学校の怪談
安易なタイトルでごめんなさい。
ヤンデレにとってハッピーエンド、
主人公にとってはバッドエンドな話です。
「また、ない」
私は、ペンケースを覗いて溜息を吐いた。
お気に入りのボールペンがなくなっていたのだ。今月に入って三本目だ。
学生時代はこんなに物をなくしたりしなかった。やはり、就職してからの環境の変化がストレスにでもなっているのだろうか。
「蜷田、どうかしたか?」
「…あ、すいません。すぐ行きますんで」
五年ほど先輩の金岡先生が教室のドアを開けるのを待っている。私は慌ててあまり使わない書き心地の悪いボールペンをひっつかんで、シャツの胸ポケットに差し込んだ。
「久々に全員そろった生徒達に会うんで緊張してんのか?」
大丈夫だぞ、と金岡先生が頼もしい微笑みを浮かべる。私は、彼のこういう所に四月からずっと励まされてきた。
「じゃあ、入るぞ」
「はい」
ガラリ、と教室の扉が開く。
まだ慣れない生徒達の視線に、私はぐっと背筋を伸ばした。
教師になって二年目。
未だに慣れない私は、2-Bの副担任をしている。担任の金岡先生は、生徒にも私にも優しく、解りやすい指導をしてくれていて、いい先輩に当たって良かったと痛感するこの頃だ。
つらつらと、校長先生の話を聞き流しながら、私は今日の七時から始まる職員達でやる納涼会について思いを馳せた。
去年は、体調不良で欠席したが、今年は参加予定だ。
定時通り五時に仕事を上がってから、近くの料理屋で集まって飲み会をする。職員達の親睦を深めるそれに、参加するのは初めてでちょっと緊張している。
一度、学校の近くに借りているアパートに帰ってシャワーを浴びてから、着替えて行こう。でも、どんな服がいいだろうか。確か料理屋はちょっとお高そうな雰囲気の店だった。普段着で行くのも失礼な気がするし、かといってカッチリした服でいくのも、なんか違う。程ほどがいい。程ほどが。
「――では、皆さん、残りの夏休みもしっかりとした意識を持って過ごしてください」
やっと校長先生の話が終わった。
これで夏休みの登校日における、生徒達の義務は終了した。体育館に集まった生徒達は解散を告げられると、すぐに列からバラバラになり、我先にと出口を目指す。
私はその動きとは反対に、体育館のステージへと向かう。機材やら机や椅子の片づけがあるのだ。
幾多の生徒達と擦れ違う中、潜める様な、囁く様な、話声が耳に入ってきた。
「知ってる? 屋上前の階段ってさ、出るんだって」
「……マジ?」
「らしいよ。隣のクラスの子が見たって騒いでたもん」
「どんな感じよ」
――定番の噂話だ。
どの学校にも一つや二つはある、他愛のない怪談話。
それが、この学校にはいくつかある。
私も去年の夏、生徒から教えて貰った。
曰く、屋上で事故死した優等生の霊が出る。
曰く、同級生に殺された生徒の霊が体育倉庫に出る。
曰く、裏庭で自殺した生徒の霊が出る。
などなど、噂は何種類かある。が、私の知る限りではこの学校では屋上で事故も起きていないし、同級生に殺されるという事件もない。もちろん、自殺した生徒などもいない。これは、古株の家庭科の先生から教えて貰った。
ただ、昔、病気で亡くなった生徒はいたらしい。
その生徒は優等生で気質も良く、皆に好かれていたという。
きっと、そういう昔話を誰かが脚色して、こういう噂話になったのだろう。
私は生徒達の他愛のない噂話を聞き流し、黙々と椅子やマイクの片づけを終えた。
いつの間にか、体育館には生徒もまばらになり、先生方も少なくなっていた。
「そろそろ、締めますよ」
「あ、はい」
体育教師の吉野先生が皆に呼び掛ける。私も慌てて、体育館を出ようと足早に出口へと向かうが、それがいけなかったのだろう。
「っ!?」
ガクンと足が滑り、バランスを崩した。
このままでは、床と衝突する。
と、思い目を閉じた。
「大丈夫か?」
「……あ、は、い」
気づけば熱い腕に身体を抱き留められていた。
見上げると、心配そうに私を見下ろしている金岡先生がいた。
どうやら、転げそうな私を抱き留めてくれたらしい。
私が礼を言おうと唇を動かそうとした時、
――バチッ。バチバチッ。
頭上にある、体育館の照明が不穏な音を立てた。
「……また、だな」
金岡先生が私から離れて行きながら、頭上を見上げる。その眉は困った様に下がっていた。
そうなのだ。この校舎はつい近年に改築したばかりだというのに、たまにこういう事がある。急に照明や蛍光灯から不穏な音がしたり、スピーカーが誤作動を起こしノイズが入ったりするのだ。酷い時など、なぜか放課後なのにチャイムが鳴った。
一度、業者に来て貰って電気関連を見て貰ったが、何の異常も見つけられなかった。
「やっぱりもう一度、別の業者に見て貰った方がいいな」
漏電でもしていたら大変だ、と呟く金岡先生にお礼を言って、歩き出す。
が、足首を捻ってしまったのだろう。
歩く度、ズキッとした痛みに襲われる。
見れば、ストッキング越しの足首が青くなり始めていた。
保健室で湿布を貰って置こうと、ひょこひょこと不格好に歩く。途中、受け持ちのクラスの生徒達が帰るのと擦れ違う。何人かは、挨拶やら心配やらをしてくれて、あまり関わりのない副担任だが気に掛け貰えた事にちょっとだけ嬉しくなった。
