前編
ある日の真っ青な青空の下、一羽のカラスがお腹を空かせながら飛んでいました。
「お腹空いたなー」
夕べから何も食べていません。お腹がぎゅうぎゅうとなって飛ぶ力もありませんでした。
ふと下を見ると住宅街の一角に白いゴミ袋が置かれているのを発見しました。
「あそこにいけば食べ物があるかも」
カラスは祈るような気持ちでその場所へ下降しました。
カラスは着地し、ゴミ袋を口で突き食べ物を探し始めました。
「人間に見つかる前に早くしないと……」
しかしいくら探しても食べ物は見つかりません。どうしようとあせっていたら、通りかかったペンキ屋がカラスを見つけてこう言いました。
「悪いカラスめ、ゴミをあさるひまがあるなら人様に良い事をしろってんだ。お前なんかこうだ」
ペンキ屋は言い終わると同時にカラスに白いペンキを振りかざしました。驚いたカラスは急上昇しその場を立ち去りました。
カラスは途方に暮れました。食べ物が取れなかった事と身体に白いはんてんの模様がついた事です。白い模様は川遊びしてもどうしても取れませんでした。
その次の日カラスは仲間との集会日のため集会場所へ向かいました。集会所へ着いたら
周りのカラスから近寄るなと悪口を言われ、
カラスは落ち込みました。その集会所の親分に相談に行きましたが、
「お前はここにくるんじゃない。その白い模様が移ってしまう。人間の手下になったんだな。どっかへ行ってしまえ」
と追い出されてしまいました。
かわいそうなカラスは集会所を立ち去り、
太陽に向かって羽ばたきました。おとといから何も食べていないカラス。だれかこのカラスを助ける事はできないんでしょうか。
次の朝、カラスは強い雨の中、羽ばたいていました。空は昨日とは違い厚い黒い雲におおわれています。
カラスには飛ぶ力はほとんどありませんでした。ゆっくりと下降し、ある家の庭に着地しました。そこには大きな犬がこちらを見て座っており、ワンワンと大きな鳴き声を上げながら、近づいてきました。
「もうだめだ。死んでしまう」
カラスは自分の人生はツイていなかったと後悔し、ゆっくりと目を閉じました。その時
「シロどうしたの?」
と聞こえました。カラスはその声に驚きゆっくりと目を開けると、ベランダ窓から女の子が出てくるのが見えました。
「何かいるの? あっ!」
女の子はカラスに気づいておどろきました。
「カラスさん、どうしたの? すごくやせ細ってる」
女の子は怖がることなくカラスに近づきました。とても心配そうな顔をしています。
シロは再度ワンワンと二回鳴き声を上げました。
「シロ静かに。カラスさんは敵じゃないよ。
大人しくしてなさい」
シロにその言葉が通じたのか、シロは黙ってしっぽを振ったままじっとしていました。
「とりあえず寒いからシロの犬小屋に今日は入ってね。今から何か持ってくるから」
女の子はそう言うとカラスを犬小屋の中に入れ、食べ物を取りに家の中へ戻って行きました。女の子は手に袋を持って出てきました。
「はいこれ。食パンのかけらしかないけど食べて。きっと元気になるから」
女の子が食べ物を差し出してもカラスは食べようとしませんでした。むしろ怖がっている様子です。
「わたしの事怖いんだね。その気持ちわかるよ。じゃあわたし戻るから食べててね。明日また見に行くから」
女の子は立ち去ろうとしたが振り返って言った。
「ごめんね。家に入れてあげたいけどママが絶対に許さないと思うの。元気になるまで私が世話をするからね」
そう言って女の子は家の中へ入りました。
その夜犬のシロがのっそりと歩み寄って来ました。
「とつぜん吠えてすまないね。ここにだれかくることがあまりなくて」
シロはペコリと頭を下げました。
「あのお譲ちゃんは本当におれを助けたのかい?」
カラスはまだ疑問をもっていました。
「なんとも言えないが助けたと思うよ。さくらちゃん動物が好きだから」
「さくらっていうのかあの子は……」
「今は安心だが他の人間に会ったら終わりだよ。今日が最後かも知れないね。安静できるのは」
「おれは人間を信用出来ない。この白い模様を付けられてからこの有り様だ」
「まあ勝手にするんだね。でもあの子を傷つけることは私が許さないよ」
シロはそう言いながら横になって寝ました。
あくる日の朝、さくらはカラスの様子を見に来ました。
「おはようカラスさん。調子はどう?」
笑顔でにっこり声をかけます。
「食パン食べたんだね。えらいねー。絶対カラスさん良くなるよ」
「さくらー何してるの? 行く時間よ」
お母さんが声をかけてきました。
「また学校から帰ったら来るからね。じゃあね、カラスさん」
さくらは走って玄関へ行きました。
その日の夕方、さくらは学校が終わりしだい、また犬小屋に来ました。
「こんにちはカラスさん。調子はどう?」
また笑顔で声をかけます。
「ケガとかしていないよね。毛黒いねー」
カラスはカアカアと鳴きます。
「そうだ! 名前付けてなかったね。うーんクロちゃんってどう? 黒くてかわいいし」
さくらは自信まんまんで名前をつけてあげました。
次の日もその次の日もさくらはクロちゃんに食べ物を与え続けました。しかしクロちゃんは元気にならずずっと座ったままです。警戒しているのかなにか落ち込んでいるような感じさえします。
そんな中、クロちゃんはとうとうさくらのお母さんに見つかってしまいました。
「カラスなんて縁起が悪い。あんなやせガラス捨ててらっしゃい」
「いやだよクロちゃんを捨てるのだけはやめて。元気になったら返すから」
お母さんは黙ったまま座りこんでしまいました。お母さんは分からず屋でしたが、顔をにっこりとして、
「わかったわ。ネコの時もそうだったけど今回だけよ。元気になったらすぐに返してね」
と言いました。
「ありがとう。お母さん」
さくらは笑顔いっぱいで返事をしました。




