ次朗と立った三太朗の、同じような高さに並んだ頭を両方よしよしと高遠が撫でた。


 この師匠、人拐いだの人でなしだの散々な言われようだったのに全く気にせず、口喧嘩に発展しそうだったのもどう感じているものか、微笑ましいものを見る和みきった目をしている。


「訊いてみてはどうだ?」

「はぇ…?」


 目で示されて、きょとんとした三太朗も、立ち尽くしたままの子鬼を振り返った。

 子鬼は注目から外れて気を抜き気味だったが、その瞬間にびくっと直立した。


「何者で、何故来たのかを。何を考え、何を志し、そしてどう思われたい(・・・・・)のかは、あれ自身にしか解らん。あれこれと思いやってやるのは良いことだが、どのような者かを断ずるのは話してみてからでも遅くはあるまい?」

「あっ!はい!!」


 慌てた様子で雛がこけしに寄っていく、その後ろで、双子の拘束から解放された次朗が師を睨み、遮る手がなくなった口を大きく開き、やっと「ガキ扱いすんな!」と吠えた。

 ちなみに空気を読んだ小声だったので三太朗は気にしなかった。

 次朗よりも大事なものが今はあるのだ。






「ごめんね!」

 傍に行くや否や謝ると、小さい鬼が息を詰めた。

 高まった緊張と恐れに益々身を固くしてしまって、三太朗は自分を情けなく思いながら眉を下げた。


 伝わってくるもの(・・・・・・・・)はずっと変わらず、鳩尾がひんやりとするような不安感に包まれた、恐怖と緊張、嫌悪感に似たもの。


 傍の次朗があらゆる感情が鮮やかで強いからか、呑まれて益々ぼんやりと弱く感じてしまう。

 その所為か、生気が薄く、疲れているように思えて、放っておくべきではなかったと三太朗は後悔した。


「せっかく来てくれたのに、ほっといてごめんね。最初に言うべきだった。あのね――はじめまして。会えて嬉しい」


 両膝を突いて、小さな両手を両手で掬い上げ、灰の両目をしっかりと、隠されて今は見えない(まなこ)へ向けた。

 繋いだ両手は冷たく、握った瞬間にぴくりと震えたが、指先までぴんと伸びたまま、握り返してはくれない。

 しかし構わずほんの少しだけ微笑んで見せる。しかしどこまでも真剣に語りかけた。


「オレの配下になりに来てくれてありがとう。すごく嬉しい。でも、きみは嬉しくなさそうだから心配なの。教えて欲しいんだ。何言っても誰も怒ったりしないからね。あのね、きみはうちに来ること、どう思ってる?」


 三太朗は少し待ってみたが、相手は身動ぎもせず、答えもしない。

 主の質問に答えない子鬼に、双子がほんの少し気分を悪くしたのを感じたが、三太朗は別に構わなかった。


「嫌でも――ちょっと残念だけど、いいよ。ずっと傍に居てくれるのに、仕方なしにっていうのはきっと良くない。残念だけど、そのときは師匠にお願いして、おうちに帰してもらうからね。残念だけど」


 楽しみにしていた分未練はたらたら。だがそれでも、意思を無視して無理を通す気はないとはっきり言う。


 子鬼は口をぽかっと開けて、棒立ちのまま三太朗の方を向いていた。

 上がっていた肩がゆっくりと下がり始め、やがてすとんと落ちた。


「――ボクあ…」


 初めてか細い声がその口から零れ落ちた。

 三太朗は少しほっとした。子鬼の恐怖が少しずつ解け、代わりにじわりと驚きが広がっていくのを感じていた。


「…ボクあ」


 静かに待つ空気に励まされて、一度唾を飲んだ子鬼が、恐る恐る口を開いた。

 掠れて小さな、震える高い声が、そっと尋ねた。


「ボクあ、食べらえないでし…?」


 ・・・。


 ばっ!と四羽の弟子は一斉に師を振り返った。

 対する高遠、はて?というように穏やかな顔のまま首を傾げている。


 この師、文武に優れ、性情温和にして寛容。

 機をよく読んで逃さず動き、敵味方への配慮もできてしかし強く出るところは強く出る胆力もあるという、下からも同輩からも信頼厚い、間違いなく傑物ではあるが、いかんせん気を抜くとつい言葉が足りず、誤解を招く悪癖がある。

