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ポム  作者: 天野 うずめ
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雪の日、変な生物。

僕がその生物と出会ったのは、2年とちょっと前だったと思う。

雪の降る寒い日だった。



「ひゃー、さっむ!さっむ!こんな日は鍋に限りますな!鍋!少し奮発して高めの豚肉を買って来たし鍋パーティでもしますか!二人くらい誰か招待するかーって、ん……」


でかい独り言を呟いていた僕が、二階建ての古いアパートの階段をカンカンと上り、自分の部屋の前にやってきた時だった。

ドアの前に、変な物体が転がっていた。


「……猫かな?」


最初はそう思ったけど、ちょっと違う。

確かに毛は生えていたけれど、野良にしては少しもこもこしてて、毛並も綺麗に整っていた。

うずくまっているのか全体像なのか、まだ顔が見えないそいつは、野生では食料が乏しいはずの冬であるにもかかわらずでっぷりと太っていて、だから僕はどこかのペットか何かが逃げ出してきたのかと思ったほどだった。


キュン、とそいつはひとつ声をあげた。

高すぎず、低すぎず、かといってごついわけでも可愛らしいわけでもない、変な声をしていた。


「なんだろう……こいつ」


とりあえずこいつがドアの前で陣取っているせいで部屋に入れない。

だけど下手に刺激して噛みつかれても嫌なので、僕はそこらへんに落ちていた棒でとりあえずつついてみることにした。


もそり、と擬音語をハッキリと読めるくらいもっそりと、

そいつはゆっくりと身体を転がした。


毛玉からぽこんぽこんと四つの突起が飛び出して、それを支えにして地面に立っている。

おそらくそれが足だろう。

ぶるんと、犬みたいに身体を震わせてから、そいつはゆっくりと顔である部分をこちらに向けた。


「ぶっ……!!」


そして、僕は吹き出した。



「あー……」

そんな感じだったっけなーと声をだしたら、ポムがこちらによってきて僕の肩に登ろうとしてきた。

短い足で苦戦して、10秒も経たずに転がり落ちる。

丸っこい体系だから一旦転がり始めるとどこまでも転がる。


チーッと助けを呼ぶポムを僕は起こしてやって、それから頭の上にのっけた。

ポムのお気に入りの場所だ。

とてもご満悦な様子。


冬の寒い日、僕がであったこの不思議な生物は、モフモフの白い毛と、煮込んだ黒豆を乗っけたんじゃないかと思うくらい黒く、そして出来のいい真珠のように丸い瞳と、小文字の「オメガ」をマジックペンで書きこんだみたいな口を持っていた。



雪の降るあの日、こいつは僕のアパートの部屋の前にいた。


「君は……なに……?」


問いかけた僕にこいつは嬉しそうな様子で、

「ぽむ!」

と鳴いた。


だから僕はこいつを、ポムと呼んでいる。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

一篇の長さを短くして適度に更新できたらなと思います。

どうぞ温かく見守っていただければ幸いです。

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