お散歩、移動法。
「ポムー。おいでよーー」
呼ぶとやってくる。
ぽてぽてと短い脚で弾むように歩いてきて、ぽよんと僕の隣に陣取る。
「ぽむ!」
何か用?と言わんばかりの表情だ。
呼ぶと律儀にこっちにやってくるところが何故だか可愛らしく思えてきてしまって、知らず知らずのうちにポムの下あご部分を撫でまわしていた。
いや、まぁこの毛玉はボールといってもいいくらいの球体なのでどこがあごなのかも分からないけれども。
おとなしく撫でられていたポムはしばらく無言だったが、次第に何かを発するようになってきた。
いつもより半音高い声で、「ふぇ~」と言っているように聞こえる。
そんなに撫でられるのが好きなのかと顔を見てみる。
「いやなんだその微妙な表情!!」
半目半口にあざ笑うかのような微妙な笑みは一体何を表しているのだろうか……。
撫でまわすのも飽きてきたので、少しポムと遊ぶことにする。
ポムを頭に乗っけて、近くの公園まで足を運んだ。
到着すると、僕はポムを頭から降りるように指示をし、僕はおもむろに持参してきたカバンの中に手を突っ込む。
この前買ってきた犬用のぬいぐるみを取り出し、無造作に投げてみる。
ポムは少し反応したが、何をしていいのかわからないようで、首をかしげた。
「とってこい」
なるほど!
そんな顔をして、ポムはとことことぬいぐるみを広いに行って、とことこと戻ってきて、ぽん、と僕の手にぬいぐるみを置いた。
一連の動作が可愛い。
「ふむ、どうするかは理解したようだな、ポム。しかしだ!これは落ちたものをとってくるんじゃない。僕が投げたものが空中にあるうちに捕まえる遊びなのだ!!」
な、なんだってえええええ!?
ポムの中に衝撃が走った、ように見えた。
「準備はいいか?いくぞ!!!とってこーーーーい!」
あ、やべ。
思いっきり投げたのはいいけど、大暴投もいいところだ。
コースアウト、このままいけば公園のフェンスを越えてぬいぐるみが道路に飛び出してしまう。車が来たら哀れなぬいぐるみ君には悲惨な運命が待ち受けているだろう。
しかし僕には何故こんなことをしようと思ったのかと三秒前の自分を恨むこと以外どうすることもできない。
と、突然風が吹いた。
正確には、耳元で空気が唸りをあげ、白い何かが一筋の線となって目の目に飛び出した。
「ポ、ポム!?」
無残にも空中でもみくちゃにされていたぬいぐるみを、白い毛玉は華麗にキャッチした。
こいつは、足が四つの丸としか形容できないほどの短足のくせに、信じられないくらい俊敏であった。
白い毛玉は、空中でぬいぐるみを捕まえるという任務を達成した喜びで満足げな表情を浮かべていた。
けども。
「ポム!!」
そこは上空数メートルだ、足場も何もない。
故に、見事ぬいぐるみをキャッチしても、ポムに待ち受けているのは自由落下しかない。
「くそ!!」
僕は落ちてくるポムを受け止めようと、走り出した。
と、同時に、
「ぽむーー!!」
毛玉が空中で叫び声をあげたかと思うと、ポムの周りに薄い桃色の光が発し始めた。
すると、どういうことか、ポムの落下の勢いが緩和され、まるでグライダーが飛行してくるかのようにゆっくりと滑空してきた。
かなり驚いたがなるほど、ポムならそんな変な力を持っていたとしても不思議ではない。
いや、疑問だらけだけど。まぁともかくこれで無事に降りてこれる。それならまぁ問題はないだろう。
とそんなことを思っていたけれど。ポムが僕の背丈くらいの高さまで落ちてくると、今度は落下が停止され、白い毛玉はその場で浮遊を始めた。
今度は度肝を抜かれたとしか言い表しようがない。
しばらく何が起きてるかわからなかった僕が、沈黙を破ったのは三分後だ。
「はい?」
「ぽむ!」
「いや、ぽむ!じゃなくて。……え、いや、え!?」
「ぽむ!」
「いやだからぽむ!じゃなくて……え、いやいやいやいや!なんで!?え!?浮いてる?浮いてるよ!?ねぇ!」
「ぽむ!」
「いやいやいやいや!ぽむ!じゃなくて!!」
その問答は5分ほど続き、結局ポムは浮いた状態のまま帰路に就つくことになった。
誰かに見られたら大惨事にはならないにせよ、相当ややこしいことになっていたはずだ。
幸いなことに、僕たちは誰にも出くわすことなくアパートにたどりついたのだった。
ここまでお読みくださりありがとうございます!!
ポムは一体どうやって浮かんでいるのでしょうか……?
それは、きっとポム以外にはわからない。
ポムも案外わかってないかもしれない。