 その話を常に正確に理解できるのは、経験を積んで特殊な洞察能力を身に付けたひと握りの古馴染みだけだとまことしやかな噂である。


 上の弟子たちは長い付き合いでとても、そう、いたいほどとてもよくしっている。そして、末っ子は、決定的ではないながらも薄々感じ取っている今日この頃。


「「お師匠今度はどんな誤解させてんですか!!」」

「おれさまでも今回のはタチ悪ぃってわかるぜ」

「食べないから!!!だいじょぶだからね!!!」


 うーん?と平和に首を傾げる高遠。それに引きつった顔で両側から詰め寄る双子。なぜか少し得意気な次朗。必死に言い聞かせる三太朗。

 子鬼はあわあわとするばかりだが、一気に混沌としたこの場においては仕方ないことであろう。


「うん…?普通に、弟子の配下に迎えたいと言っただけだが…?」

「本当ですか?」「お師匠の『普通に言った』で何度不測の事態が起こったか分かった上でのお言葉ですよね?」「もう一度最初から最後までちゃんと思い出してから答えてください」

 畳みかける双子に、自覚()ある師匠、素直に腕を組んで回想の構え。


「おお、ししょーが怒られてんぜ」

 普段怒られる立場の次朗は半ば感動しながら、彼にしては希少なお説教傍観の機会を楽しんでいる。

 自分の方へ飛び火しないように、目立たず行儀よくしておくだけの自衛の知恵はついたようである。

 お説教のネタに事欠かないだけの行状を普段からてんこ盛り積み上げている悪ガキは、その辺の悪知恵も働く生き物になった。




「あの…あの…」

「うん?だいじょーぶだからね」


 あっちの騒ぎを尻目に、三太朗はこけしの傍にいた。

 もうガン見はしていない。来たときからの切羽詰まった心は『食べられる』という思い込みを原因としていることが判ったので、ひとまずは落ち着いたのである。


 こんなにがちがちになるまで配下になるのを嫌がられていたなら、しばらく立ち直れないと思い、何ならちょっと泣きそうになってさえいたのだが、そうではないと知ったので、三太朗の心は反動でご機嫌側に振れていた。