……去年とは大違いだ。
去年は別のクラスの副担任だった。が、なぜか生徒達に嫌われ、挨拶をしても挨拶が返される事さえなく、それなのに、同じクラスを受け持つ担任に色目を使っているだとか、男子生徒にちょっかいを出そうとしているだとか陰口を言われた。
若い女の教師、というのはそれだけで生徒達からは他の熟練した教師達とは違う扱いを受ける。
未熟なのを責められるのならば、まだいい。それは一年目の教師なら当たり前だ。だが、身に覚えのない事で、若い女の教師、というだけで責められるのはおかしな話だった。
憧れの教師という職業に就けたと思っていただけに、晒された悪意に私はとことん落ち込んだ。いっそ、辞めてしまおうかと考えた事さえある。
しかし、数人の信じてくれた生徒や同情的な他の先生のお蔭で、私はその一年をどうにか乗り越えた。
一年の終わり頃、なぜ、私が身に覚えのない事柄で責められていたのかが判明した。
クラスのリーダー的な女子生徒が、担任の先生に恋をしていたのだった。
恋する担任の隣に、新卒の若い女の副担任。嫉妬しない筈がない。その上、担任は私と同じ大学の先輩でサークルも同じだったので顔見知りだった。気安い態度も火に油を注ぐ事となった。
それが判明したのは、担任が生徒達に結婚したという報告をした時だった。なぜか、件の女子生徒は教室の後ろに立っていた私へと殴り掛かって来たのだった。
幸い、私は顔を数発殴られただけで済んだ。
が、女子生徒は始終訳の解らない事を叫び、周囲に取り押さえられながらも私を責め続けた。どうやら叫ぶ内容から、担任と結婚したのは私だと思い込んでいる様子だった。
なので、私と担任とがそれを否定し、担任の指輪の嵌っている左手と、何も装着していない私の左手を見せると、ようやく脱力した。
一部始終を見ていたクラスの生徒達は、唖然となった。自分達の女王様的なリーダーの取り乱す様と、私への嫌がらせを語った事実に、ようやく彼等はありもしない噂を元に一方的に私を責めていたのに気付いたのである。彼女が教室から連れ去られると、生徒達が次々と私に謝って来た。
私は涙ぐみながら、それを受け入れた。
一方、女子生徒は教師を殴りつけたとして、停学となった。本来ならいくら生徒といえども、暴力沙汰は普通に犯罪だし、被害届を出してもいいと校長は言ってくれたが、私は停学処分のみにして欲しいと言った。他の生徒達の様に自分のやった事に気付く事に賭けた。
が、停学が開けた女子生徒は変わらなかった。
さすがに暴力は振るわなかったが、私に会えば罵倒し、担任と上手くいかなったのは私のせいだと糾弾し、担任に会えば擦り寄っていった。
そんな様子にさすがに女子生徒は周囲から孤立していった。
私は彼女が自分を改めない事を残念に思いながら、こうして一年目の教師生活が終わるのだろうなと思っていたら……ある日彼女は退学を申し出たのだ。
最後に見た彼女は異様だった。
かつて、私を殴りつけた時の比ではなく、落ち着きがなくギョロギョロと付け睫毛と化粧で彩られた目を周囲に彷徨わせ、絶えずあちらこちらに視線を向けていた。まるで、何かを探す様に。
自分自身を抱き締めて、涙声で私に謝罪をすると、彼女は一目散に走り去って行った。まるで何かから逃げるみたいに。
心配になって周囲の生徒から話を聞くも、その頃になると彼女を相手にする生徒もいなくなっていて、詳しい話も聞けなかった。ただ、精神的に不安定に陥っているのは見ているだけでも解った。
担任や他の教師が話を聞いても、彼女はただ「学校を辞めたい」と繰り返すばかりだった。後日、彼女の両親からイジメがあったのではないか、あんたのせいだ、などと抗議の電話を受けるが、むしろ、そういう事実の中心にいたのはいつも彼女であり、ここ最近の彼女はただ遠巻きにされていただけだ、と私が伝えると激昂した。
が、怒る両親の声に混じって、「あんな所に行ったら無事じゃ済まない」「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。許して下さい」と彼女の声が聞こえた。どうやら両親の電話している所に同席しているらしい。その内、揉み合う音や叫びが聞こえて、電話は切れた。
慌てて掛け直しても、電話は通じず、その内、彼女の近所に住んでいる生徒から一家は引っ越したらしいと聞いた。
「……ふぅ」
去年のなんともいない苦い結末を思い返していると、保健室に到着した。
扉を開けて「失礼します」と一声掛ける。養護教諭の先生が椅子に座っていた。
「あら、どうしたの?」
「実は足首をやっちゃって」
「あ! ホント! 湿布出すから、そこのベットでストッキング脱ぎなさいよ」
保健室のベッドを指さされて、それに従う。カーテンをサッと引き、それを目隠しに私はスカートを脱いでストッキングを脱いだ。
「開けるわよ」
養護の先生がそっと湿布を私の右足首に貼ってくれる。ひんやりして気持ちいい。
私は先生にお礼を行って保健室を後にした。
しかし、ストッキングのない素足のまま過ごすのも心もとない。
