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グラニスラ〜アブノーマルな“人工島”〜  作者: 片宮 椋楽
EP2〜屑籠ジャンピング〜
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第8話 甲斐田藁-かいだわら-⑴

 「こちらヨッシー。異常ありません、どうぞー」俺っちはクザヤっちとナギっちにそう告げる。

 『こちらクザヤ。こっちも特にないです、どうぞー』クザヤっちはそう返してくる。


「了解です、どうぞー」


「……」


『……』


 あっ、そういえば——


「唐突なんですが、そちらにお聞きしたいことあるんですけど、今いいですか? どうぞー」


 『どうぞ、どうぞー』これもクザヤっち。というか、ナギっちは無理か。


「なんでこう言う時の最後って必ずっていい程、『どうぞ』って付けるの? どうぞー」


『こちらクザヤ。そんなの知りません、どう……ん?』


 意味ありげな「ん?」だけど、なんかあったのかな?


「……どうしました? どうぞー」


『えー今ナギから肩を叩かれ、見せられたケータイに何やら書かれているので、読みたいと思います。“トランシーバーは電話みたいに話しながら聞くことができなくて、スイッチによって切り替えるしかないんだよね。だから、自分の発言が終わったってことを知らせるために使うんだったと思うよ、どうぞー”って書いてあります、どうぞー』


「さっすが、よく知って——ていうか、ナギは書き込んでるだけなんだから、『どうぞ』はいらなんじゃないの? どうぞー」


『“でも、みんなが使ってるから使いたかったんです、どうぞー”だそうです、どうぞー』


「なるほどなるほど。そういうことですか。どうぞどうぞ遠慮なくお使いください、どうぞー」


「お前らええ加減にせぇ!!」


 隣でツッコミをこれでもかと炸裂させるマサっち。


「ちょっ、いきなり大声出さないでよ!」


 隣でツッコミが炸裂するマサっちに負けじと言うと、「そんなんで破れるかぁ!」と返され、続ける。


「お前らさっきから、どうぞどうぞ、うるっさいねん! 遊びに来てるんちゃうねんぞ!」


 ああは言いながらも、響かないよう巧みかつ静かに続ける。まさに、サイレントツッコミ——マサっちだけに。ぷぷ。

 「それにな、これはトランシーバーやのうてアプリ使っただけの、ただの同時通話や」とスマホに向かって言い、「なんかあったら双方すぐ動けるようにしとんねんから、うるさいと切るで」と続ける。


『はいはい。あ、ナギも“はいはい”だって』


「はい、は一回や! ヨッシーは?」


「分かったよ……」


 仕方ない、静かに見ますか——俺っちは小さくため息をついて、草むらからのこそこそゴミ箱監視を再開した。はたから見れば俺っちたちが不審者だよなー……




 あぁー寒いな〜あぁーお腹空いたな〜……あぁ〜〜〜よしっ!

 まだ来なそうだし、暇だから独り言でもしますかっ!!——もちろん心の中で。


 実はね、この活動してる時、いつも必ず思うんだよね。今の俺っちたち、カラーギャングって言えるんかなって。普通さ、イメージするカラーギャングはもっと不良っぽくて荒々若くて危ない感じ——いや、別にね、そういうのに憧れてるとかじゃないんだよ。現に俺っちら4人以外はそういうのばっかだからね、名前に違わず。でもさ、ここの4人はカラーギャングっていうか——


「カラーギャングや」


 ありゃ……漏れてた?


「口からバッチリな」


 これもかぁーあちゃー


「あほなんか、お前」


 いや、今のは言ってないはずなんだけどっ!? 口から漏れてるのか、心を読み取られてるのかな……いやでも……うーん、分からない。とにかく口に手を置こう。そうしよう!


「で? さっきなんて言おうとしてたんや?」


「ほへっひはひひょひんは」


 すぐさま「アホか!? 離してから喋りーや」と言われたので、俺っちは口から手を離し、改めて。


「俺っちたち4人はカラーギャングみたいなワルじゃなくて、島の平和を維持してる自警団に見えてこない?」


「何言うとんねん。俺らはワルやで」


 いや、マジのワルは自分から言わないと思うんだけど……


 すると、ふとマサっちが正面に視線を戻し、「あ」と一言。口の開き具合から目の開け方、全てが超意味ありげ。当然、俺っちも視線の先を見てみた。


「あっ!」


 誰かがいた。少し距離が離れてるから見えにくいけど、二足歩行しているのは間違いないから、人だ。


「見えるか?」


「うん、見えた」


『どうしました? どうぞー』


 スピーカーから通常の、耳につけて喋るモードに切り替える。


 「人、発見」で、俺っちも小声に切り替える。


「とりあえず、様子見てみるので一旦切ります。折り返しこちらから電話しますんでよろしく、どうぞー」


 『了解でーす、どうぞー』と言って、クザヤっちは電話を切った。


「何色や?」


 「えっ?」切るやいなやマサっちに聞かれ、素っ頓狂な声を出してしまった。


「肌……色?」


 人間だもの。


「てことは新興勢力か……」


 ん?——あっ! ああああ!!


「チームカラーのこと?」


「……えっ、逆になんやと思ってたの?」


 「いや」とはぐらかして改めて。目を極限まで細めて、凝視。


「うーん……無理。暗くてよく分かんない」


 「そうか」マサっちが苦々しい表情をする。


 わぁ! これでもかというほど素早く、そして慌てて顔の前を手で払う。小さな虫が急に視界に入ってプチパニックになったから。

 うん、ナギっちがこっちを嫌がったのも分かるね。そんなに抵抗のない俺っちでも結構ウゲェーって思うレベルに虫が飛んでる。虫嫌いのナギっちは特に——っていうかどこから虫情報を仕入れてたの? それに夏ならまだしも、只今絶賛真冬中だよ? 12月真っ只中だよ?


 「しゃーない。いくで」マサっちが喋りだした。「どこに?」と尋ねると、すぐさま「決まっとるやろ? あいつのところや」とクイっと顎で指すマサっち。


「でも、あの人が犯人とは限らないよね?」


 ただの通りすがりの人かもしれない。


「だとしても、ここでボーッとしてても時間の無駄や。とりあえず行動せな」


 「さぁー」と腕まくりをし「事情聴取しよか!」と意気込むマサっち。


 事情聴取、か——あっ。カツ丼食べたくなってきた。

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