「あ、の…」

「うん」


 答えながらも手が止まらない。

 彼は下がいない末っ子であるからして、一番下の役目である"撫でられ役"を粛々と務めてきた。

 嫌々ではなくむしろ好きだったが、三太朗もなでなでしてみたいと密かにずっと思っていたのである。

 よって、彼の手はひたすらに、目の前の丸い頭をかいぐりかいぐりしていた。

 絡むことなど知らぬとばかりに真っすぐなさらさらの髪の触り心地が病みつきになる。


 そして何とも言えない充足感を覚えて、表情が勝手に緩んでいく。


――――あ、オレ、撫でるの好きかも…。


 彼は新しい自分を発見した。

 山のカラスをもふもふするのとも、見かけた巨狼にくっついてわしわしするのとも、探し出した無抵抗の鳥をわっしょわっしょするのとも違う。

 そう、館の大人たちがいつも三太朗に対して感じている"下の者を愛でる"という感覚。それによってもたらされる癒し。

 たとえ相手が困惑していようとも、嫌がられていないならやめられない止まらない、そんな沼に彼はずっぽりと足を踏み入れてしまったのだ。


 そこにあるのは正しく煩悩だったが、曲がりなりにも気配は和らいだ。それはもうでろでろである。締まりがないとか言ってはいけない。

 悪いことではない。小さな鬼が意を決して口を開く切っ掛けになったのだから。


「ちがうんでし…ボク、あ、やくたたず、だから…」


 蚊の鳴くような声は、それでも確かに空気を揺らした。

 手が止まりかけ――白い装束の肩が震えた――そっと撫で続ける。


 どんどん俯いていく頭。それにつれて、撫でる箇所が頭頂から後頭部へずれていく。


「…食べらえう、くらいしか、役に立たないからって…」

 『だから連れて行かれて喰われるのだ』と。


 小さな声はさらに小さくて、最後は吐息と大差ない音で紡がれ、推測で言葉を補わなくてはならなかったが。


 小さな声に含むには大きな苦しみと悲しみは、三太朗の心に波紋を広げた。


「――そう言われたの?」


 幼げながらも静かな問いに、小さな小さな肩が揺れる。

 おどおどと伺う様子を見せたが、やがて小さく顎を引いた。

 その様子は、何かを覚悟するようにも、懺悔する罪人のようにも見える――恐らく遠からぬ心境であることは察せられた。


 誰に言われたのか聞きかけて、三太朗は口を結ぶ。


 間違っても師が、子どもを指して『役立たず』などと言う訳がない。ならば、この子鬼の身内が言ったのに決まっていた。

 口を開く代わりに座布団を引き寄せて裏返し、立ちっぱなしの子鬼を座らせる。

 ぎしぎしと音が鳴りそうなぎこちなさで正座した、小さな頭をまた雛の手がゆっくりと撫でる。


 ちなみに妖魔同士での捕食というものは、相手の力を取り込むという点では有効な手段ではある。

 もちろん、のべつ幕なしに襲い掛かるのは野蛮で外道という認識は、種の隔たりなく常識だ。


 だが、特殊な状況下――例えば勢力争いの末に、勝者が敗者を捕食するなどは、正当な権利として認められる。


 捕食は敗者自身を戦利品として扱い、敗者の力を勝者が取り込むことである。

 示威行為、負けた側や他の歯向かおうとする勢力の反意を削ぐための見せしめなど、幾つかの意味があるが、その指すところはひとつ。

 力関係を明確にすること。


 争いなく、喰われることを前提として一族の者を差し出す場合。それは最大級の恭順を示す。…のだが。


――――いらいらする。


 広く認められていると言っても、受け取る側がが好むかどうかは全く別である。

 好まないどころか、むしろ最大級に大嫌いなことのひとつであった。

 贈り物は相手の趣向に合ったものを選ぶべきだ。


――――こんなちっちゃい子を食べろって差し出すとかどういう神経してるんだよそいつら!!


 下手に出たつもりだろうが印象はどん底を這った。

 これを言い出した者が今ここに来たなら、総出で殴り倒して吊るしかねないほどの反感を買ったのは、静かに座って聞いている四羽の表情からして明らかだ。

 なお小さな声も耳聡く聞き分けた天狗たちは、速やかに高遠の誤解を解き、瞬時に無駄なお説教(はなしあい)は終わったので、しっかり聞いてきっちり不愉快になっていた。


――――誰がこの子を食べるかっての!オレたちはそんなのじゃない!!!


 力あるものを食べる(とりこむ)と力が増すのは、雛たる三太朗も本能的に知っていた。

 だが、特殊な状況でもないのに、文化的で健全な精神を持つ者には考えられない非道である。


 それは、白鳴山のみならず、天狗という種族に共通の認識だ。

 屍肉をあさるカラスになぞらえた、悪食の蛮族扱いは、天狗を侮辱する表現のひとつなのだ。


 それがなくとも、誰が言葉を交わせる存在を進んで食べたいと望むだろうか。

 さらに言えば、三太朗は自力で成長するつもりでいるのだ。

 『これを食べれば手っ取り早く強くなれる。欲しいだろう?』と押し付けがましく言われたに等しいこの行いは、三太朗への侮辱。


 それだけではない。身内に役立たずと罵られ、命を捧げろと売り渡された子どもの心痛は如何ばかりか。

 あまり気にしていなかったけれども、衣装は清潔で作りも良いもののようだが、つま先も指先も少ししか見えない。

 新たな目で見れば、体に合わない着物は、大き目で誂えたというより、有り合わせを着せたのではないかという印象にしかならない。


 大事にされている自覚がある三太朗は、身内や近い位置の存在に理不尽に(そし)られ辛く当たられた覚えなどひとつもない。

 具体的にどんな気持ちなのかは、想像する他ない。ない、のになぜか『辛いだろう』『悔しいだろう』と額面通りの言葉が表層を滑るのとは別に、腹の真ん中に固くてずしりと重たいものが詰まった心地がする。


 顔をしかめかけたが、怯えさせてはいけないと思い直して、意識して微笑んだ。

 どこぞの誰かではなく、目の前の存在の方が大事に決まっていると思い直し、怒りは一旦仕舞い込んでおくことにしたのだ。

 忘れるなんてとんでもない。いつになるか分からないが、いずれ機会があれば一回はいてこましてやる所存である。


「…役に立たないって、どうして?」


 少し迷ったが、子鬼が何かを恐れながらも話したがっているような気がして、三太朗は務めて穏やかに尋ねた。

 鬱屈として張り詰めている精神(こころ)が解放を望んでいると、それはただの直感だったが、後々に不思議になるほど強い確信だった。


 まだ小さいのだから、出来ないことが多いのは仕方がない。なのにそれを役立たずと言うならば、それは周りの方が間違っている。

 そう言ってやるつもりで、言い淀む小さな口が開くのを待った。


「ボクあ、――ボクあ、おおきく、なえましぇん」






長くなり過ぎたので分けました(;´∀`)

初配下のエピソードは次話に続きます。

番外や幕間を別にして、本編で百話目だったのに、投稿準備してて気づきましたすみません。。。

何か軽く記念に小話でも考えるべきかと思ったのですが、そういうのはもう少し調子が戻ってきたら後から割り込みで入れることを検討します。

今は続きを書くことに注力しますので、ご勘弁くださいm(_ _)m

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