そういえばロッカーに雨に降られた時用に、代えの着替えがあった。確かあれはパンツだったから、素足を晒さなくて済む。
私は女性職員用のロッカー室へ向かった。
「また……ある」
キィと「蜷田ゆづき」と書かれているロッカーを開けると、私はどっと脱力した。
私のロッカーの上の段に、ちょこんと置かれている一輪の花。
季節によって桃だったり、梅だったり、チューリップだったりする。
今あるのはオレンジ色ののうぜんかつらだ。
これは、去年の夏から始まっている嫌がらせである。
どうやら去年のあの女子生徒とは別に、私を疎んでいる生徒がいるらしい。
なぜか、毎日ロッカーの上段に一輪の花を置いていくのだ。
しかも、それは学園の庭に咲く物ばかり。
もしかして首謀者は私を学校の花泥棒に仕立て上げたいのかもしれない。私が花が好きだという事を、どこかから知ったらしい。いくら花が好きな人だって無分別に、学校の花を毟ったりはしないのに。
冬場、花が少なくなったら犯人はどうするのだろう、と思っていたら、室内に生けてある花瓶の花から一輪、ここに置いていくようだった。
この嫌がらせが始まって数週間目に、他の先生にも相談したが、結局犯人は捕まっていない。ロッカー室前に張り込んだり、学校内の監視カメラをチェックして貰ったりしたが、手掛かりさえつかめてない現状だ。
若干気が滅入りつつも、花に罪はない。私はパンツスーツに着替えると、そっとのうぜんかづらを持って、ロッカー室を出た。
「先生」
廊下を少し進むと、見知った生徒と出会った。
「神林くん」
神林くんは2-Bの中心的存在だ。成績も良く、気質も優しく周囲の生徒からも好かれている。長身でほっそりとした体躯で、顔も整っているので女子生徒からも熱い視線を受けている事が多い。
彼は、私にとってある意味、特別な生徒だった。
「先生、足、どうしたの?」
「実は捻っちゃって…」
「どこまで行くの? 肩貸すよ」
すっと手を差し出される。
そう、彼は目の前の困っている人を放っておけない親切な人間だ。
彼がいなかったら、私はきっと潰れていた。
「……ありがとう」
私は首を振った。肩を借りるのは密着し過ぎて、お互いに気まずいだろうし、誰かに見られてまた、同じような噂を流されるのも互いの為にならない。
「そっか。じゃあ、行先まで送ってくよ。危なくなったら支えるから」
彼のこういう優しさに触れたのは……去年の夏休み直前だった。
あの頃は、嫌がらせも激化していて、生徒達は誰一人として私を信じてくれなかった。それどころか汚物を見るかのような目や態度だった。
限界が近かった。
吐き気と嗚咽が込み上げてきそうになって、私は怪談話のせいで誰も近づかない裏庭に駆け込んだ。度々ここは私の緊急避難場所となっていた。
ともかく、誰もいない場所で一人になりたかった。
裏庭の木陰でしゃがみ込み、唸ったり啜り泣いたりしていると、「大丈夫?」と優しい言葉が降ってきた。
それが、神林くんとの出会い。
久々に生徒から普通の眼差しを向けられた。心配そうな言葉を貰った。
更においおいとみっともなく泣き出した私に、神林くんは辛抱強く付き合ってくれて、話を聞いてくれた。そして何より、私の話を信じてくれた。
あの頃、私の噂は担当していているクラスを越えて他のクラスの生徒も知る所となっていた。けれども、同じ学年で違うクラスにいた神林くんは、私の話を否定しなかった。私が裏庭に逃げ込む度、神林くんは現れて私の話を聞いて慰め励ましてくれた。
それがどれだけありがたかった事か。
そのお蔭で私は、前を向けた。恐ろしかったし、悔しかったけど、その内、だんだんと少ないけれども私を信じてくれている生徒達に気が付いた。彼等に「どうして信じてくれたの?」と聞けばある生徒が一方的に噂を信じるのではなく先生を見て判断しろ、と噂話をする生徒達に一喝したらしい。それを聞いてハッとしたと言う。そのある生徒については教えてくれなかったが、私は、多分、神林くんではないかと思っている。
それに周囲を見渡せば、生徒達だけでなく、先生方も私に同情的だった。特に女性の先生方の数人は若い頃に似たような事があったと、話してくれた。
周囲を見れば、味方はいたのだ。
けれども、それを見る余裕さえ私にはなかった。
だから、あの時、神林くんに出会わなかったら、私は教師を辞め、人間不信に陥り、今頃引きこもっていたかもしれない。
「神林くん……本当にありがとう」
「気にしないで。俺がやりたいだけだから」
しみじみと礼を言えば、神林くんはやんわりと流してしまう。
私が嫌がらせで視聴覚室に閉じ込められ、それを助けてくれた時も同じ事を言っていた。
件の女子生徒に髪を切られそうになって止めてくれた時もそう言っていた。
私は、感謝してもしたりないのに、根から親切体質の彼にはこの一言で流されてしまう。どうやったらこの言葉にしきれない程の感謝を伝えられるだろう。せめて、彼が卒業するまでには伝えたい。
「着きましたよ」
「あ、うん」
じっと考え込んでいたせいで、気づけば職員室の前だった。
あれ? 私、神林くんに職員室に行くって言ったけ?
