表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂夢  作者: 蛍石光
寂夢 七
14/35

七 その四

麻衣に起こる異変。

麻衣=舞だとして、何が起こっているのか。

 また見える景色が変わる。どこか立派な屋敷の中みたいだ。今度は誰かの視点からではない。自分の意志で見ることも動くこともできる。ただ・・・音が聞こえない。一切の音が聞こえない。静寂・・・おかしい。そんなことがあるだろうか。


『ここは・・・』


 そう声を出してみるが、声にはならない。確かにいつものように声を出したつもりだった。でも、声は聞こえない。幼い少女が階段を駆け上がっていくのが見えた。だが不思議なことに私の姿は見えていないようだ。良くわからない。この状況が理解できない。ただ、あの少女について行かなければいけない。その気持ちだけが強く湧き上がってくる。理由はわからない。けど引き寄せられる何かを感じる。私は何かに誘われるかのように階段を一歩一歩登っていく。足元を確かめながら、ゆっくりと・・・

 そこには三人の姿が見える。一人はさっき見た少女。もう一人は倒れている女性。最後の一人はその女性を抱きしめている女性。何が起こっているのかわからない。倒れている女性の口が動いているのは見える。何かを話しているのはわかるが声は聞こえない。意を決して少しずつ近づく。


『え・・・』


 思わず声を出しそうになる。いや、本当なら声が出てもおかしくない状況だった。倒れている女性は大量の血を流し、手足が本来あるべきではない方向に曲がってしまっている。


『惨すぎる・・・』


 思わず手で口を覆い隠して目を背ける。その時、もう一人の女性の姿が目に入る。そして、二重の驚きに襲われる。


『わたし・・・?』


 思わずそう思うほどにその女性は私に似ていた。違うのは髪の長さ。私はショートだがその女性はセミロングで一本にまとめている。


『どういうこと?』


 再び疑問が口から湧き出る。しかし、それは音にはならず自分の頭の中にだけ響く。そして再び倒れている女性に目を向ける。


『・・・っ』


 その女性も同じ顔。顔色は青ざめていて血の気はほとんど感じられないが、もう一人の女性と同じ顔だ。そして私の顔とも・・・


『わけがわからない。誰か教えてよっ、なんなのよっ。』


 その場で頭を抱えてしゃがみこむ。


「知りたいの?」


 ふいに声が聞こえた。私は声の聞こえた方を見る。


「本当に知りたいの?」


 そこにいるのは一人の少女。まだ年端もいかぬ少女。しかし、その少女から発せられた声はとても低く、ひどいギャップを感じざるを得ない。


「誰・・・」


 思わず後ずさりしながら、その得体の知れぬものに声をかける。声?声が出る。そう思った時、今度は別の異変に気が付く。さっき見た女性たちや少女が動きを止めているのだ。まるで時間が止まったかのように・・・


「僕のことを忘れたのかい?」


 その不気味な少女は低い声で私に尋ねてくる。


「あなたのことなんか知らない。誰よ、誰なのよっ。なんなのよっ。」


「やれやれ・・・まだ思い出せないみたいだね。仕方ない・・・」


 少女は不気味な笑みを浮かべて上目遣いで私を見る。


「思い出せない?なに・・意味が分からないっ。」


「なーに、そろそろ思い出すさ。君も本当はわかっているんだろう?」


 何を言ってるの?さっぱりわからない。目を瞑って耳をふさぎ不気味な声を遮断する。


「これはどうかな?」

どうにも長い章です。


謎の声との話。続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