表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂夢  作者: 蛍石光
寂夢 七
12/35

七 その二

この章は長いので分割します。


麻衣に何が起きていくのか。

物語の重要な話になっていきます。

 車で十分くらい移動したあと、隆司の言うとおりに五分ほど歩いたところにそれはあった。山道を歩いたから、てっきり山頂とかに社があると思ったのだが・・・


「崖にあるのね。」


 思ったことをそのまま口にする。


「そうね・・・ずいぶんと朽ちてきているけど・・・」


 梓は少しがっかりしたように呟く。


「はい。かつては手入れがされていたのでしょうが・・・この村も過疎地となり数十年。高齢者しかいない村ではここまで手が回らないのでしょう。」


 梓は隆司の言うことなんて興味がないかのように、社を調べながら言ってきた。


「ねぇ、麻衣。知ってること話してよ。」


「今?」


「そう、この社のこととか何か知らないの?」


「社・・・」


 私はこの村の近くで育ちはしたが、来たことはない。なのになんだろう・・・ひどく懐かしい気がする。さっきの洋館もそうだ。どうしてこんな気持ちになるのかさっぱりわからない。


「ねぇ、麻衣。どうしたの?」


「あ、ごめん。私が知ってるのはこの近くの崖で子供が死んだってことだけ。」


 そう。それだけのはず。でも・・・おかしい。何かが引っかかる。


「麻衣さんがおっしゃっているのはこのことだと思います。」


 そう言って隆司が取り出したのは何かの記事のコピー。とても古い新聞の様だ。


「なにこれ?ずいぶん古いものなんじゃない?どれどれ・・・」


 そう言って梓が隆司の手からコピーを奪い取る。


「えっと・・・『高無舞たかなしまいちゃんが行方不明』か・・・きっと麻衣が言ってるのはこれだね?でも、昭和二十八年?ずいぶん昔ね。私たちのおばあちゃん世代くらいかしら?どうしてこんなところに来て・・・転落したのかしら・・・」


 高無舞?なに?なんなのこの不思議な感覚は。


「ねぇ、この名前って・・・あんたにそっくりね。」


「え?」


「だって、あんたは高科麻衣たかしなまいでしょ?そしてこの行方不明の子が高無舞。ね?『し』と『な』が入れ替わっただけでほとんど同じ名前じゃん。」


 その瞬間、急に頭痛に襲われる。思わず頭を押さえて膝をつく。


「ちょっとっ、どうしたの麻衣っ。大丈夫?」


 梓が心配して駆け寄ってくる。


「だい・・じょうぶ・・・」


 そう答えたがどうやら大丈夫じゃない。急に吐き気もしてきた。


「麻衣、麻衣っ。」


 そう言って梓が私の背中をさすってくる。麻衣・・・私の名前。高科麻衣・・・それが私の名前?たかしな・・・まい・・・


「先輩、とりあえず、少し休みましょう。麻衣さんをそこの社に少し寝かせましょう。」


 そう言ってどこから取り出したのか、バスタオルのようなものを社の縁側に引く。


「そ、そうね。」


 梓はオロオロして何もできないようだ。


「先輩、麻衣さんをこちらに。」


「え?」


「では、僭越ながら僕が。」


 そう言うか言い終わらないかのうちに、彼は私を抱きかかえてタオルの上に寝かせる。梓はオロオロしながらも親友のもとに駆け寄る。


「う・・・」


 梓の顔がうっすらと見える。彼女の眼には涙が浮かんでいる。


『まい・・・やっと帰ってきたんだね・・・』


「・・・だれ?」


「どうしたの麻衣?誰って、私よ?梓よ?」


 梓の声は聞こえていた。でも声が出ない。出せない。そこで私の意識は途絶えた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


麻衣は急に意識を失いました。

何が起こるのか。

謎の声によって引き起こされる不思議な話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