「どうしたんですか、不思議そう顔して」
「……私、職員室に行くって言ったけ?」
「言ってないです。けど、先生が花を持ってたから、職員室の机に飾るのかなって……」
職員室の私のデスクには、毎日貰う花が飾ってある。職員に入った事のある人間なら見知っている光景だ。
私は、神林くんの観察眼と推測に感心した。
「そっか。それじゃ、そろそろ行くね」
「あの、先生」
職員室の扉を開こうとする前に、珍しく躊躇した様な声が掛けられた。
見れば、神林くんの柳眉がやや寄せられている。
困っている?
いや、緊張している?
いつも朗らかな笑みを絶やさない彼にしては珍しい表情だった。
「今日の昼休み、ちょっと付き合って貰えませんか」
「いいけど。神林くんは帰らなくていいの?」
「平気です」
今は夏休み真っ最中だ。私達職員は通常通りの勤務だが、もう全校集会も終わった生徒達は次々に帰宅し、夏の自由を満喫している。
「実は、相談に乗って欲しい事があって……」
勉強が出来て容姿もいい。周囲の人望も厚い彼の相談とは、何だろう。まだ駆け出しの私なんかで役に立てるだろうか。
けれども、人は話を聞いて貰うだけでも、だいぶ楽になる。
それを身を持って知っている私は、彼の相談に乗るのを承諾した。
彼が私を助けてくれた様に、私も彼を助けたい。せめて、何かの手助けぐらいにはなれるといい。
「昼休みに、裏庭で待ってます」
神林くんとはそこで別れて、私は職員室の自分のデスクに座った。そして、右端にある、小さな花瓶に今日貰ったのうぜんかづらを生ける。
「蜷田、また貰ったのか?」
「あ、はい」
二つ隣の席の金岡先生が気づいて、花瓶を覗き込んでくる。
小さな花瓶には昨日と一昨日と貰った花が生けられていた。
貰うのは一日一輪。けれども、その花だってすぐに枯れてしまう訳ではない。花好きとしては花に罪はない、と思っているのでちゃんと生けているし、毎日花瓶の水だって代える。そのお蔭か、貰った花は数日間は綺麗なまま、私のデスクで小さな花瓶を彩っている。
「……もしかすると犯人は生徒じゃねぇかもな」
ぽつり、と金岡先生が呟いた。
「えっ」
「だって、夏休み中も毎日だろ? 生徒だったら絶対目につくと思うんだよなぁ」
部活で学校に来る生徒の大半は、体育館やグランド、コートなどに直接向かい、着替えや休憩も部室錬で済ませている。文科系の部活は夏休み中は週に二度活動する程度で、職員のロッカー室のある本校舎に毎日訪れる生徒など、いない筈なのだ。
「そう、ですね。でも、そうすると…」
その推測のままで考えていくと、花を置いていく嫌がらせの犯人は、職員の中にいるかもしれないと事実に突き当たる。
周囲の先生は良くしてくれている。こんなにいい職場に巡り合えてラッキーだとさえ思っている。そんな、この人達の中に犯人がいるかも、なんて。
「あ~、悪い。怖がらせた」
金岡先生は、ハッとした様に苦笑いをし、ポンポンと私の頭を軽く撫でた。
長身の金岡先生からすると、背の低い私は子供っぽく思えるらしい。時たまこんな風に頭を撫でられる。
私としては、ちょっと気恥ずかしいけど、元気づけられていると解っているので、あまり抗議は出来ない。
「まぁ元気出せ《キーンコーンカーンコーン》……またか」
ちょうど先生の言葉を遮る様に、学校のチャイムが鳴った。
しかし、時計を見ても、時間は中途半端な十時二十五分だ。
「ま、怖がらせたお詫びに今日の昼奢ってやるよ」
「すいません、ちょっと昼は生徒の相談に乗る予定がありまして…」
せっかくの申し出を断ると、金岡先生がほぅと頷いた。
「担任の俺を通り過ぎて、副担の蜷田に相談かぁ……俺ってそんなに頼りねぇのかなぁ」
「い、いえそんな事ないと思います」
「冗談だよ冗談。そんな恐縮すんなって。ま、もしかしたら男の俺には言い辛い相談事かもしんねぇし」
どうやら、金岡先生は相談相手を女子生徒だと思ったらしい。
確かに、男の担任に相談しづらい内容だから、女の副担任に相談する、というのはあり得そうな話だ。
「やっぱ恋愛事かな。ほら、うちのクラスの神林がモテモテでライバル多すぎてどうしよう、とかそういう」
「ああ、神林くんはモテてますよね」
急に出てきた神林くんの名前にドキリとする。が、やり過ごした。ここで相談相手が男子だと解れば、金岡先生が冗談でなく凹みそうな気がしたのだ。
