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グラニスラ〜アブノーマルな“人工島”〜  作者: 片宮 椋楽
EP2〜屑籠ジャンピング〜
42/155

第5話 織峰⑵

 ヴゥー


“てことは、マサが今回の報告担当?”


 「まあそうやろな」マサは飲み物を一口。


 ヴゥー


“この前もやってなかったっけ?”


 「それは、俺のスマホが壊れたんで、報告だけマサに頼んだんだ」俺がそう言うと、“そうだったんだ”とものの数秒で返信が。


「てことは、犯人はどっかのカラーギャングにいるってこと?」


 ヨッシーが急に話を戻すと、「それなんやけど」とマサはケータイを取り出し、操作し始める。数秒後、「まあとりあえず、続きはこれ見てからで頼むわ」と、ある動画を見せてきた。俺・ヨッシー・ナギは顔を近づける。

 そして、再生ボタンを押すマサ。




 時間は夜。画面にある唯一の光源は、真っ暗な中にポツンと立っている街灯。その下には、ゴミ箱がある。


 あっ!


 誰かが奥の方からやってくる。手には何かを持っている。絶対に間違いないとは言い切れないが、おそらく男だろう。そんな感じがする。

 街灯の明かりが弱いのか、薄暗い。その上、かなり俯瞰で撮影している。もう少し寄って欲しい。思いが通じたのか、撮影者は画面を拡大してくれた。だが、ほんの少しだった。撮影を始めた段階でかなりアップにしていたのだ。だったら仕方ない。

 しかも、そんな数秒で近くに人が来るわけないのに、念入りに何回も何回も。怪しさ純度、100%。


 そして、誰かはその何かに手を突っ込む。出したと思ったら慌ててゴミ箱に入れる。だが、投げてない。慎重に素早く入れた。そのままダッシュでその場を立ち去っていく。さっき捨てたのってまさか——


 バンッ!


 「「おぉ!」」俺とヨッシーは思わず声を上げてしまった。ナギも、声は出してないものの、目を見開いて、口がポカンとしている。

 もちろん、撮影者も。爆発の瞬間、手ぶれが激しくなった。動揺からか、そこからは手ぶれが著しかった。ゴミ箱からは小さいながらも火やら煙やらが上がっている。




 終わった。スマホを手元に戻すマサ。その動きに合わせ、俺・ヨッシー・ナギも体勢を戻す。


 「撮ってたの、マサじゃないよね?」ヨッシーが訊ねる。


「まさか」


 流れる沈黙。


「ダジャレじゃないよね?」


「……偶然や」


 真相は闇の中。


「俺も最初見た時は、3人と同じで声出てもうたわ」


 理由は、マサが話を戻したから。


 「ナギは違うか」と付け加えると、ナギは”ちゃんとメールで出した”と送ってきた。


「まあ言いたいことはあるけど、一旦それは置いといて……その後にな、現段階で得られる情報があまりに少なく、映像の人間がカラーギャングに属してないとも言い切れない。皆には念のため、この犯人を見つけ出して欲しい、って書かれてた」


「てことは、属してるか否かは直接聞けってことか……」


「そういうことになるわな」


「いやぁー……流石に考え過ぎじゃない?」


 ヨッシーは腕を組む。


「せやけど、もしどこかの一員やった場合、何か企んどる可能性が出てくる。早めに対処しとかな、後々大事になるで。ちゃうかったとしても、いつもどおり動いてバチは当たらへん思うで。こんな物騒なもん作っとるんやから」


 確かに。威力は然程だが、間近でだったらかなり危ない。下手したら死んでしまうかも。


「ま、どちらにせよ『動け』っちゅー命令やから、動かなあかん」


「ハァーァ……全く関係のない誰かのイタズラだって考えたいよ。せめてノットカラー(・・・・・・)の仕業だった、とか」


 ヨッシーが深刻そうな顔をして俯く。


 ノットカラー——かなりの暴力的で三度の飯より喧嘩と拷問が好きなグリーンアイアン、社会批判的落書きを街の壁に残すグレークラン、女子だけで構成された異色のエッジピンク、正体不明のインビジブルなどなど、5つの大規模団体に属していない少人数勢力もしくは内情が殆ど明らかになっていない新興勢力のことだ。

 確かにその方が大事には至らずに済むだろうし、何より大規模グループに比べて遥かに問題を鎮火させやすい。


「だったらだったらで、また別のメンドーが起きるやろ?」


 「まあそうなんだけどさ……」ヨッシーは続ける。「もしだよ? もし大規模グループのどこかに属してて、それが万が一どこか他グループを狙うためのものだったりなんてことになったら……」


 ヴゥー


”いつもみたいな喧嘩どうこうとはワケも規模も違う。事件が事件なんだから。警察には片っ端から逮捕されて、壊滅状態に追い込まれるだろうね。そしたら、爆破事件の犯人に報復する輩が出てきたり、その報復に対しての報復が出てくる可能性だってある。後は連鎖的に報復合戦になって、最悪の場合、また抗争が起きる”


 抗争——俺らにとっては戦争と同義語である言葉を前に、4人ともまるで口を縫われたように口をつぐむ。文字で見ている分、余計にズシンと重みが乗っかってきてもいる。


 もちろん、抗争が始まる前にサミットが開かれて、和平交渉が行われるだろう。だが、そこでさえも決裂する可能性だってある。そしたらもうどうにもできない。どんな被害が出ようがただ、嵐が過ぎ去るのを待つしか術はなくなる。


「とにかく、危険な奴には変わりない。早速やけど、これから行ってみようや」


 ヴゥー


“心当たりでもあるの?”


 「……人の話聞いとったか?」目を細めながらそう尋ねてくるマサ。


 「聞いてたよ」俺、

 「もちろん」ヨッシー、

 “なんで?”ナギ、の順。


「連携プレーすな! 俺が喋ってたこと思い出してみぃ」


 えぇっと……


“「「……」」”


「……」


“「「……」」”


 「……誰もっ!?」マサはツッコむ。


「だってぇ〜あの気持ち悪い標準語のインパクトが大き過ぎて——」


「言うたな、ヨッシー! 今、はっきりと、『気持ち悪い』ってっ!!」


 これ以上ない声で怒鳴るマサ——まあいつもの光景で見慣れてはいる。


「少し声落とせって。周りに迷惑だ」


 けど、場所が場所。


 「す、すまん」と我に帰るマサ。


「ていうか、標準語で喋って、体が受け付けないって凄くない!?」


 相変わらず空気を読まないヨッシーに呆れる。


 ホント、お前って奴は……


 「おまっ!」目を見開いた般若面顔になるマサ。ったく、もう手の施しようが——


 ヴゥー


“場所、分かった”


 ナギからの一文でマサの気はみるみる静まっていく。


 ホント、お前って奴はっ!

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