取りあえず、今日は私が話を聞いて、私の手に余るようだったら金岡先生に相談しよう。
「それが解んないだよなぁ。いや、アイツ性格いいし、真面目だし、勉強も出来る。けどさ、なんで女子ってアイツの顔にキャーキャー言うんだ? アレなら俺だってもっとモテもても良くねぇかよ~」
前々から思っていたけど、金岡先生はちょっと人より美意識がズレている様だ。たまに、私に向かって「可愛い」とか言うのはお世辞だと思っていたが、あんな整った顔の神林くんにこんな感想を持つなんて、なかなかズレている証拠だ。
「一年の頃はあんなにモテてなかったしよ。二年になってから急にモテ出しやがって。顔だって変ってねーのによぉ」
「一年の頃、って金岡先生は去年は神林くんのクラスを?」
「おう。去年は1-A担当してたからな。入ってきた頃は、真面目でいい奴だけど女にモテなさそうと思ってたんだがなぁ……これが、蛹が蝶になるって奴かな」
今これだけ、学校内で女子に熱い視線を受ける神林くんが、一年の頃はモテなかったなんて不思議な話だ。
「まぁ、俺はたくさんの女子にモテるより、たった一人にモテればそれでいいんだけどよ」
じっと、金岡先生に見つめられて、ドキリとした。
「そ、そうですか」
思わず、どもってしまう。
いつも豪胆やワイルドといった雰囲気の金岡先生が、真面目な顔をしてこっちを見てくるから落ち着かない。
「なぁ、今度どっか《ジリリリリリリリリリリ!!!》……いい加減にしろよっ!」
金岡先生の言葉は、誤作動した火災報知に遮られてしまう。なぜか、職員室にいた他の職員達がドッと笑い出した。金岡先生は笑った先生方に片っ端から絡みに行ってしまう。
結局、金岡先生が何を言いかけたかは解らないけど、「納涼会で仕切り直す!!」と言っていたので今日の夜にでも教えて貰えるだろう。
それにしても、今日はやけに誤作動の多い日だ。
やっぱり近々業者を呼んで貰おう。
時計を見れば、ちょうど正午だ。
私は作りかけのプリントのデータを保存して、パソコンをスリープモードにさせた。
「行くのか」
「はい、行ってきます」
「おう、力になってやって来いよ」
「はい!」
金岡先生に送り出され、私はお弁当片手にいそいそと裏庭へ向かった。
裏庭の木陰に佇む神林くんの後姿を見つける。
「神林くん」
「先生。待ってましたよ」
「え、遅れちゃった? ごめんね」
振り向いた神林くんは、いつもの様にほがらかに微笑み、私の頭の天辺をぽんぽんと撫でた。
「ちょっと、何するの」
さすがに年下の生徒に頭を撫でられるのは、恥ずかし過ぎる。
「消毒ですよ」
「消毒…?」
「それより、先生はお昼まだでしたか」
「あ、神林くんもまだなら一緒に食べようかと思って」
「……一緒にお昼。いいですね。いい思い出になる」
嬉しそうに神林くんは破顔した。
いつものほがらかな笑顔とは違う、無邪気な子供みたいな笑顔。
そして、彼の台詞に私は嬉しくなった。
彼は、私と過ごした時間をいい思い出になる、と言ってくれた。面倒くさい先生との嫌な記憶ではなく、いい思い出になる、と。
彼は昼食を買いに行き、その間に私に屋上前の階段で待っているように言った。
怪談話のある屋上前の階段。
あまり人のよりつかないそこは、相談事には打ってつけだし、生徒と先生が共に食事をする場所にも持って来いだった。
私は浮かれる気持ちで階段を登ろうとした。
「いたっ」
そうだった。そういえば足を捻ったんだった。
どうしようかと、階段の前で座っていれば、肩で息をする神林くんと再会した。
「…っ、すいません、先生が足くじいてるの忘れてたっ」
「ううん。気にしないで。私もさっきまで忘れたの」
あははと笑うと、神林くんは「失礼します」と私を横抱きにして持ち上げた。
「え!? えっ」
「じっとしててください」
「いや、重いでしょ? べ、別の所でお昼にしようよ」
「全然重くないです。むしろ軽くて驚いてます」
恥ずかしながら、私は異性にこんな横抱き……通称お姫様だっこなどをされた記憶は一遍もない。一度だけ付き合った彼氏だって手を握ってキスしただけで、別れてしまったくらい異性との触れ合い経験がないのだ。
「それに他に人目を気にせず食事出来るとこ、思いつかないんで。我慢、してくださいね?」
右耳にそっと囁かれて、ぞわりとした。
は、は、恥ずかしい!!
私は羞恥に身悶えながら、早く神林くんが階段を登り終えてくれるのを祈った。
「はい、到着」
「……うん。ごめんね」
「気にしないで、俺がやりたいだけだから」
少女マンガのヒーロー並みな爽やかさでいつもの台詞を囁かれて、私はちょっと頭を抱えた。
私が彼と同年代の女子高生だったら、間違いなく恋しちゃってたな、今のは。
「先生? 食べないの?」
言われてのろのろと七階の階段の踊り場に座り、二人食事を始める。私のお昼は手製の弁当。神林くんはコンビニで買ってきた菓子パンとコーヒーだった。
「神林くん。もう少しバランス考えた方がいいよ、まだまだ成長期なんだから」
「そうですよね。……あ、それ、おいしそう」
「食べる?」
「いいんですか?」
「まぁ、そんなに大したもんじゃないけど」
神林くんに私の作った野菜の煮物を差し出すと思いのほか喜ばれた。神林くんはちょっとハーフっぽい立体的な顔立ちをしているけれど、案外和食が好きらしい。
「ちょっと待ってて、はい、どうぞ」
私はデザートのスイカに刺していた爪楊枝をレンコンに刺して、神林くんに差し出す。受け取った神林くんの指と、私の指が微かにぶつかる。熱い指先だった。
「嬉しいなぁ。先生の手料理が食べられるなんて」
しきりに神林くんは美味しいと繰り返すので、私もちょっと得意になって、弁当のおかずを一種一個ずつ彼に提供した。
まぁ、ダイエットだと思えばいい。どうせ夕方からは納涼会でたくさん食べたり飲んだりするのだ。お昼はセーブしておいてちょうどいい。
私達は食べながら、たくさん話をした。好きな料理や、音楽の趣味、休みの日は何をしているか、とか他愛のない事ばかりだった。
「ごちそうさまでした。……そろそろ聞いて貰っていいですか」
食事を終えると、神林くんが切り出してきた。
先ほどまでの他愛のない会話はこの本題に入る前の、彼なりの心の準備だったのだろう。
表情が緊張して見えた。
「ずっと、欲しいモノがあるんです」
「モノ?」
「はい。一目見た時から、絶対逃しちゃいけないって思って」
何やらはっきりしない話だ。
どうやら神林くんは固有名詞を使わず、抽象的に話したいらしい。私としては、それで役に立てるのかは謎だが、彼がすっきりするならとその先を促した。
「でも、そのモノを手に入れるには、そのモノを損なわなきゃならなくて」
いよいよよく解らない話になってきた。
手に入れたいモノを手に入れるには、それを傷つけたり壊したりしなければならないらしい。
それは一体、どういうモノなんだろう?
「だから、ずっと我慢してきたんです。けど、気付いちゃったんです。だって、このままでいたらいずれ、そのモノの近くにいる事だって出来なくなる。それにそのモノを狙ってるのは俺だけじゃないんです。何人もそのモノを手に入れようと舌なめずりしてるんです。汚らわしい奴らめ」
汚らわしい、という吐き捨てる様な声色が綺麗な唇から発せられたのを私は信じられない気持ちで見ていた。
いつもほがらかな彼に、こんな激しい一面があったのか。
いつも親切な彼に、こんな他人を侮蔑する一面があったのか。
ただただ、それに驚かされていた。
「今日だって、本当は嫌で嫌で嫌で仕方なかったんです。アイツ、勝手に触りやがって。俺だけの、俺のにするのに。許せない。許せない」
ついには、神林くんは顔を覆って蹲ってしまう。
――泣いているのだろうか?
彼の饒舌で激しい口調を見ていて、どこかホッとしている私がいた。
優等生で、優しくて、人望があって、親切で、真面目な、そんな完璧な彼にも歪な部分があるのだと。
初めて、彼の素顔に触れた気さえした。
そうだ。彼はまだ未成年で、少年と青年の間で、守られるべき存在だ。だから、癇癪だって起こすし怒ったりもする。そんな当たり前の人間らしさに安堵し、それを私に見せてくれた事に感謝すらした。
信頼出来ない者に、自分の内側を見せようとする人間はない。きっと、彼は私を彼の内側に入れてくれたのだ。
私は、一教師として、あまり優秀とは言えないけれども、今日、初めて、生徒からの強固な信頼を得たのだ。
「神林くん」
だから、私はその信頼に応えたい。
「神林くんが何を言ってるのか、ちょっとよく解らない。でも、解りたいと思うし、私は……いえ、先生は」
息を深く吸い込み、一拍置く。
「先生は、あなたを応援するよ」
しばらく、神林くんは無言だった。
やがてのろのろと顔を上げ、こちらを見た。
「ほ、本当に?」
彼の宝石のような瞳が必死な光を湛えている。私はそれに頷いた。
「誰が、どんな奴が、邪魔しても、俺だけを応援してくれるの?」
彼の声色には縋る様な響きがあった。私はそれに頷いた。
「じゃあ、俺は欲しいモノを手に入れてもいいの?」
彼は泣き出しそうな顔をした。私はそれに大きく頷いた。
途端、私は抱き締められた。
「ありがとう、先生、先生! ――――俺のゆづき」
「……え」
なぜか、身体がふわふわと落ちていく。
目の前には突き出された手。
泣きながら、微笑むゾッとする程美しい顔。
空を舞うお弁当箱。
あ、あ、あ、落ちる。
このままじゃ、私、階段に。
大きな衝撃と共に、世界が消え去った。
世界が消えた。
なぜ?
階段に落ちた。
なぜ?
階段に落とされた。
なぜ?
「ゆづき」
気づけば、消えた筈の世界が戻って来ていて、私はぼんやりと六階の階段の踊り場に立っていた。
「ゆづき、こっちを見て」
私を階段に落とした神林くんがこちらへ降りてくる。
私の立っている踊り場へと着いた途端、神林くんの身体が傾き倒れ込んだ。
「か、神林く…」
慌てて駆け寄って神林くんの意識を確認しようとして、私は愕然とした。
「だ、誰これ」
さっきまで神林くんだった筈の人物の顔は、見覚えのない顔になっていた。
あの整った鼻梁や形の良い唇や柔らかそうな茶色の髪の毛ではなく、丸みを帯びたしっかりとした鼻や分厚い唇に硬い真っ黒な髪を持った、純朴そうな少年が目を瞑っていた。
体型だってよくよく見れば、さっきまでは長身ですっきりとしていたシルエットが長身ではあるががっちりとした体つきになっていた。
何がどうなったというのか。
神林くんはどこに行ってしまったのか。
そして、目の前の彼は一体何者なのか。
混乱しつつも、彼が呼吸をしている事を確認する。
こういう場合揺するのはよかっただろうかと疑問に覚えつつも、軽く肩に触れようと伸ばした指先が、すり抜けた。
「え…」
「良かったよ、ゆづき。これで成功だ」
戸惑う私の背後から、あの優しい囁き声が聞えた。
振り向けば、神林くんが立っている。
が、その腕に抱かれているのは、頭から血を流した私自身だった。
「え、ひっ…ああっ」
あまりの事に咄嗟に声が出ない。
「ありがとう、ゆづき。ゆづきが応援してくれたお蔭で、決心が着いた。やっとやっとやっと――――ゆづきを俺のモノに出来る」
「な、何を…か、神林く」
「ああ、そうだった。俺の本当の名前はね、神林じゃないんだ。神林はそこにある入れ物の名前なんだ。ごめんね、今本当の名前を教えてあげるから」
そう微笑み、彼が告げた名に私は凍りついた。
古株の家庭科の先生が話してくれた話が脳裏に甦る。
――この学校で亡くなった生徒はたった一人だよ。勉強も出来て、カッコよくて、周囲の子にも好かれててそりゃあ、絵に描いたような優等生だった。ただ心臓が弱かったらしくて、夏休み直前に急に亡くなったんだよ。
「さぁ、おいで」
彼が私に手を差し出してくる。右腕に身じろぎもしない私を抱いたままで。
私は恐ろしくなって、後ずさった。
「ん…」
その時、私の真下からうめき声がした。
倒れている、本物の神林くんが呻いたのだ。
そして、私の足は彼を踏みつけている筈なのに、すり抜けていた。
そうだ、さっきも、私は彼に触れられなかった。
目の前にある、血まみれのぴくりともしない私自身。本物の神林くんに触れられない私。
認めたくなかった。
私は……
「ゆーづーき?」
彼がゆっくりと私との間を詰めてくる。
あれに捕まったら、最後だ。
根拠もなくそう思ったのに、身体が動かない。まるで金縛り。
「死んだばっかのゆづきが、俺から逃げられる訳ないじゃない?」
「そ、んな」
「ゆづきが言ったんだよ? 俺が欲しいモノを手に入れていいって。応援するって。どんな奴が邪魔しても俺だけを応援するって……本人が許可したんだから、ゆづきが俺からゆづきを奪おうとしても、俺だけを応援してね?」
欲しいモノがある、と彼は言った。
モノ、とは者だったのか。
つまり、彼は私を手に入れたかったのか。
「ど、うして」
私は彼を惹きつけるような美しさなんて持っていない。内面だってすぐくじける泣き虫だ。先生としてだって全然ダメで、何一つ、彼が私を手に入れようとする理由が解らなかった。
「裏庭で泣いてるゆづきを一目見て、欲しくなったんだよ。あの涙目で俺だけを見て欲しくなったんだ。ずっとずっとこの学校を彷徨って、たまに人間に乗り移って楽しく過ごした筈なのに、ゆづきを知ってから、俺は自分が孤独だって気づいたんだ」
「わからない。じゃあ、なんで私を、殺したの」
「……俺、この学校の中から出れないんだ。ゆづきはその内、別の学校に行っちゃうでしょ。だから、ゆづきを傍に置くにはこれしか、ないんだ」
殺して、私を自分と同じ幽霊にして、この学校に縛り付ける。
彼が望んだのは、最低の選択だった。
動けない私の右手首にそっと、冷たい指先が触れた。
「大好きだよ、俺のゆづき」
そうして冷たい闇へと私は引きずり込まれた。
「ねぇ、知ってるー? この視聴覚室って、出るらしいんだよ」
「出るって、例の殺された生徒のお化け?」
「それがね、十年前に好きな教師にフラれて自殺した女教師のお化けだって!」
「うわっ、何それコワッ。そして愛が重ッ」
「その女教師はね、同じクラスを担任する教師に惚れてたんだって。それで所構わず色目を使ったりしてたらしいんだけど……なんとその教師が別の女と結婚しちゃったんだって! で、それに当てつけてこの部屋で自殺したんだって~」
ギャハハと笑いながら、女子生徒達が視聴覚室を出ようとした時だった。
――バチッ、バチバチ
視聴覚室の天井にある蛍光灯が、不穏な音を立てる。
「うおっ!! ヤベッ」
「祟られるぅっ」
女子生徒達は怯えているのか、冗談なのか解らない叫びを上げながら、視聴覚室を出て行った。
それを見届けながら、彼が舌打ちをする。
「俺のゆづきを悪く言う糞なんて、この学校にいちゃいけないよね?」
彼が私を後ろから抱き締めながら、甘く囁く。
「それにしても、ゆづきの事があんな低俗な怪談になっちゃってごめんね。本当は事故に見せかけて、ゆづきの入れ物を発見させてもよかったんだけど……やっぱ俺以外がゆづきに触るが嫌でさ」
私の死体は未だ発見はされていない。見つかる筈もないのだ。
私だって死ぬまでは、この学校にこんな恐ろしい空間が存在するなんて知らなかった。学校のどこからでも入り込めるそれは、異次元のように私達霊体を受け入れ、どこまでも続いているかのような真っ暗な空間だった。そこにいればどこからでも、学校の様子を知る事が出来、学校内ならばどこへでも行く事が出来た。
その空間に、私の死体は朽ち果てもせずある。そしてなぜか、なくしたとばかりに思っていたお気に入りのボールペンもあった。それをぼんやり見つめていると彼は照れた様に「ゆづきが家に帰ってる間も、ゆづきを感じていたくてさ」とボールペンを盗んだ事を白状した。
それから彼は毎日、学校内の花を摘んで持ってくる。幽霊になって日の浅い私は物を掴めないが、もう数十年になる彼には造作もない事だった。どうやらロッカーの花の犯人も彼だったらしい。
あの日から私は彼のされるがままだ。
最初は詰ったり叫んだりした。が、泣き叫ぶ私を彼はただ愛おしげに見つめたり抱き締めたりするのだ。
その次は無視をした。けれども、私は力では彼に敵わない。無視をする度に金縛りに合い、散々泣かされた。
「愛してる。愛してるよ。俺だけのゆづき」
言いながら彼は私の首筋に口づける。
動けない私はただ、ここから見える学び舎から目を伏せた。
学校内限定の心霊的ストーカーの話でしたw
【結構どうでもいいネタばらし】
・明かりバチバチ
(金岡先生への嫉妬)
・女子生徒が退学を言う前の不安定さ
(心霊的鉄槌。謝らないと呪い殺す所存。学校内限定。しかし学校から電話かけたりFAXおくったりは出来る)
・件の女子生徒への最後の電話が繋がらない
(妨害)
・一輪の花
(プレゼント。しかし校内から出れないので学校の花。主人公花が好きと話していた)
・無くなったボールペン
(主人公のモノ欲しい)
・誤作動警報装置
(嫉妬と妨害)
・神林くん
(乗りうつられてます。クラスメイトにも乗り移ってる霊のせいで魅力的に見えてます。学校内で主人公がいる所、もしくは主人公の為に生身の体が必要な時は、だいたい霊に操縦されてますw)
・金岡先生
(霊感ゼロ。なので今まで無事だった。神林も本来の姿に見える。主人公に好意を持ってる)
ちなみになぜ、すぐに女子生徒の嫌がらせを止めなかったのか、は自分に縋らせたかった。女子生徒が主人公を殴るのは想定外。なので、停学終わってから呪いまくり。女子生徒の周りで学校内のみ、心霊現象起きる起きるw
で、女子生徒が去って安心と思ってたら、次の年には、金岡が担任で主人公は副担任で、金岡なんだか気があるっぽい…で嫉妬でグギギギww
で、実力行使に出ました。
彼、の名前を出さなかったのはなんか出さない方がホラーっぽくていいかなと思いました。
いきなりズドーンとネタが降ってきたので勢いで書きました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。